僕がこの街に来てもうかなりの時間が過ぎたと思う。多くの出会いと、多くの別れを繰り返して僕も少しずつ変わっていった。僕が初めてクラウスさんに会った時、彼は言った。
「光に向かって一歩でも進もうとしている限り、真に敗北することは断じて無い。」
僕がミシェーラの視力を取り戻したいこと、僕自身があの時の後悔を背負っていること、多くの事にそれは僕を叱咤した。
生きている事こそ素晴らしくて、誰にでも危険が転がっていて、数秒後もしくはもう死んでいるかもしれない。そんな危険がゴロゴロ転がっているこのヘルサレムズ・ロット(後述HL)で僕が生き続けるのは、僕のような凡人が生き続けるのはひどく稀だ。
僕より強いフィリップさんでさえ、この街から去った。それでもこの街に居続けるのは妹の眼を取り返すことと、僕の職場である『Lybra(ライブラ)』の仲間たちの事が大きいと思う。
だからこれはいつもの複雑怪奇な戦々兢々とした奇々怪界とした街で起こる、日常の1ページなのだと思った。
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「ヤァッ!?ご機嫌よう!!HLの皆さーん!みんな大好きフェ・ム・トだよーん!!みんな辛気臭い顔してるねぇ?そんな腐った街に素敵なプレゼントを用意した!HAHAHAHAHA!安心して二十四時間で半径2キロが消滅する素敵アイテムだから!!」
おい、それはどういう事だ。
何故かすごい嫌な予感がする。
「それでそれで!?その素敵アイテムをどこに隠したって?ハァァァァァン!?この僕がそんなどこもかしこも探させるとかいうクソつまらない方法を取ると思うかい?」
はいはい、良いから早く言ってくれ。
「ある人間の背中に取り付けた。その人間は度々私の実験を邪魔するので今回は実験対象になってもらおうかと思ってねぇ?ついでに言うと、その人間には解錠方法は伝えてある!!比較的簡単な実験だねぇ?まぁそういう訳だから、人間含めHLにいるゴミ溜めどもぉ!張り切って探そっか!!スイッチオーーーーーーーーーーーン!!」
ピピッ!
今、察した気がする。僕のこの背中にある機械はどう考えてもタイムリーな話の件な気がする。むしろコレじゃなかったらフェムトの話を疑うレベル。
「おーレオ!今日もその陰毛頭で毒電波受信してんのかぁ!?おーい」
クソ先輩おつ。絶賛命の危険なんで“近寄らないで”いただけませんかねぇ?
「誰が陰毛頭だ!ヤリチン先輩!てか近寄るなぁ!!」
「はぁん?今後輩が先輩の俺をバカにするような言動が聞こえたような気がするなー?んー?……おいレオ。その背中の機械なんだ?」
あ
「待てぇ!!とりあえず帰ろうとすんな!!かと言って“近づくなぁ”!!そこ!そこで立ち止まって!!」
レオはザップを引き留めつつもザップと距離を保った。それはまるで何かの条件下のように真剣に。
「ああん?テメェなーに言ってんだレオぉ?」
「いいっすかザップさん。よく聞いてください。強いて言うなら連絡頼みます。クラウスさんに。良いですか?実は………。」
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「つまり、少年の背中に堕落王フェムトの言ってた素敵アイテム?があると?」
「そうっす、まぁレオは解錠方法知ってるみたいで今は大人しくしてるみたいなんすけど。」
「ではレオナルドを早急に助けに行かなければ!」
巨体。そう言い表すにふさわしい巨漢が立ち上がり足早に歩き出す。が
「まっまってください旦那!」
ザップが珍しくかなり真剣に慌てていた。
「実はレオのやつから教えてもらった解錠方法なんすけど、半径16.4ヤード(15メートル)圏内で電子機器、魔術回路、能力系統の力全てを使うとドカンッといくらしくて、専用の鍵でしか開かないらしいんす。」
「なんだと?じゃあ血闘術や血法も使えないと言うことか?」
「みたいっすね。」
「じゃあスティーブンの血凍道で一瞬で凍らせるのはどうだね?」
クラウスが代案を立てる。
「いや、どうも物理的なものというより、一種の契約、概念に近いみたいなんで多分ドカンッしますね。」
「ではその専用の鍵というのは?」
全身包帯男であるギルベルトが次の策を模索するために聞いた。だがコレもザップは苦い顔をする。
「実は、その専用の鍵っつーのがレオの体内にあるらしいんす。ただ胃とか腸にあるなら良かったんすが。臓器と臓器の隙間にあるらしくてうんこしてもでねぇっつー。」
全員が黙る。
解決策が極端に狭まるのだ。今回のいちばんの問題はクラウスたちの能力を使えないということにある。下手な話戦闘がそこそこできる一般人になったようなものなのだ。クラウス、スティーブン、ザップ、K・K、ツェッド、という主戦力が軒並み却下ならそれはどうしようもない。
「チェインさんならどうでしょう?彼女なら体内にある鍵を取り出せる。能力もかなり特殊ですし。」
ツェッドもとりあえず意見は出してみるが殆どダメ元だった。
「いや、彼女も恐らく無理だろう。連絡してみないとわからないが今は人狼局に行ってる。来れると良いが何もできない可能性の方が高い。」
「とりあえず、今レオナルドはどこにいるのだね?」
「どこで能力者が能力使うかわからないんで屋上にいます。一応ブリゲイドさんが護衛してますが銃も電子機器なんで15メートル離れてます。」
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「なぁソニック。もし何にも解決策が出なかったら最後はちゃんと2キロ離れろよ?」
言ってることは分からない、それでも音速猿ソニックの表情と声音で拒否と心配が見て取れた。
「今はこの義眼ですら使えないから本当に僕は一般人だな。」
背後から数人の足音が聞こえる。
レオは振り返ると、心配してきてくれた仲間たちを笑顔で迎えた。
「ああ、皆さんお揃いで。まぁここで爆発するわけにもいかないんで今、パトリックさんに小型の飛行機を用意してもらってます。運転できないっすけど上に行くことくらいは僕でもできますしね。」
レオは死ぬつもりはない。ただ自分のせいで誰かが困ることが嫌だった。ここで爆発すればライブラもただでは済まない。
パトリックは武器商人なので飛行機は扱ってないらしいが、似たようなものを渋々用意してくれるそうだ。
「レオナルド、諦めるな。今から私はドン・アルルエル・エルカ・フルグルシュに当たってみる。」
「俺はとりあえず警部と知り合いに当たってみる。何か他の要素があることも考えられる。とにかく情報が少ない。ザップも他の構成員に当たってこい。ツェッドもだ。」
「私も知り合いに当たるわ。レオっちを爆発なんてさせない。」
「私もライブラの過去の記録を洗ってみましょう。」
全員が動いてくれようとしていることに自分も仲間としてここにいるのだと嬉しくなるレオ。
「皆さんありがとうございます。とりあえず僕はここで大人しくしてますね。ライブラの上層の電気製品は申し訳ありませんが全て落としておいてください。」
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いろいろなことが蘇ってきた。別に死ぬかもしれないから思い出したとかではない気がする。どちらかといえば一般人のレオにとって毎日が摩天楼だった。だからこそ独りになった時自分を見つめ直す癖が知らぬ間に出来上がっていた。
まぁ、仕方ないよな。
運が悪かったとしか言えない。今日だって朝起きて、気がついたら真っ暗な部屋にいて、背中が重いと思ったら何かついてるし、取れないし、散々だ。
まぁでもクラウスさんたちを信じよう。
今はそれしか僕には出来ない。
神々の義眼も使ったら爆発か。
「よ!」
「ふげっ!」
レオの頭の上に止まった黒服の女性。
「チェインさん!?」
レオはすぐに逃げるよう言おうとしたが手遅れなはずなのに爆発しない。実はレオは人狼のことをよく知らない。だから人狼という存在事態が能力のような彼女が近づいただけでやばいかもしれないと思っていたのだ。
「事情は聞いたよ。」
「そっすか。まぁ運が悪かった感じです。」
「そうだね。」
「………。」
「………。」
レオはチェインと仲がいいわけではない。というより挨拶したりそれなりに会話はするが飲みに行ったり、食事をしたりする中ではないため何を話していいのかどちらも解らないのだ。
「………えっと、チェインさんってスティーブンさんの事好きなんっ」
気がついたら空を舞っていた。
」
レオ自身何故自分が仲がいいわけでもない女性にそんなことを聞いたのか分からなかった。もしかすると死ぬかもしれないからかもしれない!
チェインはそのままレオの胸ぐらを掴む。
「なななっなんで!?なんで知ってんの!!?」
この慌てよう。
「ズビバゼン……。とっどりあえず、放してグダサい。」
ハッと、チェインも冷静さを取り戻しレオを放す。レオは服を戻して、
「いや、そのなんというか見ててわかるというか。」
頰を掻きながら苦笑いした。
「まっまさまさか、スティーブンさんに気付かれて!?」
「いや、あの人は多分気づいてないかと。」
「それはそれでちょっと悔しいけど、レオ以外に知ってるのは?」
「まぁK・Kさんくらいじゃないですか?察するのが上手そうなギルベルトさんも知ってそうですけど。」
とりあえずそれを聞いてチェインは胸をなでおろした。そしてレオを睨み付けると、
「絶対に誰にもいうんじゃないよ?わかってる?」
脅しに近い形相だったのはレオの見間違いでありたい。
「ウィッス!絶対言いません!墓まで持ってきます!というかもう少しで上空爆発四散します!!特にあのクソ先輩には絶対言いません!!」
「よし。」
「………。」
「………。」
「………。」
「………まぁ、好きだけどさ。」
チェインはちょっと顔を染めながら顔を背け呟いた。
「でもどうせ叶わない恋だし。」
少しだけ悲しそうに言った。
「………どうしてですか?」
「ふっだって多分女として見られてないし、あたしがさつだから。可愛くないし。」
言うごとに下を向いていくチェインを横目にレオは塀に座りながらHLの景色を見た。そしてチェインを見ると、
「チェインさんは可愛いですよ?」
「なっななななな何言って!!?」
「いえ、本当はこんなこと正直言わないんですけど、昔動かなければならない時に動けなくて、だからそれが正しいなら後先考えて何も出来ないよりする方を選ぶことにしたんです。はははは………。」
「そっ………、そう。………まぁありがと。」
チェインはちょっと汗を垂らしながら顔をほんのり赤くして礼を言った。
チェインはそう言った直球な言葉に弱かった。職業柄、いや、種族柄、嘘と欺瞞に埋もれた世界を見てきたせいか、正直な感想や想いに初だったのだ。
実を言うとスティーブンを好きになったのも初めて出会った時、女性として扱われたからでもある。前述の通り、ガサツであり、態度も男っぽく荒いので、女扱いされることに慣れてなかった。
「レオは?好きな子とかいないの?」
「僕ですか?」
レオは少し考え込んだ。自分の身の回りにいる女性を思い出す。
ビビアンさんは友達って感じだし、ミシェーラは妹、K・Kさんはお母さん的な存在だし、ホワイトは可愛かったなぁ。でもやっぱり友達か。
アリギュラは論外。エステヴェスさんも知り合い程度。ニーカさんも可愛いけどあんまり話したことないなぁ。
「あんまり女性と深く関わることがないみたいです。」
「枯れてるな少年。」
「チェインさんに言われたくないです。乙女ですもんね。」
「なにをっ!」
「ぐほっ!!」
チェインがレオの腹を軽く小突く。
「でもまぁ、ぶっちゃけ怖いんですよ。」
「怖い?」
なんの空気に当てられたのか、レオは語りたくなった。やはり内心まだクラウスたちを信じきれていないのかもしれないと罪悪感が芽生える。
「人と深く関わるって怖いじゃないですか。特にこんな街で、僕のような“価値のある宝を持ってるけど自己防衛できない“みたいな人間は非常に危険です。処世術の一環なのかもしれないですけど。」
レオは咄嗟に失言だと思った。
これだとライブラの女性、つまりチェインやK・Kを信用していないということと動議になってしまう。
すぐに撤回しようとチェインの方に向き直るが、その時、不覚にもチェインの横顔に見惚れてしまった。
チェインの顔はゆっくりと暗くなる空と明かりが灯り始めるHLの街並みに照らされて美しくぼんやりと光っていた。その顔は懐かしさと恥ずかしさが入り混じった少女の顔だった。
「あたしはさ、ここにきた時スティーブンさんに平手打ちをしたの。」
穏やかな顔だった。
「あたし胸でかいでしょ?だから今まで近寄ってくる男がみんな体目当てで来てうんざりしてた。その時にスティーブンさんと会って、最初に『とても危険な街だから何かあったら遠慮なく言ってくれ。女性は特に危険だ。』って言って来たの。普通ならそれは好意で言ってるわけだけど、」
少しだけため息を吐いた。
「その言葉がね初恋の人にそっくりで衝動的に手を上げてしまった。もちろん謝罪したよ。でもその時は男なんて全員死ねばいいって思ってたしあわよくば私以外みんな死ねって変なうつ状態だったんだ。」
「だからその相手を信用できないって気持ちはきっと正しいよ。あの時の私と君は年齢的に大差ないけど今の君の方がずっと大人。」
レオは少しだけ目尻が熱くなった。
泣きたいわけではない、ただ、何かを許された気になったのだ。それがなんなのかわからなかった。
「ありがとうございます。なんだか………気恥ずかしいですね。ハハハ。」
「もしかしたら、ある意味『この人になら裏切られてもいい。』って思えたらそれが“信じる”ってことなのかもね。」
チェイン自身どうして自分がこんなことを言っているのか分からなかった。言ってみればチェインは派遣のようなものだ。ライブラと人狼局2つに在籍してるがあくまで人狼局がメインでありライブラに協力している関係である。
故にチェインは必然的にライブラのメンバーと常に一緒にいるわけではない。だから誰かと親密な関係や深い繋がりを持つことがなかった。
ある意味でこの2人は似た者同士だったのだ。
チェインもそれなりに戦えるものの、クラウスやスティーブンに比べるとどうしても戦力が低い。
弱い者どうしシンパシーがあった。
「チェインさん、もし僕のこの背中の素敵アイテムが僕を殺さずに済んだら、飲みに行きましょう?」
「え?」
「チェインさんお酒好きですよね?僕あんまりお金ないですけど、少しくらいなら奢ります。なので、」
レオは正直かなり雰囲気に当てられていた。
「僕と友達になってくれませんか?」
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しばらくして、目の下に隈を作ったクラウスと息切れ中のスティーブ、ザップ、ツェッドが帰って来た。
「あ、皆さんお疲れ様です。どうでした?」
「少年、すまないが解決策はなかった。」
ザップとツェッドも同様に苦しい顔をした。
「ドン・アルルエル・エルカ・フルグルシュに聞いたがなにも得られなかった。すまないレオ!だが諦めてはならない!!まだ何か方法があるはずだ!!」
クラウスはふらふらになりながらも必死に考え続けていた。
クラウスがゲームした時間は110時間。それほど、それほどレオのことを考えているのは言うまでもない。
レオは嬉しかった。
義眼のためかもしれない、ライブラに関わっているからかもしれない、そんな不安感など微塵も感じさせないほど彼らはレオナルドのことを思っていた。
レオナルドにとって彼らはもう家族である。
掛け替えのない存在、命を賭してでも助けたい存在、相互の想いが重なっていると確信できた。
だからこそレオは諦めない。
必死に考える。何か解決策がないか頭をフル回転させる。
「ねぇ。」
一同、声の主に顔を向ける。
「電子機器、魔術回路、能力を使っちゃダメなら普通に病院に行けば良いんじゃないの?
「「「「「「「え」」」」」」」
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今回の後日談というか、オチ。
「チェインさーん、もう飲むのやめましょーよー!」
「だーめだって。あー!他人の金で飲む酒は美味いわ。デュフフ。」
「いやいや奢るとは言いましたけど何本飲む気ですか!?」
「いーじゃん!今回私ファインプレーだったじゃん!?」
「確かにそーっすけど僕の今月の食費ががががが。」
「デージョブだって!いざとなったら私のご飯を分けてやろうではないか。あはははははははははは!!」
「えー…………。」
まだ夜は長い。
もっとエロほしい?
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ほしい
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ご自由に
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いらない
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あったりなかったり
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微エロ程度で