「かんぱああああああああああああいっ!!」
ホールに男女の歓声が響き渡る。
ふわふわとした陽気な空気。彼らの宿敵である「血界の眷属」を1体封印するに至ったのだから普段の殺伐とした雰囲気と打って変わって、まるで風船を破裂させたかのように喜びの空間へと変貌していた。
何かを誰かと達成した時は誰だって浮れるもので、いつもは誠実で静かで真面目なライブラのリーダーであるクラウスも今は楽しく酒を飲み交わしている。
そんな時でも1人だけ、スティーブンだけはやはりどこか一歩引いていて警戒というほどではないが何かに備えた、そういうたたずまい。
それでもやはり日進月歩、微々たる結果でも進めたのが嬉しいのかいつもより多めに酒を飲んでK・Kに尻を叩かれていた。
パトリックは依然として隣にニーカを携えながらクラウスと飲み比べをしていて、ツェッドとザップが言い合いをしていた。こんなにもライブラの構成員が集まることは珍しいがそれほど関わった構成員も多く、そして得た功績も大きかったからこそだろう。
さて、レオはといえば、バーカウンターの片隅で1人ちびちびとロマネ・サン・ヴィヴァンをワイングラスでのんびり飲んでいた。
余談だがレオはこの時飲んでいたお酒の値段を知らない。
今回の作戦でやはり外せなかったのはレオナルドだろう。
彼はある意味クラウスと同じくらいBB戦において要だ。レオナルドがいなければ成立すらしない封印の儀式。わざというには美しく悍ましい行為は些か礼を欠いている。
真名を読み解くレオナルドの眼はライブラにとってよだれどころか躰を差し出しても欲しい産物だ。
ただレオにとって、正直なところ自分には宝の持ち腐れでもあれば、自分という存在が必要とされているわけではないと思ってしまう。
アーサー王が欲しいのではない。
エクスカリバーが欲しいのだ。
それでも、妹のため、自分のため、世界のため、レオはたとえ自分という存在が必要とされずともライブラに協力するだろう。それはそういう契約で、それでいて呪いでもある。
ただ、もし仮にライブラに義眼の力を保有していなくともいて良いと言われたのなら、その時は心から嬉しく思うだろう。より一層無力感を感じてしまうが。
レオナルドは酒に強いわけではないが、それなりに嗜めるので、未だ冷静ではあるがやはり元来のコミュニケーション能力の低さからか大勢が楽しくしているとどうも引いた姿勢になってしまう。
今回のB B戦でもかなり役立ったのは前述の通りで、本来なら真ん中で盛大に持ち上げられるべき立役者であるはずがどうもそこから離れたくなってしまってそこに座る羽目になったわけだ。
「よっ冴えない童貞くん。」
「…………どうも。」
レオは声とノリで誰が話しかけてきたのかを察して振り返ることもなく、一度グラスを仰いだ。口の中にアルコール特有の苦味が広がるが、それでも落ち込みそうな気分を少しだけあげることはできた。
別に今更童貞だの、陰毛頭だの、冴えないだの言われても気にしない。……たぶん。
ただ、これから話すであろう相手に卑屈な態度で望むのはなんだか悪い気がする。
レオの隣にチェインが座る。
彼女はラベルに「かんじ」と呼ばれる東洋の文字が描かれた一升瓶をまるで恋人のように抱きしめて胸のボタンを2つ開けていつものスーツ姿でだるそうに座った。おおよそ女性の例にはなれそうにないがレオはいつもの事だと隣の美女の顔をみる。
化粧や手入れをしていない状態で、半ば酔っ払っているにもかかわらず美女だ。
K・Kやニーカなどライブラの構成員には女性も少なくないが、それでも群を抜いて東洋の美しさを誇っている。
「……な、なに?」
レオは意識していないが、いつも細く半ば目をつむったような目を、少しだけ見開いて美しい碧色をした眼球でチェインを見つめていた。
チェインにとってはもう見慣れた義眼ではあるが、それでもまじまじと顔を見られると酔いも覚めそうだ。
レオはピクリと震えるチェインを見てふと我に返って、というよりは思考を終えて再び前を向いて突っ伏した。
「どうしたの?」
「なんだか………まぁ………よくわかんないっす。」
「なによそれ。」
チェインは苦笑して、バーのマスターに人差し指で合図を出す。
空のグラスを1つ出させてそこに日本酒を注いだ。
ゆっくりと薄ピンクの綺麗な唇で、グラスを傾けるチェインを横目で見るレオは自分の悩みがちっぽけで、それでいてどうしようもなく誰もが通る道なのだと察してしまう。
レオの悩み、いや悩みというほどですらないのだが、どうしようもなく自分の無力、戦闘でのカバーができない点が心のつっかえにはなっていた。
「………僕である必要ってあるんですかね。」
「……ふむん?」
神々の義眼を持つレオは「持つレオ」であって「扱うレオ」ではないのだ。ライブラの構成員はそれぞれ己が特技を磨き上げている。その点でいえば誰にも負けないという自負と他負があるのだ。
しかしレオにはそれを自分である必要性だと感じない。
レオが義眼を扱えるようになるための努力はついこの間始まったばかりだ。そこをプロと比べるのはいまいち無理があるが気にするものは気にしてしまう。
「…よくわからないけど、前にガミモヅってやついたでしょ。」
「……ええ。」
「あいつは自分の私利私欲で動いて、他人なんてどうでもよくて、悪意ある義眼の使い方をしていたと思う。」
チェインは黒いスーツの上着を脱ぎながら、椅子を横に動かしてレオとの距離を縮める。
「でもあんたは少なくともその眼を誰かのために、妹のために、世界のために使うと決断した。目だけじゃない、レオは私にだっていつも助けてくれて……る。」
「……でもそれって僕じゃ……。」
「……そうかもね。でもレオじゃなきゃきっとライブラにはいないし、……レオじゃなきゃ私は友達になんなかったよ。………………それじゃあダメ?」
チェインの言いたいことはわかる。
そして別段特別な言い回しでも気遣いでもない。
それでも淡々と「あんたは他と違う。」と言われることは凡人としてとても、とても嬉しいことではないだろうか?最上位の敬意ではなかろうか?
レオは先ほどのくぐもった心持ちを洗われたような、それでいて深い感謝の念を持った。
少なくともはっきりと「あんたはここにいていい。あんたじゃなきゃダメなんだ。」と言われたのだから。
「………かゆいっす。」
「私の方がかゆいわ。」
チェインは脱いだ上着をレオに投げ飛ばす。
レオの顔にほんのり温かい汗臭い上着がかぶさって、「あした洗濯しなきゃなぁ。」と思った彼だった。
チェインは右手をあげるとレオナルドの肩を組んで体重をかけ、一升瓶をレオに向けた。
「ほら、飲もう。」
「えぇ………僕強くないんっすけど。」
「いいからいいから。一口っ!」
断りすぎるのも癪だと、観念して、レオはまるで母親が子供にミルクを飲ませるように歯にカチンッと当てながら日本酒を飲んだ。
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しばらくして、ライブラのほとんどが会場で寝てしまい、あのスティーブンですら壁で立ち寝をする頃。レオはとびっきり大きい蹴りで目を覚ます。
「んごぉっ!?」
カウンターで突っ伏したままレオの左肩とチェインの右肩が少し触れ合う距離で2人とも寝てしまっていたのだが、レオの近くのソファで逆さに座ったまま寝ているゴミクズ先輩が蹴りをかましてきたのだ。
ちらりと見るとどうやら寝相が単に悪かっただけのようで未だよだれを垂らして寝ていた。
レオは体を伸ばしてバキボキと体がコリを解すのを感じながら若干気持ちよく起きる。
あのクラウスですら寝ているのだからなんだか新鮮な気持ちだ。ただ1人起きているのはギルベルトだけで、床で寝てしまっている薄着のメンバーに毛布をかけ終わった頃合いだった。
「レオナルドさんはお帰りになられますか?」
「……そぉですね。他のみんなは?」
「まぁこの有り様ですからお気になさらず。」
レオはその言葉を聞くと、安心して立ち上がる。のだが腰の裾が引っ張られた。
またクソミソ先輩かと思いきや、チェインが器用に左手でつかんでいたのだ。
チェインはレオと同様一升瓶をカウンターに倒したまま、突っ伏して気持ち良さそうに寝ていた。
カウンターに顔と肘を乗っけて寝ているために、豊満な胸部を重力に任せて垂らしていた。いまにも3つ目のボタンが耐久限界を迎えそうではある。
ギルベルトがいるのでまじまじと見るわけにもいかず、男の本能をなんとか理性で潰して、丁寧に指を解く。
チェインの指は女性とは思えないほどゴツゴツしていて、それでいてすらりと長かった。当然だ直接戦闘するわけではないが、戦うことを生業にしているのだから荒れるのは必至。
「僕はこの酒豪を連れ帰ります。家隣なので。」
「それは良かった。」
本来、本来であれば。
チェインは酒で酔ってもここまで熟睡することはないだろう。彼女がいくら酒が好きだとしても意識を失うのは帰ってからだ。
つまりここはライブラの、家族のいる場所だからこその安心からくる熟睡なのだ。
そしてその1人であるということに気づき、先ほどまで落ち込んでいた心が嘘であるかのように清々しかった。
レオはチェインの肩を掴んで上着を着せる。
酔っ払って完全に脱力しているので、難なく着せることはできたのだが、一抹の不安はこの後である。
レオはそのままカウンターの下に潜って、チェインの下側に入ると、ゆっくりと肘をつかんで立ち上がる。
自然と背中にチェインが乗っかる形で立ち上がり、ちょうどいいところで両手をチェインの足の左右、膝裏に持っていき抱える。
幸いお互いに手荷物はないのでおんぶしながら帰るだけなのは幸いだ。
「じゃあ僕らはこれで。」
「はい。お気をつけて。あ、一応このボタンをお渡しします。」
「これは?」
「ボタンを押せば緊急事態だとこちらに通知がくるので。」
「……ありがとうございます。」
「いえいえ。」
レオは流石にここで自分の無力を嘆くことはない。レオだけなら「そーっすよね俺1人とか不安ですよねーははは。」くらい言ってしまうが、今は違う。
守るべき友が背中にいるのだ。自分の弱さなど気にする余地もなく安全な策をとるだけだ。それならば私利私欲に眼を使う覚悟ももう持つことはできた。
レオは部屋を後にする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おっ重ぇ。」
レオは煙が立ち込めるヘルサレムズロットを義眼を使ってできるだけ治安の良さそうな大通りを歩いていた。ソニックも協力してくれて他の音速猿たちを使って先にある問題を色々片付けてくれているようだった。
レオとチェインはだいぶ身長差がある。
チェインは身長が高く、男装すればまるでどこか東洋の王にさえ見えてしまうかもしれないほどモデル体系だ。きている服さえ選べばだいぶ違った交友関係になっていたかもしれない。ただ大きすぎる胸は男装してもバレてしまいそうではあるが。
レオにとっての役得はやはり大きなメロンが背中に潰れながら当てられている点だ。これだけは何度でも慣れることはないだろう。
今まで何度だって酔っ払ったチェインを送り迎えしたし、駄々をこねるチェインを引きずったりしてボディタッチはかなりしている。それでも男としてたとえ親友でも女と見てしまうところはどうしてもある。
それを罪悪感として捉えてしまうところはレオの誠実さ故だが。
「まぁ、頼られてるんだな。…………僕は。」
それは嬉しい。本当に。
だからきっとこの背中の親友だってちょっとの役得はきっとグーパン一個で許してくれる。
ふとレオの首に何かが巻きつく。それはチェインの腕であることは承知しているが起きたわけではなさそうだった。
ただそれこそ抱き枕のようにレオの後頭部に顔を埋め、「んぁ゛ぇ……ん。」と深呼吸をする。髪と髪の間にヘルサレムズロットの冷たい空気が通ってブルリと震えるが、レオはチェインを落とさないようにしっかりと抱え直した。
パンツスーツに守られた柔らかな太もも、臀部近くまで滑らせてから再度膝裏に手を持ってくる。
「ふ…………ぁ………。」
どういう感覚がチェインを襲ったのかはチェイン自身にも記憶にないだろう。
とても艶やかで艶かしい彼女らしくない声が繁華街に響く。もちろん響くといってもレオの耳元でしか聞こえない吐息程度の音量だったので別段慌てることはないが、レオは慌てていた。
おそらくレオを支配したのは絶大な背徳感。
普段クールで、冷静で、カッコよくて、仕事もできる女の先輩が漏らす吐息はどこまでも甘くとろけるスイーツのようで、まるで砂漠でオアシスを見つけた時のように劇的な、情動をくすぐる喘ぎ声だ。
別段レオの手が彼女の秘められた部分に触れたとかではないにせよ、レオはそそくさと前かがみになってマンションへと向かった。
というわけで第5話でした。
R-18は描きたいですが地雷の人とかいそうですよねぇ。レオチェ。
個人的には単にレオとチェインが好きなのでカップリングしただけなのですが、いかんせんチェインは想い人がほぼ確定しているので動かしづらいんですよね。
まぁとにかく6話はいつ書くかわからないのでその時になったら考えましょう。
もっとエロほしい?
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ほしい
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ご自由に
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いらない
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あったりなかったり
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微エロ程度で