※この作品はR-18です。

血界戦線Lovers 改稿   作:九折

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こっちのアカウントに移行してから少し経ちました。
誤字報告してくれた方ありがとうございます。

さて、R18はともかく今回は少ししんどい話です。
ただ別にBadEnd好きとかではないのでご安心を。


第7話 僕は弱いんだ

 

 

 

 

チェインさんと僕が友達になってから早半年。

毎日毎日トラブル発生というほどではないにせよ、ザップさんとツェッドさんと一緒にたくさん死線をくぐり抜けて、突き進んでいく。そんな毎日が楽しくもありしんどくもあって、それでもこの生活がいつまでも続けば良いと思った。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

いや、別に誰か死んだとかそういう話ではないけれど。

 

「ねぇ。」

「………なんすか?」

 

レオとチェインはいわゆる「宅飲み」と呼ばれるものをチェインの家で開催していた。もちろんチェインの部屋に入れるのは基本的にレオだけなので現在2人っきりの状態ではある。

チェインは隣に座っているレオを睨みつける。

2人の手には白い機械が握られていて大型のディスプレイと対面していた。

以前レオが語っていたゲームをプレイしている最中である。

 

「さっきから一向に勝てないんだけど。」

 

チェインは画面に映ったピンク色の風船のような見た目をしたキャラクターをフヨフヨと浮かせながらレオをジロリと睨みつけた。

 

「まぁ、僕………世界ランカーですし………。」

 

レオはできるだけチェインの方へ顔を向けることなく冷や汗を垂らす。普通に考えれば美女と一緒にいれるならば仲良く雰囲気を持ち上げることに専念してしかるべきだろう。だがそれは一般的な男女においてであり、レオには無理な相談だった。

だがもちろんチェインと2人っきりでいることに対して嫌がっているわけではない。なんなら友達と、仲の良い人と一緒にゲームで遊んでいるのだから楽しいまである。

端的に言えばチェインの服装だった。

チェインは裾がヘソの上ほどで止まっている薄い白のランニングシャツに下はベージュの薄い短パンで髪を後ろに留めたラフな姿でコントローラーを操っていた。

つまりレオの方からチェインを見ると、こぼれんばかりの乳房が横からチラチラ見えてしまうのだ。

 

「まぁさぁ別に良いけどねー。」

 

画面にはチェインのキャラの上に「YOU LOSE」と書いてある。

チェインはコントローラーを壊さないようにしつつもベッドに放り投げて、ソファに寝転がった。ソファは人1人が横になれる程度しかないので、当然白い肉質の良い足がレオの太ももの上にどかっと乗っかった。

 

「うぇあっ!」

 

チェインはタバコをクイっと手首で動かしてケースから出す。慣れた動作で中指と人差し指でタバコを挟み口へと含む。

テーブルの上の動かない生きたトカゲをむんずっと掴むと強く握りつぶした。トカゲの口から緑色の炎が吐き出されタバコに焚きつける。大きな脂肪をさらに肺が膨らむ事で揺らしながら煙を吸い込む。

 

「…………吸うのは良いっすけどベランダにしてくださいよぉ。」

「………別にいーじゃんこのままで。」

 

まぁ、とレオは机に置いてあるリモコンを操作して窓を開ける。同時に換気扇が無音で回転し始めた。これはレオがタバコを吸うチェインのために取り付けた機能である。

また個人的に副流煙を心配してのことでもあるがそこはチェインと交遊することにおいて諦めている。

レオは1人でゲームするのも何か気が引けてしまい、テーブルのレモンティーらしきものを一飲みした後、太ももにあげられたチェインの足を見始める。

女性らしい弾力ある細長い足は妙に艶かしく眼に映る。

普段ローファーを履いているからか若干ゆがんではいるが、綺麗な爪先と色白の肌はなんだか妙に目を惹きつけられるが、レオは別に脚フェチというわけではないのでなんとか目を逸らすことに成功したが実際、危ないところだった。

沈黙が続く。

しかしその沈黙が例えばよく知らない人と2人っきりの状態なら胃がキリキリと痛むであろうところ、この2人はなんとく心地よく感じていた。

窓からヘルサレムズロットとは思えない陽気なそよ風が入り、選択して綺麗になったカーテンがたなびく。

反射的にレオは窓の外、煙が蔓延している中かすかに見える青空に心震わせる。

遠い地には妹が同じ空を見ているのだと思うと、なんとも変な気持ちになった。

 

「チェインさん、寒くないですか?」

「………別に。」

 

チェインは寝っ転がる過程で、ラフな格好故か張りのある腹部を露出させていた。美しいヘソに目を流しながら何か話題をとレオは頭を回転させる。

 

「そういえば………スキャッタリング・スコープってあの後どうなったんです?」

「あー………確かクソモンキーが持ってって、それがスターフェイズさんにバレてカチコチに凍らされてなかった?」

 

スキャッタリング・スコープとはいわば異界の道具で、通常の人類が物体越しに対象物を見るにはX線やサーモグラフィーを使わなければ見ることができない。しかしSSはいわば透視するアイテムで、それを使って異界存在でも入ることのできない厳重警備の金庫や重要な会合の内容などを収集し、金融の暴落を計ったり、個人情報を売りさばいたりされていた。

何より恐ろしいのはスコープという名前だが実体はなく、サプリメントのように錠剤を摂取すると眼球に本人だけ見えるメガネのようなものが生成されるという点で、錠剤は闇市場で大量に売りさばかれていた、ということだ。

なんだかんだあってライブラが総動員してSSの元締めを破壊、及び抹殺したのだが、クソモンキーことザップ・レンフロが数粒パクったのである。

もちろん「これで町中の女のが見放題っ!ぎゃはははははははははっ!!」と言っていたので悪用する気満々だったようだが。

 

「………同僚にも公平な罰を下せるって、すごいことですよね。」

「まぁ、そんじょそこらの男とは訳が違うから、スターフェイズさんは。」

 

その言葉にずきんっと痛む。

レオは胸に手を当てることはないもののどうしようもなく心が痛んだ。理由はわかっている。レオは嫉妬したのだ。

レオにとってチェインがどういう存在かなどはどうでも良い。

自分を構成する大部分が男で、軽口だというのに大切な人から「お前は男のレベルが低い。」と言われれば傷ついてしまう。そしてそれが過度に敏感になってるだけで、卑しい心だとわかってもいた。だから無かったことにする。我慢する。

レオは別に理想を追い求めている訳じゃない。

完璧な幸せや幸福を願っているわけでもない。

ただ前に進みたいのだ。

でもそれを親しい人に見下されるような言い方をされてしまえば悲しくなってしまう。

悲しむ自分の心の弱さに嫌になる。

眼を右斜め下に少しそらして自重気味に笑う。

 

「そういえばレオって視ることに置いては長けてるわけだしSSみたいなこともできてんの?」

 

幸か不幸か少しだけ鈍重な気持ちと思考になっていたレオのことなど一切気にせず聞くチェインはなんとも彼女らしい。

 

「……え、ああまぁやろうと思えば。」

「じゃあ服を透かして裸見たりしてるのかー………ふーん、ほーん。」

 

ニヤニヤと彼の気持ちも知らないで揶揄うチェイン。

レオはとっさに恥ずかしくなって、チェインを見つめる。

 

「なっそっそんなことしませんよぉっ!」

 

そう、そんなことしない。

彼は自分の私利私欲のために義眼は意地でも使わない。

なのにそれを理解し知っている彼女から出るいつもの冗談が今日は、たまらず悔しかった。

レオは、「まだ大丈夫だ。」と心を落ち着ける。チェインが悪気はないのはわかってる。ふざけた冗談で言ってるだけだってわかってる。でも感情が追いついてこない。

 

「ふぅーーーー………。」

 

息を吐く。

意識して大きく息を吐く。

何もカッとなってるわけじゃない。

今までいくつもあったのだ、チェインとの会話で年齢差か、性別からか、性格からか時たま無力感を感じて苦しかったり、冗談が胸に突き刺さったり、気にしていたことを言われてしまったり。

でもそれが彼女の魅力だとも思っている。思ったことをはっきりいう彼女はとても素敵だった。彼女が褒めればそれは嘘偽りなく褒めているのだと信じれる。

彼女に対して心を許せば許すほど苦しくなっていくのだ。

自分の不甲斐なさを見てしまうから。

 

「どしたの?」

「…………いえ。」

 

レオは小さく返事をすると、太ももに上げられたチェインの足をソファにそっと置いて立ち上がる。チェインは足にあったぬくもり薄れるのを感じてなぜだか気落ちした。

レオはそのまま携帯端末をポケットに入れて、玄関の方へ行く。

この場から出たかった。

何もチェインのことを嫌いになったわけではないが、このままではチェインに対して誠実でいられなくなるような気がしたからだ。

 

「そういえばザップさんに頼まれてることあったの思い出したんで、行ってきますね。」

「えっでも今日暇って………。」

「………すみません忘れてたんです。」

「あ………りょ、りょーかい。」

 

チェインはソファーから飛び起きて玄関に駆け寄りながらレオの背中をみる。

いつもと違う感じだった。

いや、いつもと異なるわけではないが違和感を感じたチェインは無意識に手を差し出す。その手はレオのパーカーに届くことはなく鋼鉄製の扉がバタンと音を立てて2人の間を隔ててしまう。

チェインは「なっなん……だろう。」と呟きながら伸ばした手を顔の前まで持っていきまじまじと見つめる。その行為に意味はないが、それでも何か自分の違和感に不思議な感覚を覚えた。

人狼の野生の勘だろうか?

今まで誰にも心は乱されなかったし、自分と他人を分けて捉えられることが長所だからこそ優秀な人狼なのだ。わかっているのに、答えは明白なのに、それでもなぜだか足が重い。

くるりと翻ってソファに行く。

しかし視界に入った部屋はどこか空虚で物足りない。

ソファに座っても何かが足らない。

 

 

 

つきっぱなしのゲーム画面には「TIME UP」と「YOU LOSE」の文字が跳ねていた。

 

 

 

 

 

 




というわけで少し鬱回みたいな、ね。

私は予てから「他人が申し訳なさそうにしている。」という点に快感を覚えるのですが(だからといって何かわざとそういう風にしているわけではないですが)そういうのをヒロインが主人公にしていると生き生きします。
ヒロインが罪悪感に苛まれてしまうみたいな、ね。

ともかくR18にはまだなりませんがゆっくりと気長に書いていきますのでお付き合いいただければ幸いです。

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