イナンナの獅子 ショタがTSスーパーヒーロー(金髪褐色おねえさん)に変身して同級生のショタとチュッチュする話。 作:古井京魚堂
三十分後。大月邸子供部屋。
野性味のある大柄な美女と少女めいた小柄な男の子が、携帯機モードでレースゲームの対戦をしていた。
女の方は行儀悪くクッションに右肘をついて寝転がりながら、男の子の方は学習机の椅子に座ってとそれぞれの性格が姿勢に現れている。
ユウタとショウヤである。二人は場所をショウヤの部屋に移していた。話題が話題のため住宅街の路上やコンビニ内で話を続けるのは憚られた。
ショウヤの家はマンションで、両親も共働きであったので、内緒話をするにはピッタリだった。
ゲーム機持参のユウタがどれくらい真剣に話し合う気があったかは疑問の残るところではある。
ユウタは一度自宅に帰った後、ランドセルを自室に放り捨てると、昨晩からベッドに置きっぱなしだったゲーム機を引っ掴み、おばあちゃんにショウヤの家に遊びに行くと告げてきた。
「うわあ。本当にユウちゃんが変身した。さっきも見たけど、信じられない」
目をしばたかせ、口をあんぐりと開いたショウヤが、上から下まで何度も視線を往復させる。
「ええと、それで、正しくは変身を解除したってことになるんだっけ。……ややこしいなあ」
「オレもそう思う。なんで変身したってことにしとこうぜ」
そういうことになった。
女神に言わせると、美女の姿こそが本当で、少年の姿は仮の姿ということになるが、ユウタ本人の認識ではやっぱりあちらが本当の自分だと感じられる。
星空を裸で飛び回るなんて狂態を演じられたのも、どこか他人の身体という意識があったからだ。
ユウタの変身した姿。女神イナンナがいうところの雌獅子の精の肉体は、見れば見るほど肉感的で煽情的な、性的魅力の極北とも言うべき造形をしている。
いわゆるセックスシンボルと称される女優、モデルの中でも滅多に見ないメリハリの利いた弩級のプロポーション。
それでいて顔の造りはユウタの面影を色濃く残す、東アジア系の幼げな美貌だ。
また同時にその体からは蠱惑的な甘い香りを漂わせていた。
それでも、女神イナンナが憑依していた時に比べると、ユウタ由来の能天気さが中和するのか、人を狂わせる凄絶なまでの色気は感じられなかった。
だからこそ、理性を保って会話が行えるのかもしれないなとショウヤは考えている。
もちろんそれは、その肉体がエロスと無縁だという話ではない。
あれほど搾り取られたのに、ショウヤは股間が元気になるのを感じていた。
なお、当初、変身に際してユウタは服を脱ぎ捨てて事に及んだため、すっぽんぽんの丸裸であったが、それはさすがに問題があるというショウヤの強い懇願により、今はショウヤのパパのTシャツとジーパンを借りていた。
胸元にプリントされた男性の顔が相撲取りのように膨れ上がっていた。
ちなみに下着は都合がつかなかったのでノーブラノーパンである。
「それでさあ。イナ子が言うには、小学生の姿を維持するにも神力っていうのが必要で、それを入手するには男とエッチなことをしないとならないって話なんだ」
「なる……ほど!」
爆弾発言に自機の操作を誤りかける。
保健室で襲われたのはそれが理由かと得心がいった。
「あと。ショウヤには恥ずかしい所見せちゃったし、いまさら隠すのも逆に格好悪いから言うんだけどな。それを維持する程度の神力は、イナ子に教えてもらった『秘術』ってのをすることで、ショウヤにやってるとこ見られたやつな、アレでまかなえるらしいんだけど、それだと怪物退治には足らないし、万一底がついたら、イナ子と一緒にオレも覚めない眠りに落ちるんだと」
「大事じゃない。それ先に言おうよ」
あまりにも軽い親友の態度にショウヤは腹が立ってきた。
泡を食って叱責する親友に、なははっと誤魔化すようにユウタは笑った。あまり現実味が感じられず、未だ他人事のような感覚にとらわれている。
むしろ、ショウヤの方がより強い危機感を抱いていた。
極短時間の接触ではあったが、実際に蹂躙されたショウヤの考える所、あの女神は人間をザーメンサーバーくらいにしか認識していないのではないかと思われた。
「でもさあ。ちょっと腑に落ちないんだよなあ。トイレであの秘術とやらをやった時点ではまだ全然足りないって風だったのに、保健室で目覚めてみたら一転して『上手い具合に補充できたゆえ、一戦こなす程度はもつであろう。余は寝る』とか言いだして何があったんだか」
無自覚な言葉の刃がショウヤの罪悪感をザクザクと切り刻む。
芝居じみた咳払いを一つして、話題を転じる。
「一応最低限はオナニーでまかなえると。ユウちゃんが女の人とエッチするのでは溜まらないとすると、男の姿でのオナニーも意味がないんだろうなあ」
「オナニー? アレが? 魔法の儀式とかでなく?」
訝し気な顔をするユウタに、ショウヤもまた怪訝な面持ちで、二人して顔を見合わせる。
「待って。ユウちゃん、オナニーのことなんだと思ってる?」
「寝て起きたら漏らした精液でパンツが汚れてたり、ちんちんが硬くなった状態で動いたら、突然精液を漏らすアレだろ? 射精って言うんだっけか。気持ち良いけど気持ち悪いよな! てか女にもオナニーってあんの? ちんちんないじゃん」
「ちがうからね。なんで射精まで知っててそういう理解になるかなあ」
あきれたと言わんばかりに、これみよがしな溜息を吐く。
自分は怒っていますよというポーズだ。
「オナニー、自慰っていうのは、自分で自分のおちんちんを刺激して、射精する行為を指す言葉だよ。女性の場合はクリトリスや膣を刺激するらしいね」
「マジで? マジかぁ。それでイナ子、アイツめっちゃ笑ってたのか」
思わず顔をしかめる。
とんだ無知をさらしていた。
クリトリスに膣が何を指すのかユウタは知らなかったが――話の流れ的に、自分が弄りまわしていたのが、クリトリスなる物だろうとは見当がついた――今は眠っている女神イナンナにからかわれたのは分かった。
それにしても、自ら言うところの己の巫女に、勘違いを正すでもなく、秘術と称してオナニーを仕込む女神の悪辣さよ。
悪魔と呼ばれたのは、異教の女神だからではなく、その性格の悪さが原因ではないかと二人は思った。
「あんにゃろうめ。あとで絶対とっちめてやる」
ユウタは憤慨した。
鼻息も荒く腕をぶんぶん振り回す。
当然、動きにつられて胸がブルンブルンと動き回る。
「へへ。ショウヤー。おまえ、これ気になるのかよー?」
にんまりと笑うと、両手で乳房を下から持ち上げる。Tシャツの中の力士の顔がさらに不細工に歪んだ。
言葉の通り、ショウヤの視線はその動きに釘づけにされていた。
思春期の少年の悲しい性で、おっぱいの前には苛立ちも形無しである。
「ほれほれー」
悪戯心の命じるままにショウヤの顔を胸で挟みこんだりと狼藉の限りを尽くす。
初めて味わう種類の楽しさがあった。
あるいはこういう所がイナンナと波長の合った所以であるのかもしれない。
この時、ユウタは調子に乗っていた。
ノリノリだった。
自分の胸に抱かれて固まっている少年が、イナンナに煽られるままに、気絶して女神に憑依されている自分の乳房を舐めまわし、揉みしだいていたとは露にも思わず、無自覚に散々に挑発した。
してしまった。
ユウタ視点では昨日まで散々行われてきたじゃれ合いの延長でしかなかったが、たまらないのはショウヤだ。
女悪魔に散々教え込まれた官能の熱は心の中で燻っていて、やわらかく豊満な胸は温かく、未だ生々しい情事の記憶を思い出させるのに十分だった。
少年の性的成熟。思春期への突入時期には個人差がある。
ユウタは未だ幼年期の揺籃の内にあり、ショウヤは大人への一歩を踏み出していた。
これはそれだけの話である。
「おわっと。なんだよう。怒ったの……か……?」
ショウヤはユウタを押し倒した。
この期におよんで悪戯への反撃くらいにしか認識していなかったユウタであったが、ショウヤの顔を見るにいたって、ようやく異常事態だと理解した。
獣欲にぎらついた瞳。
興奮しきって荒く乱れた呼吸。
幼馴染の親友は見たこともない表情をしていた。
思いがけない言葉がするりと出た。
「……なあエッチしてみるか」
何故そんな言葉が出たのか自分でも分からなかったが、不思議と違和感は覚えなかった。
エッチしてみないか。
長身の美女が照れくさそうに頬を赤らめ、誘いをかける姿はとても愛らしく、同時にまた酷く煽情的だった。
「ユウちゃん……それはズルい……ズルいよ」
「ズルいって何がだよ。たしか映画とかだと……こうしてたよな……えいっ!」
よく分からないことを言う親友の姿に、ユウタはプフッと吹きだした。
そしてケラケラ笑いながらギュッと相手を抱きしめる。
性知識がほぼゼロのユウタが知る中でもっともエッチだった――R15ですらない――映画の記憶をたよりに、自分にのしかかる小さなオスの背中に腕を這わせた。
「あわわ……やわらかい」
未発達の薄い胸板に押し付けられる豊満な乳房は、あまりにも温かく柔らかで、ショウヤの僅かに残った理性を打ち砕き、その思考はさらなる獣性に上書きされた。
肉棒が一層隆起する。
ハァハァ……!
興奮に息を荒げながら、生殖本能の命じるままにヘコヘコと腰を動かし、痛くさえある張り詰めに張り詰めた幼茎を、むっちりとした太ももにしきりと擦り付ける。
先走りの液体は当人のズボンのみならず、ユウタのジーンズまで濡らすほどで、まるでお漏らししたようだった。
「あはは。くすぐってーよ……けど、オレも何か変な気分になってきたな。そうだ。これが。エッチな気分って奴か」
幼馴染が示した醜態は、無様としか言いようがなかったが、不思議に滑稽だとは思われなかった。
ジクジクと股間が熱を帯びる。
ユウタの語彙で表すならば「すごくエッチ」だった。
「ひゃん……♥」
ショウヤがユウタの首筋に舌を這わせた。
顎の下から喉を経て鎖骨まで丹念にキスしていく。
「なんか……これ……すごい♥」
イナンナに仕込まれた舌技は未だつたないものであったが、耐性のないユウタを十分に翻弄した。
まるで保健室での情景が裏返ったかの様だった。
「なんだよ♥ なんなんだよぉ……♥ こんなの卑怯だぞショウヤぁ♥ くそぅ……仕返ししてひゃぅ……♥」
蕩けた頭で、負けん気を発揮する。
攻守逆転し、今度はユウタがショウヤの顔にキスの雨をふらせる。
脳が沸騰しそうなほどの興奮。
同い年の兄弟も同然に育ってきた幼馴染の親友に対して情欲を向け合う罪悪感が、より一層の背徳的な官能を少年たちにもたらしていた。
体の火照りに耐えかねるように服をはだけ脱がし合う。
「あぅ……♥」
どちらのものとも知れぬ嬌声。
乳首と乳首がこすりあわせられる。
少年たちは体を絡ませながら、お互いの鼓動を混じり合わせ、お互いの体温を交換し合った。
意図した物か、偶然か、どちらから為されたのかも曖昧なままにそれは成就した。
チュッ♥
唇と唇を軽く触れ合わせる程度のバードキスではあった。
だが確かに口付けだった。
すでにキス以上のエッチな行為に及んでいたはずだが、刷り込まれたキスを特別視する価値観が、それを格別の体験に変換した。
官能が爆発する。
ガクガクと体を震わせながら愛液を撒き散らす。
ショウヤのペニスもまた限界まで膨張して、精液を吐き出した。
「あ……」
「……キスしちまったな」
お互いにファーストキスであった。
低学年の時にふざけ合って、ガラス越しに交わしたのをカウントすればセカンドキス。
「エッチってすごいんだな」
自分のお腹に撒き散らされた親友の子種汁を、何とはなしに指先で弄りまわしながらユウタは慨嘆した。
褐色の肌に白濁した液体が塗り広げられる。
それを見て、アレっと思う。
「待てよ。勢いでやっちまったけど、セックスしたわけだし、オレ、子供が出来たりするのかな」
「ならないよ」
赤ちゃんを育てられる自信なんてないぞと生真面目に取り乱す。
これにはショウヤも思わず笑ってしまった。
「だって今のはセックスじゃないからね」
「なんだって。これ以上があるって言うのか。じゃあ、今のはなんだったんだ」
「え? う-ん……ペッティング?」
ショウヤがこっそり読んでいた大人向けの本――平たく言えば官能小説――では、そんな名前で呼ばれていたはずだ。
射精直後の鎮静状態を利用したショウヤによるユウタの性教育が行われた。
「マジで! ソレが、ココに、入るの? ウッソだあぁー! こんな縦筋に入るわけないじゃん。ショウヤ、オマエ、それ騙されてるんだって。前に言ってたじゃん。本に書いてあるからって全て正しいわけじゃないって」
女神イナンナとの邂逅により、どうやらそれだけではないらしいというということが分かりかけてきたが、ユウタにとってのセックスとは、布団の中で男女が裸で抱き合うことであった。
その先。
男性器を女性器に挿入して、精液を注入するなど考えの及ぶところではない。
イナンナにおぼこいと評され、ショウヤに呆れられたユウタの性知識であるが、実際のところ5年生の男子としては飛びぬけて遅れているわけでもないだろう。
オッパイやスカートの中への興味は順調に育まれていたし、夫婦や恋人はセックスなる行為をするらしいと、おぼろげには把握していた。
ただ情報源となる映画やドラマのベッドシーンは、通例、上半身のみ裸になった男女がキスをして、身体を絡ませる程度で、下半身はシーツで隠されていたり、画面の外におしやられている。
下半身の事情に疎いのは仕方のない所だ。
どちらかといえばショウヤが早熟なのだ。
「嘘じゃないってば。……多分」
「多分ってなんだよ。いきなり弱気になってるじゃん」
「だってボク童貞だし、実際に入ってるところ見たことないから……モザイクカカッテルシ」
「ん……? よし! 論より証拠だ。入れてみようぜ」
「えぇー」
「ほらそうとなったら、チンチン立てろチンチン」
「いきなりムードもへったくれもなくなったなあ」
そういうことになった。
結論から言うとエッチには至らなかった。
童貞と処女。
それも女の方は昨日まで男子小学生だったTS女子である。お互い膣口がどこにあるのかも知らない同士。
ショウヤはネットで写真を見たことがあったが実戦では役に立たなかった。イナンナに搾精されていた時も乳房に目を奪われて、下半身の記憶はおぼろげだった。
挿入しようと悪戦苦闘するうちに、ユウタのすべすべの肌がもたらす亀頭への刺激に耐えかねて、暴発してしまった。