手合わせを終えた緋村は部屋に戻ったらしく、酒と膳を用意された部屋に通された。
「まずは飲んでくれ」
「飯は貰うが酒は良い。下戸でな」
確か昔は15で成人だったらしいが、あと二年は飲まない。死と隣り合わせの時代だ。用心して損は無いからな
「ふむ。なら茶を用意させよう。」
「折角だしな。食わせて貰うぜ」
大盛りの玄米、味噌汁、魚、漬物が乗っている
おそらく飯をたらふく食う食事なのだろう
味も量も充分に満足できた
「さて、腹も膨れただろう。単刀直入に言う。私達と共に来ないか?緋村の様に」
「…断る。」
俺の返答に取り巻き共が、刀に手を掛ける
「やめろ。死にたいのか!彼が刀を抜いたら俺達もコイツもただでは済まないぞ」
「ま、奴以外なら全員斬れる自信あるな」
緋村とは殺す気でやらないと危ないが、こいつら程度なら手加減出来る。桂さんが止めなければ実行してかもな
飯を食わせて貰い、桂さん達のアジトから出ると、暫く歩いた先に緋村が立っていた
「また何処かで会えるといいな。緋村」
「オレは会いたくないがな」
二人の剣客はこの場で別れた…が
俺は新撰組の隊士に囲まれている
ただの隊士なら問題ないが
「やれやれ…何者か知らんが刀を渡して、屯所まで来てもらうぞ」
煙草を吸いながら此方を見る男は
【齋藤一】だからだ
「わかった。だが、この刀はかなり重い。一人では持てないぞ」
腰から刀を抜いて渡すと隊士達が慌てているのを眺めながら、手を縄で縛られ、新撰組の屯所に連行された
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「ふむ…旅の者だったか。随分、特殊な刀を持っているんだな」
「我が一族に伝わる刀でしてね。銘を破壊刃と申します。硬さと重さで、斬るよりも壊す刀ですね」
「…ただの旅人が、あれ程の腕を持っているのは疑わしいがな」
さっきの大立ち回りを見られていたのか、なら下手に言い逃れようとするよりも
「俺も武芸者です。貴方と戦っていた少年、彼の強さを目の当たりにして、興味が湧いたんです。」
「…なるほど。まあ、あんたは長州の協力者とかではないだろう。協力者が身内をあれだけ痛め付ける理由がない。そっちはどうでもいい。俺達、新撰組の敵になるなら…その時に斬れば済むからな。おい、帰してやれ」
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拍子抜けするほど、あっさりと解放されたな。別に何処かの勢力に属している訳でもないし、刀も返してくれた。このまま気楽に動けるってもんだ
いつも泊まっている安宿に帰る道中、泥だらけで傷だらけの男が目に入る。
「おい、あんた…大丈夫か?」
「ん…あたた…おぉ、平気じゃ」
「少し、待ってろ」
河原で手拭いを濡らして絞ると男に渡す
「顔くらい拭けよ」
「おぉ、かたじけない。ひゃー冷たいのぅ!」
「で、なんでそんなにボロボロなんだよ」
顔を拭きながら男は少しずつ話し始める
「わしゃ土佐から出て来て、江戸の千葉道場で剣の修行をしてたんじゃ。で、最近こっちに来てのぉ。血気盛んな若い奴らと毎日、国の為に活動しちゅうわけよ。」
「その活動してるあんたが何故、ボロボロになってんだよ」
「あちゃ~それを言われると弱いのぉ!わしの考えが先を見据えた考えじゃと言われてな。喧嘩をな…多勢に無勢じゃった」
男の装いを見ると刀は抜かれた様子はなく、服や体はボロボロだが大した傷を負ってはいない。数人に殴られ蹴られをさした割にはだが…
「アンタ…名は?」
「ん~?どしたんじゃ。やぶから棒に」
「俺は天涯孤独の流れ者でな。親から名を貰えなんだ。故に名はない。で、アンタは?」
未来の日本から転移してきたとは流石に言えないしな。
「ほうか…うむ。わしゃあ、坂本龍馬ちゅう。世話んなったのぉ!これも何かの縁じゃ。いつかまた会いたいのぉ!はっはっは」
「ああ、坂本さん。いつか何処かでな」
坂本さんとはそのまま別れた。人と人との出会いは一期一会とも言う。縁があればまた会えるだろう