江戸を出発し、様々な土地を旅して回る。そんな事を始めたのは気まぐれだ。山賊やゴロツキを相手に路銀を得たり、困っている者を助けたりと気が付けば3年もの月日が過ぎていた。
「さて、飯にするか」
流浪人生活が板に付いてきた俺は、宿が無ければ野宿も慣れたものだった。川で震脚で衝撃波を放ち、魚を捕り短刀で腸と内蔵を取り除き、火を起こす。
木を削って串を作り魚を刺して、焚き火で焼いていると白髪の少年がふらつきながら歩いてきた。
「…」
「どうした小僧、腹減ってるのか?」
「…」
「ふっ、そろそろ焼けた頃だ。遠慮なく食え」
少年は串を取ると凄まじい勢いで食い始めた。
「ふむ…その瞳、余程の体験をしたのだろう」
「…」
「まあ、話したくないなら構わん」
魚を食べ終えると、刀を置いて横になる。少年は刀を手に取ろうとするがあまりの重さに瞳を見開く
「重いだろう?その刀は普通の刀の何倍も重いんだ」
「…こんなものを腰に差していたのか?」
「元服してからになるが、3年の付き合いになる…ってか喋れるんじゃねぇか」
よく見ると服はボロボロで草鞋も履いてはいない。
「…話してみな」
「…姉さんが殺された。頬に十字傷がある男、人斬り抜刀斎に!」
「ほう」
緋村が女をなぁ…少年は怒りを露わにしながら
「姉さんは婚約者を人斬り抜刀斎に殺された。その復讐の為に抜刀斎の懐に潜入したんだ。闇乃武という奴らに協力して。しかし、優しい姉さんは抜刀斎を庇って攫われたんだ。俺は姉さんを救う為に闇乃武のアジトへ行った」
闇乃武…確か西の諜報暗殺集団だったか、隠密御庭番衆に匹敵すると噂される奴らだ
「俺はそこで抜刀斎に斬られる姉さんを見た。死にゆく姉さんは何故か笑っていたが、抜刀斎は姉さんを無惨に殺しただけでなく、姉さんを放置して逃げたんだ!!絶対に許さない…強くなって奴を殺す!!」
「なるほどな…小僧、お前の覚悟は分かった。しかし、抜刀斎は強い。俺も戦った事はあるが生兵法では死ぬだけだ」
「分かっているさ」
こいつ、鍛えがいがありそうだな。緋村には悪いがこの小僧を強くしてみるのも一興。
「なぁ、小僧」
「…なんだ」
「抜刀斎に復讐するなら1度や2度死んだくらいでは足らん。奴の神速の抜刀術に対抗するには、無手で刀を持った相手を制圧出来る体術と体捌きが最低限必要。どうだ、やってみるか?」
小僧の瞳が殺気を帯びてギラリと光る。
「やってやる!そして、奴を…人斬り抜刀斎に生き地獄を味あわせてやる」
「ふん。なら、早速今から仕込んでやる」
どうやら退屈からは解放されそうだな。小僧の名すら聞いていないがまぁ、良いだろ。