「オナニーすると死ぬよ♪」
「は?」
ニッコリと極上の笑顔で微笑む女神の姿。そしてその美麗な口から放たれた死の宣告。
死の宣告と同時にぐにゃりと歪み始める美の化身の姿に白く明らみ始める世界。
「うわぁあっ!!」
自分すらも歪んでしまったかのような感覚に焦りながら飛び起きると、そこはベッドの上。
もう随分と見慣れた使い慣れた宿の風景に、今さっき見ていたものが夢であることをようやく理解できた。
窓から差し込んでくる朝日に耳に入ってくる鳥のさえずり。
朝らしく、しっかりと朝勃ちしている下半身も視界に入り大きくため息を漏らしながら、再度ベッドに横たわる。
「は~……でもアレ現実なんだよなぁ……」
俺の名はブレイク。
元は日本生まれ日本育ちの生粋の一般人だったのだが、よくある異世界転生に巻き込まれて今は異世界に居る。
異世界転生の際に女神から名前も与えられ、元の名を捨てて今は『ブレイク』として生きているのだ。なお苗字まで貰った。テクノってな。いらないから名乗ってない。
俺に名前をくれた女神は寛大な女神だった……いや、というか結構適当な感じの女神だ。
現代に生きる日本人らしく異世界転生に憧れのあった俺は、適当な女神なら案外無茶なこと言っても通るんじゃないかと邪推し、チャンスは逃せないとばかりに定番感のある『戦ったら大体勝てちゃうだろう系チート』を願ったついでに転生先を日本で読んでた異種族レビュアーズの漫画みたいなエロに寛容な世界に行きたいと願った。
そうしたら、直感通り女神は適当だったようで「ん~、ほんとは一つしか聞けないけど、まぁいいよー♪」と、まるっと希望を叶えてくれたのだ。俺はこの時、女神を生涯敬い続ける事を誓った。
ただ、いざ転生となった時に
「望みは一個が普通だから代償として呪いもかけておくねー♪ オナニー大好きだったっぽいから、オナニーしたら死ぬ呪いかけたから気を付けてねー♪」
と宣《のたま》ってくれおったのだ。
ちょっと待てと。
俺がどれだけオナニーを好きか知らんのかと。
1日最低1回はヌかないと体調を崩しかねないオナニストだと知らんのかと。
調子がのれば朝昼晩で3回抜くオナニストであることを知らんのかと。
ちゃんと毎回パンツが汚れないように、ちんことパンツの間にティッシュを挟む紳士オナニストであることを知らんのかと。
敬いつつも、あんまりにもキレイだからコッソリ女神をオナペットにしようと決めたオナニストだと知らんのかと。
「ちょっ!」
「じゃーねー♪」
「ああああああっ!」
こうして異世界に転生させられた俺は、女神信仰を失った。
俺からオナニーを奪った女神。許すまじ。
「……でもまぁ、こっちの生活も慣れてきたし、今はちょっと感謝してるけどな。」
気色の違う溜息を吐く。
ぶっちゃけ二つの願いを叶えてもらえたおかげで、思ったほど苦労もしていないので最近は女神への感謝は復活しつつある。
なにせ俺の種族は人間なのだが、女神の加護のおかげで勇者と同じような
もちろん勇者のような苦労はしたくないから、こっそり普通の人間として目立たないように生きていくけれどな。
『力があるから戦う』なんてのはバカのすることだ。
力があるのであれば、それを隠して有効活用しながら楽しく生きていけば良いのだ。周りに振り回される人生などクソ。自分を中心で考えて生きることこそが楽しい人生の第一歩。目指せパラダイスなのだから。
そして金に困らなければサキュ嬢だって普通に買える。
そう。サキュ嬢が相手をしてくれればオナニーをする必要もないのだ! オナニーしなくても良いのだっ!
なにしろ性病も避妊も魔法陣でOKのナマし放題の世界。そしてサキュ嬢も豊富に存在する世界。もうオナニーする必要が無いのだ!
そしてこの世界には格安の淫魔店だってあった!
「遠出する方法もあったしな。」
1日1回は射しておかないと調子が狂う俺だから、ネックになるのは遠征など街から遠くに離れ、サキュ嬢のいない日を過ごさなくてはならないような事態だ。
日帰りならまだしも片道3泊とかになったらオナニーしてしまって死ぬ未来が見える。
というわけで街から遠出せずに金を稼がなきゃならなかった俺だが、これも街で過ごしているうちに普通に本物のサキュバスに搾り取られたりすれば数日間は性欲がムクムクしなくることが分かったし、冒険者兼業サキュ嬢と組んだりすることで遠征中もオナニーしなくて済む事が分かった。
ぶっちゃけ最近は冒険者兼業サキュ嬢が俺の強さを仲間内に広めてくれたらしく「遠征するなら声かけてー」と立候補してくれる冒険者兼業サキュ嬢だっている程だ。
強いパーティメンバーであれば一発ヤルくらいへーきという女が多くて助かる。
そう! とうとう俺に弱点は無くなったのだ! 俺は弱点を克服したのだっ!
……と、思うだろ?
あるんだよ弱点。
あるんだよ……
俺の弱点。
それは『ハズレサキュ嬢』だ。
俺はモンスター相手には無敵な自身はある。チートのおかげで魔王とだって戦える自信があるし多分勝てる。ドンと来いだ。
だが、敵に対してどれだけ強くても、自己主張の弱い日本生まれということもあるのだろう、俺はこと味方に対しては対応が弱い。仲間とか嬢に対して強く当たるのは苦手なのだ。可哀想になってしまうのだ。可哀想なのはヌケない。
なのでデリバリーサキュ嬢でも「チェンジ」の一言が言えない。
こんな性質だから遠征の時に冒険者兼業サキュ嬢がハズレだったりとか考えるだけで最悪。
オナニーの方が100倍マシと思える相手でも、しっかり相手をしなきゃいけない未来が透けて見える。オナニーしなくても良いかもしれないけど悩み過ぎてインポになる可能性がある気がしてならない。
こんな俺だから『ハズレサキュ嬢』だけは、どうしても弱点なのだ。避けるべき鬼門なのだ。
「はぁ……」
これまでと違った溜息を漏らしながら、漲っているテントを一瞥する。
今日は朝一から元気が溢れている。調子が良すぎるようだ。
早々になんとかしなくてはオナニーする危険がある。
「よぉしっ! レビューにあった有翼人淫魔店に向かってみることにするか!」
俺は食酒亭のレビューを参考に、これからの行動指針を決めた。