「ねぇねぇおにいちゃん。おいしゃさんごっこってなぁに? しってる?」
「知ってる知ってるーっ!」
お医者さんごっこ。
それは、魔法の言葉。
お医者さんごっことは、いわゆる『ごっこ遊び』。
おままごとのように役割を演じて遊ぶという幼児の遊びのことだ。
この『おままごと』の『まま』は
誰かがお父さん役を演じ、誰かがお母さん役を演じ、誰かが子供やペットなどの役を演じて、ありきたりな日常を模倣する。
子供は日常を模倣することで生活様式を反芻し大人や自分の在り方を学んだり、はたまた想像力を働かせて日常で起こり得る未来を具体化させたりと、知育の面からみても非常に有効な教育的な遊びだ。
『お医者さんごっこ』は、やはりごっこ遊びの一種で知育の役に立つ遊びではあるのだが、知育の中でも別の側面を持っている。
このお医者さんごっこでは、触診の模倣など一緒に遊ぶ相手の脱衣を見たり、身体に触れることも多く、子供ながらに『身体のつくり』を学ぶ機会にもなるのだ。幼いながらにそうして男女の身体のつくりの差を学び、性差など、性に関わる知識を得るという側面がある。つまり『性的に一つのステップを上る』切っ掛けともなる遊びでもあるということ。
これはもちろん子供同士の場合だが、子供に乞われて大人が相手をする場合等もあり、子供と大人の関係でのお医者さんごっこの場合、大人であっても身体的接触という点で非情になんとも言えない気持ちになり易い遊びでもあったりする。
そして通常、その『なんとも言えない気持ち』には照れや恥ずかしさを覚えたりするものだが、そこに劣情を覚えるもいるのだ。
その劣情を覚える者は単純に幼い身体に興奮するなどの性的な志向を持っている場合もあるが、『年端もいかない子に、いけないことをしている』という背徳感であったり、自身が幼児期に退行して倒錯的な興奮を覚えたり、無知な存在を自分好みに教育したりする支配的快感、無垢な存在を汚すような嗜虐的快感であったりと様々な思惑が絡み、それが複雑な快感を醸し出し快楽へとつながる。
つまり『お医者さんごっこ』とは、子供の遊びでありながら大人であっても愛してやまない者がいる。そういった遊び。プレイなのだ。
「知ってるー! お医者さんごっこ知ってるー!」
お医者さんごっこ未プレイだった俺。
どういうプレイか知ってるので気になります。
魔法のあるこの世界でのお医者さんごっこ。触診はどこまでが触診なのでしょう。治療はどこまでが治療なのでしょう。気になります。大変気になります。
なぁに相手は子供に見える大人だから倫理的に問題もない。
だって大人対大人なんだもの。立派な女性なんだもの。
大人の男が大人の女に劣情を覚えるのは自然な事。
だからソフィーとお医者さんごっこしたいでござる。
気が付けば、そんな思いを全力で言葉に出していた。
「はっ!? また、俺の口が勝手に、クッ! 今の俺は……俺じゃないっ!」
「いやだからウチなにもしてへんからな? 全力でノッてボケ倒すんやめーや。」
ボケたつもりはなかったが、なんかソフィーが普通に話してくれたから助かった。
「ふぅ……紙一重だったぜ……」
「まぁ、アンタは話にノってくれそうって事が分かったしええか。」
「の、のらん! のらんぞー!」
「うーわ、こない感情こもってない言葉初めて聞いたわ。」
少し引きつつもソフィーは軽く愛想笑いをした後、何かを思い出したようにニヤリと笑った。
「ちなみにウチのスライム娘なんやけどなぁ? 前立腺刺激プレイが得意やから未体験やったら未知の快感に悶えられるでぇ?
「あ。僕そういうのいらないです。」
「急に
ソフィーのお誘いに水ぶっかけられたくらいには冷静になれたので、新しい盗賊をミノタウロスに投げながらソフィーの話を受け流す。俺はアハンケツイクに興味などない。
「あせったわー、なに急にスンとしとんねんな。いや、ほんとイキ過ぎてスゴイんやで?」
「断ったのになぜ勧めるぅっ!」
ソフィーがスンとした。
「そら常連になるからや。」
「えっ? …………マジで?」
「うん。驚きのリピート率。」
スライム娘に目を送ると、アナルプラグのような形にした指先をブルブルと小刻みに震わせながら舌なめずりしていた。
興味など……なぁいっ!
スライム娘にアナルほじられてメスイキなど興味……なぁいっ!
しかし……常連になるくらいのメスイキとはいかに?
ふと盗賊を剥いているミノタウロスの二人に目が向く。
「もしかしてあんたら……」
「「 …… 」」
俺の言葉を作為的に無視した様子で黙々と盗賊を剥くミノタウロス。
「なんか言えや!」
あからさまに無視しすぎているので、つい声をかける。
すると盗賊の服を剥き終わったミノタウロスが、ゆっくりと立ち上がって俺に近づき、そっと肩を叩いて暖かな眼差しを送り、そして定位置に戻っていった。
「いや! なんか言えやっ!」
だが俺の言葉には生暖かい眼差ししか返ってこなかった。
どうなん? もしかしなくても、このミノタウロスの二人も経験済みなん? という思いが止められないが『はよ次の盗賊よこさんかい』的な空気を作られて聞くことはできなかった。
ソフィーに色々と探りをいれながら盗賊を剥いて拘束を進めていると、あっという間に全員の拘束が終わり、そして俺の気配察知に引っ掛かる存在に気がつく。
「あれ?」
「ん? どしたん?」
「いや来ると思ってた仲間だけど、予想外の方が来た。」
俺が目線を送った先にソフィーも目を送ると、スタタタと軽快に走って、こちらに向かってくるミーニャの姿があったのだった。
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「にゃー!」
まるで『おっす! 久しぶりー!』とでも言わんばかりの笑顔で片手を振りながら親し気な顔で近づいてくるミーニャ。
「あの猫獣人がアンタの仲間なん?」
「おう。」
「なんや変な顔しとんなぁ?」
「おう。交渉役できるかちょっと不安で。」
「はぁ?」
そんなことをソフィーと話しているとミーニャが完全に合流した。
「思ったより遠かったにゃ。ブレイク早すぎにゃー。」
「おうそうか? ごめんなぁ。」
「この距離だったら、やっぱりミーニャが来てよかったにゃ!」
「あ。そっか。」
アヤワスカはフェアリーだ。中距離走くらいの距離が離れているのであれば、こっちに向かってくるのは、なかなか難儀することだろう。おおよそアヤワスカの魔法か何かで俺までの距離を辿ってミーニャを向かわせることにしたに違いない。
念の為アヤワスカのところまで警戒網を広げ、その先にも敵影が無いかを探っておくが、しばらくはアヤワスカに留守番を任せていても問題なさそうだ。
「アンタ名前ブレイクっちゅーんか。」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「言ってへんで~。ウチ名乗り損やったんやで?」
「そっか悪かったな。俺はブレイクだ。」
「で、あちらがミーニャさんやな?」
ソフィーが視線で紹介しろと促してきた。
「あ~、ミーニャ。こっちの人が交渉役らしい。ソフィーっていうんだ。」
「そっかー! ブレイクの仲間のミーニャにゃ! よろしくにゃ!」
いつもよりも元気そうな能天気全開の自己紹介。そしてはじける笑顔。
やはり猫獣人は可愛い。
「ソフィーや。よろしゅうに。」
ソフィーもしっかりと笑顔を返し二人は握手をした。
「ほんで? ブレイクはんから、あんさんが交渉役って聞いとるんやけど、それでええんかな?」
「そうにゃー。ミーニャ交渉役にゃ!」
「ほなら、今回の件、どうするか話しよか。」
「にゃ!」
『うん』と言っているだろうことが容易に分かる頷きよう。
そしてミーニャは元気に笑顔で口を開いた。
「有り金全部で勘弁してやるのにゃ!」
「はぁ?」
ソフィーよりも俺が驚く方が早かった。