「ふぅむ……」
有翼人淫魔店へ向かうことを決めた俺は、朝飯とレビューの確認も兼ねて食酒亭に来ていた。
レビューは写しを買って読み込んでいるので記憶にしっかりと残っているが、もう一度生原稿を確認して有翼人淫魔店への期待に胸踊らせる。
あぁ、チュピィと甘い囀《さえず》りを聞きたい。『囀り』は本来、交尾を誘う鳥の鳴き声のことだったはずだから真の意味で囀りを聞きたいものだチュピィ。
「なんです?」
キツイ視線と共に怒気を隠す気を感じさせないメイドリーちゃんの言葉。
「なんでもないです。すみません。いえ、違いました。あの、ミードください。」
メイドリーちゃんの言葉の圧力に飲まれ特段飲みたくもない酒を注文してしまう。怒っている女の人ほど怖いものはない。
有翼人淫魔店のレビューが出て以降というもの、メイドリーちゃんの機嫌は悪い。
まぁレビューを読んだ男どもがメイドリーちゃんを嬲るような目で見ているのだから、この態度になっても仕方のないことだろう。
なにせこの俺だって、つい見ちゃうんだもの。目で追っちゃう。性的な目で追っちゃう。羽の付け根いじりたくなっちゃう。つーか、むしろ有翼人のメイドリーちゃんをよく見ているからこそ有翼人淫魔店に行きたいと思ったんだし、なんていうか、もうじっくり眺めるのも、いた仕方あるまいて。
「はいどうぞ!」
「あじゃじゃじゃす。」
なんとなく乱雑に置かれたミード。そして反動で揺れるたわわなおっぱい。プリプリしてるぷるぷるおっぱいを横目に見ながらミード代を払うとメイドリーちゃんは、すぐに離れていった。
「ふぅ……けしからん。」
思わず額をぬぐい、ちみりと飲みたくもないミードを舐める。
「なぁにオドオドしてんだよブレイク。」
「おっ? って、なんだタイガか……いや、だってなんか怖かったんだよメイドリーさん。」
「カーッ! あんだけ戦えるクセに、ほんと情けねぇよなお前。」
「うるせぇよう。」
遠巻きに様子を見ていただろう知り合いの虎獣人が声をかけてきた。
声をかけてくれたのはタイガという名前の虎獣人だ。虎獣人はライオン獣人と近い存在で戦闘力は高い。俺が金目的の高難度の依頼をこなしている時に戦っているのを見ていたらしくソレ以来の縁だ。
このタイガの中で俺はそこそこヤレるヤツと認識されているらしく気易く話のできる友人の一人と言ってよい。
元日本人の俺が外国人どころではない程に気色の違う獣人という友達ができていることに違和感を覚えるかもしれないが、こっちの世界の住人達は友人の壁が驚く程に低いのだ。
一緒に飲めば友達。一緒に戦えば友達。すぐに友達になれる。
助け合いが必要になることの多い世界だからこそ、いざという時に助けてもらえるよう知り合いは多いに越したことが無いという考えからなのだろう。
ただ友達の中でも『一緒に戦う』友達になるには其々が決めている一定のラインの強さを超えることを条件にしていることが多く、それ故に一緒に戦える友達は、普通の友達よりもランクが高めになりやすい。
要は共闘しても良いと判断できる実力のある人間は、その他の有象無象の人間よりも重要な人間という利点重視のシビアな考えだ。
中でもこと獣人においては、この『一緒に戦える友達』というのは中々重要な存在のようで、一度認めてもらえると、こうして向こうから構ってもらえる事も多く、シャイな俺としては助かっている。
「まぁ、あんなレビューが出てたら、そうなりもするわよね。ブレイクもねっとり絡むようなエロい目で見てるしさぁ。」
「えっ!? 俺そんな目してた!?」
「してたわよ。じゃなきゃメイドリーがあんな態度取るはずないでしょ?」
「まじか……」
タイガの横から別の獣人が声をかけてくる。
強い獣人であるタイガが声をかけてくるということは、暗にタイガに認められている程度に力量があるという宣伝にもなり、こうして他の種族が興味を持って話しかけてきたりもする。
おかげで元来、自分からは行けないぼっち気質な俺でも交友の輪が広がりやすくて助かる。
ちなみに今、話に入ってきたのはミノタウロスのメリッサ。女だ。何度か話をしたことがある友達の一人。
乳牛系ではないミノタウロスだけれど、やっぱり大きなおっぱいが目を引く。
うん。当然エロいと思っている。
正直揉んでみたいし吸ってみたい。顔をうずめてみたいし挟んでみたい。
そうだ。ちょうど良い。
「あ、そうだメリッサ。メリッサはさ遠出するとか街を離れる用事とかで仲間探してたりなんかしない?」
「え? アタイかい? ……あぁ、そういうことか。」
メリッサがニヤリと口角の片方を上げた。
「ブレイク。あんたレビューの有翼人淫魔店に行こうとか思ってるんだね? で、その道中の相手にアタイをご指名ってことかい。」
「お、ん、おん。」
あっという間にズバリと図星を突かれたことに、つい戸惑う。
「ははっ、あんたの噂は聞いてるからねぇ。1日1回はサキュ嬢と遊ぶし、街から出る時は同行する女と遊ぶ。同行する女は警戒も戦いもしなくても良いくらいに楽させてもらえるらしいけど、その代わりに1日1発は必ずヤられるってね。」
あんまりな噂に苦笑いを浮かべずにはいられない。まぁ事実ではあるんだけれど。
「いやぁ、あはは。お恥ずかしながらどうにも旺盛なもんで……でも、アレですよ? 女性とは、あらかじめ条件の擦り合わせをしますし合意の無いことはしませんし、嫌がることはしたこともないですよ? それに危険は排除しつくした上で結界貼って安全をガッチリ確保した上でしてますんで、これまで危険な目にあったことのある人もいないですし、その辺も心配しないでください。と口で言っても、とても信じられないでしょうけど……ハハッ。」
なんとなく笑ってごまかす。
遠征中にヤルのはアホ。
これは世界の常識なのだ。
冒険の最中にせっせとオセッセに励むなど隙だらけだから襲ってくださいませと言っているようなものでしかない。
安全圏じゃないところで腹出して寝るに等しい行為であり危険極まりないこと。それが冒険者の旅の中でのオセッセの認識だ。
つまり旅の途中に予め淫行を条件付けるようなヤツなど旅をしたことも無いド素人か狂人のソレ。とてもじゃないけれどパーティを組むなど有り得ない対象となる。
俺の場合はチートな強さがあるからこそ危険把握もできるし、万が一を考えて結界などのバリア対策もしているから、どんな淫行に及んでも問題は無いのだけれど、やはり世間一般の認識では常識離れした提案であり外聞も悪い。
ただメリッサが噂を耳にしたように少しだけど実績を積んでいるから俺の実力は耳ざとい冒険者たちの耳には入っている。だけれど基本的にソロプレイかコンビプレイの多い俺なので事実の確認が難しく、依頼の結果しか分からないような半信半疑の宙ぶらりん状態なのだ。
なのでメリッサの問答は『本当に本当?』的なカマかけのような意味もあったのだろう。
「あ。あと別に1発と言っても、お口でも手でもオッケーですし、それに1発じゃなくて2発でも3発でもオッケーなので。」
「あはは、そうかい。でもあたいは今のとこ街の外に出る予定はないよ。」
「そうですか……」
乳牛系ではないミノタウロスのメリッサ。
冒険者なので筋肉質だけど、だからこそ逆にサキュ嬢では味わえないような快感が味わえるんじゃないかという期待もあったのだ。筋肉を活かしたキッツキツなぎゅうぎゅう感を味わえるかもしれないと思ったけれど……残念だ。超エロいのに。
「俺もまぁまぁスケベな方だけどさぁ、ブレイクのスケベは筋金入りだよなぁ。」
「あ、俺、男の趣味はないからタイガは誘わないよ?」
「俺だっていらんわ悍《おぞ》ましいっ!」
フォローの言葉を入れてくれたタイガを利用して場を和ませる方向に舵を切る。
俺だって、そこそこ常識の無い事を言っている自覚はあるのだ。相手が乗り気じゃない変な話は、さっさと終わるに越したことはない。メリッサも空気を読んで笑ってくれたので、この話はおしまい。
「あ~あ……有翼人の淫魔店行きたいけど、しばらくは我慢かなぁこりゃあ。大人しく小金稼いでサキュ嬢に貢ぐかなぁ……」
「んー……そういえば、あっち方面に行こうとしてた子もいたような気がするわ。折角だから聞くだけ聞いてあげようか? アタイもあんたの噂がほんとか知りたい気もするし。」
「マジでっ!? おねがいしますメリッサ様ぁっ!」
思いがけないメリッサの提案に瞬時にテーブルの上にジャンピング土下座をかます。
「ちょ、わ、分かった! 分かったからソレやめろぉ! えぇい! もう、ちょっと行ってくりゅ!」
突然の土下座に、土下座され慣れてないことが伺い知れるような、どこか焦りを感じさせる語尾を残してメリッサは席を離れていった。
大きな身体なのに慌てっぷりが可愛いらしい。
「ふっ……ちょろいぜメリッサ。」
ジャンピング土下座を瞬時に解除して椅子に腰かけて足を組み、ミードを舐めながらニヒルな笑みを浮かべる。
「俺はお前が怖いよブレイク。」
そんな俺の一連の動きを見ていたタイガが呟く。
「ん? そうか?」
「おう。その動きの早さだけじゃなく躊躇なしに土下座できるプライドの無さがな……んじゃ俺は行くぜ、またな。」
「おうまたー。」
多少の呆れ顔を残してタイガも席を離れていった。
朝だから、これから出かける予定もあるのだろう。
また一人になったので多少距離のあるメイドリーちゃんの後ろ姿を舐めるように眺める。
はてさて、なぜにメイド服ってのは、あんなにエッチなんだろうか?
メイドという職業を感じさせるから淫靡なのだろうか?
そしてメイド服と有翼人。
うーん。籠の中の鳥ならず、メイド服にとらわれた鳥。
主従的なアレの有翼人ってのも中々に良い物がある気がするなぁ。
っていうか、膝から下が鳥っぽいだけでメイドリーちゃんの太もも。いつ見てもえっちです。
メイド服から太ももがしっかりあれだけ見えるってのは、つまりパンツが見える可能性が高いってワケで。ちょっとふわりと羽ばたこうものならみえ、みえ、み、み、み
「お待たせっ!」
「ハァイっ!」
突然かけられた声に驚き震え、その拍子にミードが少しこぼれた。
慌てて視線を向けるとメリッサだった。
「なんだメリッサか。」
「なんだとはなんだよ。」
だがメリッサの横に女の人の姿を捕らえ、すぐに態度を改める。
「んんっ! オホンっ! 失礼しました。思いのほか早かったからビックリして。」
「まぁ、この子達がすぐそこにいたから、ちょっと話してきただけだしね。」
「そっか。ありがとう。」
メリッサの横の女の人達に目を向ける。
「この人が噂のブレイクかにゃ?」
「ふぅん? なんだか頼りなさそうに見えるけど……ほんとに大丈夫なの?」
能天気そうなケモナー度レベル2のような人成分の多さを感じさせる白とグレーの毛の入り混じった猫獣人と、その肩に座って不安そうに訝し気な顔をしているフェアリーのコンビの姿。うむ。どちらも可愛い。抱ける。いや、抱きたい。いやいや抱かせてください。正直エロいです。ん? み、みえ、みえ? み、み……
金髪と赤毛の中間のような髪色のフェアリーは肩が出ているワンピースのような服を着ており、そしてそのワンピースの丈はミニスカート。ミニスカートのまま肩に座っているとなれば、その奥のお召し物が見えそうで然るべき。
だがしかしフェアリーサイズなので、よほど注視しなければ奥のお召し物を確認することは難しそうだ。
そしてなにより不信感を感じているだろうっぽいフェアリーのミニスカートを注視して更に不安を増幅させるよりも、まずはその不安を解消しなくてはなるまい。
名残惜しいが、お召し物の確認はまたの機会だ。
「初めましてブレイクと申します。この度は貴重な機会をいただき誠に有難うございます。」
態度を改め、紳士に相応しい礼をする。
日本生まれ日本育ちの変わり身の早さ、そして取り繕う為のその場しのぎの外面を舐めるなよ。
メリッサ含め、突然の俺の態度に呆気に取られている3人を、まずはこっちのペースに乗せて話を進めるのだ。
「私のことはメリッサさんから多少お聞きのことかと存じます。そしてその内容に正気を疑ったことでしょう。ええ。その通りかと存じます。おかしいと思って当然ですとも。なにせ私の出している交換条件は1日1回の秘め事ですからね。湮魔店に行ってろって話ですよね。ですが事実なのです。私は移動の護衛や、クエストのお手伝い等々皆さまの要望に沿って様々なお手伝いをさせて頂きます。そしてその報酬は金銭ではなく1日1回の秘め事。もちろん『こげつき』のような難解なクエストや高難度高報酬クエストの場合には秘め事以外にも私の働きの貢献度によって多少の報酬の分配をいただくこともございますが基本的にはいただいておりません。そして今回、私は別の街への移動を考えており、その移動のついでにできそうな護衛やクエスト消化などなどのお手伝いをさせて頂ける方をさがしておりました。」
ざっと流れるように多くの説明を一気に押し付ける。
猫獣人は右から入った言葉が左からそのまま流れ出たような顔。
フェアリーの方は、ちゃんと頭に止まっているような顔をしている。
なるほど。この二人の関係性が少し見えたような気がする。
「その報酬の秘め事って具体的には?」
「はい。最低でも1日1回、私をイかせてください。それだけです。方法はおまかせしますが私をオナニー以外の方法でイかせてください。」
フェアリーが少し首をひねる。
「セックスじゃなくても良いってこと?」
「えぇ。手でも口でも。なんなら触手でも構いません。ただ、私の好みは人間的ですので、あまり好みから外れるとイけないです。お二人であれば、もう好みドストライクなので、なんの心配もありませんが。」
「ふぅん。」
思ったほど負担が無かったような少しは検討してみても良いかという顔のフェアリー。
どうやら、まだ話を聞いてもらえそうだ。
興味がなかったら、もうバッサリ『いらね』と切り捨てられてる頃合いだ。
「もちろん旅のさなかに事に及ぶのですから安全面の確認は最重要になりますし、そこに関しては一切の手抜きはしません。お望みとあらば周囲1キロ四方の範囲でモンスターの殲滅もしますし、防御結界に警戒網結界などなど、安心いただける為に尽力します。」
「1キロ四方のモンスターの殲滅ってバカなの?」
思ったままの言葉がそのまま出たのだろう、横からメリッサが口を挟んだ。
フェアリーもメリッサの言葉を聞き、自分の代わりに言ってくれたような顔をしている。
「そう思うのも当然でしょうね。どんだけモンスター倒す気だって話です。そんな実力あんのかって話です。ですのでまずは盲言ではなく実行できるだけの実力があるのか、どうぞ皆さんの思う方法で私を試してみてください。」
「んにゃ? 実力を試すのかにゃ?」
ようやく猫獣人が会話に入ってきた。
どうやら話の内容が分かりやすくなったらしい。
「はい。あなた方が望む方法で私を試していただき、それで私の実力を計ってください。例えば『単独でクエストをこなして依頼達成して来い』だとか私の実力を計れると思う事を仰って頂ければ私はソレで実力を示して安心できるとお伝えできるかと。あ。ただ依頼をこなす場合は報酬は私が単独でやるのですから私が独り占めしますし、あと日帰りでできる範囲でお願いします。長くかかりそうなものは純正サキュバス店を使えば2泊3日レベルまではなんとかなるので、その範囲でお願いします。」
にこやかな営業スマイルを浮かべつつ説明を進めると、フェアリーが一層怪訝な顔になっていた。
頭に浮かんでるのは何言ってんだこいつ。めんどくせ。だろう。
「実力を試す方法は、あなたがたが納得できるのであれば、なんでも良いですよ?」
営業スマイルを強めると、やがてフェアリーは悪戯好きそうな笑みを浮かべる。
「ふぅん……それじゃあ手っ取り早く、とりあえず私たちと手合わせしてみてよ。キャットガールのミーニヤとフェアリーの私の2対1でさ。」
「それで納得いただけるのであれば喜んで。」
予定通りの流れだ。
実力を計ってくれと言われた冒険者は大抵の場合手合わせを望むことが多いのだ。
脳筋冒険者らしい気がしないでもないが、自分の実力を指標にして相手を計る事ができるのだから間違いが少ない選択だとも思う。
「それじゃ、お時間があれば、これから街の外ででも試しますか? え~っと……」
「アヤワスカよ。私の名前はアヤワスカ。」
「素敵な名前ですね。アヤワスカさん。」
「フフっ、私達コンビを甘く見てるみたいだから思い知らせてあげるわ。」
「楽しみです。」
さぁて、ニャン娘ちゃんと妖精ちゃんに俺の実力を見せつけてあげましょうとも。
二人とのハスハスチャンスを手にする為にねっ!