「でもなんで、わざわざ街の外に?」
「街の外なら何か壊したりとかを気にしたり遠慮する必要もないですし、力をセーブせずに本気で来てもらえますからね。」
「むー、よゆーだにゃあ。」
『アナタタチが本気で来たところで全然俺の相手にならないですよ~』と煽っているのが分かったのか猫獣人のミーニャが不満そうに呟いた。
「ふん。いいじゃないミーニャ。口だけだったらボッコボコにしちゃえばいいんだから。」
「うん! やったるにゃあ!」
「どうぞどうぞ。えーっと、この辺で良いかな? よいしょっと。」
『できるもんならな(笑)』と露骨に煽りながら、懐から物を出す振りをしながらアイテムボックスから看板を出す。
「ん? 『手合わせ中です。訓練です。※決闘やケンカじゃないので通報しないでね。』って今どっから出した!?」
「いやぁ、ちゃんと分かるようにしておかないと通報されちゃうことがあるもんで。結構皆さん派手にやってくること多いですし。よいさー!」
興味があったのか見物についてきたメリッサが、俺が出した看板に書いてある文字を読み上げながら問うてきたが、説明が面倒なので適当に流しながら看板を地面にぶっ刺し設置完了。
警察とか法律とか意外としっかり整備されているので、こういった対応をしておくに越したことはない。
ミーニャとアヤワスカに向き直ると、アヤワスカもヤル気になっているのか肩に座らず既に臨戦態勢のように空中に浮いている。
「さて道中も言いましたが手加減不要ですからね。後々『あの時は手加減してたから~』とか言い訳されるのも面倒ですし
懐から紙を取り出してメリッサに渡す。
「ん? なになに……『私ブレイクは手合わせ中に大怪我をしても一切の責任はブレイク自身にあり、例え死んでしまっても問題にしないことをここに証明します』? なんだこれ?」
「『怪我させちゃうと思って~』とか言われることもあったので。本気で攻撃されて、もし怪我したとしても責任はこっちにあるって宣言書ですよ。メリッサさん見物されるようですし先に第三者に渡しておけば万が一、俺がほんとにケガしちゃったとしても、この優しそうなお二方が気に病まなくてすむでしょう? あ、でも安心してくださいね。俺はちゃんと手加減しますし、お二人に怪我なんてさせませんから。」
小道具も使って煽りここに極まれる。
「流石にここまで舐められるとカチンとくるわねぇ。ねぇミーニャ」
「カチンときたにゃーっ!」
特に獣人の場合、はじめから
「はい。これで準備OKですね。じゃ始めましょうか。あ。もしかして俺が得物持ってないとか気になります? 特に必要ないので安心してくださいね。先手はお譲りしますよ。さぁどうぞどうぞ。」
「ブレイク……あんた煽り過ぎだよ。」
メリッサが本気でカチンと来ているだろう二人の攻撃に備えてジリっと距離を取ったと同時にフェアリーのアヤワスカが魔力を練り始めているのが分かった。うむ。フェアリーもやる気満々。いや、殺る気満々といった感じだ。いい感じ。
戦いの時は俺もスイッチが入るから女の人が怒気を孕んだ目をしていても、全く問題ない。むしろワクワクする。
首を右に軽く倒すと、コキリとなった。
「さんざ余裕ぶって来たんだから、お言葉に甘えて本気で行くわよ。耐えられるもんなら耐えてみなさいな。」
「いっくにゃーっ!」
二人の言葉を聞きながら首を逆に倒してコキリと鳴らしバランスを取る。どっちかだけだとスッキリしない気がするのだ。
さて、妖精とキャットガール。
セオリー通りの単純に考えるならフェアリーが補助魔法を使い、キャットガールが物理攻撃主体で攻める形で来るだろうが、はてさてどんなもんだろうかのう。
「あ、なんか言いました? すみません。ちょっと今朝、変な夢見たの思い出してました。」
最終煽り完成。
予想通りフェアリーのアヤワスカの表情がニッコリ怒り顔だ。
「くらえ!
アヤワスカの練っていた魔力が俺の周りに漂い、薄い霧のように変化する。
霧はアヤワスカとミーニャの姿をダブらせ始め、やがて四方八方を二人に囲まれているような景色に変えていた。
「はーなるほどなー。」
「ふん。いつまで余裕ぶった顔してられるかしら。
さらに足元が泥沼状に変わり動きを制限される。
やはりセオリー通りの戦いなのだろうが魔法の速度と効果をみるにアヤワスカの補助役としての力量は中々の物に思える。
だがはて? 足元を変えるとミーニャの物理攻撃にも影響するのでは?
そう思った瞬間、左後ろから俺の顔めがけ飛来した存在があり握って止める。
「は~……なるほどなー。ミーニャさんは物理かと思ったら魔法系統だったのか~。やられた~。ダガー持ってたから完全に騙されたー。」
飛んできたものは魔法の矢だった。
弓を持っている気配も無かったし完全にダガーか素手ごろの格闘家だと思ってしまっていた。先入観での決めつけはイカンな。
そういえば猫の獣人は体術系と魔力系がいたから雑種っぽいけど多分魔力よりなのかもしれない。
しかしきっちり頭を狙ってきてたから意外とミーニャさんの方が頭に来てたのかもしれない。完全に取りに来てた。命を。かなり本気だな。いい傾向だ。
「んにゃっ! なんで止められたにゃっ!?」
「いえいえ驚きましたよ~。」
「むぃー! 余裕しゃくしゃくにゃっ!」
いくつもある幻影の中のミーニャの本体に向き直って手を振っておく。
だが次の瞬間、また飛来する存在を感じ取り顔を向ける。
「ちょっ!?」
「はー。まさかアヤワスカさんが物理で来るとか意外でしたわ。なるほどな~。」
目の前には突撃をしてきているアヤワスカの姿があった。仕込み杖だったのだろう剣となった杖での刺突。なにこの意外性の塊コンビ。
まさか突撃途中でバレると思っていなかったのだろう驚いた表情をしていたので、ニッコリ笑顔を返しておく。
ニッコリ笑顔が気に障ったのか、激高したように突撃速度を上げるアヤワスカ。
そんなアヤワスカに対して、俺はノーガードで顔を差し出す。
「ふぇっ!?」
だがアヤワスカの剣先は俺の顔に届くことはなかった。
俺の顔から数センチの空中でゆっくりと止まる剣。
アヤワスカは浮遊しながら、何度も刺突を繰り返すが、何度刺しても俺の顔に剣が届くことはなかった。
「おっと?」
「にゃっ!?」
正面からミーニャが躊躇なく股間を蹴り上げてきたが、その蹴りもまた俺の股間に届くことはなかった。
「急所を的確に狙ってくる。うん。良い戦い方ですなぁ。」
「う~……にゃあっ!」
がむしゃらな攻撃をしてくるミーニャとアヤワスカ。
だが、二人の攻撃は俺に届かない。
「便利でしょう? コレが旅をしながら致す時に張る結界なんですよ。さらにこんなこともできます。」
「「 わわわわっ! 」」
ミーニャとアヤワスカが見えない壁に押されるように離れてゆく。
防御結界の範囲を広げているのだ。
「大体今は1.5m四方くらいの大きさになりましたかね? これ、攻撃されても魔王クラスの攻撃じゃなきゃ通らないだろうくらいには強いんですよ。外でする時は、この結界の中でするから安心できるんです。さぁどうぞ。好きなだけ結界の強度を確かめてください。」
そう! これは冒険中に致しても大丈夫ですよ! と、本気で安心してもらう為の講習なのだ! 本気で攻撃してるのに全然効かない結界の中で致すのなら平気なのかも? と身をもって体験してもらう。コレぞ俺が行きついた相手と旅で致す事の出来るまでの最短説明ルートなのだ!
「あぁっ! 泥沼も解除されてるっ!」
「えぇ、結界内ですからね。魔法も弾きますから。ささ。好きなだけ結界を壊すチャレンジしてください。私はお二人の雄姿を眺めていますから。」
雄姿を眺めると書いて、視姦ともいう。
この世界の女性冒険者は、基本的に女性であることをしっかりと主張する装備や服装をしているので目に嬉しい。
これは女性であるということを主張することで生き残る率が上がるということを理解していて、死地にあっても最大限生き抜く為の生存戦略だ。
なにしろこの世界はモンスターもいるが、あらゆる種族がいて、その種族毎に犯罪者も多い。そういった犯罪者に『女性ですよ』と一目で分かる格好をしていれば相手の油断を誘ったり、万が一負けても死なずに済む可能性がある。死んだら終わりという世界だからこそ、生き残るために利用できるものは利用するという逞しい精神から生まれた格好なのだ。
「うーん素晴らしい。」
ミーニャの揺れるおっぱい。
そして尻。
さらにアヤワスカのお召し物も確認できた。白だった。
「うぅ~……どうにもならないにゃあ……」
「結界の中に立てこもるとか卑怯よっ!」
がっくりうなだれるミーニャに、プンスコ怒るアヤワスカ。
さて視姦も十分堪能できたし、結界の強度の確認も充分に堪能してもらえたようだ。
「んじゃ防御力についてはなんとなく分かったと思うので結界消しますねー。」
「にゃっ!?」
「ひゃぁっ!?」
よしかかっていた結界の壁が消え、よろめく二人。
「次は結界使わない純粋な体術、
クイクイと指を動かし挑発する。
鬱憤が溜まっていたっぽいミーニャが即座に動き攻撃を仕掛けてきた。やはり獣人。フェアリーよりも血の気が多い。
「はっはっはっはっはっはっは」
「にゃーーー!!!」
だが笑いながら全て躱す。
アヤワスカも途中2,3回、隙を突くように攻撃してきたが余裕で躱したら攻撃してこなくなった。
「んに゛ゃーーーっ! 当たらないにゃあ~……」
攻撃し疲れたのか、へろへろとアヤワスカの所に戻ってへたり込むミーニャ。
「それじゃあ次は、こっちの番ですね。よいしょ」
体術のレベルも堪能してもらえたので、こっちの攻撃力を知ってもらう番だ。
懐からナイフを出し、それをミーニャに手渡す。
「そのナイフ安物ですけど、ちゃんとナイフですよね。確認してください。」
手渡されたミーニャは首を傾げながらも刃を見たり、峰をつまんで曲がるか試したり地面に刺してみたりして強度を確かめ、コクリと頷いた。
「さ。それ俺に投げてください。」
「にゃぅっ!」
流石冒険者。
大した疑問を抱く様子も、躊躇もなく俺に向けてナイフを投げてくれおった。
弓のスキルの影響か、スローイングもご丁寧に刃が俺に刺さるように一直線に。
俺は飛んできたナイフを手刀で真っ二つに切り落とし、切り落とした姿の残像を残して二人の横に立つ。
「ふぇ!?」
「に゛ゃっ!?」
「とまぁ、ナイフ程度なら素手でも切れちゃったりするワケです。」
ミーニャの首を後ろからつまみ、アヤワスカの胴をそっと握りながら言葉を発する。
つまり、今、やる気があったら、二人の命を取れたことを暗に伝えたのだ。
すぐに手を放して1歩下がると、アヤワスカは警戒するように身構え、ミーニャは身を小さくして尻尾を股の間に挟み込んだ。
「どうです? なんとなく俺の力量は分かっていただけました?」
2人は小さく頷いた。
3話はただの俺tueee紹介だったのう……
はよえろ。の声が聞こえる気がしゅりゅ。