この世界は、人間やエルフ、獣人に妖精、妖怪や精霊、悪魔に天使など。ありとあらゆる種族が共存している。
多種多様な種族が存在する故に種族特性や個々の考えから俗世、社会といった共存の輪を離れ、己の利益の為にのみ生きる者も存在する。
社会と関わらず利己的に動けば、その結果として行きつくところは盗賊などの『奪う者』になりやすい。
『奪う者』となった彼、彼女たちにルールは通用しない。その時の気分次第で慈悲も無く、ただの衝動から戯れに命を奪うことだってある。
もちろん社会ルールを守る側も、デコイ魔法を覚えたり集団を組むと言った方法で自衛のための行動を取るし、それだけではなく、より大きな戦力を用いて反撃して殲滅したり逮捕したりして対処している。
殲滅されずに逮捕された『奪う者』は社会復帰できるように教育したりもしているらしいが、一度『奪う者』の立場に立った者は、その魅力に囚われ社会に戻ることを望まないこともある。その為、復帰の難しそうな者は死亡率の高い危険な仕事とかに従事させられたり、性転換薬を飲ませてサキュ嬢にして飼殺したりするコースにはめられたりと、結構えげつなく利用、搾取することがあるらしい。
捕まえて引き渡した時とか、殲滅の報酬とかにもお金がかかるから、そのお金を稼いでもらわないといけないからな。
だが、『奪う』世界で生きてきたのだから、当然立場が変わって『奪われる』ことになっても仕方のないことだろう。戯れに殺してきた者であれば、戯れに殺されても文句は言えないということだ。
そういったデッドオアアライブの殺伐とした世界で生きたくないのであれば、ひっそりと何にも関わらずに生きるか、社会ルールを守って生きれば良いだけのこと。
ただ、この世界はルールを守って生きていてもモンスターが居たりする為、殺伐とした世界になり易い。それがゆえに、これまでルールを守っていた者が突然『奪う者』となったり、ルールを守る外面を持った『奪う者』なんかもいたりして、歴史を重ねても次々と生まれる盗賊なんかの対処が難しかったりもする。ぶっちゃけ盗賊とか、その間者とか数は結構多いのだ。
「ふにゃ~……」
「あ~……いい気分。」
ロバの引く荷車に載せられた荷物。その上で、ひなたぼっこをするように伸びているミーニャとアヤワスカ。
「ぷぃ~……そこそこ飲んだなぁ。」
ロバの手綱を引く俺も、うっとり夢見心地。
盗賊とか奪う者の多い世界ではあるけれど、街の近くだと日の出ている内は、ひったくりやスリ程度しかいないし、分かりやすく大っぴらに襲われることは少ない。油断し放題だ。
「よぉし! 森林地帯目指して冒険にしゅっぱーつ!」
「「 お~っ! 」」
俺の掛け声に二人が元気に反応し冒険の幕が上がる。陽気な気分で出立だ!
――当然ながら、これもフラグ建築作業。
これだけ流通拠点として大きな街。当たり前のように盗賊のまわし者だって情報を探っていることだろう。行き先を宣言する素人が大荷物持って出発しましたの宣伝だ。これからの5日間、どれくらいのボーナスタイムがあるか楽しみでならない。
・。・。★・。・゜☆・。・。★
「にゃん♪ ニャン♪ にゃにゃ♪ にゃーん♪」
荷物の上に座席を作り上げたミーニャが上機嫌で鼻歌を歌っている。
アヤワスカはミーニャの膝の上でくうくうと子守唄を聞き眠り始めた。
のんびりと牧歌的な二人に馴染むように、俺も手綱を引きながら猫獣人の奏でる可愛いメロディーに耳を傾けつつ足を動かす。
出発して小一時間というところだが、まだまだ道を行く人達も多いし、今のところ俺の察知にかかるような動きも感じない。平和そのものだ。
徒歩の旅は、この『道程を踏みしめて進んでいる』という感覚がなんとも楽しい。旅してるって感じがする。もちろんこれも始めの内だけで半日も歩けば『早く着かねぇかな』って気持ちの方が大きくなるんだがな。
でも今回は美人猫獣人が傍に居るし、そんな気分になることも無いだろう。むしろイチャイチャできるだろう夜が来るのが楽しみ過ぎる。
「にゃあんブレイクー?」
「ん~? どしたミーニャ。」
荷物の上からの声に、軽く目を向けつつ言葉を返す。
高い場所のスカート姿って素敵。
「なにかブレイクのお話を聞かせて欲しいにゃあ。」
「おー、いいなぁ。それじゃあ俺の話をするからさ、ミーニャのことも聞かせてくれよ。かわりばんこでどうだ?」
「いいにゃ~。」
ただの移動でも誰かと話をしながらであれば時間の進み方が変わる。
移動する事だけが主目的の黙々とした移動は、移動速度だけをみれば速いが疲労速度もマシマシになるものだ。今回のように美女とのんびり進めば、移動速度は遅くとも疲労は少なくてすむ。
「よぉし。それじゃあ俺の話でもするか。でも何から話すかなぁ……まぁ、あれだ。俺はとにかくスケベだな。今もミーニャの足をチラチラ見てるくらいだ。」
「んにゃ、それは知ってるにゃ。」
「あっはっはっは。知ってたか。でもまぁ報酬にエッチをもってくるくらいには度を越したスケベではある。それが俺という人間だな。」
「んにゃー……ミーニャそっちよりも、なんでブレイクがそんな強いのかとかの方に興味があるにゃ。」
「ミーニャ。俺の強さの秘密はな……それは俺がスケベだから強いんだよ。」
「んにゃん!」
『ンもう』とでも言いたげに拗ねたようなミーニャの声。
「おいおい人間の本能は、食う寝る遊ぶだぞ? 遊ぶってのはスケベの事だ。本能に忠実だから強いんだぞ?」
強さの秘密を聞かれたところで正直に答えても『チートだから』とかワケの分からない回答になるのだから、お茶を濁すしかないのだ。
それに秘密なんか敢えて話すもんでもない。
「ほれ、俺の話はしたぞ。次はミーニャな。」
「んにゃ~……ミーニャはにゃ、キャットガールにゃ!」
「見りゃわかるよ!」
「んにゃっ! ブレイクだって見たらわかる事言ったにゃっ!」
「えっ!? 俺って女から見たら、それだけで分かっちゃうくらいスケベなの!?」
「そうにゃ! 初めて会った時も、一番初めにおっぱい見たにゃ!」
「おいおいミーニャ……男がおっぱい見ないで何みるってんだよ。後ろ姿なら尻を見る。前を向いてりゃ乳を見る。それから顔を見る。それが男ってもんだろう?」
「にゃ? そうなのかにゃ?」
「おうっ! あたりめぇよ! ミーニャだってよくおっぱい見られてるだろ? そういうことなんだよ。」
納得のいかないような顔で首を傾げるミーニャ。
俺も振り向いて首を傾げながらスカートの奥が見えないか眺めてみる。だが、ふわふわした白とグレーの混じった足の毛と肉球しかみえなかった。残念だがこれ以上は見えなさそうなので前に向き直って足を進める。
「ほれ、キャットガールなのは見て分かることだし、それで話を聞いたとは言えないぞ~。もっとミーニャの事を教えてくれよ~。」
「んにゃ~……なんか騙されてる気がするけど、まぁいいかにゃ。」
おう騙してる騙してる。
「キャットガールも種族が色々あるにゃけど、ミーニャはにゃあ、にゃんかリビアヤマネコ種ってのになってるらしいにゃ。」
「へぇ、キャットガールって種類に分かれてんのか?」
「そうらしいにゃあ。人間はないにゃ?」
「あ~……いわれてみりゃあ人間もあるかも。なんだっけな……コーカソイドとかモンゴロイドとか、そんな感じで系統別れてたっけな。」
「ブレイクはどっちにゃ?」
「どっちなんだろうな? 多分モンゴロイド? 人族モンゴロイド種って感じかなぁ?」
「初めて聞いたにゃ。みょんごろいど。」
「モンゴロイドなー。」
「みょんどろいどみゃー。」
なんだろう。幼稚園児と話してるような頭からっぽにして話せる感じがしてくる不思議。
これがキャットガール、にゃんにゃんの魅力だろうか。かっわいい。
この後も思いつくままに適当に話をし、ミーニャと仲良くなった。
そして俺の危険感知はまったく反応しないまま、夕暮れが近づいていた。
「今日はこれくらいにして野営準備すっか。」
「さんせー!」
「んぁ? ……おはよ。」
「おう、おそよう様。アヤワスカ、野営すっぞー。」
ミーニャの伸びで落ちそうになったアヤワスカが目を覚ました。
多分寝だめして夜に備えていたのだろう。
いくら俺が大丈夫と口で言ったところで、本当に大丈夫かどうかを決めるのは彼女たちだ。なにしろ冒険初日。俺の夜襲などに対する防御力を確認するまでは、彼女たちも個々に備えて然るべき。昼の警戒はミーニャ。夜の警戒はアヤワスカがすることになっているのだろうし、そこに俺の文句はない。
早く盗賊が襲ってきてくれれば、アヤワスカも安心して夜眠れるようになるだろうが、こればかりはなるようになるとしか言えない。
「乾麺のパスタ茹でて、スープパスタなんてどうだ?」
「ハムとチーズいれるにゃー。」
「おなか減ったからなんでもいいわぁ……」
むにゃむにゃと寝ぼけ眼のアヤワスカ。普段のしっかりとした感じではなく、どこかポヤっとしたフェアリーらしい雰囲気がのぞいて可愛らしい。
さぁ、恋人達との夕食だ。
そしてメシ食ったら、とうとうミーニャと一戦だぁいっ! うぇっへへへへへ!