※この作品はR-18です。

天衣ドルマスター   作:りりーまるれーん

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仕事忙しく少々遅くなりましたが、お気に入り500突破記念で更新です。


誕生日デート ~一年目、冬~

 海から来る風が北へと吹き抜けていく。風もめっきり冷たくなり、道行く人々もしっかりとコートを着込んでいる。辺りの街路樹からも緑が姿を消した。12月の10日ともなれば季節はすっかり冬だ。クリスマスが近づきどこか浮ついた雰囲気の街中をゆっくりと歩いて行く。つないだ左手が温かい。

 

「ねぇ。こんなところに連れてきてどういうつもりなの?」

 

 その左手がくいと引かれ、その先から問いかけが来る。そちらへ視線を向ければ訝しげな彼女の顔。いいからいいからと、ひとまず誤魔化して歩き続ける。もちろんこの場所を訪れたのにはそれなりの意味があるのだが。

 

 俺たちは今、神戸駅を出て東へ東へと歩いていた。やがて見えてきたのは巨大なピタ○ラスッチ装置としか言いようのない謎のオブジェ。その先が目的の場所だった。『神戸ハーバーランド u●ie』である。

 

 ひとまず彼女の服を買いそろえるため、アパレルショップ街へ向かう。この後、デートを楽しむ予定なのでそれなりにいい服を買ってやりたい。とはいえ彼女がもともと持ってきた一張羅に比べればこの辺のショップの服もたいしたことないのだろうけど。まあ、こういったところの方が可愛らしいものはかえって多いだろう。

 

 意外なことに──いや、そうでもないのかも知れないが、天衣は服に対するこだわりがなかった。もともと親から買い与えられていた服を文句もなく着ていたらしい。一方で俺は彼女を着飾らせるのが好きだったりする。が、残念ながら俺も服を選ぶセンスがあるわけではない。ではどうするか、だが。実はいい方法があるのだ。

 

 とりあえずショップの前をぷらぷらと歩く。ところで彼女は超がつくほど可愛い。その辺の芸能人なんて較べる気にならないほど可愛い。なのでよく目立つ。そんな彼女がアパレル街を歩いているとどうなるか。

 

 現れるのだ。我こそはという猛者たちが。偏見だが、アパレル店員というのは美人を見れば着飾らせずにはいられない人種だ。極上の素材に自分が思うさまの服を着せて至高の美を実現したいと常々思っている。そして俺はそんな彼女らにこう言ってやるのだ。

 

 

 金に糸目はつけねぇ。

 

 

 ということでアウターから靴まで一式そろった。幼い彼女の着替えを手伝おうとフィッティングルームに入ろうとする店員を押しとどめるのは大変だったが。幼子がつけるには過激なぎりぎりローライズの下着を常用させているので他人に見られるのはまずいのだ。

 

 今回は……ヨーロピアンスタイルというのだろうか、あるいはフェミニンスタイルというのだろうか。落ち着いた色使いながらデザインは可愛らしい方向に振れている。正直そのブランドのものを着ている店員を見るといかがなものかと思ったのだが、彼女が着るとさすがに素材が違う。よく似合った。

 

 装いを整えたら次は遅めの昼食だ。手近なレストランに入り適当に注文する。俺はパスタを。彼女はシチューを頼んでいた。味はなかなかのものだが、場所柄からかランチタイムからずらしたにも関わらず店内が結構込んでいたためにキスができなかったのは少々残念だった。

 

「こんなところで遊んでいてよかったの? 七番勝負の最中なのに……」

 

 シチューを啜りながらそう口に出す天衣。彼女の言うとおり今は竜王戦のまっただ中ではあった。気にしなくていいと言えば、「余裕ね」と彼女。けれど実際にここまで3勝1敗で気が楽なのは確かだった。余裕だなんてことはとても言えないけれど。

 

 対局相手に恵まれていたのもある。挑戦者としてあがってきたのは神鍋歩夢六段。決して弱い相手ではない。どころか『次の名人』の呼び声も高い若手有力株筆頭である。けれど俺との相性は決して悪くなかった。同世代の棋士ということで気心も知れている。現名人が相手になるよりよほど良かった。

 

 ということでこうして一日彼女とデートを楽しむくらいの時間はとれるわけだ。彼女にとって今日は特別な一日でもあるし。食事の後は軽く腹ごなしも兼ねて、季節限定開催のアイスマリーナへ。スケートをやってみることにした。

 

 スケートは初めてらしい彼女。ブレードのついた靴を履いて氷上の上、ぷるぷると震えている。かわええ。必死にバランスをとろうとしている彼女の両手をとり、俺は氷の上を滑り出した。突然のことに彼女は何をするのだと文句を言ってくる。

 

 転ばないようにと意識し過ぎて体を硬くしている彼女に脚をゆっくり前後させるように促す。俺の言葉を疑いながらも恐る恐る言うとおりにする天衣。最初は見よう見まねだったそれもまもなく氷を捕らえだす。

 

 15分もすれば普通に滑れるようになっていた。この適応の早さは子供が故か、あるいは彼女には意外と運動の適正もあったのか。うんこ座りの亜種みたいに無様だった滑り出しの姿勢が今では嘘のように、背筋が伸び優雅なものに変わっている。

 

 自分の滑りに一定の自信を持った彼女は俺の手を振り払うと、つんとした表情で一人先を行こうとする。俺も後ろ滑りから前へ向き直り彼女を追った。彼女の横につけて今度は前を向いたまま片手をつなごうとするも邪険に払われる。

 

 結局そのまま滑り続けることになった。隙を探って手をつながんとする俺と、ことさらそれを無視する彼女。自分の制御できる限界を見誤って時折フェンスにぶつかりそうになる彼女を引き戻したり。周囲からは気の強い妹と心配性な年の離れた兄とでも思われているのか、特に不審がられることもなく。リンク上でまったり時間を過ごした。

 

 アイススケートに天衣が意外とはまったこともあり、思いのほか時間を費やした。冬の空は既に黄昏れから完全な闇へと変わりつつある。そんな中ふたりガス燈の柔らかな灯りに照らされながら通りを行く。その先には本日の最終目的地があった。

 

 

 

「誕生日おめでとう。天衣」

「……やっぱりそういうことね」

 

 知ってたんだとため息をつく彼女。12月10日。それは天衣の六度目の誕生日。彼女の買主であり飼い主の俺は当然それを知っていた。だから今日のことを企画したのだ。

 

「わざわざ神戸まで来て何をするのかと思ったら……」

 

 彼女の視線が大窓越しに写る神戸の夜景へ向けられる。光瞬く街並みの向こうに暗く沈むのは六甲山。その麓に彼女の生家はある。いやあった。そちらを見ながら物憂げな彼女は何を思うのか。とても興味深い。

 

 料理が並ぶテーブルを挟んで俺たちはいた。神戸ハーバーランドにあるホテルの17階スカイレストラン。ここが彼女の誕生日のディナーに選んだ場所だ。彼女が俺の手元に来て初めての誕生日。せっかくなので彼女の地元でその誕生日を祝うことにしたのだ。

 

 こんな露骨な機嫌取りしなくてもという彼女だが、俺としては盛大に祝ってやりたかった。感謝しているのだ。この世に生まれてきてくれた彼女にも、最高の彼女(おもちゃ)をくれた彼女の両親にも。照れているのか何なのか。やや攻撃的になった彼女をなだめながら二人、豪華な夕食を楽しんだ。

 

 

 

 もうひとつプレゼントがある。そう言って連れてきたのは最上階のスイートルーム。贅沢に仕上げられた空間。窓からはやはり六甲山をバックに神戸の街並みが見える。

 

 こんな部屋に俺たち二人が泊まろうすればそら怪しまれるか。チェックインに訪れた俺たちに何か思うところあるようだったフロントのお姉さんは、けれど結局職業意識を優先したのか何も言わず、キーを渡してくれたのだった。

 

 まあ、別に格式高いホテルではない上に平日。そこまで高くはなかった。「これがもうひとつのプレゼント?」と聞いてくる彼女。だがもちろんそんなわけはない。バッグからじゃーんと目的のものを取り出す。安っぽいパッケージに包まれたシート上の物体。

 

「何これ?」

 

「淫紋シール」

 

 である。正確には淫紋タトゥーシール。エロ漫画に出てくるサキュバスとかのお腹についているあれを再現したコスプレ用のシールだ。3枚入っていたので先日自分で試してみた。鏡で自分の姿を見て鬱になったり、なかなか剥がれなくて焦ったりしたが、総じていいものである。

 

 ハート型と蔦状の有機的な模様を組み合わせたデザイン、黒と赤みが濃いピンクというツートンカラーに淫靡なものを感じたのだろう。露骨に嫌な顔をする天衣。服を脱ぐように指示すると、ほらやっぱりと妙に納得した表情をしていた。

 

 あえてパンツとニーソックスだけは残して直立させた彼女に、水で濡らしたシールを転写する。簡単お手軽な仕様だが事前に確認したとおり出来映えはなかなかだ。そこには幼い淫魔がいた。まるで悪魔の尻尾が見えるようだ。

 

 桃色の乳首を晒し、ローライズの下着とニーソックスだけを身につけ、下腹部に淫紋を浮かべた彼女。自分の姿を見下ろしてやはりいやらしく感じたのか、彼女も臍下辺りがむずがゆいといった様子だ。明らかに意識している。

 

 今日は誕生日で彼女が主役なので俺への奉仕はなしですと告げた時の嬉しそうな顔。その代わり誕プレとして彼女を一晩中気持ちよくしてやると聞いた直後の表情との落差が最高に愛らしかった。淫紋シール貼ってなにもないわけないだろうに。

 

 めちゃくちゃかわいがった。淫紋を刻まれた彼女の子宮はいつも以上に弱点として機能して。神戸港に臨むそのホテルのスイートルームは愛らしい囀りに満ちるのだった。

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