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『目的地に到着しました』
ナビアプリの機械音声が、学園への到着を告げる。徒歩で来るには遠すぎた、と今更ながら後悔するその“青年”は、スマートフォンの画面から顔を上げ、周囲を確認する。駅周辺とはかけ離れた“無機質さ”に驚きつつも、物悲しさを覚えた。
「――あの…どなたでしょうか?」
予想だにしない人の声に驚いた青年は、ハッとして声の主を探す。校門の格子扉の向こう側にいる“女性”…恐らくそれが声の主だろうと青年は気づく。そして、その女性の不安げな表情にもしっかりと気づいていた。
彼女の不安を拭うため、青年はできるだけ簡潔に自己紹介をした。
「あ、転校生の方でしたか…ごめんなさいね、てっきり…何でもないわ!今、門を開けるわね…」
誤解が解けたらしく、格子扉がギィと音を立てて開かれる。その時、青年の頭を過る“ベルベットルーム”の光景…。恐らく格子扉から連想したんだろうと、青年はどこか懐かしさを覚えながら、彼女の後に続いて“私立美浜学園”の敷地へと足を踏み入れた。
――学園長室
「あ、座っていいわよ」
彼女…もとい、美浜学園学園長「橘 千鶴(たちばな ちずる)」は、ドアの前で突っ立っている青年を座るように促す。もちろん、学園長の配慮を無下にする訳にもいかないと、青年は素直に応じる。
「えーと…転校生の『雨宮 蓮(あまみや れん)』君で間違いないわね?」
青年…ではなく蓮は静かに頷く。
「改めまして…ようこそ、美浜学園へ!」
千鶴の歓迎に、蓮は表情を曇らせる。それは、千鶴のソレではなく、彼の中からふつふつと湧き上がるいくつかの“疑問”からくる表情だった。
「…質問がある」
「どうぞ?」
「まず一つ。俺以外の生徒の姿が見えない…これはどういうことだ?」
「それは…少数精鋭だからよ」
「少数…?」
「そう、学生は貴方をいれて六人だけなの」
丁寧な説明でも、蓮は腑に落ちない様子だった。それもそう、彼の見てきた学校と言うのはもっと人気がある所。それにここは一応“海沿い”。ド田舎でも無いのに、さっき言われてた生徒数では彼女の説明あっても腑に落ちないのは仕方のないことだった。
が、蓮はいちいち小難しいことを考えるのは止めようと、思考を停止する。
「そうだ、後で学生寮に案内するわ。そこから通ってちょうだーい。質問は以上かしら?」
いや、これで終わりではない…が、蓮はあえてその質問を心の奥に押し留める。無論、それを聞く“度胸”は十分にあるが、彼の“慈母神”並みの“優しさ”がそれを拒んだ。そう、「自分のような“前科者”が入れる学校のことだから、ここは訳アリなのだろう」という質問を。
蓮は胸につっかえる“違和感”を拭いきれないまま、千鶴の後に続いて学生寮へ向かった。
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