※この作品はR-18です。

グリザイアの幻影   作:unknownname

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11.little

 蓮は授業をまともに聞かない。しかし、それを教員に悟られるようなバカな真似もしていない。というのも、机の中にスマートフォンを仕込み、ワイヤレスのイヤホンでラジオやら音楽やらを聴きながら“自習”をしているのだ。東京にいた頃にSNSで怪盗団のメンバーと授業中にも関わらず、やり取りしていたのをよく覚えている。そして、メンバーで一番真面目な真に注意されていたことも。

 

 授業の終わりのチャイムが鳴ると、皆口々に愚痴を漏らす。

 

 「あ゛~!おわ゛っだ~!!」

 

 そう言いながら、みちるはうなだれる。その様子を微笑みながら見ている幸。天音とマキナは二人で談笑している。あと一人、蓮の正体に気づいた“秀才”ちゃん、榊と言えば何も言わずにただ黙々と本を見つめていた。なぜそんな表現をするかと言うと、さっきから同じページばかりを見て、一向にめくらないからだ。何を考えてるのかさっぱり分からないが、“喋りかけるな”というオーラを放っているのは蓮にもよく分かった。

 

 “触らぬ神に祟りなし”このことわざは的を射ていると思う。カッターナイフで切り付けてくるような女だ。関われば、何か痛手を負うに違いない。そう考えた蓮は、バッグに荷物をすべて突っ込むと、教室を出た。

 

 

 

 この美浜学園の敷地内には、バラ園というものが存在する。蓮もパンフレットでその名前を見たことはあるが、実際に訪れるのは今回が初めてだった。噴水にアーチ、手入れされた木々が生い茂るその園は、とてもバラ園とは言い難いものだった。なぜなら、バラではない花が植えられ、繁殖していたからだ。

 

 「バラ園…かぁ…」

 

 蓮はそう呟くと、足を踏み入れる。バラは咲いていないが、知らない鮮やかな花が生い茂っているお陰で寂しさは一切感じない。むしろ、豊かに感じるくらいだ。

 

 石畳の道を進んで少ししたところにあったベンチに腰を掛ける。その背後には巨木が生えている。…なんの木かは分からない。とりあえず、彼は持ってきていた本を開く。その時、「ぐがぁ」という唸り声に聞こえなくもない音が背後から聞こえてきた。「誰かいるのか?」と振り返った蓮の視界に飛び込んできたのは、木陰でいびきをかいて眠っている“マキナ”の姿だった。

 

 スヤスヤと眠るマキナの胸の上には食べかけの真っ赤なリンゴがのっている。どこぞの会社のロゴみたいだ…。と、そんなことを思いながら、蓮自身も木陰へと移動する。爽やかな風が吹きわたり、なんとも快適な場所だ。マキナがここで居眠りをしてしまうのも分かる気がした。

 

 「うにゃぁ…すー…」

 

 寝息を立てるマキナの傍で、木に寄りかかり本を開く。サーっと木の葉が風に揺られて擦れる心地よい音と共に、遠くから波の音が聞こえてくる。そんな快適な環境でしばらく本を読んでいると、突然眠っていたはずのマキナがムクッと起き上がる。そして、リンゴをひとかじりすると、フラフラと何処かへ行ってしまった。普通だったらそのまま読書を継続していた蓮だが、読んでいた本が面白くないこともあって、彼女に興味が沸いた。(少し後をつけても罰は当たらないだろう)と呼んでいた本を仕舞い、距離を開けて彼女の後をつける。

 

 しばらく追跡していたが、マキナはあっちに行ったりこっちに来たりと、特にあてもない様子で“徘徊”していた。そんなのが続いた後、ついに中庭の池の前でその足を止めた。蓮も同じように、彼女の後ろで歩みを止める。

 

 彼女は池の前で屈みこむと、ポケットをゴソゴソと漁る。そして取り出したパンくずの様なものを池に振りかける。

 

 「いーっぱい食べて、丸々と太るといいのよさ」

 

 そんな独り言を言いながら、過剰ではとも思えるほどのパンくずを投入する。そんな彼女の背後にいた蓮が、声をかける。

 

 「へえ、金魚か。餌をやってるんだな?」

 

 「うにゃぁっ!?」

 

 突然話しかけられたことに驚いたマキナは飛び上がり、そのまま勢い余って池に飛び込みそうになる。そこを、咄嗟のところで蓮が彼女の服を掴んで何とか阻止した。

 

 「か、軽い」

 

 蓮から飛び出たのはマキナの体重についての感想だった。

 

 「うぅ…下ろしてよ…」

 

 「あ、ああ。すまない」

 

 陸に戻すと、その手を放した。彼女は蓮の顔を認めるや否や、すぐさま顔をそむけた。頬は赤く染まっている。これが“恋”とか“ときめき”からくる色ではないことを蓮はよく分かっていた。そう、彼女は蓮を警戒しているのだ。こういう時に有効なのは…相手と視線を合わせること。特に幼い、身長の低い女の子と話すときは心がけると良い。と言うことで、蓮は屈んでマキナに視線を合わせる。

 

 「マキナ…だっけ?改めてよろしく」

 

 「…」

 

 「…鯉に餌をあげてたの?」

 

 「鯉じゃないの。金魚」

 

 「え」

 

 金魚ってこんなに大きかったっけなぁ…。

 

 「お祭りで取ってきた…」

 

 「へ、へぇ…」

 

 すると突然、マキナが飛び上がり、目を輝かせる。

 

 「ザニガニ!ザニガニだ!」

 

 彼女の視線の先にはザニガニ…ではなく“ザリガニ”がいた。そして無謀なことに、彼女は近くにあった枝を拾うと、それを目いっぱい突き出してザリガニを獲ろうと奮闘する。

 

 「も…もうちょい」

 

 それに見かねた蓮が、マキナがポケットを漁った時に出てきたガラクタの中から、酢イカを拾い上げると、それを紐につけ、枝に巻き付ける。そして、それを池の中に垂らす。

 

 「何してるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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