※この作品はR-18です。

グリザイアの幻影   作:unknownname

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間隔あいて申し訳ないです…。弁解の余地は…ないです(絶望)


17.答え

 蓮は風呂から上がるとその日の授業を終え、帰りの準備に差し掛かっていた。そこに、ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべた天音が、フラフラと寄ってきた。

 

 「ねーえ~、一緒に帰ろ?」

 

 「え、いいけど…。急にどうしたの?」

 

 そう尋ねると、天音は「くふふ」と笑って更ににやける。

 

 「だってぇ、私達付き合ってるじゃん?」

 

 そうだねと返すと、まるで真っ向から肯定されたみたいに、スルリと腕を絡ませてきた。蓮も、天音の必死さに折れて、渋々…とまではいかないが、天音のために腕を組んでやることにした。

 

 そのまま談笑しながら、二人は学園の中庭を歩いていた。こういう恋人同士みたいなことも、たまには悪くないなと思いつつ、蓮は榊の父親について思案していた。由美子の父親はこの学園を経営する「東浜電鉄グループ」の総帥…いわば、トップ。それも、一流企業の。

 

 由美子や、彼女の父親について考えていたせいなのか、蓮は中庭に佇む由美子の姿を認める。天音も彼の視線に気が付く。

 

 「あ、あれ榊さんじゃん。何やってるのかな?」

 

 天音がそう言うとそれが聞こえたのか、榊はくるりと振り返り、二人に寄ってきた。“寄ってきた”は猫みたいな表現だが、実際猫がのそのそと気まぐれにやって来るように見えたので、猫と何ら変わりないだろう。

 

 榊はよって来るなり、天音に軽くにらみを利かせると、蓮に向き直った。

 

 「雨宮くん、ちょっといい?」

 

 ちょっといい?と言われても…絶対天音がいい思いをしないだろうな…。と思いつつ、取り合えず「何の用?」と尋ねてみた。しかし、榊は「いいから」の一点張りで内容を話そうとしない。

 流石の不審さに疑問を持った天音は眉間に皺を寄せる。ここで、蓮はこれ以上修羅場になったら収拾がつかなくなると悟り、渋々榊についていくことにした。

 

 天音に一言断わったあと、二人は夕暮れ時の廊下を並んで歩く。夕日が差し込んで真っ赤に染まった廊下は、なんとも言えない哀愁を漂わせている。

 意を決した榊が、蓮に話を持ち掛ける。

 

 「――掲示板で依頼すれば心(・)を(・)盗(・)ん(・)で(・)く(・)れ(・)る(・)って本当かしら?」

 

 蓮はピタリとその歩みを止めると、榊の流れる黒い長髪から覗く横顔を見た。しかし、表情は読み取れず、彼女がどんな気持ちで彼にそれを尋ねたのかは分からなかった。

 

 「本当だ…けど、今となっては昔(・)の(・)話(・)だ」

 

 昔と言っても、まだ終わってから一年も経っていないが…。兎に角、今はもうその掲示板も存在しないわけで、頼もうにも場所がないのだ。

 

 「もう、盗んでくれないの?」

 

 「は?」

 

 唐突な榊の震え声に驚いた蓮は、素っ頓狂な声を出す。今まで聞いたことのない、榊の性格からして絶対に聞かないだろう“怯えた声”をその日に、彼は聞いてしまったのだ。

 ここはテキトーに返事をしてはいけないと察した彼は、しばらく考え込んでから返答した。

 

 「“盗まない”とは言ってない。ただ、活動を休止しているだけ…だと俺は思ってるよ」

 

 蓮の言葉に振り返った榊の表情は、さっきの声からは考えられないような“迷い”が浮かんでいる。悲しいのか、怒っているのかはっきりしてほしい…と蓮は溜息をつく。

 

 「…やっぱり、何でもないわ」

 

 結局、しばらく考え込んだ後に榊の出した答えはそれだった。度々この話題に触れているが、今日まで一歩も進んでいない。というより、後退しているようにすら思える。

 夕日の差す廊下に取り残された蓮は、なんとも言えない哀愁を抱きながら、榊の“迷い”について自分なりに考えてみることに決めた。

 

 

 

 

 「ふう…」

 

 風呂から上がった蓮は、自室のベッドに飛び込み、横になった。そして、真っ白な天井を眺めながら、色々と思案する。この学園の事、自分を含め問題を抱えた生徒たち、そして何より、色々と匂わせてくる榊 由美子のこと…。全てが複雑に絡み合い、やがてぐしゃぐしゃになってくる。

 一体榊は何がしたいのだろうか?何かをして欲しいのだろうという事は何となく予想がつくが、内容はさっぱり分からない…。

 

 「…」

 

 蓮は黙ったまま、真っ白な天井を見つめる。

 

 ――考えたくないだけなんじゃないか…?

 

 それは、榊の事について。彼女が、彼に何を頼みたいのかについての事だ。…そんなの、俺に頼む時点で何をして欲しいのかもう吐露しているようなものじゃないか。と、蓮は頭を掻きむしった。

 そうだ。蓮にしかできない頼み事。世話焼きな幸や天音ですらできない“異常な事”…。

 

 

 

 「――“ココロ”を盗む…か」

 

 

 それが彼の出した答えだった。

 間違いないだろうと、かなりの自信が持てる答えだ。それを出すのは、いささか憚られるものがあったが、それがこの疑問の答えなのだ。

 

 「おーい、蓮。いるの~?」

 

 ドアの前から聞こえてくるその声は、天音のものだった。

 蓮は「入っていいよ」とだけ言うと、ベッドに寝そべったまま、ドアの方に視線を向けた。そして、入ってきたのはやはり天音で、丁度お風呂から上がったところらしかった。

 

 「あ、ゴメン、寝るところだった?」

 

 天音が申し訳なさそうにそう尋ねると、蓮は起き上がって「意外と夜更かしなんだ」と柄でもない冗談を言った。

 

 「よかった。…実は聞きたいことがあってさ」

 

 そう言う彼女は、蓮に詰め寄る。その表情は、何故か険しい。

 

 「ねーえ、榊さんと何してたの~?」

 

 

 

 

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