※この作品はR-18です。

グリザイアの幻影   作:unknownname

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書き溜めが段々となくなってきました…これは…危ない。
このような小説を読んでいただきありがとうございます。これからも何卒…。


5.カッターナイフ

 皆が揃ったところで、授業が始まる。が、蓮は教科書を広げたまま、授業ではなく教室の様子を見るのに意識を注いでいた。転入初日に学園長から聞いた話では、生徒数は蓮を含め“六人”のはず。しかし、ここにはマキナ、みちる、幸、天音、蓮の“五人”しかいない。

 

 ――あと一人は…どこだ?

 

 蓮は頬杖をつき、窓から学園の中庭を眺め、思考に耽る。どうしてあと一人いないのだろうか?その疑問の答えを探す。学年が違うから…と言うのはない。二年生のみちる、一年生のマキナがこの教室にいるから、恐らく一、二、三年合同の授業なのだろう。次に病欠という可能性。一番あり得そうだが、蓮はそうではない事を知っていた。寮から出る際に目にした“在籍確認ボード”には、すべての寮生が“外出”の札を掛けていた。つまり、誰も寮にはいない。療養中という訳ではないということだ。

 

 じゃあどういうことだ、と頭を悩ませていたが、一向に納得する解が出ない…。そのまま全く聞いていなかった授業も終わり、放課後を迎える。各々席を立ち、帰りの支度を始める。すると、おもむろに天音が口を開く。

 

 「今日も榊(さかき)さん来なかったね…」

 

 (榊…?)蓮はその名前に心当たりはなかった。が、恐らくまだ見ていない生徒であろうことは予想できる。

 

 「榊…?誰だ?」

 

 蓮は机の中の教科書をカバンに押し込みながら、尋ねる。その質問に答えたのはみちるだった。

 

 「榊 由美子(さかき ゆみこ)だよ。最近夕方にしか来ないのよね~」

 

 「ゆみちゃん…どうしちゃったのかな」

 

 マキナも心配そうだ。自然に考えれば、何か教室に来れない“理由”があるのだろう。蓮はその理由が何か突き止める材料を今はまだ持ち合わせていなかったので、それについては考えるのをやめた。そして、そそくさと教室から去ろうとした蓮を、幸が引き留める。

 

 「あの…雨宮さん」

 

 「ん?どうした?」

 

 「もしよろしければ、校舎をご案内しましょうか?」

 

 幸の親切な申し出に蓮は遠慮しようとしたが、断るのもなんだと思い快く受ける。

 

 

 

 

 「――と言うことで、以上がこの学校の主な設備になります」

 

 幸と学校内を巡っている内に、すっかり日は傾いていた。

 

 「ありがとう」

 

 「いえ、これもクラス委員の役目です」

 

 勤めを終えた幸は満足気に笑う。そんな幸を横目に、蓮は水平線に浮かぶオレンジ色の太陽に見入っていた。東京では絶対に見ることのなかった光景。ビルに阻まれることのない、綺麗な夕日…。そんな蓮の前に、突然幸が立ちはだかる。

 

 「あ、あのっ…!」

 

 蓮は立ち止まり、幸を見る。その瞳は必死に何かを訴えようとしていたが、彼女は黙ったまま何も言わない。そして遂に「何でもないです」と言い残してその場を去ってしまった。一人オレンジ色の廊下に取り残された蓮は、幸に対して何か無礼があったかなと記憶を丁寧に洗い出すが、特にこれと言って見つからない。…一体何が彼女の機嫌を損ねたのだろうと、頭をボリボリと掻きむしりながら、再び教室を訪れてみる。

 

 ――女の子…?

 

 教室には先客がいた。窓際に座る、美浜学園の制服を着た黒髪の女の子…。連は彼女に見覚えがなかった。つまり、まだ挨拶をしていない残る一人の生徒が彼女だろうと気づく。そうとなれば早速挨拶をしなければ、と蓮は教室の引き戸を開ける。その時、窓から風が吹き込み、赤色に染まった真っ白なカーテンがゆらゆらと風に吹かれて揺れる。

 

 「…君が、榊さん?」

 

 蓮のぎこちない問いかけ。そう、彼女の禍々しい人を寄せ付けないオーラに、蓮は少しばかり狼狽えていた。そんな勇気ある連の言葉に、彼女は一切興味を示さない。むしろ避けるように、読んでいた本をカバンにしまい、さっさと帰る準備を始める。

 

 「無礼があったなら謝る…だから…」

 

 そう言って、謝ろうと彼女に近寄った蓮。突然、彼女は立ち上がり、目にも止まらぬスピードでいつの間にか握っていた“カッターナイフ”を蓮に向けて振るう。咄嗟に飛び出た連の右手が、カッターナイフの刃を握る。そのまま、強く拳を握りこみ、彼女の動きを止める。が、グイグイと刃を引き抜こうと彼女がナイフを動かしたせいで、そのままポキッと軽い音とともに、カッターナイフが根元から折れる。

 

 「…っ!」

 

 蓮の拳からダラダラと際限なく流れる真っ赤な血液に、彼女はぎょっとして言葉を失う。彼は握りこんでいた拳の力を抜くと、真っ赤に染まった刃がひらりと宙を舞い、地面の血だまりに落ちる。

 

 「きゃ、きゃあああぁぁああぁぁ…!!」

 

 彼女は挨拶をする間もなく、そのまま教室を飛び出ていった。最後に見た彼女の目には、計り知れない“恐怖”の色が滲(にじ)んでいた。――血を見るのがそんなに怖いのか?と蓮は首を傾げるが、後からじわじわと拳に流れ込んでくる痛みに、思わず声を漏らす。

 

 

 

 保健室にたどり着いた蓮は、棚を漁り、消毒液とガーゼと包帯を掻っ攫う。そして丈夫な左手で、器用に治療を行う。こういう時に武見のクスリがあれば…と彼女の重要性を再び痛感させられる。

 

 一通りの治療が終わると、引っ張り出した消毒液などを元あった場所に戻し、寮へと帰ることにした。

 




※ペルソナ会議室(茶番)

 「ねえ、雨宮君行っちゃったけど…」

 「そうだな…そっとしておこう」

 「いいの?番長君は行かなくて」

 「そういうキタローの方こそ、本当は行きたいんじゃないか?」

 「どーでもいい」

 「そ、そうか…そういえば周防君とピアス君は?」

 「早々に帰ったよ“めんどくさい”だって」

 「…帰っちゃだめだ。キタロー」

 「良く分かったね、僕の考えてること」
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