基本、主人公は絶望はしにくい。しない訳じゃないんだが、基本諦めの悪い意固地。
ホンダムが神格化されても可笑しくはない、そんな事でホンダムは神へと頂く。
坂下門前、そこには
「ほう、大神が寄越した使いは…よもや、人か」
そう口を開く、一人の女性。紅蓮のようにギラギラと畏怖を思い起こさせる長髪に、長くすらりとした身体。黒い軍服を身に纏い、かつてある時代に旋風と革命を起こしたとされる
もう、ここまで来るとあの武将を思わせる。
「波旬…」
「このお方が、織田信長…?」
「いかにも、我は
…その首飾り、その業。そなたはこの日ノ本で何とする…たかだか、大神の願いを聞いただけに過ぎぬか?それとも、その手でこの世を終わらすか?」
「終わらせに来ました」
「ご、ご主人様?!」
「ほう」
信長は声を低く唸り、火縄銃の銃口を沙綾子の額に向ける。
「…信長殿」
そこに待ったをかけようとする、老齢の武将。傍には槍を構えた巨体の武将で、頭には牡鹿を思わせる立派な角を持った兜を被っている。沙綾子はその武将たちを見て、こう推測する。
東照宮大権現、徳川家康とその懐刀である本田忠勝だと。
家康は死後、日光に埋葬されのちに神と敬われ人々からは|東照宮大権現と呼ばれるようになった。また、本田忠勝はその無敗神話が神格化され、猛将として崇められるように。
「竹千代にそこの使者、よく聞け。
…今の日ノ本を我々でどうにか出来ん。滅びる運命だと、朝廷は覚悟の上で悟っておる。民の多くは死に絶え、この日ノ本…いや世界は混沌と化している。我らはこの東京の地で、故郷を想いはせながら死んでいく。
是非もなし、我はそう思う。…じゃがな、我とてただでは死なんと思っておる」
信長は引き金に指を添え、続けた。
「お前は終わらす覚悟はあるか?この我に銃を向けられ、引き金を引かれ…額を撃ち抜かれ死んでもなお、その覚悟があるか?」
「死にません」
「根拠は」
「ない」
信長はその答えを聞き、唖然とする。
家康は何も言わず、ただ黙っている。控える忠勝もまた、主君同様何も言わずただ、槍だけは沙綾子へ向けいつでも貫けるようにしていた。
「魂があるなら、まだ希望はあります。私は四肢をもがれ、額を撃ち抜かれ、首を落とされようとも…私は歩き続けます。まだ、終わってはいない…終わりではありません。
本当の終わりは、自分が絶望した時こそ…それが終わりだと思っております」
「ならば、この状況を見て…そなたは絶望しておらぬと申すか?」
「はい」
「大神、我ら明神…そして、民の言葉でもか?その身体が骸となってもか」
「私が終わっていないと思ったら終わっていません。いけませんか、織田信長殿…。付け加えるならあなたも、似たような口でありましょう。
ちがいは、ないでしょう?」
その言葉を聞き、信長はそれ以上口を開けなかった。
何と言う傲慢な人間だと、信長は沙綾子の印象を毒づく。しかし、かつての自分の僅かな面影を感じ、引き金を引くことが出来なかった。
「く、くく…はははは」
このあとは、嗤うしかなかった。
傲慢で偏屈、それでいて往生際が悪くタチの悪い人間である沙綾子に、信長は嗤う他なかった。
それでいて、単純。この混沌を終わらせる意思は…確実に本物であると悟った。
「は、波旬?一体どうしました、まさか…気が触れました?ご主人様の言葉で」
「あぁ、気が触れた。この人間は、殺しても自力で地獄から這い出て必ず我を殺しに来ると言う事を思い知らされた」
その言葉を聞いた玉藻は、ただ苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
そして、信長は声を押し殺し笑いをこらえながら、火縄銃を天へ向け引き金を引く。
轟音、それは淀み黒ずんだ空に一つの風穴を開けた。その風穴から、一筋の光が差し込む…この世界になって、初めての日の光。
日輪は、そこにある事が照明された。
「先ほども申した通り、我はただでは死なん。そなたの言葉、偽りの無い真であると…ならば、我らも地団太を踏もうではないか。
家康、同胞に伝えよ。
これより、皇居周辺の禍津なる者どもを一掃する、とな」
「…やれやれ、とんだ曲者を世に放すとはな。忠勝、出陣の準備じゃ」
「はっ。…殿、何やら嬉しそうで」
「馬鹿を申すでないわい。…そこの娘、名は何と申す。その猪突猛進…まさか、武田のものか?」
「但馬沙綾子と申します。武田…いえ、私は長崎の
「あしな…葦名。まさか、な」
そう、家康は何かに引っ掛かりを持つもその場で解決することなく、他の明神たちと共に、皇居へと戻っていった。信長は沙綾子へ向けニヤリ、と口元を上げながら家康の後に続くように皇居へと戻った。
坂下門の前では、玉藻と沙綾子だけが残った。
玉藻は、坂下門から目を離さず今にも消えそうな声で沙綾子に語りかける。
「ご主人様。私は心配です…何時か、あなたが消えてしまうんじゃないかと」
「消えませんよ、あなたを置いて。消えません、大丈夫です」
そう言いながら、玉藻に笑みを向ける。
その笑みを見て、玉藻は不安げな顔を戻す事は無かった。それどころか、余計に悲愴を浮かべたのであった。
あくまで独自解釈、独自設定が酷いゾッ!
あと、風呂敷広げすぎには気を付けてね。
タグ、増やそうか。