あ、ヤベエ今回もえっち話じゃない!?おちおちつけふぅ。(早漏感)
と言う訳で血生臭い話。
何の気なしに幻想郷を歩き回っていると、大妖怪と遭遇することもまま有る事だ。
とある日の宵、本来なら既に寝床を作って寝ている時間だったのだが、まあ色々あって食事を作っていた。
なに?料理する姿が思い浮かばない?うるせえ。
とにかく、普段なら寝てる時間に偶々料理作るために火を使って、偶々そこが開けた場所だったからまぁ空から目立つこと目立つこと。
空からメイド服を着た女とコウモリ翼の幼女が降ってきた。
「こんばんは、運命の迷い子さん。こんな明るい月夜で火を炊くなんて、襲ってくれと言ってるようなものよ?」
一目見て分かった、こいつはヤベー奴だと。古傷を抉るようなイタさが胸を襲う。止めてくれ、その口調は俺に効く。
「ご忠告ありがとう。だが俺はそこらの妖怪に襲われても返り討ちにする程度の実力は有るから心配には及ばねえよ」
言外に俺は忙しいからとっとと帰れと言うが、そんな程度で怯むような、ましてやノコノコ帰るようなら幻想郷で妖怪はやっていない。
ニヤニヤと嗤いながら、こちらを品定めするかのように目を細める。
「ふふふ、なるほど。言う程度には実力があるみたいね。決めたわ、今宵のダンスのお相手はあなフスッ!臭っ!?くっさっ!!?」
突如威厳をブレイクして鼻を抑えてメイドの後ろに回る幼女。こらこら、メイドスカートで鼻を拭くんじゃありません。ナイスガーターベルト。
というか、えっ、俺ってそんな匂う?
「お嬢様は吸血鬼なので、ニンニクの匂いは苦手なんです」
「そうか、俺とは相容れないようだな」
何の運命のイタズラか、真夜中に出会った相手が吸血鬼で、しかも丁度ニンニク料理を作っている所に来るとは。イエス様でも思うめえよ。
ちなみに俺はニンニクが大の付く好物である。無論口臭には気を付けているが、流石に食ったばかりでは対策も何もない。
と、言うか俺は吸血鬼が大っ嫌いなのである。外の世界にも吸血鬼は存在し、外の魔法使いは吸血鬼が天敵なのだ。まあ俺は天敵とかそういう意味で嫌いと言う訳ではないのだが。むしろ俺が吸血鬼の天敵というか……話が逸れた。
要するに珍しく俺が欲情しない女。それが吸血鬼だ。さあ話を戻そう。
鼻を押さえ、メイドの後ろからこちらを睨み付ける吸血鬼。メシを食ったらとっとと寝るつもりだったというのに、こうして無為に時間を取られるのは有体に言ってイライラする。
「それで、俺に何の用だ?吸血鬼なんぞに割く時間は無い」
吸血鬼から視線を外し、食事作りを再開する。作りながらちょくちょく摘まんでたとはいえ、腹がペコペコなのである。
と作り途中の料理に目を戻せば、既に完成していた。
えっ、そんな事ある?
「これで割く時間が出来ましたね?」
何コイツ怖い。催眠術とか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃない何かを味わったぜ。
まあ腹が減ってるしどうでもいいか。出来上がったニンニク料理を食う。Buono!。頬を指でくりくりする仕草も忘れない。
「恐縮ですわ」
「待ちなさいよ貴方達、特に男。順応早過ぎじゃない?」
「メイドが割く時間を作ったのに言いたい事はそれでいいのか?」
「良い訳無いでしょ!あーもー何で幻想郷の人間共はこんな感じなのよ!」
生憎だが俺は幻想郷人というより外来からの旅行者である。幻想郷に来てからの日数的な意味で。
そんな吸血鬼はさておいて、この料理マジで美味いな。俺の専属料理人にならない?
「貴方がウチで働くのなら三食作って差し上げますよ?」
「あー、血としょんべん臭いガキが居る所はちょっと……」
「はあああ!?こっちこそアナタみたいなニンニク臭い男真っ平なんだけど!?本当にムカツク人間ね!」
どうにかしてこのメイドを寝t雇えないか頭を捻るが、それを察したのか殺意を漲らせる吸血鬼。
「話題の男がどんなものか見に来たけど……想像以上の下衆ね。咲夜」
「御意」
まばたきする間も無しに、瞬時に視界いっぱいに銀のナイフが展開される。
瞬時というのは些か語弊があるか。パッ、と。本を捲ったら全く違う内容が書いてあるみたいに一瞬の間もなくナイフが現れた。
「地に這いつくばりなさい。許しを乞いなさい。そうすれば命だけは助けてあげるわ」
「吸血鬼ってのは本当に偉そうだ。その首捥いで地に叩きつけて踏みにじってやりたい位にな」
「遺言はそれでいいのね?咲夜、殺せ」
メイドの女が指を弾く。すると光の如き速さで俺の身体に無数のナイフが突き刺さり、気味の悪いオブジェと化す。
……何?流石に死んだろって?お前今の俺がどういう状態か見えてる?
ナイフは俺に刺されども、俺を貫きはしなかった。少なくとも、俺を殺したかったら銀製の柔らかいナイフじゃなくてタングステン合金ぐらい用意しろってんだ。
……普通の人間なら銀製でも死ねるって?普通じゃなくて悪うござんしたね。
まあ、ともかくメイドと吸血鬼にとって俺が死んでないのが予想外だったのか、壊れた銀のナイフのオブジェから無傷で出てくる俺を見て僅かにたじろいだ。
「さて、殺しに来たって事は、殺されても良いって訳だ。吸血鬼を殺すなんて何度目かねぇ」
魔力を練り上げ、辺りに漂わせる。幸いな事に吸血鬼殺しの小道具は辺りに散らばっていた。
「地・光合成魔法:封魔の鎖」
壊れた銀のナイフが、ジャララと宵闇に輝く銀の鎖に変わり、繋がり、鎌首を擡げる。
弾幕ごっこの様なお遊びじゃない。魔を殺す為の、遊びの無い狩りの魔法。
鎖が鞭のようにしなり、吸血鬼に向かって振り下ろされる。何度も、何度も。風を切る音、鎖が擦れる音、そして、吸血鬼に何度も直撃する音。
「お嬢様!!」
「下がってなさい咲夜!くく、ふふふ、あははははは!!!ああ懐かしいわねぇこの感覚!人間と妖怪が殺し合うこの快感!弾幕ごっこも楽しいけど、やはり命のやり取りも楽しいわね!!」
「殺し合い?馬鹿言うなよ、これは一方的な狩りだ。お前等吸血鬼が大好きな、大好きな狩りだ。一方的に命を食い、弄び、放り捨てる。その人間と吸血鬼の立場が入れ替わっただけだ。違うか?」
「私が人間に一方的に狩られるだけの存在だと?面白い事を言うわね。ならば貴方が死ぬ前に伝えておきましょう。私の名はレミリア・スカーレット!気高き夜の女王にして、貴方を殺す吸血鬼の名よ!」
吸血鬼、レミリア・スカーレットがその右手に一本の槍を具現化した時、辺りの空気が変わった。
神槍、スピア・ザ・グングニル
一筋の紅い雷が光銀の鎖全てを破壊し、俺の心臓を貫いた。
え?だから死んでねえって。心臓一個潰れたくらいで死んでたまるか。
普通の人間ならそれで死ぬ?だから俺は普通じゃねえってんだろいい加減にしろ。
「吸血鬼なんぞに膝をつかされるとはな。反吐が出る」
「……何故死んでないんですか?人間ではないと言うの?」
「心臓貫かれて死んでりゃ俺は此処に立っては居ねえなぁ。あーあー、血ぃぶちまけちまったよ全く」
さて、ここで俺が吸血鬼が大っ嫌いな理由の一つを語ろう。俺の血は非常に特殊で、普通の人間以上に魔力に満ち溢れている。これがどういう事かと言うと、普通の人間に比べて妖怪にとっての栄養価が非常に高い、言うなればご馳走な訳だ。外のとある漫画で言う所の稀血って呼ばれるヤツだな。……誰がインキュ柱じゃい。
ともかく、そんな訳で吸血鬼にとって猛毒の様に甘美な罠。一口飲めば、他の人間の血が飲めなくなる程に極上の甘露。そして飲んだら最後、死ぬまで餓え渇く狂気の劇薬。
何故なら、吸血鬼の牙は俺の肌を通さない。そして俺はそうそう死なないし、寿命のある人間。つまり俺の血肉を得る手段が非常に限られている。弱い吸血鬼は耐えられなくなった吸血衝動で俺の前に屍を晒し、強い吸血鬼は俺から逃れても、満たされることの無い飢餓によって狂気に溺れ死ぬ。
心臓を穿たれ膝をついても修復して立ち上がる俺とは対象に、吸血鬼レミリア・スカーレットは地に膝をつき、狂犬の様な目つきでこちらを睨み付けてヨダレを食いしばる。
「どうした誇り高き吸血鬼。無様に地に這いつくばって、土に染みた俺の血を舐めても良いんだぞ?俺が許す」
「ぐっ……ギッ……甘く見るなよ人間風情がっ……!この私がそんな犬の様に這いつくばるとでも?」
「くくく、いいねえ吸血鬼犬。吸血鬼は嫌いだが、ペットとして飼うのは面白そうだ。ああ、丁度目の前に良さげな犬候補が居るなあ。どんな首輪が似合うかな?」
「お嬢様を汚らわしい目で見るな!!」
また、切り取ったかのように刹那の間もなくメイドが斬り込んでくる。銀のナイフでは傷一つ負わないと分からないのか……ッ!?
ゾッ、と背筋に悪寒が走る。勘に従って首を反らし、メイドの攻撃を回避する。
銀のナイフが俺の首肉を数センチ斬り、血が噴き出す。即座に首を押さえ、魔法で治療する。ただの銀のナイフの筈だ。その筈だった!なのに俺の身体を斬るなんてありえない。つまり、ありえない現象が銀のナイフに起きている。
ふぅー。一息ついて精神を落ち着ける。もしあのメイドが、真に戦う者だったなら今の一撃で俺の首が落ちていた。まあ、首が落ちてもまだ死なないんだが。
そう、ただの銀のナイフが俺を切り裂くに至る硬度を持ったタネを見破らなければならない。それと瞬間移動したかのような移動速度や、始めのナイフを大量展開したタネも探らないと良くないと勘が告げる。
神槍、スピア・ザ・グングニル
再度紅き雷が落ちる。辛うじて回避に成功するも、代償は左肩から先。千切れた左腕が空を舞う。
そして千切れ飛んだ肩に銀のナイフが突き刺さる。めっちゃ痛い。
「貴方、本当に人間?神経に直接ナイフが刺さってるのよ?」
「痛みにゃ強いもんで」
飛んだ腕……回収してる暇はないか。左肩に刺さった銀のナイフを再構成、臨時の義腕として使う。作った腕をそのまま振るい、地面に叩きつける。
「地・風・炎合成魔法:殺生石の正体」
地面が僅かに裂け、そこから高圧のガスが吹き出る。意志無き自然の殺意。大地の奇跡の悪意。生命を殺す、殺戮のガスが漂い始めた。
「っ咲夜!離れなさい!!!」
吸血鬼レミリア・スカーレットの声とほぼ同時にメイドは遠く離れていった。あのメイドの手品のタネがただの超高速移動だった場合、これでメイドは封殺できる。違う場合でも近づくことは出来ないだろう。一呼吸でも吸えば、待っているのは死だ。
「分かっているのかしら。貴方、同族を殺しかけているのよ?」
「同族だから、ってのは情けを掛ける理由にはならないな。まあ顔は良いからつい手心を加えちまったが」
「そんな毒ガス使っておいて何を言うのかしら」
「綺麗な身体のまま死ぬんだ。マシな方だろ?」
少なくとも身体がバラバラになったり、判別の付かない程に焼け焦げだり腐り落ちたりするよか遥かにマシだろうに。
しかし辺りに撒かれたガスの影響で俺の血の匂いが薄れたのか、幾分狂気が晴れてきた吸血鬼。しかし先程よりも瞳に殺意の炎が激しく燃えていた。
「それよりいいのか?こっちばかりに気を取られて」
「はあ?何を言って」
言い切ることは出来なかった。物理的にその口を閉ざされたのだから。
吸血鬼レミリア・スカーレットの死角から飛んで来た俺の本物の左腕がその頬を殴り飛ばした。
吸血鬼がダウンした隙を見計らい、義腕と本物の腕を付け替え、治療する。
物体浮遊マジックのタネは非常にシンプルだ。俺の血がほぼ魔力で構成されている以上、斬り飛ばされてもその腕に血が残っている限り、魔法的に俺と腕は繋がっている。ならば魔法を使って自在に操る事なんて造作もない事だ。
そして左肩から溢れた血を大量に浴びた銀の義腕もまた同じ。自在に動き回る第三の腕となり、必要ならば攻撃、防御、魔法の発射台に、自在に姿を変えられる。
「一夜に二度も地に跪いたのは、いつ以来かしらね」
「そんな事気にしなくても良いぞ。何故ならお前は初めて人間に屍を晒すんだからな」
「ふふふ、良い……良いわ、人間!本気で殺したいと思った相手はお前で三人目よ、そして今まで殺したいと思った相手は必ず殺してきたわ。光栄に思いなさい!」
「良い事教えてやるよ。今まで俺の事を殺したいと思った吸血鬼はごまんと居たが、その全てが無様な死に様晒してたぜ」
「なら私がお前を殺す初めての吸血鬼ね」
「お前は他の吸血鬼となんも変わんねえって事教えてやるよ」
吸血鬼に限らず、妖魔の類を殺すのに銀の弾丸も木の杭も要らない。真に殺すという祈りに似た所作こそが妖魔を殺す無二の刃である。
故に魔法の補助こそ有れど、武器は携えない。魔法使いの杖すら必要ない。
殺すと祈り、殺すと願い、殺すと実行に移す。
武器は、自然とついてくる。
「光属性魔法:回天の光陣」
大地を仄かに照らす月と星明かりが束ねられ、自身を照らす。大空の魔力が何度も血を失った肉体を癒し、強化し、頑強に作り変える。
更に追随する効果として、夜の眷属共の強化を剥ぐ事が出来る。
「月明かりまで奪うとは……人間はどこまでも強欲で傲慢ね」
「悪魔が大罪を語るなよ。地属性魔法:地球の護り」
頑強になった身体に、更に高圧の鎧を纏う。どこまでも重く、自分から動く事は難しいがそのデメリットに対し、余りあるメリットがこの魔法にはある。
「っ!?引っ張られる……!」
引力の発現。それは空を征く者に対する特効性を持つ。翼を持つ相手を殺す事に特化した魔法。
回天の光陣も限定された点のみに効果を持つ魔法で、地球の護りと非常に相性が良い。
自身を強化し、相手の力を落とす。そして相手が近寄って来た所を叩く。例え異常に高い不死性を持つ満月の夜の吸血鬼相手でも、死ぬまで殴り殺す。
頭から、堕ちる様に向かって来る吸血鬼レミリア・スカーレットの顔面を殴り抜く。ばぎゃり、と硬く鈍い音が響く。まず、一回目。
突風に煽られた枯れ葉の様に舞い飛ぶレミリア・スカーレットだが、地に叩きつけられる事無く再び俺に向かって堕ちてくる。
二回目。顔面を殴り抜く。ぶじゅっ、と何かを潰すような手ごたえを感じたが、まだまだ死なない。
「がっ、アアアアアア!!!」
神槍、スピア・ザ・グングニル
紅き雷が三度落ちてくる。だが、その速度にはもう慣れた。左手を伸ばして掴み取る。紅雷を握った代償に左半身の鎧が剥ぎ落ち、辺りを血に染めたが光が俺を照らし、すぐさま修復してゆく。そして三回目。ぶぢゃっ、と額が割れる感覚が手に残る。
大抵の吸血鬼ならもう死んでいるのだが、成程中々にしぶとい。吸血鬼レミリア・スカーレットの評価をやや上昇させる。だが、これまでだ。
四回目。バギャン、と音が鳴り響いた。
俺の、頭から。
気が付けば俺は地面に崩れ落ち、レミリア・スカーレットは少し離れた地面に投げ出されていた。何をされた?いや、理解は出来ている。レミリア・スカーレットは引力によって俺に堕ちてくる時、俺に向かって羽ばたき、俺の拳が届くより先に自身の拳を俺の額に撃ち付けたのだ。
今まで引力から逃れようと藻掻き飛ぶ吸血鬼など幾らでも居た。引力に引かれ、カウンターを合わせようと足掻いた吸血鬼も幾らでも居た。
だが、引力に引かれ、更に加速してくる吸血鬼は居なかった。ましてや、俺の額を砕く者なんて、誰も。
認めよう、レミリア・スカーレット。お前は今まで出会った吸血鬼よりも、遥かに強く気高いと。だからこそ、なればこそ、お前を殺す。
突如、束ねた光が霧散する。月明かりが再び妖の時間の到来を告げる。
これは、
「あらまぁ……話には聞いてたけど随分手ひどくやられてるじゃないのレミィ」
「……ハッ、こっから私が華麗な逆転劇を演出するところだったのよ。邪魔をするなパチェ!」
「頭かち割れて何言ってんのよ貴方。その上った血を静めてあげましょうか?物理的に」
ギャーギャーと騒ぎだす吸血鬼。隙だらけ故に左手に持った紅雷の槍を投げる……直前、隕石が降ってくるような気配が無音で頭上に現れる。
転がる様に回避すれば、先程まで頭があった場所が爆発した様に弾け、そこには一本の脚が突き刺さっていた。
「ありゃ、気配は完全に消した筈なんですが。勘は良いんですね」
血が滴る額を押さえながら跳ねるように立ち、爆心地を見ると一体の龍が居た。
否、それは龍の迫力を持った人型の妖怪だった。
「どうも。紅魔館の門番、紅美鈴です。貴方の事は新聞で良く見ますよ。本来ならもっと違う形で会いたかったのですが……まあ、これも運命と言う事で、よろしくお願いします」
「なにがヨロシクだコノヤロー。思いっきり暗殺術使いやがって」
「おや、外の世界では挨拶前のアンブッシュは一度だけ認められてると聞いたのですが」
「それ何処のネオサイタマ!?」
ふざけた空気が辺りを包むが、俺も吸血鬼も、突如現れた魔女も紅美鈴と名乗った妖怪も、全員が一切の気を抜いておらず臨戦態勢を取り続けている。
そしてこの場に見えないが、確実にこちらを捕捉しているあのメイドの存在も忘れていない。
魔女、妖怪、メイド。……ちょっとキャラ濃い過ぎるくないですかね?
魔女から魔力糸が吸血鬼と妖怪に伸びる。この状況で使う魔法なんて通信魔法くらいかと当たりをつけ、気合を入れ直す。割れた額を止血するまで治療し、心臓の拍動のギアを上げる。血液と共に魔力が増幅され、思考が加速する。
邪魔な奴等全員を倒すのが、ベスト。無事にこの状況から脱出できれば、ベター。後腐れを無くすために全員倒しておきたいが、まあ流石に命あっての物種。最低限死ななければ安い。逃走経路を確保しつつ、攻める。これで行こう。
攻撃の前兆を感じたのか、魔女が表情を変える。何かを呟き、吸血鬼と妖怪に指示を出そうとしているようだが遅い。
俺の魔法は、発動の速さに定評がある。
「水属性魔法:メイルシュトローム」
俺の足元から大量の水を召喚し、強烈な水流となって三人を襲う。吸血鬼は流水に弱いから対処しなければまず一人落ちる。
「水……レイジィトリリトン」
地面を隆起させ、大量の水をせき止められた。成程、なら次だ。
「風属性魔法:晴嵐の竜巻」
地に溜まった水を竜巻が吸い上げ、飛びあがり、雨となって降りそそぐ。
「風っ……アグニシャイン!」
猛火の輝きが雨と化した水を蒸発させ、大量の水が一気に蒸発した事による爆風が竜巻をかき消す。やってくれるね。
「炎属性魔法:灼熱大地」
地面に届いた魔女の僅かな炎が爆発的に燃え広がり、辺りを炎の明かりに染め上げ、更に地面がマグマのように赤熱してゆく。
「今度は熱っ!?ケホッ……ベリーインレイク!!」
「パチェ!無理しないでよ!?」
今度は冷たい水が大地の炎を消火し、赤熱した地面を冷ます。辺りには蒸気が漂い、地面はぐしょぐしょと湿っている。
「地属性魔法:サンドインパクト」
大地が爆発し、水に濡れた砂……即ち泥が飛び散る。魔力が染み込んだ泥だ、さぞ不気味であろう。
「ぐっ、ゲホッ、ゲホッ!!」
「パチェッ!く、紅魔『スカーレットデビル』!!」
飛び散った泥が吸血鬼によって消し飛ばされる。が、まあ最低限の仕事はした。あの魔女はかなりの魔力総量を持ち、しかも器用に様々な属性を使う事が出来るのだろう。だが肝心要の自分自身が貧弱に過ぎる。
気配無く後ろから正拳突きが来るが、背中で受け止めて反撃の蹴りを掠らせるように当てる。
「っ!?ぐぅ、これは……毒!?」
「正確には金属毒だ。妖怪には効果が薄いみたいだが、少しでも十分効いてるみたいだなぁ?」
チィッ!と鋭い舌打ちをして吸血鬼の所まで瞬時に引く妖怪。殴られた背中は、多少痺れる程度で大きな問題は無い。
あの龍の迫力を持った妖怪も、頭や心臓に強い一撃を貰わなければ大丈夫そうだ。
「生きるか、死ぬか。闘争は楽しいなぁ?」
「ゲホゲホッ……唯の人間が、どうしてこんなにも魔力を持っているのかしら?」
「まるで巨大な山を殴ったかの様な感覚でした。生半可な攻撃では通用しないでしょうね」
「本当に生意気な人間ね。一対多は人間側の特技でしょうに……!」
夜明けが近づいてきた。少しばかしハイペースに攻めすぎたか、それとも回復に魔力を割きすぎたか、その両方か。残りの魔力量が半分を切った。万が一逃走する場合に備えて、せめて四分の一程度は残しておきたい所。そして逃げる時、追っかけられても困るから手傷の一つや二つ負わせておきたい。吸血鬼の頭は既にカチ割った。なら後は魔女と妖怪か。
……よし。
左手に持っていた紅雷の槍を魔女に向かって投げる。高速で魔女の喉元に向かって行く……が、刺さる前に吸血鬼レミリア・スカーレットによって止められる。
「グングニルの持ち主は私よ。本来の力で穿ちたければ先に私を殺すべきだったわね」
「そうだな、本来の力で穿つ必要があれば、な」
「何?」
槍の先から一閃の水と弾が出る。魔女は咄嗟に魔導防御をしたが、水圧が防御を突き破って魔女の喉に弾が突き刺さる。
「っか……ハッ……ヒュッ……」
「パチェッ!!?」
防御のお陰で喉を突き破りはしなかったものの、的確に喉を潰した。そして魔女に意識が向かった隙を逃さず、即席で作った唯の鉄鎖の鞭が妖怪の左脚を砕き、続く二振り目で頭を砕く
「っ、ガアァッッッ!!!」
寸前に気合で鎖が弾かれ、砕かれた。声だけで鉄を破壊するかね普通。
だが、とりあえず最低限の目的は済んだ。後は残りの魔力を総動員して安全な場所に生きて逃げる。
「待て人間ッ!!!」
神槍、スピア・ザ・グングニル
来るのは分かっていた。残った魔力の5分の4程を割き、両手で槍を受け止める。勢いが余り、両腕が大きく裂けてなお止まらず、俺の腹に拳程の大きさの穴が開いた。
かなりきついが、まだ、生きてる。なら足を動かせ。
吸血鬼に背を向けたその時、目の前に銀のナイフを振りかざすメイドの姿。
そのナイフの軌跡は、確実に首を跳ねる軌道。
戦場に銀線が一筋走った。
戦場から走り去る俺。後方には、服が大きく裂けほぼ全裸を晒す元メイドの少女。
何が起きたかというと、メイドが姿を現したタイミングで今まで存在を隠していた銀の義腕を走らせてメイドの服を剥いだ。言葉にするとそれだけだが、ただ俺はメイドの奇襲を予測していて、メイドは俺の奇襲を予測していなかった。その意識の差が結果に現れただけだ。何で服を剥ぎ取ってきたのかと聞かれれば、なんとなくとしか言えない。ただ服と一緒に不思議な懐中時計も剥ぎ取り、それ以降瞬間移動をしていない事からコイツが手品のタネなんだろうと当たりを付けた。
手に持っていた高濃度の魔力の塊である紅雷の槍を捨て、妖怪の山に身を隠す。妖怪の山は侵入者に対して非常に排他的であり、吸血鬼連中が仮に追ってきたとしても騒ぎになるだろうからその混乱に乗じて逃げやすい。
久々に味わった、死線に立って敵と戦い生き残るこの感覚。夜通し戦って腹が減った、夜通し戦って眠い、生存本能が刺激され、猛烈に子孫を残したくなる。
だがとりあえず全ての欲求に蓋をして、安全な場所を確保する。排他的な妖怪の山は、当然俺に対しても同じなのだから。天狗に見つからないように遠くから魔法で土の中を移動する。
適当な場所まで移動し、土を岩に変えて安全な寝床に変える。そうして、意識を失うように深く、深く眠った。
ちなみに布団は無かったが、枕はメイドから奪った衣服と下着だった。いいにおいでした。
安心してください。予定上ではちゃんと紅魔館勢とおセックス致しますわ。
週間3位ありがとう!頑張ってんだからお礼の感想寄越すんだよホラホラ。
・主人公
えっ血のインキュ柱。そして別名吸血殺し。某女の子の様に存在感は薄くない模様。
・レミリア
消えぬ傷が額に刻まれた。あーキズモノにしたせきにんをとらないといけませんねーこれはー。
・ぱっちぇ
喉が潰され、まともに詠唱出来なくなってしまった。あーこれはいけませんねーおんなのこをキズモノにしたせきにんとらないといけませんねー。
・めーりーん
しなやかな脚線美に深い傷を負った。あーこれはせきにんとらないといけませんねーおんなのこキズモノにしてただですむとおもわないでくださいねー。
・さっきゅん
全裸ガーターベルト。
主人公に名前……要る?(作者は何も考えて無いので)
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要る
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要らん
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むしろ私が良い案を持っている!!