ただなぁ……猫の交尾って……数秒で終わるんだよなぁ……
霊夢「あああ痛ぁぁいッッッ!!!」
で交尾終了。それじゃあ味気ないですね。
そこはファンタジー小説の如く無いこと無いこと盛って盛って盛りまくりなさいって話ですが。
博麗神社から人里に降りる……前に、香霖堂なる場所に寄る必要があるらしい。霊夢曰く、そこなら外のお金を換金してくれるのだとか。
「で、場所は?」
「魔法の森の入り口に在るわ。飛んで行けば結構近くよ」
「……飛んで行けば、ね」
「何よその目は!今の私が飛べないのは仕方ないでしょ!?」
「分かってるっての……」
空を飛ぶのは余り得意ではないのだが、まあ四の五の言ってる場合ではない。まだ朝食にありつけていないのだ、腹が減る前にさっさと霊夢を肩に乗せて飛んで行くことにする。
「ていうか、あんた飛べたのね」
「そりゃあ魔法使いだからな、飛べるさ。……こう、BOMB!!と」
「……は?」
「しっかり肩に捕まってろよ。落ちても知らん」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。嫌な予感しかしない
地・炎・風合成魔法:爆圧加速
「わあああああああああああああああ!!!!!!!!」
耳元で叫ばないでほしい。いくら俺が丈夫とはいえ、耳は普通の人間並みに聞こえるんだから。
霊夢の身体に掛かる圧力を風魔法で軽減する。自分一人ならこんな面倒な事しないでも良いんだが、流石に普通の人間が生身で爆風を受けたら致命傷だ。
今の俺達は風よりも速く飛んでいる。まあ風というか、音速を超えている訳だが。そのせいでソニックブームが発生しているが、これまた風魔法で被害を無くしている。
まさにあっ、と言う間に魔法の森の入り口……らへんに到着。これまた俺一人だけだったら地面に着弾しても良いんだが、霊夢の身体が粉々になってしまうので風魔法でゆっくりと着地する。
「か、身体中がミシッていった……ミシッていった……」
ゆっくりカッコ俺目線。……なんかスマン。回復魔法を霊夢にかける。
「っていうか、普通に飛びなさいよ!!」
「風属性魔法単体で飛ぶのは不安定なんだよ。ならいっそ高速ですっ飛んで行った方が速いし安定する」
ついでに言うなら、この方法でも高く飛ぶことは難しいんだよな。博麗神社が山の頂上付近にあって助かった。
……ちなみに、本物の爆薬じゃなくちゃんとした魔法で飛んでいるので、出発点の博麗神社は反作用で大惨事にはなっていない。
「で、香霖堂はどっちだ?」
「納得いかないんだけど……香霖堂はアッチよ」
霊夢が指差した……より正確に言えば腕で指した方を向いて歩きだした。その時、悍ましい程の殺気を叩きつけられた。
ブゥン
白い何かが視界に入った瞬間地面を蹴り跳び、霊夢を庇う。
白い何かは、傘だった。傘が上段から振り下ろされ地面に叩きつけられた。その衝撃で地面が爆発したかのように吹き飛び、その礫が容赦なく俺達を襲う。
「何!?何が起きたの!!?」
「分からん……が、敵襲のようだな」
爆発の中心地には、緑色の髪の背の高い女が紅い目で睨み付けている。
「うふふ、今の私はとおぉ~っても機嫌が悪いの。外来人を全員殺してやりたい位にね」
「幽香!?あんたこんな所で何してんのよ!」
「……あら、その声は霊夢かしら?……そう、貴女も
ふむ。幽香と呼ばれた女の言葉通りなら、アイツにとって今の霊夢はただの猫に見えているのだろうか。
「あー。機嫌が悪いのはまあ結構な事なんだが、それで俺等に八つ当たりされても困る」
「貴方が困ろうが知った事じゃないわ。とにかく外来人は全員殺すって決めたの」
「……それは、アレか?その絶望的に似合ってないネコミミと何か関係が」
ブ ヂ リ
太い綱が千切れるような音が聞こえた。
「ふふふふ、やっぱり殺すだけじゃ駄目ね。私の腹の虫が収まらないわ。生きたまま腸引きずり出して、お花の養分にしてあげましょう」
「凄い笑顔でなんて事を言ってるんだお前さんは」
ダァンッ!!と地面を踏み抜いた音が聞こえたと思ったら、その直後には手に持った傘を俺の心臓に向けて突き出していた。
とりあえず霊夢を空高く投げ飛ばし、心臓を突いてくる傘を両手で掴んで抑える……も、掴んだ両手ごと俺を突き飛ばす。見た目に寄らずパワータイプなのね。
「だが俺を殺すには至らない訳だが」
「丈夫なのね。壊し甲斐があるわ」
ダァンッ!!と地を蹴り、音速並の速度で肉薄してくる幽香。手に持った傘を横薙ぎに払い、真空波が放たれる。そして本人は真空波と共に俺に斬りかかってくる。うせやろ。
「無駄に器用な事しやがる。風属性魔法:瘋癲のつむじ風」
俺の周囲の空気が一気に動き回り、真空の嵐となって真空波をかき消す。その勢いに乗じて斬りかかってくる幽香を投げ飛ばす。
一度距離が離れたところで、空から投げた霊夢が降ってきたので受けとめる。
「急に投げないでよ!!?」
「すまん、つい咄嗟に投げちまった。危ないから離れてろ……と言いたいところだが、どうやら不幸は続くらしいな」
なぁ~ご。
なぁ~ご。
何処からか猫の鳴き声が響く。
なぁ~ご。
なぁ~ご。
猫の鳴き声はどんどん増えていき、彼方此方から響き渡る。
気がつけば、俺達と少し離れた幽香とを囲むように猫の群れが現れた。
「にゃはははは!ご機嫌麗しゅうお三方!今日は皆様方をお迎えに来たのにゃ!」
そんな使い古された口調ある?ってな声が響いたと思ったら、猫の群れが割れて一匹の三毛猫が二足歩行で歩いてきた。
「にゃは!我輩は神の御子、鍋島と申しますにゃ!お嬢さん方ははじめましてだにゃぁ!」
二足歩行のまま、ペコリとお辞儀をした猫は、次の瞬間幽香から放たれた極太のビームに飲み込まれた。
「五月蝿い猫ね。猫なら猫らしく媚びながらにゃーにゃー鳴いていればいいのよ」
その光景に周囲の猫はドン引きである。だが、ビームがパンッと弾かれ、鍋島は無傷で立っていた。
「にゃはは!元気で健康的で大変結構なのにゃ!それでこそ我輩の番に相応しいのにゃ!」
「な、何よあの猫……幽香の攻撃を食らって無傷!?」
「霊夢、あれが前言っていた猫の神、その御子だ。霊夢と……多分幽香を変化させた元凶だ」
「っ!じゃぁあいつを倒せば!」
「にゃーにゃー吸血鬼喰い!お久し振りですにゃあ!いい加減我輩の神様の番になるのにゃぁ!」
「ふざけんな誰が臭い猫の番になんぞなるか」
「にゃにゃ!神様はいつもマタタビキメてるとは言え、臭いとまで言われる筋合いはないにゃー!」
「腐った死骸みたいな匂い撒き散らしててなに言ってんだ」
「それが良いと何で分からんかにゃぁ?」
その匂いを良い匂いと言えるほど啓蒙高くないぜ。
鍋島という猫はマジックの世界ではかなり知られた存在だ。神の力を十全に使いこなし、長らく猫の世界を牛耳っている。
「というか、迎えに来た?番?何を言っているの?」
「にゃは!言葉通りにゃぁ!博麗霊夢、風見幽香、お二方は強く美しいにゃ!我輩の嫁にぴったりにゃ!是非とも我輩の子を産んでほしいにゃあ!」
「なんで猫なんかの子を産まなきゃならないのよ!」
「弱っちい雄は嫌いなの。他を当たりなさい」
「……はーやれやれだにゃ~。優しく言っているうちに頷いていれば手間がかからにゃいのに……。誰がお二方に選択権が有るって言ったにゃ?お二方は我輩の子を孕む。それはもう確定事項だにゃ~!にゃおーん、にゃおーん!」
鍋島が声をあげると、回りに取り囲んでいた猫達から光が空に放たれる。咄嗟に鉄鎖を振り回して回りの猫を吹き飛ばすが、一歩遅かった。
猫達から放たれた光が空で収束し、その中心から降ってきた。まるで太陽が落ちてきたかのような眩しさに目を閉じ、再び目を開いたときには周囲が大きく変わっていた。
「くっ、眩しいわね…………は?」
「に、にゃにゃぁ~!?」
大きく変わったのは、先程まで戦っていた幽香が緑毛の猫に変わり、霊夢は完全に人の言葉を喋られなくなっていた所だった。
「にゃはははは!猫化の奇跡のお味はいかがかにゃ~?でもなんで吸血鬼喰いは変化してないにゃ~?」
変化はしてる。頭と尻がむずむずすると思ってフードを脱ぐと、ぴくぴく動く猫の耳が。そして尻に手を触れると、ふりふりと動く猫の尻尾が。……おえっ、似合わなっ。
「にゃは!!まあ良いにゃ!とりあえず吸血鬼喰いはおいといて、まずは我輩のお嫁さんにゃー!さあ野郎共、その雌猫二匹を取り押さえるにゃ!」
掛け声一つで、まるで一つの生き物のように蠢く猫共。取り敢えず霊夢は抱えて逃げるとして……さっきまで戦っていたとはいえ、幽香を見捨てていくのは気が引ける。鉄鎖を幽香に飛ばし、ぐるりと巻きつけて引き寄せ、霊夢とは反対の腕で抱き抱えて逃げる。
「っの、離しなさい!」
「身体能力が猫並みに落ちてるのに、妖怪並みに強化されてる猫の軍勢相手取るのは無理だ!」
「だからと言って人間に情けをかけられるなんて私のプライドが許さないのよ!」
「いまのお前ただの猫じゃん!んなプライド捨て置け!」
「にゃぁん!!」
肩に抱いた霊夢が俺の顔を叩く。霊夢の方を向き、霊夢が指し示す方向を見ると虹色に輝く空飛ぶ猫が高速で何匹も迫ってきた。
「にゃん!?」
「キャットおおお!?クソっ、本気目に飛ぶぞ!地・炎・風合成魔法:爆圧加速!」
爆風の速度で空を飛ぶ。飛んでいく俺達を追うように猫の集団も飛んでくる。
「というか貴方あんな奴相手に何逃げ腰になってるのよ!さっさと殺せば良いじゃない!」
「鍋島は神の力が有る限り不死身だ!あの大群相手にしながら、鍋島の相手をして、更に猫二匹守れって?冗談じゃない。まずはお前達を安全な場所に逃がしてから鍋島を倒す」
「……私が、人間に守られる……ですって?面白い冗談ね……笑えないということを除けば最高のジョークよ」
「お前さん今の自分の姿分かってんのか?」
直後、尻尾が逆立つような感覚に襲われる。視界が白く染まり、バチッと身体に静電気が走ったかのような予感に従って全力の魔法障壁を肩の猫二匹に張る。
リィン
鈴の音が鳴った。それと同時に俺の身体は地面に墜落した。
「にゃー……にゃー!!」
「起きなさい!起きろっ!」
黒い瞳と紅い瞳が俺を見下ろす。
バッと身体を起こし、臨戦態勢を取る。
「俺はどれだけ寝てた!?」
「1分程度よ。白い雷が貴方に直撃したのよ」
白い雷……まじか。状況は最悪を通り越して地獄だ。
空を見上げれば、巨大な白猫が嗤いながら此方を見下ろしていた。
『にひひ。鍋島ちゃんがキミを見つけたって言ってたから、つい会いに来ちゃった♥️』
「俺は会いたくなかった」
奴はマジックの世界で最も有名な猫の神。魔法使いにとって、猫は切っても切れない縁で結ばれてる。元々は使い魔だった猫が主人を喰い、町を喰い、国を喰って神に成り上がった悪神。それがあの巨大な白猫であった。
『にひ、幻想郷って言ったっけ?中々居心地が良さげな場所だね。思わず食い散らかしたくなっちゃうよ』
……これは、覚悟を決めなきゃな。
心臓の拍動を強め、魔力を全身に漲らせる。
「先に謝っておく。守れなくなったら、ごめん」
「笑えない冗談は嫌いなの。誰が、誰を守るって?」
「あの猫の神は俺が全力だして、ようやく撃退できた位にクソ強い。さらに鍋島、猫の軍勢……まあ、アイツに好き勝手されるのはそれこそ死んでも御免被る。最終手段として……」
「うなんな」
「……あー、霊夢。いきなり初めて聞く鳴き声出すな。反応に困る」
「うなんな!!」
「なっ、おい!?」
霊夢が突如俺に向かって駆け出し、飛び掛かる。あまりにも想定外な動きにビックリして硬直したら、俺の身体を蹴るように駆け登り、俺と霊夢の口と口の距離がゼロになった。
ポン
と軽い音が鳴り、俺の目の前には猫ではなく、巫女装束を着た一人の少女が立っていた。
「……えーと、あー……霊夢?」
「せぇいッ!!!」
霊力のこもった拳の一撃が俺の鳩尾に突き刺さる。
痛いとか痛くないとかそういうのではなく、無音で地面に崩れ落ちた。
「取り敢えず言いたいことは一旦全部置いておくし、今までの貸しは今ので帳消しにしてあげるわ!!!」
息が出来なくなる感覚なんて初めてだ。
「……へえ?なるほどねぇ……そういう感じで戻れるのね?」
幽香が品の有るキャットウォークで倒れてる俺に近づき、そっと口づけを落とす。
ポン
とまた軽い音が鳴り、幽香が人型に戻る。
……あっ、赤……
「えい」
ドゴォッ!!
軽い掛け声に一切合わない衝撃音が響き、俺の腹が蹴り抜かれる。おいこれ普通の人間なら腹がミンチですわよ。
「私を勝手に守ってる気になった事、私の唇を奪った事、あと私の下着を見た事はこれでチャラにしてあげるわ」
最初はともかく、後二つェ……。
「……さてと、じゃ私はあの馬鹿でかい猫をぶちのめすわ。猫軍団は幽香、あんたがやりなさい」
「私に指図しないで頂戴。でも良いわ、今の私は少しだけ気分が良いから言う通りにしてあげる。いつまで寝ている気かしら人間、貴方はさっさとその気色悪い二足歩行の三毛猫を去勢なさい」
「お前らさあ、もっと思いやりってもんを持とうぜ」
いまだに鈍い痛みが腹に残っているが、転がっている空気じゃなくなったので立ち上がる。
『にひひ!巫女とはいえただの人間風情がでしゃばるなぁぉーん。ハラワタ食い散らかしちゃうよ?』
「荒御魂をどうにかするのは巫女の仕事よ。それに今の私は誰にも負ける気がしないわ」
「にゃはー!我輩のお嫁さんを寝取りやがって!貴様はいっつもいろんな雌を侍らせてるにゃー!」
「あら、面白そうな話ね。詳しく聞かせなさい?」
「おーい幽香さんや。傘を向ける方向が違くないですか?」
「貴方の後ろにいる猫共から焼き払おうとしてるだけよ」
助けて霊夢。
「て言うかそもそもお前の嫁じゃねえし、寝取ってもねえし、自然と女を寄せちゃう程に良い男なだけだし」
「あら、その冗談は面白いわね」
人を三枚目かのようにお前……。
「我輩を差し置いてイチャイチャすんじゃ無いにゃー!!!野郎共、八つ裂きにしてやれ!!にゃー!にゃおーん!!!」
鍋島の掛け声で猫の群れが光り出す……が、無数の極太ビームが幽香から放たれ、その射線上にいた猫の群れは全て吹き飛んでいった。
「あらあら、ちょっと小突いただけで逃げ出すなんて躾のなってない畜生共ね。もっと根性見せないと暇潰しにもならないわ」
ニタニタと嘲笑う幽香の顔を見た猫が恐怖のあまり逃げ出す。
『にひ、顔を見ただけで逃げ出すなんて、君らは勇猛な戦士じゃなかったのかにゃーん?』
猫の神の一言でピタリと止まり、油の切れたブリキの玩具のようにガクガク震える。
『君らの家族の未来は、君らに掛かってる!さあさあがんばれがんばれー、にゃー』
にゃー、にゃー、と自らを鼓舞するかのように吠え、幽香に向かって玉砕特攻を仕掛ける猫共。
「呆れた。ただ突っ込んで来るだけの弾幕に美しさなんて無いわ。散って美しいのは花だけよ」
傘を広げ、弾幕を放つ幽香。一つ一つが猫に当たり、自身は優雅に突進を回避し続ける。
『にゅふん。これはちょっと分が悪い……かにゃ~?しょーがねーなー、ちょっくら手を貸してやろう』
「あんたの相手は私よ、この似非神」
『……にひっ。やっぱり生意気な巫女は頭からバリバリ食べてやろうね!』
「にゃはっ。みんな目一杯身体を動かして楽しそうだにゃ!」
「んなら身体が動かなくなるまで遊ぼうじゃねえか」
「にゃはは!さっきまで逃げ回ってたくせに何を生意気な!にゃにゃにゃぁぁぁご!!」
鍋島が爪を振るうと鋭い斬撃が飛び、その直線状にある物を両断していく。
「そりゃさっきまでは守るモンがあったからな」
地・光合成魔法:磁槍クロガネ
斬撃の射線上に一本の槍と、槍を挟むように二本のレールを作り出す。魔力を電気に似た力に変え、槍を電磁誘導によって撃ち出す。いわゆるレールガンと呼ばれる物だ。
燃費が非常に悪いが、調子に乗っているクソ猫の去勢には成功した。
「っ、ぎ、ぃに”ゃ”あ”あ”あ”ッ!!?」
「さっきからブラブラとムカツクもん見せやがって。狂った頭にネジは嵌まったかよ?」
「ぎ、ひひ!あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!これだから人間共は嫌いなんだボケがぁぁぁ!!!テメエらは好き勝手生きてる癖にオレらには不自由を押し付けやがってええええええ!!!!死ね!死ね!!死んじまえぇ!!!テメエらがオレらにしてきた事を全てそっくり返してやる!!!殺す!犯す!ボロボロのゴミクズみたいに腐れ死ね!!!」
発狂したかのように叫ぶ鍋島。だが、それが本来の鍋島の姿だ。
俺が初めて鍋島と対面した時の口調で、血走った鋭い目で睨み付ける。
「馬鹿野郎が、お前は永く生きすぎた。何が正しくて何が間違えてるか、もう判断できるほどに理性は残っちゃねえんだろ。神性を浴びすぎて狂っている事にも気が付けなくなった哀れな奴。昔のお前は、もうちょっと仲間想いだったぜ」
「黙れ黙れ黙れ!!!喋るな!囀るな!!人間は全て敵だ!何が幻想郷だ!!!忘れ去られた物の理想郷!?そんなモンなんて存在する訳が無い!!ここは所詮泡沫の夢!!すぐに儚く弾けて消える!!我らが神様が喰い荒らす!!何も残らない!!残さない!!理想郷なんて、それこそ幻想なんだ!!そんなモンがあって、何で……何で!!!アイツが、何で……何でなんだよッ!!!」
喚き散らし、魔力を解き放って周囲を薙ぎ払う。それは皮肉な事に、奴が嫌う人間の子供の癇癪のようだった。
リィン
鈴の音が鳴った。白い雷が無数に降りそそいできた。
「嘘過ぎない?」
あんまりな光景に思わず口に出た。魔力を総動員して全力で防御する。
白い雷は、猫の神の食事行動だ。
俺も、幽香も、鍋島も、その破壊と暴虐の嵐に全力で耐えることしか出来なかった。
ただその嵐の中でも、まるで散歩に出かけるように空を飛んでいる一人の巫女がいた。
『にひっひひひ、お前本当に人間かよぉ!!?』
「さっきからリンリン五月蠅いのよ。無駄な抵抗しないでさっさとぶっ飛ばされなさい」
「……や、嘘過ぎない?」
畜生が成りあがったとはいえ、相手は神である。言葉通りに生物としての格が違う。
だと言うのに、霊夢は雷が降り注ぐ嵐の中を漂うように飛び、何気なく放った弾幕全て急所に叩き込んでいる。普通に俺より強くね?
白雷が霊夢に直撃した。と思ったら霊夢の身体をすり抜けて、地面に当たる。霊夢の放った弾幕は避けられた。と思ったら吸い寄せられるように神の核に当たる。
神VS人間という構図でありながら、その内容は圧倒的なワンサイドゲーム。危ない事も無く、淡々と決着が着きつつあった。
霊夢が大技を放ち、それが猫の神に直撃した。それで、終わり。宣言通り神を叩きのめした霊夢は、そのまま外の世界に繋いで猫の神を叩き出した。
「さて、終わったわよ。それで?そいつ等も幻想郷から叩き出すの?」
そいつ等というのは、先程の白雷の嵐に耐えられなかった猫の群れと、耐えはしたが満身創痍の鍋島の事だ。
鍋島は自身の力の供給源である猫の神があのザマだったから、現在はちょっとした魔法が使える猫程度の危険度である。ぶっちゃけそんな危なくない。そして猫の群れだが、同じように力の供給源だった猫の神と鍋島が
「要するに叩き出さなくても別に害はないって事ね」
「むしろ下手に叩き出したら猫共の信仰心で猫の神が復活する時期が早まるかもしれん」
「じゃ放置で良いわね」
こいつ、サボる口実があれば当然の顔してサボるタイプだ。
と思った瞬間頬をガッ!と掴まれる。
「変な事考えてるわねあんた」
「なんえそーおおっは」
「勘よ」
勘やべえ。
と霊夢とじゃれてたら、未だに変化したまま残っている俺の尻尾をギュッ!!!と握りつぶさんとする存在が。
もの凄い不快感に眉をしかめながら幽香の方を見れば、先程の白雷でやられたのか扇情的なまでにはだけて、ボロボロの下着が丸見えだった。……あ、ピンク。
「それじゃあ私はこの人間に用があるから」
「待ちなさいよ幽香。コイツに出会ったのは私が先なんだけど?」
「あらそう。それで?」
「言わなきゃ分からない?頭大丈夫?」
チラチラ見える幽香のピンクと下の緑を楽しんでると猫化した耳が千切られんばかりに引っ張られる。痛いし不快感が凄い。まるで梅雨の時期に加湿器とストーブつけて眼前に40代のピザデブがシャツ一枚でヨタヨタ踊ってる様を見せられているかのような不快さだ。
「なに堂々とガン見してんのよ!!乳か!男の人はやっぱ乳の大きさか!」
「霊夢は貧相だものね♪」
「成長途中なだけよ!」
確かに幽香のおっぱいは目を引くが、美しさと言う意味では霊夢も負けていない。胸は控えめだがしっかりと有るし、腰回りの細さは脱がした時にグッと来そうだ。それに胸の大きさに関しては育てようと思えば幾らでも大きく出来るから全体的にスレンダー体型の霊夢の方があ"あ"あ"痛だだだ!!尻尾が取れるッ!!
「私の美しさが分からないと言うつもりかしら?」
「あらー仕方ないわよねぇー?だって幽香って
ビキリ
レンガの壁にヒビが入ったかのような音が幽香から聞こえた。後そろそろ俺の尻尾が嫌な音を立てて千切れそう。
「…………デブじゃないし、ちょっと骨が太いだけだし」
「いや重要なのはバランスだから、仮に幽香並みの胸の大きさで霊夢並みに腰が細かったらちょっと怖い。むしろ幽香はもっと腰回りに肉を付けた方が絶対エロい"っだだだだだ!?耳ッ!!耳に穴開くからヤメレ!!」
嫌もう。コイツら俺が丈夫だから痛いで済んでるってこと忘れてない?これが本当の猫ならもう耳取れてるし尻尾もつぶれてるからな?
尻尾と耳を潰されんばかりに握られている痛みと不快感に俺の前の尻尾も萎え萎えである。
……この魔法は使いたくなかったが、非常事態だ。四の五の言ってられない。
水属性魔法:ローションボディ
「っ!?なによこれ!?すごいぬるぬるする!?」
「っあ、この、待ちなさい!!」
全身の汗腺から多量の汗を出し、それをぬるぬるのローションに変える。何に使うんだこの魔法と思っていたが、まさか役に立つ時が来るとは……。
拘束から逃れ、全力で逃走する。あのままアイツら二人に捕まってたら何されてたか分かったもんじゃない。最悪死んでたな。
べたべたの身体を引きずって、そういえば結局朝飯食ってねえなあと思い出した。
で、後日。人里で飯を食った帰りがけに霊夢と幽香にばったり会い、ぶん殴られて里の連れ込み宿に強引に引き込まれたのはまた別の話。
Q.エッチシーン無いやんけ!それ目当てで小説みてんの!
A.気分で書いてるのでそういう日もある。
Q.気分で書く小説って何なんですか?
A.ぜんぜん分からない。俺は雰囲気で文章を書いている。
・霊夢
堕ちたな(確信)
・ゆうかりん
最初に白雷から守られた時に主人公に対する好感度がストップ高状態。当人強すぎて守られる機会なんて今まで無かったからキュンと来た。だがそれはそれの精神。
・鍋島
雄の三毛猫という超珍しい存在ゆえに神に目をつけられた、ある意味不幸な猫。長く生きすぎて狂ってる。
・猫の神
『面白そうだったから』という理由で博麗の巫女と最強と呼ばれる妖怪に手を出した。好奇心は猫を殺すんですねぇ。
・主人公
後日猫の尻尾と耳は取れました。痛かったそうです。
主人公に名前……要る?(作者は何も考えて無いので)
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要る
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要らん
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むしろ私が良い案を持っている!!