今井リサの弟ですが、諸事情で異世界転生させられました。 作: 提 督
目覚めはとても自然だった。
直前までのやり取り、感情、戸惑いは
触れられるほど確かに感じられ、
そしてその焦燥感はいつもの自分のベッドから跳ね起きて
一つ隣の部屋の姉の部屋へ飛び込むまで続いた。
ドン っと普段はそんな雑に扱われないであろうドアが開かれると、
中には誰もいなかった。
もしかしたらリサ姉も何かに巻き込まれたのかも…
もしそうなら…
…
「はぁ…
……何やってるんだろ。」
夢の内容が衝撃的だったからってどうやら寝ぼけ過ぎたようだ。
異世界転生って、小説でもゲームでもないのだから
そんな突拍子もないこと起こるはずない。
ともかく、姉からは勝手に部屋に入るなと言われている。
早いところここからは去ったほうが良さそうだ。
こんなことリサ姉に知られたら流石に笑われ…
「ーーーっ」
「ん?」
今リサ姉の声が聞こえたような?
「---きな
ーーーゆ、きな」
空耳じゃないようだ。
カーテンの向こうから聞こえる。
つまり、リサ姉は友希那さんの家に居るらしい。
本当ならばいつ帰ってくるかもわからないから一刻も早く出ていくのが正解なのだろう。
しかし、妙な好奇心はそれを許してくれなかった。
おそるおそるカーテンをめくって外を見ると、
夕暮れで少し暗くなって来た外と友希那さんとリサ姉が写るシルエットが見える。
くんずほぐれつ激しく動くシルエットとかすかに聞こえてくる嬌声。
少なくとも僕が知る中でそれが示すのは一つだった。
しかしその妙な好奇心、あるいは違和感はまだ僕をつかんで離さなかった。
気になるからどうするということもないのだが、どうしても気になる。
当然ながら年上の女性二人の逢瀬に入っていきたくもないし、
前提として、最愛だとしても姉の裸体など見たくはない。
…手に持っていたスマートフォンとに気が付いたのはその時だった。
いつの間にか握っていた、
いや、寝ているときからずっと握りしめたままだった見慣れた。
スマートフォンの画面には見たこともないアプリが起動されていた。
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「姉さんって友希那さんと付き合ってるの?」
「え、あんた知らなかったの?」
「……いや…何となくは知ってたけど。」
「一年半ぐらい前だったかしら、目に見えてはしゃいでいたわよ。」
「バレンタインの時だから一年と3カ月前だろ?」
「あら、そうだったかしら?
どっちにしろ友希那君だったらママは大歓迎よ。」
「ふーん。」
結論から言えば僕は異世界に来てしまったようだ。
好奇心とむず痒い違和感に負けた僕は不徳なことに
セックスしている二人をカーテンの隙間から覗いた。
転生特典とやらのアプリで自分を透明化して
友希那さんのベランダにジャンプするのは思いのほか簡単だったが、
リサ姉に性器を挿入している友希那さんを見た時は危うく声を漏らすところだった。
失礼と思いつつも局部をまじまじと見てしまったが、
どう考えても自分についているものと同種のものだった。
ついでにそのあとの検証で違和感の正体も割れた。
時間が2年と半年ほどさかのぼっている。
つまり、僕は中2、リサ姉は高1の5月ということだ。
だが、逆に言えばその程度しか変わっていなかった。
被害者の身で言うのはおかしいかもしれないが、
奇妙なことに巻き込まれたにしてはそんなに支障はないのかもしれない。
事実、こうして家族と一緒にリサ姉の作った筑前煮を食べている。
作った本人は疲れたから後で食べると言って上で寝ているが。
…あれだけ運動したなら、そりゃ、ね?
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それから5日後のことだった。
「あ、君は…」
「え? あ、友希那さん。」
商店街を歩いていると性別の変化故に
少しだけ低くなった声で話しかけてきたのは友希那さん本人だった。
「買い物?」
「はい、本を買いに。
友希那さんもですか?」
「ああ、買い出しを母さんに頼まれてね。」
「練習とか忙しいのに大変ですね。」
「練習?」
「はい、バンドとか…」
少なくとも僕のこの発言は間違ってはいなかった。
この時期はRoseliaの結成直前だが、
友希那さんは既に歌姫と言われていたはずだったからだ。
姫じゃなくても似たような名前でちやほやされてると思っていた。
「そういえば……言ってなかったね…」
「はい?」
友希那さんは今までに知っている友希那さんとは似ても似つかないか細い声で
それでも確かな声で告げた。
「私は音楽を辞めたんだ。
今の私には音楽にすべてをかける覚悟はないから。
…リサの方が、大切なの。」
テルーの唄が好きなのですが、
最近「こころ、オナニー、例えよう」としか聞こえず困ってます。