グレイフィア・ルキフグスはその日、困惑しながら目の前の少年を見つめていた。
彼女を召喚したのは、どこにでもいる普通の少年であり、服装を見る限りでも裏に関係している人物とは思えなかった。
「原因はこれですか」
そう言いながら、少年の手の中に納まっている紙を見つめる。
少年の持っている紙は、簡単に言えば契約の紙であった。
人間と悪魔との間で契約を行う際に悪魔を召喚する事ができる魔法陣があり、その紙にはグレイフィア・ルキフグスの一族である、ルキフグス家の悪魔を召喚する事ができる紙であった。
そして、文献でしか見た事のなかったが、少年の持っている紙は厄介な物だと記憶に覚えていた。
(代償を支払わずに一度だけ悪魔を従える事ができる魔法陣。
まさか、こんな少年が持っているなんて)
少年の持つ魔法陣の紙は通常ならば召喚者が支払わなければならない代償を一度だけなくす事ができる悪魔にとっては厄介な代物だった。
所持した者によっては、その悪魔を使い好き勝手に暴れる事も、聖職者が使えば恰好な餌になる事も可能なっており、特に注意が必要な物だった。
「召喚に求め、参上しました。
グレイフィア・ルキフグスと申します。
主よ、願いをどうぞ」
(平常心、とにかくここは従うしかない)
目の前の少年が何を求めているのか分からない以上は逆らわない方が良い。
そう判断したグレイフィアは頭を下げながら、少年を見つめると
「えっ、主?
何、どういう事?」
「・・・もしやと思いましたが」
少年の様子を見つめると、未だにこの状況を掴めていない様子を見て、グレイフィアはすぐに考えを切り替えた。
(この少年は本当に偶然に紙を手に入れたのでしょう。
周りの状況から考えても、それが妥当でしょうが)
ふと、グレイフィアは部屋の状況をあらためて確認するが、少年の部屋という割には狭く、グレイフィアと少年だけで既に部屋が満ちておいた。
「ここはあなたの部屋なんですか?」
「まぁ、そうです。
俺、なんていうか、いらない子みたいで」
そう言いながら、少年は乾いた笑みを浮かべていた。
そんな寂しそうな表情を見ると、グレイフィアはため息を尽きながら、少年を抱きしめた。
「なっなにを!?」
「私を召喚したあなたは今は主です。
主が望むならば、どんな事でもしましょう」
そう言いながら、少年の頭を撫でながら、彼女は見つめる。
「あなたが必要な存在になりたいならば、私の力で家族を認めさせましょう。
邪魔な存在だと思うならば、私の力で消してあげましょう。
あなたは一体何を望みますか」
そう言いながら、少年に願いを促すようにグレイフィアは頭を撫でていくと、少年は
「えっと、お姉さんの暖かいの、もっと感じたい」
「私の?」
悪魔とも言える言葉で少年に対して復讐を促すつもりが、彼が求めたのは他でもない自分自身だった。
「うん、こんなに人と触れ合うのは初めてだから」
そう言いながら、笑みを浮かべた少年はグレイフィアを抱きしめた。
そんな笑みを見たグレイフィアは自分の身体が一瞬揺れるのが分かるのと同時に
「分かりました」
願いを叶える為に、魔法陣を開き始めた。
少年の部屋に施されたのは人避けと声を外へ漏らさない術式だった。
「さぁ、こちらへどうぞ」
そう笑みを浮かべながら、グレイフィアは普段は誰にも見せないような笑みを少年に向け、誘う。
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