「・・・」
ゼノヴィアは元教会の騎士である。
彼女は一週間前、とある堕天使との戦いにおいて、彼女の心の支えともいえる神の死を知った後、彼女は生きる気力を失っていた。
これまで彼女を支えていた信仰心は全て無くなり、まるで空っぽの人形のようになっていた彼女は戦いが起きた場所から離れ、一人公園で放心していた。
「ほら、なんか食べないと死ぬぞ」
「・・・すまない」
そう言いながら、この一週間、彼女が過ごしていたのはとあるマンションの一室。
部屋の持ち主である男は近所に住む大学生であり、一人暮らしには十分な程の大きさの部屋で一人放心していた彼女を部屋に連れ込み、世話をしていた。
「それにしても、あんな恰好していたら普通に警察に通報されるぞ」
「いや、あれは教会でのいや、なんでもない」
「そうか?」
男は裏の世界とはまるで関係ない人物であり、こうして過ごしていく中でゼノヴィアが感じたのはどこまでも普通のお人好しである。
見知らぬゼノヴィアの事情を聴かず、部屋で世話をしてくれるのは何か目的があるのではと疑問に思ったが、神の死の事実の前にどうでもよくなり、そのまま彼の世話になっていた。
そうして、彼との一週間の間、僅かだが、彼女の心の傷も徐々に治っていき、恩人である青年と僅かだが、言葉を交えるまで回復する事ができるようになった。
「なんであなたは私を助けてくれたんですか?」
「理由を知りたいか?」
「はい」
正直に言うと、裏の世界を知っているゼノヴィアにとっては彼がこれからどのような事をしようと関係なかった。
好きに売り払われようが、今の彼女にとってはどうでもよかった。
「放っておけなかっただけだ。
そんな何もかも絶望したような君を。
それだけの理由だ」
「本当に?」
「嘘をついて何になる?」
そう言いながら、ゼノヴィアにコーヒーを渡しながら答える。
「アニメや小説でも困った人がいたら助けるのは恰好良いだろ?
だから俺もそんな恰好良い存在になりたいから助けた。
まぁ勝手な自己満足だよ」
「自己満足?」
そこまで言われ、少し息を吸い込みながら、ゆっくりと尋ねる。
「もしも、その信じていた人が死んでいたら、どうなるんだ?」
そう戸惑いながらもゼノヴィアはゆっくりと彼を見つめる。
「死んでいても、その人の意思を受け継ぎたい。
そう思えれば良いんじゃない?」
「っ!!」
その言葉はゼノヴィアにとっては衝撃的だった。
死んでいても良い。
「俺はその人のようになりたい。
死んでいるのは確かに悲しいけど、悲しいから止まっていたら、その人の為にならないだろ」
「主の為に」
ゆっくりと、だが確かにゼノヴィアの心の傷を埋めるように息を吸う。
「主というのはどんな人か俺は知らないけど、ゼノヴィアはその人のようになりたかったんだろ?
だったらその人に少しでも届くように歩けば良いだろ?」
「・・・それが、余りにも遠すぎてもか?」
「少しでも近づけば、それで良いじゃないか?」
その言葉を聞いて、ゆっくりとだが、ゼノヴィアは落ち着いたように笑みを浮かべる。
「そうだな、主は死んで、もういないかもしれない。
けど、主のように救いの手を差し伸べる事は私にもできるかもしれない」
その一言に納得するように頷く。
「ありがとう、本当に感謝している」
「それは良かった」
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