「やはり、不味いわね」
そう言いながら、目の前で置かれた紅茶を一口飲みながら、ため息を吐く。
「やっぱりか」
それに対して、その紅茶を飲んだ相手の感想に納得するように頷く。
そのまま紅茶を飲んだ金髪の少女、薙切えりなはため息を吐きながら、目の前にいる少年を見つめる。
彼女は腰まで伸びる髪に豊満な身体、高校生としてはあり得ない程のスペックを持つ女性だった。
「あなたって、色々とバランスが悪すぎるわ」
「そうか、姉さん」
そう言いながら、えりなと同じ金色の髪をしている少年、芽瑠は首を傾げる。
彼は小学生並の身長に僅かに整えられた髪、他の高校生と比べても小学生と間違える程であり、えりなが知らない所で先輩である茜ヶ久保ももと共に身長を伸びる方法を模索している。
「料理の才能がこれ程にない子はいないわ」
「それは分かっているよ」
そう言いながら芽瑠は納得するように頷く。
薙切芽瑠は生まれてから、自身で作った料理全てを満足に食べる事はできなかった。
目玉焼きを作れば、瞬時に炭火に変わる。
トースターでパンを焼けば、トースターが爆発する。
どんな人間でも作れるような簡単な料理ですら作る事ができない料理人という職業には決してなる事ができない少年。
そんな少年が生まれたのは料理に全てを捧げるような一族、薙切である。
そして、料理の才能が一切ない為、両親にも見捨てられる形で放置されていた。
だが
「料理はとんでも不味いけど」
そう言いながら、えりなはそのまま先程まで少年が紅茶を煎れた際に使われた茶葉を使い、自身でお茶を入れ、そのまま互いに飲む。
「っ!!」
同時に襲ったのは先程とは比べものにならない衝撃だった。
「本当に恐ろしい才能ね」
一見、自分の煎れた紅茶に対して褒めるように言っているようだが、それは違っていた。
「茶葉の量も、お茶に使う水、それに温度。
そして食器。
全てにおいて完璧なのに」
「それは良かった」
そう言い、えりなの煎れた紅茶を飲みながら、笑みを浮かべる。
芽瑠には料理人としての才能は一欠片もない。
だが、食材を見る目は違った。
料理に必要な材料、それに合う食材、そして料理方法。
料理を行う前の食材選びから下準備など、料理に直接関らない部分においてはえりなが知る限り誰より才能に溢れている。
そうした事からえりなは自身の『神の舌』と同じ食材を見る力がある『神の目』を持っていると考えている。
そうした神の目を持った芽瑠は自身が捨て石だと分かっている様子だったが中学生時代から多くの行事でサポートとして参加しており、様々な料理人とコンビを組んでいた。
そしてえりなが知る限り、弟と共に行った食戟で負けるのが想像できない程に、彼は裏方の才能に溢れていた。
「本当にあなたは」
そう言いながら、えりなは普段は見せない笑みで芽瑠の頭を撫でる。
父から洗脳染みた教育を受けている間も、彼が持ってくる材料で作る菓子。
それを共に作る時の楽しさや美味しさを分け合った事で、彼女は大きく助けられた。
「でも姉さん。
家事をもう少し頑張ろう」
「うっ」
そう言いながら、改めて自分の部屋を見て、気まずくなる。
「とりあえず掃除するね」
「はい」
そう言いながら芽瑠は掃除を始める。
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