「さて、来てしまった」
その日、シノンこと、朝田詩乃に指定された時間通り、とある場所へと春樹は向かっていた。
「それにしても、懐かしいな」
そう言いながら、目の前にあるのは詩乃が今でも住んでいるアパートだった。
GGOの事件の時に一度訪れたが、それ以来、来た事のなかった場所でもあった。
そう思いながらも、インターホンを押すと、中から出てきた詩乃はこちらを確認すると
「来てくれたのね、さぁ入って」
普段と変わらない態度で中に案内する詩乃に対して、春樹は戸惑いを隠せないまま
「あっあぁお邪魔します」
そう言って、詩乃に言われた通り、春樹はそのまま部屋に入っていた。
部屋の内装はシンプルで一人暮らしには困らない程度の広さであり、促されるままに机の前に座ると、春樹はあらためて詩乃に尋ねる。
「その、なんで俺と浮気を?」
「そんなの好きだったからに決まっているじゃない」
恐る恐ると尋ねた内容に対して、素の表情で答えた詩乃に対して、春樹は顔を赤くしながら目を回す。
「いやいや、どこに!?
自分でも言うのはあれだけど、親友の彼女と不倫関係なのに、その親友の妹と付き合っている最低野郎だよ!?」
「それがどうしたの?
不倫の関係はこの前聞いたので納得したし、付き合っているのもあなたが好きだったからでしょ」
聞いたら確実に嫌われる内容を離したが、それらはどうでも良いようにコーヒーを飲みながら詩乃は春樹を見つめる。
「あなたの一面で最低なように、私はあなたに惚れた一面もあるのよ。
その理由だけあれば、十分。
それであなたと関係を持てるならば、十分すぎるぐらいよ」
「なんだか、色々と凄いな」
この時、下手な男よりも男らしいなと春樹は密かに思いながらも、真っすぐ向けられている好意に対して戸惑ってしまう。
明日奈との関係は共依存でできた不倫。
直葉との関係は昔から続いている恋愛。
だが、目の前にいる詩乃から向けられる執着とも言える愛情は春樹にとっては戸惑いを隠せなかった。
「結婚できなくても良い。
だけど、あなたのお嫁さんになる人よりも、もっと近い関係になりたい。
ただ、それだけよ」
そう言って、変わらない笑みを浮かべた詩乃に対して、申し訳ない思いで一杯になっていた春樹に対して、詩乃はそのまま春樹に抱きしめた。
抱きしめた瞬間、春樹はすぐに感じたのは他の女性との違いだった。
春樹と付き合っている直葉や浮気相手である明日奈とは違い、豊満な胸の感触は確かになかった。
だが、それとは別に触れた瞬間に心臓の音や全身の柔らか身体の感触に驚きを隠せなかった。
「あら?
やっぱり、あの二人に比べたら胸が小さくて不満かしら?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「別にそこに関しては否定しなくても良いけど」
「そんな訳じゃないよ。
ただ、その、聞こえるから」
「あら?
何が聞こえるのかしら?」
そう言いながら、詩乃は笑みを浮かべながら、ゆっくりと春樹の頭に手を添えると自分の胸元へと寄り添う。
そこから感じたのは、他の二人に比べると胸の大きさは明らかに小さいが程良い大きさで柔らかい感触に包み込まれ、抱き着いた時に聞こえてきた心臓の音がさらに近くで聞こえる。
「あっ」
「ふふっ」
制服越しだが、確かに感じる柔らかい感触に驚きを隠せず、そんな春樹の様子を見た詩乃はそのまま春樹の髪を撫でる。
ゆっくりと丁寧に撫でられ、普段は感じている快楽とは違う安心感が春樹を包み込んでいた。
そんな様子を見つめていた詩乃は次第に彼の頭を自分の膝の上に乗せ、膝枕にして乗せる。
「どうかしら?
少しは気持ち良いかしら?」
「あっあぁ」
「そう、良かった」
その言葉を聞き、笑みを浮かべた詩乃は春樹が落ち着くまで撫で続けた。
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