ルーラーとは聖杯戦争を管理する為のクラスである。
だが、本来ならば召喚されるはずのないクラスではあった。
あったはずだ。
「いやぁ、未来のお米って、結構美味しいね、マスター!
あっこっちのおかずもなかなか!」
そう言いながら、山盛りの白米を食べている彼女こそ、そのルーラーのサーヴァントである卑弥呼だ。
本来ならば魔術の事など、何も知らなかったはずの俺をマスターに選んだ彼女。
その理由を聞いても
「んっ、昔に、いや未来だったかな?
まぁ、どっちでも良いけど、とりあえず君がマスターになってくれると約束したじゃない」
そうよく分からない事を言っていた。
卑弥呼と言えば、予言を行っていた事で有名なので、その能力で見た事を言っていると思うが、いまいち信用できない。
「いや、それにしても、食べ過ぎだろ、ルーラー」
そう言いながら、既に積み上がっているお茶碗を見ながら言う。
「大丈夫だよ、マスター。私にはこの程度じゃ太らない体質だからさ!」
そう言って笑う彼女はとても魅力的に見えるのだが……。
「いや、そもそもサーヴァントは食事が必要なのか?」
「私は別に良いけど、マスターからの魔力提供が少なすぎるから」
「それは、仕方ないだろ、俺は元々魔術師でもなんでもないんだから」
俺はため息をつくしかなかった。
「あーもう分かったよ。好きにしていいから、食べるなら早くしてくれ」
「本当っ、それじゃ、頂きまぁす」
嬉しそうな顔をしながら箸を動かす彼女に苦笑しながら、自分の分のご飯を口に運ぶ。
「それで、これからどうするんだ?」
「そうだね、まぁまずは少し気になる所があるんだよね。
どういう訳か、マスターの数が異様に多い場所があるんだよ」
「そこって、どこなんだ?」
「マスターの学校」
思わず口に含んでいたお茶を吹き出しそうになる。
慌てて飲み込むとむせ返る。
それを心配して背中をさすってくれるのはありがたいのだが…… その手の動きがいやらしいというかなんと言うか……。
結局咳込みが落ち着くまで数分の時間を要した。
ようやく落ち着いた所ですぐに卑弥呼に目を向ける。
「それは本当なのか!?」
「本当本当。
数えただけでも四人?いや一人はなんか違うから三人いるよ。
まだ、セイバーが召喚されていないからなのか、それともまだお互いに正体を知らないのか、戦う気配はないね」
確かにそれは朗報かもしれない。
だが、同時に不安でもあった。
何故なら、彼女が言った人数は俺以外の全員なのだから。
つまり、俺以外にも聖杯戦争に参加している人間がいる事になるのだ。
そして、それが敵となる可能性も十分にある。
しかし、そんな俺の考えを見透かすように卑弥呼は微笑みかけてきた。
「安心して、マスター。
今のところ、他のマスター達はお互いの正体に気づいていないみたいだし、もし気づいたとしても、いきなり襲ってくるような事はしないはず。
だって、こんな状況で戦っても意味がないもんね」
そう言われてみれば、そうだが
「けど、俺はそれよりも、他の皆が襲われないか、心配なんだ。
俺にはお前がいてくれるから、安心だけど、もしも皆が巻き込まれてしまったら」
それを考えると、震えが止まらない。
それは、偽善かもしれないが、それでも、そんな光景を見たくない。
「安心しなさい」
そう俺の不安を察するようにいつもの陽気な声ではなく、巫女を想わせる声で話しかける。
「私は、それを防ぐ為にここに来ました。
民を守る為に来たのです」
そう言って優しく抱きしめてくれた。
彼女の温もりを感じながら、その胸に抱かれ、頭を撫でられる。
それだけなのに、どうしてだろう、心の底から安らぎを感じる事ができる。
まるで、母親に包まれているかのような錯覚を覚えるほどに。
「大丈夫ですよ、マスター。
私が守ります、あなたもあなたの大切な人も全て守って見せましょう。
だから、今はゆっくりと休みなさい、後の事は全て私に任せれば良いんです」
耳元で囁かれる言葉が心地よい。
そのまま、意識が遠退いていく感覚を覚え
「って、もう学校の時間じゃないか!?」
一気に現実に引き戻された。
「マスターったら、寝坊助さんですね~。
まぁ、昨日も遅くまで起きていたようですし仕方ありませんねぇ」
「いや、ルーラー、思いっきり寝させようとしただろ」
「さぁ~、何の事でしょう?」
そう言って笑う彼女にため息しか出ないが、いつまでもこうしてはいられない。
「とにかく、行くぞルーラー!」
そう言って立ち上がると
「了解しました、マスター!」
そう言って彼女も立ち上がり、そのまま学校へ向かう。
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