運屋という少年は対魔忍の中でも奇妙な立ち位置である。
アサギの知り合いの対魔忍夫婦の息子で、両親が任務で戦死したことをきっかけに引き取られ、成長し五車学園に入学。
だが、対魔忍としての最もな重要だろう忍術を取得しない落ちこぼれだった。
しかし、それとは別に米連が開発した数々の兵器に対しては一瞬でその使い方が分かり、十全以上の性能を発揮する事ができる才能の持ち主であった。
中でもバイクの操縦に関しては、裏の世界に敵う者はおらず、彼が操るマシンは全てを蹂躙し破壊する「災厄」として恐れられた。
「それにしても、あなたがこのような事を頼むなんてね」
そう言いながら、アサギを運屋を目の前にしながら言う。
彼の手には模擬戦用のショットガンがあった。
「約束は覚えているか?」
「えぇ、30分以内に1度でも有効打を決めると言う訓練になり、成功したらなんでも言うことを聞くだったかしら。
普段のあなたからは考えられない要求ね」
「俺はあなたには感謝している。
だけど、それと同時に叶えたい望みがある」
「それは何かしら? 私に出来る事なら協力するわよ」
「俺と勝負しろ。
そして勝った暁には……」
「負けたらどうするつもりなのかしら?」
「その時は、勝負の後だ」
「それは一体なんなのかしら?」
「それは」
その言葉と共に運屋は俯いた。
だが、その表情は隠し事はあるが、決して悪事を働く顔ではなかった。
「まぁ、良いわ。
それでは、始めましょう」
その言葉を合図に試合は始まる。最初に動いたのはアサギの方からであり、彼女は素早く懐に入り込むと同時に、ショットガンによる一撃を放つ。
それに対して運屋は避ける事もせず、まともに喰らう。
銃声によって耳鳴りが起きる中、アサギは即座に距離を取る。
本来であればこの時点で戦闘不能となるのだが、運屋の方はまるで何事もなかったかのように立ち上がり、再び距離を詰めて来る。
「あら、さすがは対魔忍だけあって頑丈なのね」
「これぐらい大したことはない」
「そうかしら、私の攻撃を受けてまだ動けるなんて随分とタフネスじゃない。
それだけじゃなくて、スピードも申し分なし。
これは想像以上ね」
そう言って笑うアサギに対して、運屋は構えたショットガンを再び撃ち放つ。
今度は回避されてしまい命中こそしなかったが、それでも彼女の動きを止める事は出来た。
「ふむ……確かに速いけど、それだけで私の動きを止められると思ったのかしら?」
「あぁ、少なくともアンタを倒すためには必要だから」
そう叫びながら彼は別の方向へと引き金を弾く。
「何を狙ってっ」
その瞬間、背中に鋭い痛みがある。
振り向くと、そこには先程避けたはずの模擬戦用のショットガンの弾丸だった。
「これは一体」
「弾丸で弾道を変えた。
それだけだ」
「まさか」
それと共にアサギは運屋が行った技術に驚きを隠せなかった。通常ならば狙った所へと飛ばすためにはまず銃弾を発射しなければならない。
だが、それをあえて行わず、そのまま撃つことで軌道を変化させ、相手に当てる事なく背後からの攻撃としたのだ。
「なるほど、なかなか面白い発想をするわね。
だけど、そんな芸当が出来るのはこの世界の中では限られていると思うわよ」
「だろうな」
事実、この技術を使えるのは米連にも存在はいるが、その中でもトップクラスの者しか出来ない事だった。
「まぁ、良いわ。
それであなたの望みはなにかしら?」
その言葉と共にアサギはゆっくりと聞き出す。
「その、アサギさん。
一緒に、その行為を行って下さい」
「えっ、それって」
その言葉にアサギは、思わず眼を見開く。
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