意識を失った。
温泉での行為を終えた後、俺は宿に寝転がっていた。
より正確に言えば、温泉から出た後も、そのまま部屋での行為が本当に朝まで続いた。
正確には。
「これは」
俺は、現在、抜け出せない状況であった。
それは。
「げへへぇぇ」
「うぅん」
昨日、夜遅くまで行為を行っていた紫苑によって、抱き枕にされている為である。しかもただ抱き着かれているだけではなく、両足でホールドされており身動きが取れなくなっていたのだ。
それだけならまだ良いものの、さらに最悪な事に紫苑の方も気持ちよさそうに眠っており、それを起こさずに抜け出して部屋に戻るのは難しいと言わざるを得ない状況にある。
「どうしたものか」
「むにゃむにゃ……」
そんなことを考えていると、更に強く抱きしめられる。その際に胸の柔らかさが伝わってくるのは勿論の事だが、同時に太腿による圧迫感もあったため、かなり苦しい思いをする事となった。
「ちょ……待ってください紫苑さん」
「…………」
しかしそれでも起きる気配はなく、むしろ俺を逃さないように拘束を強めてきたくらいだ。
「このままだとまずい」
この状態では、いつまた襲われてしまうのか分からない。どうにかして脱出を試みる必要があるだろう。
すると、そこに丁度、通りすがりのリムルさんが。
「ヘルプ! ヘルプ!」
なんとか、声を出しながら、声をかける。
それに気づいたリムルさんが、こちらに気づいた。
そして。
「ガンバ」
その一言と共に去って行ってしまったのであった。
「ちょっ!? 助けてくださいよ!!」
しかし無情にも扉は閉められてしまい、助けを求める叫びは虚しく響くだけであった。
「えへへぇぇ、離しませんよぉ」
そして、紫苑は寝ぼけており、まるで俺を離す様子はない。
人間である俺の腕力では、紫苑の拘束を解く事は出来ない。
柔らかい女体に密着されつつ、腕力で負けているという何とも言えない状況に陥る事となった。
「うぅ……やばい」
この状況は非常にマズイ。
この状況だと、また犯されてしまう。
そんな考えをしていても、紫苑が抱き締める力は弱まらない。
「……まぁ、けど」
誰かに求められている。そう思うだけで幸せを感じる事が出来る気がしたのだ。
こんな事を考えている時点で、既に俺は末期なのかもしれないけれど。
「あぁもういいか」
諦めて、そのまま受け入れる事にする。
そう考えると、不思議と落ち着いてきたような気もしていたからだ。
それから暫くの間、俺は紫苑に抱き着かれていた。
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