「おい、ひとり、落ち着け!」
「落ち着けって、言われても」
ひとりは、これまでのようにこちらに迫る。
彼女自身、身に纏っているのはピンクのジャージのまま、こちらに近づける。
ジャージのファスナーを開きながら、こちらを見る。
先程まで、身体が熔けていたとはいえ、既に再構成されたその身体に、俺は思わず目を向けてしまう。
「うわぁ」
普段は、ジャージに隠されており、胸元もしっかりと閉められている。
そんなジャージから解放されれば、そこには、とても豊満な胸があった。
大きいというわけではない。
しかし、形が良く、それでいて、肌も綺麗だ。
まるで桃のような色をしているのだ。
「ちょっ、落ち着け、ひとり!?」
「落ち着けなくしたのは、あなたのせいでしょ」
「確かに、なんか怪しい液体が混ざっていたのは、認めるが、それは元々、お前が熔けたのが原因じゃないのか」
何やら、今回は押しが強いひとり。
なんとか引き離そうとするが、ジャージの下は下着姿だったようで、そのまま迫ってくる。
俺とて男である。
しかも、目の前には大きな胸がある。
正直、興奮してしまう。
だが、相手はひとりだ。
もしも、こんな事がバレたらどうなるのか。そう考えると、恐怖しかなかった。
「ふぅ……よし、落ち着こうか、とりあえず落ち着こう!」
俺はひとりに言い聞かせるが、当の本人は聞く耳を持たない様子であった。
そして、こちらに向かってくる。
「私じゃ、駄目?」
そう、こちらの方に視線を向けるひとり。
だが、その瞳からは涙が流れており、今にも泣きそうな顔になっていた。
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
「なら、いいよね」
「待ってくれ、頼むから」
ひとりはもう我慢ができないといった様子でこちらに迫ってくる。
いつもは情緒不安定な感じはないのに、どうして今日に限って、このような行動に出てしまったのか。いや違うのだろう。きっとこれは俺が原因なのだ。だからこそ逃げなければならないのだ。
けれども、目の前にいるひとりの瞳は本気であり、俺を逃さないようにしているように感じた。
「ひとり」
「ずっと一緒にいたから、だからかもしれない。それじゃ、だめ?」
問いかけてくるそれは、告白だろう。その言葉に、俺は思わず頷いてしまう。
すると、目の前の一人はとても嬉しそうな表情を浮かべながら抱きついてきた。
「なんというか、ここを本来の目的で使う事になるとはな」
既に断れる雰囲気ではない。そのため俺は仕方なく受け入れる事にした。それに俺も別に嫌いなわけではないので問題はないのだが少し複雑な気分だ。
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