時は過ぎて、数年後。
あれから蝶屋敷の一員になった八種は腕の中に抱えている赤子を抱きながら、空を見つめる。
「よぉ、大将」
その言葉を聞き、見ると、そこには左に眼帯、そして左腕がない男がそこに訪れた。
その男の名は宇髄天元、鬼滅隊の元柱であった。
「よぅ、診察か?
だったら、俺は医者じゃないから専門外だ」
「何を言っているんだ。
今日は少し酒を一緒に飲もうかと誘いに来た。
まぁ子守りをしているようだから、一緒に月見をさせてもらうよ」
「悪いな」
そう言いながら、目の前にいる子供をあやしながら答える。
「・・・すまなかったな」
「何を謝っているんだ?」
「いや、俺が再起不能になっていなかったら、お前の女房を死なす事はなかったと」
その言葉と共に、八種が思い出したのは既に死去した女房であるしのぶだった。
「いいや、あんたは悪くない。
俺に剣の才能があったら、今でもそう思うよ」
そう言いながら、八種は自分の手を握りしめる。
しのぶが死んだ戦いから数日後、しのぶの継子であるカナヲから受け取った蝶の簪を受け取った。
あれから、鬼を作り出した元凶の消滅と共に、鬼は全滅。
鬼滅隊も今では解散し、蝶屋敷は普通の病院として運営されていた。
「それに、あいつはとっくに死ぬ覚悟ができていたんだと思う。
最後に一緒に月を見た時から、分かっていた」
その言葉と共に、思い出すのはしのぶと最後に話した一夜だった。
しのぶは自分の胸の中にある赤ん坊をあやしながら、八種を見つめる。
『八種。
もしも、私の身に何かありましたら、この子の事を頼みます』
『何を言っているんだ。
お前もここに戻ってくるんだろ』
『えぇ、そうですね。
ですが、今回の戦いはこれまで以上。
死ぬ覚悟もしなければなりません』
その言葉と共にしのぶは眼に涙を溜めながら言う。
『おかしいですね。
私、これまで死ぬ事はあまり怖くなかったけど、あなたや、この子の事を考えると、死ぬのが怖いんですっ』
『しのぶ』
そんな彼女の恐怖を和らげるように、抱きしめる。
『だけど、それ以上に、私はあなた達が大好きだから、命を賭けられる』
そう言い、しのぶは八種を見つめる。
『私に、恋を、愛を教えてくれて、本当にありがとう』
そう言ったしのぶの言葉を聞いた瞬間から、八種もまた覚悟をしていた。
「そんな事があったんだな」
その話を聞いた宇髄は頷きながら、月を見つめる。
「本当にお前は俺に負けないぐらいに愛妻家だな」
そう言って、宇髄はそのまま天井から降りる。
「それじゃあ、俺はここらで失礼するぜ」
「あぁ、またな」
そう言い帰路に帰っていく彼を見つめながら、八種もまた月を見つめる。
未だに明るい月を見つめながら、八種と赤子、そして誰にも気づかれない透けているしのぶは共に時を過ごした。
「愛している、しのぶ」
『私もですよ、八種』
そう彼の言葉に応えると共に、しのぶの姿は消えました。
それは幻だったかもしれない。
それでも、彼は笑みを浮かべていた。
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