「ティナちゃん……急にどうして……? あれ? あなた、どこかで見たような……」
ティナから人格が変わったルーは不思議そうに首を傾げ、俺のことを見つめる。
今思えば、本人的には俺のペニスを見てしまったのは相当ショックだったっぽいし、覚えてないのは当然か。
「うーんと、君を魔界から召喚した木菅凪緒ってんだけど……」
恐怖心を与えないように極力優しく声を掛けた。
「あー!! お、思い出しました……! あの時のへ、変質者の方ですよね。まさかご主人だとは思いませんでした……」
とんでもねぇ覚えられ方してるじゃねぇか。仕方ない気はするが、納得いかねぇ。
「召喚していただいたので一応自己紹介を。わ、私は魔界の色欲の魔王を務めているルーとい、言います……」
俯き気味ながらもきちんと自己紹介してみせた。さすがに普通の会話は出来るようだ。
それにしても見た目は完全にティナだが、雰囲気が全く違う。あいつはただただ鬱陶しいクソギャルビッチだったが、ルーはあどけなさのある可愛い清純派といった雰囲気を感じる。そのせいか、エッチな服装も同じはずなのにルーが着てるとギャップでゾクゾクする。
「ど、どうしたんですか? そんなに見つめて……。そのぉ……は、恥ずかしい、です……」
相当恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にしてモジモジしながらスカートの裾を握って堪えているようだった。
「悪い、色欲の魔王なんて見るの初めてだからついじっくり見てしまった」
「だ、大丈夫……です」
「で、色欲の魔王様は何をしてくれるんだ?」
「ええ、えっ……えっちなこと以外なら大体で、出来ます……」
エッチって単語言うだけでめちゃくちゃ吃って小声だったが大丈夫か? こりゃ思ってたよりも深刻そうだ。
「まだ会ったばっかだし、話がしたいかな」
「それならお易い御用です……!」
心做しか表情が一気に明るくなった。エッチなことをしなくて済むのが相当嬉しいらしい。
かなり分かりやすいタイプだ。
「それで何の話しますか? そ、そんなに踏み込んだ話題じゃなきゃ大丈夫です……」
「それじゃあ、ルーの二重人格の話を詳しく聞きたいな」
単刀直入に言ってみせる。
さすがに踏み込みすぎたか? いや、遠回しな言い方なんて器用なこと俺には出来ん。
「ど、どどどうしてそれを……?」
酷く動揺した様子を見せるルー。
まぁ無理もない。ルーにとってほぼ初対面の初会話でこの話題が出たんだ、動揺するのは当たり前だ。
「実は先にティナから色々聞いたんだ」
「ティナちゃんと先に会ってたんですね……。それなら納得です」
「そん時にあいつからルーの苦手を克服したいって相談されてな」
「ティナちゃんがそんなことを……」
「だからルーの気持ちを確かめるためにティナに変わってもらったんだ」
「私の気持ち…………」
暫しの沈黙。ルーはかなり考え込んだ様子を見せるも口を開いた。
「わ、私、克服したい……です! 苦手……」
弱々しい声から一転、この返事には気持ちを伝えようとする力強さがあった。
気持ちに応えるために俺はここぞとばかりに立ち上がり、ルーに近付く。
「よし、そうと決まれば早速苦手克服へ向けてエッチしよう!」
「え? えええ……エッチなことは無理ですっ……!」
青ざめた顔で俺から距離を置くルー。対して俺はどんどん距離を詰める。
「こ、これ以上は来ちゃ……だ、だめですっ……!」
そんな制止を振り切り、眼前まで迫る。
「……あわわわわわ……!!」
目をグルグルさせながら気絶するルーをすかさず抱きとめる。
多分ティナに人格変わっちまったな。まぁ用は済んだしいいか。
「さすがにエッチしようはいきなりすぎたな……」
「せっかくいい感じの展開だったのに台無しだから」
ルーから人格の変わったティナはそう言いながら、抱きとめられた俺の手から離れていく。
「悪い悪い。そういや、お前は人格変わってもルーで何があったか覚えてんだな。ルーはほとんど覚えてなかったけど」
「あー、あの娘はなんでか断片的にしか記憶を共有出来ないみたい。お陰でこっちでいくらエッチなことしてもほぼ覚えてないからウチ的には好都合だけど」
「そうか、なら話が早い。ルーは苦手を克服したい気持ちがあったから克服させていきたいと思う」
「だからっていきなりエッチしようは絶対違うから」
呆れた表情を向けられ、罪悪感が増していく。
「それに関してはほんとに反省してる。段階を踏んでいくべきだった」
「ウチもそれがいいと思うよ」
「実行は明日からだな。明日の朝にはルーに変えといてくれよ」
「やけにノリノリじゃん」
「俺はお前みたいなギャルビッチよりルーみたいな大人しい清純派が好きだからな。どうせ抜かれるなら好みのやつのが良い」
「あーそうですか! あとビッチじゃないし! ……そうだ! いいこと思いついた!」
「急になんだよ、いいことって」
なんかすげー嫌な予感がするんだが……。