日高は「しよ」と言った。
勿論それが何をしようという事なのか矢口は解らないなどという事はなかった。
だがしかしである。
このまま流れ、というのは日高に失礼だろう。
自分だって今の状況に至るまでに彼女に対してきっぱりと拒否の意思を示さなかったわけであるし、流されてという考えは日高だけに責任があるのだという考えだ。
(そいつは違う。俺は現に圧されちまったとはいえ、日高に心が傾いていたからこうなってるんだ。でもなぁ……)
矢口は自分を悩ませる大きな原因、視線を下げて自分の股間を見た。
(これはこれでコイツが俺に冷静になれって言ってるってことじゃねーか?)
年頃にして見た目も間違いなく良い方で、加えて体つきも十分に女性特有の柔らかさと魅力を兼ね揃えた彼女に直接瑞々しい柔肌を押し付けられているにも拘わらず、矢口の股間のイチモツは意外なことに性的な興奮を示す反応はしていなかった。
それはそれで不安を矢口は感じた。
自分が実は性的不能者だったのか、それとも純粋に動揺と理性がぶつかった事によってこうなっているのか。
後者だとしてももう少し男らしい反応をしてくれた方がまだ気は楽に感じたかも、と矢口は思った。
そんな逡巡に矢口が考え込む中、ちょっとその時間が長かったらしい。
自分の問いかけに答えず黙り込んでしまった矢口の背中に不満と不安が我慢できないレベルに募った日高が彼の表情を伺おうと後ろから覗き込んできたのだ。
そしてその結果、日高は思わず彼が気づかない程度の声を漏らした。
「あ」
顔を見るつもりがふと視界、いや無意識に興味が向いてしまったのだろう。
彼の顔を見る前に興味に惹かれるままに日高はそのまま視線を落とした。
そこには陰毛こそ多少生えていたものの、直接見てもまだそれほど衝撃は受けない、想像し易い子供のような矢口のチンチンがそこにあった。
それは流石に完全に子供のままという感じではなく、亀頭こそ皮で隠れているが、興奮して膨張すれば恐らく亀頭という名の顔は出るんじゃないかという形はしているように思えた。
しかし問題はやはり……。
「ねぇ矢口くん、それって『普通』の状態だよね?」
「!!」
黙考の状態から現実に意識を向けた矢口は驚いて声がした日高の方を向く。
見ると日高が後ろから肩越しに自分の性器を見ているのではないか。
そんな事実にかつてないほど狼狽して羞恥心を一気に感じた矢口は、慌てて両の手で性器を隠し、自分の股間に注がれていた日高の視線を遮ると言った。
「な、なに勝手に見てんだ?!」
そんな抗議に対して日高は動揺した様子も見せずに何故か単調、なんとなく険を感じる気がする声で言った。
「矢口くんだって私の見たでしょ?」
「それは目に入ったんだよ! お前みたいに自分から覗いたわけじゃないだろ?!」
「うっさい。いいから見せて」
「何を?!」
「ちんちん」
「はぁ?!」
「いいから見せて」
「い、嫌だよ!」
「もう……ほら、手ぇどけて!」
自分の要求を頑なに拒否する矢口の態度に業を煮やした日高は、彼の肩を掴んで後ろを向いていた矢口を強制的に自分の方をへとその身体を向けさせた。
「!!」
目の前に再び、今度は最初に正面から見たとき以上の近い距離から日高の裸体が矢口の目に飛び込む。
だからといって股間から手をどけるのも躊躇われたので矢口は狼狽するばかりだ。
男なのだから女よりある力を振るって再び後ろを向けば済む話な気もしたが、そうしない辺りそれだけ動揺して思考能力が低下しいたのか、またはこんな状態でも強行によって彼女が傷ついてしまう可能性を無意識に恐れた結果なのかは定かではなかった。
そんな矢口に対して完全に優位(まるで飛び道具と対空で壁際まで追い詰めれたザ○ギ○フのように)に立った日高は、ドドメとばかりに股間を手で隠すために開いていた彼の片膝を跨るとそのまま腰を落とした。
「!!!」
矢口の膝に完全に未知の感触を感じて身体に電流が走った。
質が悪いのは、直接感じた日高の
「あ……あ……」と口をパクパクさせてまともな言葉を出せずに目を白黒させる矢口に日高は、羞恥と興奮による高揚感で紅潮した頬に艶やかに細めた怪しい目をして言った。
「んっ、ふふっ……。これって絶対見るより凄い事してるよね」
「ひ、ひだ……」
「え、なに?ヒダ?」
「は? ヒダ? いや、ひだ……」
「はいはい。いーから今度は手ぇどけてね」
「い、いや……」
日高が自分の手首を掴んでどけてくる。
抵抗したかったが、そうしようと腕に力を入れようとする度にそれを敏感に察知した日高が跨がり膝に密着させている
後の矢口はこの時に意固地に何度か抵抗したせいで余計にドツボに嵌ってしまったと語る。
『あの時の俺は壁際に追い詰められた(以下略)』
何故なら抵抗する度に前述の通り彼女が性器を押し付けたり擦り付けてくるものだから、すっかり性的興奮を覚えていた矢口のペニスは固く、そして起立していった。
日高もそれに呼応するように密着した性器からお湯とは異なる湿り気と粘性を発生させて自然と甘い吐息を漏らすようになっていった。
「ふっ……んっ……。ね……っ、えぇ……。矢口くんもしかして
「ふ……は……えぇ……? ……くっ、あぁ?!」
余裕がなくなっていた時に変に意識を向けて彼女の言葉を確認しようとしたのがいけなかった。
つい一瞬気が抜けたせいで快楽の波に弱々しいながらも抵抗してダメージを軽減していた心の堤防が許容を超える波の侵入を許してしまったのだ。
矢口は膝に感じる日高の感触と重みに対して一瞬完全に身体から力が抜けてしまい、彼女の手の動きに従ってしまった。
日高は矢口の手を除けることに成功するや否やピンといきり立ったソレを目にして一瞬だけ驚きに動きを止めるも、直ぐに復活して素早くその愛おしい彼の肉棒を握った。
「ふふっ、つ・か・ま・え・た♪」
浴室の室温の影響もあっただろうが、すっかりそれ以外の理由により火照りすっかりフルスロットルの状態となった日高は更に赤みが増した顔に微笑みを浮かべてそう言った。
日高ルート日高ルート日高ルート(脳死