『俺』は知波単学園の会議に出ることになった
西隊長。玉田。細見との激しい対決から数日後。
俺は会議に出るようにと西隊長から案内された
「俺くんも戦車道チームの一員であります。会議に出るであります!」
「わかった…」
知波単学園学舎の一角。
放課後の教室を借りて始まった知波単学園戦車道チームの会議は
隊長である西絹代の問いから始まった。
「我が知波単学園はまず最初に何をするべきか?突撃の話題はなしでな」
俺が戦車道に入ってから知った事だが、突撃は知波単学園戦車道の伝統となっていた。
故に「突撃脳」「出れば負ける」の有難くない不名誉な称号貰っているが
これは俺が西隊長に「戦車道チームの一員だから知波単学園の歴史を学ぶであります!!」と
直々に言われ知波単学園について調べている最中に知った。
元々知波単学園は今で言われている突撃だけするような学校じゃなかった。
他校がやっている戦車戦の戦術を巧みに行えるだけの基礎力はあったようだ。
しかし突撃癖は戦車道大会にベスト4に進出した時の戦術が全車両による
旧日本軍の万歳突撃そのもののの一斉突撃戦法だった。
この一斉突撃戦法は当初はそれなりに戦果を挙げていたらしいが
今は対策を取られてしまった結果はお察しくださいの状況だ。
「突撃さえ極めれば我が知波単学園は全国大会を制覇できる!」
この主張によって知波単は今までの多彩な戦術の選択肢を自分から投げ捨て
ただ相手チームへ目掛けて戦術も戦略もないただひたすらに
相手戦車を見れば一目散に全車で突撃を敢行する猪武者そのものの集団となったのである。
一応突撃は悪くない戦法だが…今の知波単学園にはその突撃しかなかった。
他校は突撃一辺倒ではなく、多種多様な戦法を持っているからだ。
戦法が突撃オンリー1つしかないと言うのはあまりにも大問題だ。しかしそれ以上に大きな問題が存在する。
「あの~…」
「お、俺くんも思い浮かんだか!言ってみろ。」
声を出した俺に西隊長から発言をするように言われる。
「う~ん…これは西隊長だけではなくここにいる戦車道の部員たちも分かっている事かもしれないけど…」
俺は言葉に詰まりながらもゆっくりと話す。
「どうした。何をもったいぶっているんだ?」
「もうわかっているかもしれないけど、何をするべきなのか…やっぱり強い戦車を持つことじゃないかな。」
「その通りだ………我が知波単学園には強い戦車がない…」
俺の発言に西を含めすべての生徒が黙り込んでしまった。どうやら図星だったらしい…
知波単学園の保有している戦車は他校に比べてあまりにも貧弱な戦車が多いが多い。
俺の在籍している知波単学園が主に主力としている戦車は
・中戦車の「九七式中戦車チハ」旧砲塔・新砲塔
・軽戦車の「九五式軽戦車ハ号」
・水陸陸用の「特二式内火艇」
この戦車達は史実では主に日本軍の歩兵支援が主任務で敵陣地攻撃が主な運用方法であった。
しかし、戦車道全国大会で上位常連校である「黒森峰女学園」や「プラウダ高校」「サンダース大学附属高校」などの学園は、「ティーガーⅠ重戦車」や「Ⅴ号パンター」、「T‐34中戦車」そして「M4シャーマン」などの名戦車が主力として運用されていた。
当然だがチハやハ号でこれらの戦車に挑むには無謀中の無謀ともいえた。
特に特二式内火艇は装甲が最大12ミリしかなく一発喰らっただけでも撃破判定を受ける。
ただし、チハ新砲塔のみは知波単学園で一番攻撃力が高い長砲身47ミリだから
側面で至近距離から撃てばシャーマンやT-34はやれる。
もっともそこまで史実のように近づければの話だが…
「戦術や戦略も大事だけど…まずは強い戦車を揃えることが大事じゃないか?例えば四式中戦車か五式中戦車…」
「チトとチリでありますか…」
「その二つの戦車があれば…」
以前に対決した玉田と細見が俺に問う。
「その二つの戦車なら他校の戦車にも対抗可能だと思うんだけど…」
四式中戦車チトと五式中戦車チリの主砲は75ミリ。
装甲は75㎜とチハの25㎜と比べると厚さは3倍、主砲の攻撃力もチハの57㎜砲と比べて2倍の75㎜の長砲身であった。
そして五式中戦車チリは半自動装填装置を付け強力な75ミリ砲を連発できる。
もし導入できれば他校とも互角に戦えるからだ。
特にチトについて米軍の戦車技術調査団は
「四式が大量装備されていれば、フィリピン戦の戦車戦は大きく変わっただろう」と評価しているほどだ。
一両でもあれば、サンダースの「シャーマン」や
グロリアーナの「マチルダ」「クルセイダー」と互角以上か優勢に戦える。
「その戦車を導入できればいいんだけど…どうかな?」
「俺くんの意見は実にもっともでありますが…いかんせん予算がないであります…」
西隊長は断腸の思いで俺に話す。
チトやチリが無理なら…チヘにしてみようと俺は声を出した。
「チトやチリの導入は無理か…なら。チヘに改造するのはどう?チヘなら装甲は50ミリだし装甲は上がるから…」
「でも、チハとチヘの車体の構造は異なっているが…どうするでありますか?」
玉田が言う。
確かに新砲塔チハとチヘは一見似ているが、車体正面が異なっている。
「それなら、新砲塔チハの車体上部と車体下部・砲塔正面に25ミリの鉄板の追加装甲を装着すればいいんじゃないかな?」
実際にチヘも25ミリの鉄板を溶接しているから新砲塔チハでも難なくやれるはずだ。
「車体正面の追加装甲はどうするでありますか?」
細見が言う。
「鉄板がないなら倉庫にある使ってない戦車(ルノーFT)から履帯を借りるのはどうか?」
西隊長は俺の発言に目を輝かせるやいなや
「…つまり、装甲を増やせばいいのでありますな!?」
「え?まあそうだけど…装甲増やせば突撃戦法も成功しやすくなるんじゃないかなと…」
「それであります!!早速知波単にあるチハの全車に25ミリの鉄板を装着する!!」
「ちょっと待ってくれ隊長。それでも装甲は50ミリだから…75ミリにしよう。」
「前言撤回!チハの全車に50ミリの鉄板を装着するであります!!」
俺のアイディアによって、知波単学園にあるチハ短砲塔・チハ新砲塔の
車体上部と車体下部・砲塔正面に50ミリの鉄板の追加装甲を取り付けることが決まった。
これで全面装甲は75ミリと格段に防御力はあがったが、機動性は低下してしまった。
他の知波単学園生徒からは苦情が来たが
俺と西隊長は『いくら機動性があったとしても被弾しては意味がない。突撃にはちょっとやそっとの被弾では大破判定にならない防御が必要だ』と強く説得した。
「ハ号はどうするんだ?」
「予備があれば追加するであります!」
どうやらハ号は予備があれば追加するらしい。
が、追加されても焼け石に水だろうな…
それに…今の突撃一辺倒戦法も変わっていない…
前に比べればしぶとさは上がるかもしれないけれど…
次はどういう風にしよう?
俺VS西隊長か
それともタッグマッチか…