童貞がインキュバス(仮)に転生したのでレビュアーズに入ります。 作:ナットーごはん
日間、週間、月間、四半期、まさか四つも一位を取る経験ができるとは……ありがとうございます。
「うわああああああああああ……ッ!!」
サキュバス街の裏通り。雨の滴る暗い路地裏。
そこで悲痛な叫び声をあげながら泣く天使の少年がいた。少年の前にはぐったりと倒れたまま動かなくなった三人の男達。
「……起きてください……目を覚ましてください……ッ!!」
少年の言葉に返事をする者はいない。
「こんな……こんな所で、死んじゃダメですよーーッ!!」
動かなくなった仲間達を思いやる天使の叫喚は、哀しくもザーザーと降り続ける雨音によって掻き消されてしまうのだった。
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事を語るには数時間前……
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「さって、どこの店にすっかな。」
「行ったことの無い店を新規に開拓したいな。」
「新鮮味は大切だ。な?」
「そ、そうですね……まあ……ボクはお馴染みのサキュ嬢さんとでも悪くないと思いますけど……」
「でも馴染みのサキュ店ばっかりだったら新しいレビューは書けないからね~。」
人間のスタンク、エルフのゼル、犬獣人のブルーズ、天使のクリム、そしてチートインキュバスのカズオは新たなサキュバス店のレビューを書くために今宵もぶらぶらとサキュバス街を歩いていた。
せっかくレビューを書くのだから、普段いかないような店に行ってみたいと思うのは様々なダンジョンを攻略してきた冒険者としての性だろうか。
外れる時もあれば、大当たりする時もある。だからこそ止められない。サキュバス店巡りとはある意味ギャンブルのようなものなのだ。
五人は新天地を目指し、普段あまり足を向けない方へと歩いていく。すると……
「ん?……あの道入った事無いな。」
ふとスタンクが建物と建物の間にあるちょっとした脇道を見つけた。
そこは薄暗い路地裏の通りで、夕刻という今の時刻とも合わさって中々に不気味な雰囲気を醸し出していた。
「お前ら、あそこ通った事あるか?」
スタンクの言葉に全員が首を横に振る。
「よし、じゃあ行ってみるか。」
スタンクが先陣を切って一同はその路地裏へと進んでいった。
「……なんか不気味ですね……こんな所にお店があるんでしょうか?」
不安そうな表情でそれとなくカズオのそばに寄るクリム。
この辺りはサキュバス店どころか、店らしい店がほとんど見つからない。完全なる裏通りといった感じだ。
色気も何も無い、無機質な階段を降りていく。すると……
「あった。」
「え?」
それっぽいエッチ風味な女の子のイラストが描かれた看板が、壁に立て掛けられるようにしてポツンと立っていた。
《淫魔の狂喜乱舞 この先曲がってすぐ》
「なんだ。こんな所にあるのに普通の淫魔店か……」
看板に書かれている文字を読んでゼルは肩をすくめた。せっかく珍しい店を探しにこんな所までやって来たのに、あったのはどこにでもありそうな普通の淫魔の店。
「いや……見てみろ。この値段……」
「ん?」
ブルーズに言われ、全員で続きを読んでみる。
《淫魔の狂喜乱舞 500Gポッキリ!! 時間無制限&人数無制限!! 楽しい時間を好きなだけおすごし下さい。》
「「「「安ッ!?」」」」
そのあまりにも安すぎる料金価格に全員が素っ頓狂な声をあげた。
通常のサキュバス店の相場がだいたい一時間で5000G程度なのに、その十分の一の値段で、しかも時間も無制限となると、それはもう安いというよりも異常である。
「何だこの値段設定……」
「ガチのサキュバスならだいたい安いけど……」
「でもこれは破格すぎだろ?」
「もしかしなくても詐欺だよ!これ!絶対ヤクザ出てくるやつだって!」
ゼル、ブルーズ、スタンク、カズオの四人は怪しげな目付きで看板を睨み付けた。
昔の偉い人は言いました。タダより高い物はないと。
500Gなのでタダ……という訳ではないが、アホみたいに安いのでカズオの警戒アラームはビンビンに鳴り響いている。
「この店は止めとこう。なんか嫌な予感がするし。ほら、触らぬ神に祟りなし!」
「そ、そうですね。カズオさんの言う通りです。」
引き返す事を提案するカズオ。そしてそれに頷くクリム。
しかし……
「いや、とりあえず行ってみよう。」
「ボッタクリなら腕ずくで出ていくまでよ。」
「だな。」
危険と分かっていてもあえて挑戦しにいくのが冒険者。
スタンクはタバコを咥え直し、ブルーズはボキボキと指の骨を鳴らし、ゼルがフッと息を吐く。
「………はぁ……分かったよ。行こう。」
カズオはやれやれと首を振りながらも最終的には頷いた。
「……え?だ、大丈夫なんですか?」
無謀というか恐れ知らずというか、何の躊躇もせずに怪しいお店に突っ込んで行こうとする四人を見てクリムはわたわたと慌てている。
「まあ一応これでも俺達は一流って言われる程度には冒険者だからね。余程の事が無い限りは大丈夫だよ。たぶん。」
「たぶんて……」
「まあ、何かあってもクリムの事は俺が守ってあげるから。心配はいらないよ。」
「……!? うぅ……はぃ……ありがとうございます……カズオさん……」
……そうしてとにもかくにも一行は看板に書いてあったサキュバス店へと向かって行くのであった。
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「……」
看板の案内に沿って裏通りを歩いていくと、そこにはサキュバス店にしてはやや小さめな、コンビニサイズのお店がポツンと一軒建っていた。
コンビニと同じように店の入り口近くの壁が分厚いガラス張りとなっており、中の様子が外からでも覗けるような造りの店だ。
「わーお……」
そして外から見える中の様子は、狂喜乱舞の名に相応しいおぞましい光景であった。
『オトコだ♡』
『男ー♡』
『オトコがキタッ♡』
『早く犯らせてー♡』
『はー♡はー♡はー♡』
『げへへへへ~ッ♡』
たくさんの淫魔の女の子達が、店の中から血走った目付きでこちらを見ている。ガラスの壁にベタ~と張り付き、カズオ達を見てゲヘゲヘと下品に笑っているのだ。それはもう完全に獲物を見つけた時の獣の目だった。
「……低級淫魔の詰め合わせ部屋かよ……」
そんな事をボソッと呟き、スタンク、ゼル、ブルーズ、クリムの四人はうげ~……っと、中の様子に引いていた。
それもそのはず。世間一般的にエロくて可愛いという認識の“淫魔”ではあるが、そんな淫魔達の中にも
上級淫魔であるサキュバスともなれば、極上の快楽に浸らせた上で男を骨抜きにして精を搾り取ってきてくれるのだが、低級淫魔はとにかく自分達が快楽を味わう事だけを第一に考えてまぐわってくる。相手の男がどうなろうと知ったこっちゃない。無理矢理精を搾り取ってくるのだ。
一言で説明してしまうと、たくさん良くしてくれるのがサキュバスで、たくさん良くさせられるのが低級淫魔。
そんな低級淫魔達が一ヶ所にわんさかと集められているのだから、男としてはそんな光景、忌避感を感じざるを得ないのである。
だが、常人ならざる精力を持つチートインキュバスであるカズオは……
(うわぁ……ガラスの中に発情した裸の女の子達がいっぱい……やっば……めっちゃここ入りたいかも……)
物凄くわくわくしていた。
その瞳はまるでショーウィンドウに入ったトランペットを外から眺める少年のような、そんなキラキラした瞳であった。
「あ、お客さんですかー?」
そうして外から低級淫魔達を眺めていると、獣と悪魔の二つの特徴を混ぜ合わせたような、黄土色の髪をした不思議系お姉さんが、あはーと無表情な笑みを浮かべてやって来た。
「私はこの店の店主をやってます。データーと申します。」
データーと名乗った彼女はどこからともなく羊皮紙を取り出すと、それをスタンクらに向けて突き出してきた。
「……あん?何これ?」
「うちのお店に入っていただく際には誓約書にサインしていただく必要があるんですよー。」
「誓約書?」
「はい。うちの店……この淫魔の部屋に入ったら、絞りきられるまで出してはもらえません。泣いても喚いても叫んでも漏らしても……絶対途中では解放してもらえませんし、私も助けには行けません。」
「……」
「途中やりすぎで死ぬような事になっても当店は一切責任を持ちません。以上のことを踏まえて、誓約書にサインの上、中にお入りください。」
淡々とこの店のシステムを語るデーター。
「想像以上にとんでもない店だったな……」
「安いわけだ……」
平然と“死”というワードが出てきた事により、スタンク達はいよいよ持ってこの店のヤバさを再認識する。
もしかしたら本当に絞られ過ぎて死んでしまった人なんかもいるのかもしれない。流石にそんな不名誉な死に方は嫌過ぎる。
そんな中カズオは……
(そんなにヤれるの!?たった500Gでそんなにセックスできるなんて天国だよそれ!!)
……全然怯んでいなかった。むしろさらに目を爛々と輝かせている。
そもそもカズオは前世の時点でも、死ぬまでオナニーしてしまえるような狂気の性欲魔神だったのだ。そんなカズオにとって、精を抜かれ過ぎて死ぬというのは何の脅し文句にもならないのである。
「……でもよくこの値段で店が成り立ちますよね?」
ふとクリムがそんな疑問を口にした。
いくら酷い店であっても店は店だ。あんなにたくさんの淫魔を雇っているのだから、たったの500Gの収入では給料は出せないだろう。
「あー、よく聞かれるんですけど、お金は中の淫魔さん達から貰ってるんですよー。ここでこうしてお店を出すことで男性とたくさんエッチが出来るからーって。」
「な、なるほど……あれ? でもそれならお店の料金はタダでもいいんじゃ……」
「タダだと警戒されてむしろ客が来ないんですよねー。」
そういう物かとクリムは思った。
しかし誓約書がうんぬんの時点で誰からも警戒はされてしまうだろうに……
「……で?あんたとはヤれるのかい?」
「私と?」
誓約書を読み終えたスタンクが無駄に良い声でデーターに詰め寄った。中にあんなにたくさんの淫魔達がいるのに、とりあえず目の前の女の子を口説いていくスタイル。流石だ。全く尊敬は出来ないけど。
そんなスタンクにデーターは不敵な笑みを浮かべる。
「………彼女達の相手をした後、物足りないようであればいいですよー。」
ニヤニヤと笑いながら、ガラスの中の淫魔達を指差した。
『おらーッ!何してんだー!』
『早く入って来いよ!』
『何怖じ気付いてやがる!!』
『根性とちんぽ見せてかかってこいやー!!』
ガラスの中ではたくさんの淫魔達がこちらに向かって下品な叫び声をあげていた。まんこをベチョンベチョンとガラスに打ち付けてこちらを誘ってきている。
もうエロいとか以前にクリムは怖かった。ギュッとカズオの腕に抱き付く。
「い、いくらなんでも酷すぎませんか……? もう帰りましょうよ……」
当然のように帰る事を提案するクリム。しかし……
「ゼル。補助呪文を強めにかけてくれ。」
「頼む。」
「おう!」
ゼルの魔法により、スタンク、ブルーズ、そしてゼル本人の身体能力が一時的に強化された。
どう見たって乗り込む気満々である。
「って!何で行く準備してるんですかっ!?」
「お前!あそこまで言われて引けるのか!男として!」
「単純にあんな所入りたくありませんよ!! ねえ?カズオさん。」
「いや、俺は入るつもりだけど?」
「えええッ!?」
てっきり自分と同じ否定派だと思っていたクリムはガーンとショックを受けた。そういえばこの人も淫魔だった。
「カズオ。お前も補助呪文いるか?」
「ありがとゼル。だけど俺はいいや。素で楽しみたい。」
「そ、そうか。必要になったらいつでも言えよ。」
という訳で、クリムを除いた四人で今回はこの淫魔店に挑む事に。
「はいはい。お話はそこまで。入る人は早く入ってくださ~い。」
データーがガチャリと鉄格子の扉を開く。クリムを除いた男達は勇ましい足取りでその扉をくぐっていく。
「よし!行くぞお前達!!」
「「「おう!!」」」
……外ではぽつぽつと雨が降り始めていた……
次話予告。カズオ無双。