童貞がインキュバス(仮)に転生したのでレビュアーズに入ります。 作:ナットーごはん
場所はお馴染み食酒亭。
スタンク、ゼル、カンチャル、カズオの四人は今日もここで昼食をとっていた。
「カズオさん。お待たせしました。リンゴジュースです。」
「ありがとクリム。」
頬をほんのり赤く染めた天使がカズオへの飲み物を運び……
「か、カズオさん……えと……あ、アップルパイ……お、お口に合えば……よよ、よろしいのですが……」
「ありがとメイちゃん。」
頬を真っ赤に染めた単眼娘がカズオへの昼食を運ぶ。
食酒亭では割りとよく見る光景だった。
「もしゃもしゃっ!もぐもぐ!んぐ……ごくごく……ぷはぁっ! 最高っ!」
アップルパイをガツガツと頬張り、リンゴジュースをイッキ飲みするカズオ。
そんな彼の姿を見て、天使と単眼の給仕はこそこそと小さな声で囁き合っていた。
「メイちゃんさん、あの……カズオさんの飲みっぷりって……すっごく男らしいと思いません?」
「はい!クリム先輩。分かります。とってもよく分かります!喉仏が動いてる所とかがあの……せ、セクシーというか……」
「……飲み物飲んでるだけでかっこいいとか、もう反則ですよね……」
「反則です!ズルいです!かっこよすぎます!……あとクリム先輩、私カズオさんの食べっぷりとかも好きなんです!」
「分かります分かります!あのがっついて食べる感じ!それなのにカズオさんて、お箸とかフォークの持ち方が綺麗だから下品に見えないんですよね!」
「そうですそうです!カズオさんて意外と食べ方綺麗なんです!」
「ああいう所がまた……」
「「素敵ですよねー♡」」
キャイキャイと楽しそうにはしゃぐ後輩二人組を見て、メイドリーは「はぁ……」と今日もため息をついていた。
いつも真面目に給仕の仕事をしてくれるクリムとメイであるが、こうしてカズオが絡むと毎回ポンコツになるのだ。
「まあ今日はお客も少ないし、別にいいけどね……」
お店の迷惑にならない程度であれば、多少のお喋りくらいは問題ない。
自分もよくスケベ共を殴ったりして騒いでいるし、女将であるツタも賑やかな食酒亭を望んでいる。カズオさん♡カズオさん♡は多少鬱陶しいが、メイドリーは温かい目で後輩二人をスルーしてあげる事にした。
「クリム~、リンゴジュースおかわり!」
「はい!うけたまわりました!」
おしゃべりに夢中になっていたクリムとメイだが、カズオが注文を入れるとしっかりと返事をした。
給仕としての仕事はちゃんとしっかりこなしているのだ。メイドリーはうんうんと満足そうに頷いた。
「そういえばカズオさんて、リンゴジュースをよく注文しますけど好きなんですか?」
「うん。好きだよ。」
「!!!」
「ん? どしたの?クリム。急に固まって。」
「い、いえ何でも……あの、も、もう一度お聞きします。ボク……の入れるリンゴジュース……の事、どう思ってます?」
「好きだよ?」
「ッ!!! ~~ッ♡♡♡」
クリムは自分の頬に手を添えて赤くなった。
それを見てメイが小さな目を大きく見開く。なるほどといった表情だ。
「か、かか、カズオさん!わ、私! 私……の作るアップルパイ……はどうですか?」
「? 好きだよ?」
「はぅぅ~♡♡えへ、えへぇ……♡私も好きです~……♡♡」
「???」
「うーわ……」
メイドリーはドン引きした様子で頭を抱えた。いくらなんでもこれは無いと。
どこの世界の酒場にお客から「好き」という言葉を引き出そうとする給仕がいるというのだ。
「カズオさん。そんなにボク……の入れたリンゴジュース……の事が好きですか?」
「わ、私……の作ったアップルパイ……の事が好きですか?」
「う、うん……好きだよ? な、何でそんな何回も聞くの? そして何で言葉の一部が小声なの?」
「「えへへ~♡♡」」
「仕事しなさい!!」
収拾がつかなくなりそうだったのでここでようやくメイドリーがツッコミを入れに向かった。
これでもかなり大目に見た方だ。
「あ!? す、すみませんメイドリーさん!」
「ご、ごごごめんなさひっ!メイドリー先輩!」
クリムとメイは慌てて給仕の仕事へと戻っていった。
メイドリーはため息を吐く。
「……なぁメイドリー。クリムの奴、最近もう好意を隠す気ゼロなんじゃね?」
「そうねスタンク。私もそう思うわ。」
「メイちゃん来てから露骨だよな。」
「やっぱクリムはそっちの趣味もあったんだね。」
上からスタンク、メイドリー、ゼル、カンチャルの順。それぞれが何とも言えない微妙に引きつった表情を浮かべている。
カズオは皆が何を言っているのかがよく分からず……
「ねぇ皆。さっきから何の話?」
「「「「カズオ(くん)には関係あるけど関係無い話。」」」」
「どっちだよ!?」
カズオは解せぬ。と思った。
昼食を終え、一息ついたカズオ達は、そのまま食酒亭で今晩
「今日はどの店に行く?」
「やっぱ新しい店がいいな。」
「新しい店って?」
「それは……うーん……」
「思い付かないのかよ。」
「うるせ、お前はどっか希望の店ないの?」
「どこでもいいよ。」
「そういうのが一番困るんだよな……」
「「「「うーん……」」」」
腕を組んで頭を悩ませるスタンク、ゼル、カンチャル、カズオの四名。
そんな四人を見てメイドリーはまたため息をついた。
「なーに真剣に話してんだか。」
「次に行くお店が決まらないみたいですね。」
「サキュ店選びを悩んでるカズオさんも素敵です……♡」
「……メイちゃんてもう、カズオくんだったら犯罪犯してても素敵♡ って言いそうね……」
「メイドリー先輩。いくら私でも流石にそれは……それは……えっとぉ……」
「悩むな!」
再度ため息をつくメイドリー。もう今日は何回ため息をついたか分からない。
「ニンフ……」
「人間……」
「エルフ……」
「ノーム……」
「獣人……」
「ピクシー……」
「どうもピンとこねーな。」
「この辺だと昔の記憶でレビュー書けるしな。」
「だねぇ……」
「どの娘も可愛いんだけどね。」
スタンク達はもう小一時間ずっとサキュ店選びで話し合っている。これほどの時間の無駄もそうないなとメイドリーは思った。
「バカバカしい……そんな事で悩むくらいなら、次に入ってきたお客と同じ種族にでもすれば?」
「ほう?」
吐き捨てるように言ったメイドリーの言葉を、スタンクが名案だと言わんばかりに拾った。
「なるほど。悪くないな。」
「……じゃあもうそれで。」
「何か今日マジに全然決まらねぇからな。」
「異議な~し。」
「えっ? 採用するの?」
適当に言っただけの案を採用されてちょっと驚くメイドリー。
次に来たお客と同じ種族が、今日スタンク達がレビューしに行くサキュバス店だ。
さてどんな種族がやって来るのか……するとそこに……
「ウゴー……」
全長二メートルを超える、全身茶色の大男……いや、土人形のお客が食酒亭へと来店した。
「い、イヒッww いらっしゃいませーっwwww ブッフォwwwwww」
そんなお客の登場に、メイドリーは失礼ながらも爆笑しながら挨拶を返すのであった。
「……ゴーレムかよ……」
こうしてスタンク達が今日レビューしにいく店はゴーレム店に決定されたのだった。
・
・
・
「レビュー楽しみにしてるねー♪ 行ってらっしゃーい♪ ブフッww」
ようやく行く店が決まったので、スタンク、ゼル、カンチャル、カズオ、そしてクリムの五人は、とても良い笑顔のメイドリーに送り出され、サキュバス街にあるゴーレムのサキュバス店を目指して歩いていた。
……しかし、その足取りは全員重い。
「ゴーレムかぁ……」
「……ていうかゴーレムの店なんてあんのかよ?」
「幸か不幸か……ある。ほら、地図に乗ってる。」
「あるのか……」
「あるんですね……」
カズオはドラクエのゴレムスみたいな娘が出てきたらどうしよう……と内心で冷や汗をかいていた。他の全員もカズオと似たような想像をしている。
さっき食酒亭に来店してきた
「くそ……!だがアンドロイドレベルの娘がいれば……いける!……マジで頼む……!」
ゴーレムとは無機物に命を宿した魔法生物の事だ。決して土人形だけがゴーレムではない。
一縷の望みに思いを馳せて、男達はビクビクしながらサキュバス街道を歩いていった。
そうしてたどり着いたのはドールパペットゴーレム専門店、《性のマリオネット》。
「いらっしゃーい。」
店の中に入り、カズオ達を出迎えてくれた受付は生きた木彫りの人形の女の子だった。ドラクエのパペットマンを可愛らしく女体化したような見た目。
それを見て、とりあえずゲテモノ店ではなさそうだとカズオ達はホッと一安心した。
「……造形が甘い。」
カンチャルだけは何か職人ぽい事を言っていたが。
「おー? お客さん達、初めてですよねー?」
「あ、うん。」
受付のパペットウーマンがカタカタと動きながらカズオ達の方へと近づいてきた。
「この店では、髪や目や身体のパーツを組み合わせて、自分好みの女の子を自作して楽しむシステムです。」
「「「「「自作!?」」」」」
「はい。この店には様々な種族やサイズのボディを取り揃えております。ガリガリでもおデブでもマッチョでもラミアでも……好きに組み合わせて自分好みの女の子を作りましょう。」
受付が指を差した方向を見てみると、多種多様の種族の体のパーツが所狭しと棚に置かれていた。
勿論本物ではなく、人形としてのパーツだ。
「ここからパーツを選んでいって、自分でゴーレムを作ると……」
「そういう事になります。超巨人やスライムのような不定形な種族以外でしたら、どのような容姿でも作れますよ。衣装も大量に取り揃えております。」
要するに自分でダッチワイフが作れる店らしい。
「女の子が完成しましたら、好きな性格の娘の“核”を指名して組み込めば完成です。」
「好きな性格?」
「はい。うちはゴーレム店ですから。作った人形には
「へー……」
「なるほど。」
「……
「そちらの水槽の中にある、マジカルホールをお使いください。」
受付さんが指差した方を見てみると、そこには大量のマジカルホールが水槽内をうようよと泳いでいた。
それを見てクリムは……
「キモ!! 何ですかあれ……!?」
どうやら初めてマジカルホールを見たらしい。
「ああ、これも魔法生物だから、ある意味ゴーレム……になるのか?」
マジカルホールとは、伸縮、吸引、締め付けなど、単純動作を魔法で組み込んだ……要するに動くオナホールである。
略称はマジホ。
マジホの気持ちよさは本物の女性器を超えているとされ、あまり
「それでは人形が完成したらお呼びください。」
一通りの説明を終えたパペットウーマンはそうして受付の仕事へと戻っていった。
「完成したらって……これ作るのすごい大変そうですけど……」
「まあとにかくやるだけやってみようぜ。」
「そうだなー。」
「それじゃあ、かいさ~ん。」
そうして男達はそれぞれ自分好みの女の子を製作しに行くのであった。
「さーて、とりあえず作りますか。どんなの作ろうかな?」
カズオは多種多様の人体パーツを手に取りウ~ンと頭を悩ませる。
「可愛い女の子を作るって事は決定事項として……むむむ……悩ましい……」
せっかく作るんだから、どうせならこの世に二人といない美少女を作りたい。
インスピレーションを働かせるのだ。
「可愛い娘、可愛い娘……絶世の美少女……う~む……」
とりあえず使えそうなパーツを適当に用意して、思うがままに作ってみる事にした。
いざ組み立てスタート!
「まずは体~♪ ボンキュッボンの~ナイスバデー♪ 長くて細い~手足を付けてっ♪ お次に頭~小顔にしましょっ♪ 艶々のロングヘアーに輝くお目目~♪ あっという間に~……なんじゃこりゃあ!!?」
そうして完成したのは、ブスだった。まごうことなきブスだった。
なんと言うか、色んな美人のパーツを寄せ集めした結果、バランスの悪いブスが出来上がったというか、まさにそんな感じだ。
「…………」
カズオは無言で作った人形を分解した。
「どうしよ……」
カズオは己のあまりの技術力の無さに絶望した。この分だと抱けるくらい可愛い女の子が出来上がるまでに何日……いや何ヵ月かかるか分からない。
そうして途方に暮れていると……
「おーい! スタンク、ゼル、カズオ、クリム。こっち来てみろよー!」
カズオ達を呼ぶカンチャルの声が聞こえてきた。
何事だと思いカズオ達はカンチャルの元に集結。するとそこには……
「いかがかな? この再現度。」
「おおおおおっ!?」
食酒亭の看板ウェイトレスであるメイドリーがそこにいた。いや、本物ではない。これは、本物と見間違えるほどそっくりなメイドリー人形だ。
「すっごぉ!!これカンチャルが作ったの!?上手すぎ!!あんた天才だよ!!」
どこからどう見てもメイドリーにしか見えない人形の出来栄えにカズオは大絶賛した。
ゼルとスタンクもメイドリー人形の胸やらスカートの中やらを確かめながら感心したように頷いている。
「ほほう、さすがシーフ様。やっぱ手先が器用だとこういう時いいよな。一時間真剣に作ってブスが出来て絶望していたが……これなら……」
「ああ、俺も全く抱けないブスが出来て諦めてたが……これはいいな。」
どうやらカズオだけでなく、カンチャル以外の全員が上手く人形を作れないでいたらしい。
クリムもごくりと唾を飲んでいる。
「なあカンチャル。これ俺らの分も作ってくれよ。」
「ったく、しょーがねーなぁ~♪」
スタンクに同じものを作るように依頼されたカンチャルは満更でもなさそうな表情で頷いた。
根本的に作るのが好きらしい。
「そうすっと、中に入れる性格どうすっかなー?」
「そこは本物とは違う性格を入れて、だろ?」
「いやいや、本物のメイドリーと似たような性格を入れてあえてだな……」
「ほうほう、それもありだなー。」
「だろ~う?」
わいわいと盛り上がるスタンクとゼル。そんな彼らのやり取りを聞きながら、クリムは急にハッと我に返り、冷や汗をダラダラとかき始めた。
「あ、あの……これはちょっと、流石にまずいんじゃ……こんなの作って、しかも抱いてたって事がメイドリーさん本人にバレたら……ボク達殺されちゃいますよ……」
「「大丈夫。バレなきゃいーんだよ。」」
「スタンクさん!ゼルさん!そ、そういう問題じゃなくてですね……!」
わたわたと慌てるクリムの様子に、カズオはニヤリと笑みを浮かべた。そしてこっそりとクリムに耳打ちをする。
「ふふふ、クリムくん。やっぱり好きな人の人形を抱かれるってのには、抵抗があるのかな~?」
ニヤニヤしながらそんな事を言ってやる。
すると……
「へ? カズオさん。好きな人って……何がです?」
クリムはキョトンとした表情を浮かべた。
あれ?
「え? いや、だってクリムって、メイドリーさんの事が好きなんじゃないの?」
過去にクリムは、チラチラとメイドリーの事を見ながら有翼人の店に行く事を提案してきた事があった。(この小説の7話)つまり、クリムの好みのタイプはメイドリーのような女の子……だとカズオは思っていたのだが……
「違った?」
「……………」
クリムは死んだ魚のような目でジッとカズオの事を見据えた。恐ろしいほどの無表情だ。
怖い。
どうやらクリムがメイドリーの事を好きだというのはカズオの勘違いだったらしい。
「うわ……カズオ……お前それ、流石にそれは無いわぁ……」
「あんな態度取られてて、クリムの好きな奴が誰なのか気付いてないのかよ……」
「にっぶ……」
スタンク、ゼル、カンチャルの三人はまるで可哀想なものを見るような目でカズオを見た。
「なに!? なんで俺がそんな目で見られんの!? てか皆はクリムの好きな人が誰なのか知ってるの!?」
「「「丸分かりだろ。」」」
「えええ!? マジで!? え? 誰なのそれ!? 教えて教えて!詳しく!」
「それはだなー……」
「か、勝手な事ばかり言わないでください!!ボクに好きな人なんかいませんよ!! す、好きな人……なんか……」
顔を真っ赤にして怒るクリム。そのままクリムはチラリとカズオの方へと目を向けた。そしてただでさえ真っ赤な顔をさらに赤くする……
「す、好きな人なんて……い、いませ……ん……」
「えー!嘘だー!その反応は絶対嘘だー!本当はいるんでしょ? 誰~? メイちゃん?ツタさん? それとも~……」
「いません!いません!いません~~!!」
「おーしーえーてーよ~? 俺とクリムの仲じゃん~?ほら、誰にも言わないから。んー?」
「ふぁあぁあ~!!?か、カズオさ……あぅっ!?やめ……!!あぅっ!?あぅううっ!?」
グイッとクリムの身体を強く抱き寄せて、そのままクリムの体をまさぐってくすぐり始めるカズオ。
もうクリムは色んな意味で限界だった。
真っ赤な顔でシュ~と頭から湯気を吹き上げるクリムは最後まで口を割る事は無かった。
結局クリムの好きな人は誰なのか分からなかった。
「はぁ……ッ♡はぁ……ッ♡はぁ……ッ♡」
「大丈夫か?クリム。」
「あれはカズオが悪かったな。うんうん。酷い奴だ。」
カズオから解放されたクリムは息を荒くして床に手をついていた。そんなクリムの背中をスタンクとゼルがポンポンと撫でて介抱する。
カズオは解せぬ。と思った。
カンチャルが人数分の人形を作るまでの間、カズオ達はそうして時間を潰しているのであった。
次話エロ。