童貞がインキュバス(仮)に転生したのでレビュアーズに入ります。 作:ナットーごはん
ドールパペットゴーレム専門店《性のマリオネット》。
そこで働く“無感情”の核を持つゴーレム娘、N74はスタッフルームにてため息をついていた。
ゴーレムなのに。
「はぁ……」
「? 珍しいね。N74ちゃんがため息をつくなんて、何かあったの?」
心ここにあらずといった様子のN74に声をかけてきたのは、同じく《性のマリオネット》で働くサキュバス嬢。M18だ。
「……なんでもありませんよ。M18さん。」
「なんでもない事ないでしょ。だって何に対しても無関心、無感情のN74ちゃんがため息ついてるんだもん。何かよっぽどな事があったに決まってるよ!」
様々な性格の核が集まるゴーレム店だが、N74は“無感情”という、喜怒哀楽の感情を持たない、少し変わった性格の娘である。
そんな彼女がため息をついているのだから、見せられる側からすれば気にもなるというものだ。
N74は「んー……」と少しの間考え込んだ後、特に顔色を変える事なくM18の質問に答えた。
「実はですね……」
「うんうん。」
「好きな人が出来たんですよ。」
「へ~。それはそれは。おめで……とぅえええええええええッ!?」
「急にどうしました。大声をあげて。」
「どうしましたじゃないよ!! えっ!? N74ちゃん恋したの!? うっそ!! 一番そういうのに縁遠いと思ってた娘なのに!!」
「私自身が一番意外だと思っています。まさか無感情の私が、恋心を経験するなんて……考えた事すらありませんでしたし。」
「えええ……そ、それで? 誰!?誰なの!? N74ちゃんが好きになった人って!! ゴーレムの知り合い? それとも別種族?」
M18は興奮したようにN74に詰め寄った。ゴーレムといえども女の子。恋愛話は大好物なのだ。
「この前うちの店に来たお客様です。」
「この前……? この前って言うと……あの有翼人の人形を抱いていった五人組?」
「はい。M18さんは確かハーフリングのお客様を担当されてましたよね。」
「うん。カンチャルさんだね。首輪着けさせられて、お尻いっぱい叩かれた。ふふふ……♡ たくさんたくさんマゾアクメさせられちゃったの♡ 思い出すだけで……んくふふふふふ……♡♡」
「………良かったですね。」
M18は“ドM”な性格の核だった。
「はぁはぁ……♡ あ、ごめん。話が脱線しちゃった。 それで? N74ちゃんが好きになったのって、結局その中の誰なの? 人間さん? エルフさん? 天使さん? それとも……」
「カズオ様です。種族は……恐らくインキュバスです。」
「へ~。インキュバスか~。N74ちゃんがインキュバスを好きになるなんて意外~。……ん? カズオって名前でインキュバス……どこかで聞いた事があるような……」
「マスターの事をご存知なのですか?」
「……マスターって呼んでるの? よっぽど好きなんだね……えっと、ご存知って言うか……この前雑誌に載ってたんだよ。カズオって人が。」
「雑誌……ですか?」
「うん。あ、ほら。これ。うちの店にも置いてあるよ。」
スタッフルームに置かれている小さな本棚。そこに“月刊サキュバス”という雑誌が置いてあった。
M18はその中から一冊を手に取るとペラリと捲ってN74に見せてきた。
「ん~……あったあった。これだよ。チートインキュバス、カズオ様専用サキュバス店、《チート
そこにはたくさんの淫魔の女の子達に囲まれたカズオの写真が載っていた。
何故だか分からないが心が少しもやっとした。
「……はい。確かにここに載ってるこの写真、マスターで間違いありませんね。……ところでこの《チート
「えっとね……夜はカズオ様専用のサキュバス店で、昼はカズオ様に抱かれた娘限定の倶楽部として営業してる……って書かれてるよ。」
「意味が分かりません。」
N74は雑誌を読みながら首を傾げた。
「うん私も分からない。気になるなら行ってみたら? カズオ様に抱かれた娘限定って書いてあるけど、N74ちゃんならその条件はクリアしてるでしょ?」
「……そうですね。ちょうど明日はお休みなので、行ってみようかと思います。」
「ん。まあ頑張って。」
「はい。……あ、それとM18さん。もう一つ、申し上げたい事があるのですが。」
「ん? なぁに? N74ちゃん。」
「私の事はこれから、N74ではなく“ナナシ”と呼んでください。それがマスターに付けてもらった私の名前ですから。今後番号で呼ばれても私は反応しませんので。そのつもりで。」
「うわー……なんかこだわり持ち始めたよ、この子……女の子って恋をすると人が変わるってよく言うけど本当に変わったんだね……N74ちゃん。」
「………」
「ご、ごめん。N74じゃなくてナナシちゃんだったね、無表情のまま睨まないでよ……怖いから……」
「別に睨んでません。」
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そして次の日の朝。
ナナシはさっそく雑誌に載っていた《チート
「……ここですか。」
倶楽部ハウス《チート
雑誌によるとこの店は夜はカズオ専用サキュバス店、昼はカズオに抱かれた娘限定の倶楽部ハウスという形で営業しているらしいが、その倶楽部という物の正体がよく分からない。
そうしてナナシが店の外観を眺めていると。
「あれ? 貴女だれ? もしかしてカズオちゃんに惚れた新しい娘?」
「!!」
突然背後から声をかけられた。
振り返って見てみると、そこには短い黒髪をおさげにした人間の少女がナナシの事を不思議そうな表情で見つめていた。
「あ、驚かせちゃった? ごめんね。」
「……いえ、大丈夫です。私に驚きという感情は無――……最近感じるようになりましたが、とにかく大丈夫です。」
「?? ……えっと、私はユリっていうの。ここの店の常連客だよ。貴女は?」
「ナナシと申します。この店には雑誌を見てやって来ました。」
「へー、そうなんだ。この店はカズオちゃんに抱かれた事のある娘しか入っちゃダメってルールなんだけど、大丈夫?」
……という事は、目の前のこの少女もカズオに抱かれた事のある娘だという事だ。
カズオはこういうタイプの娘が好きなのだろうか? ナナシはジッとユリの事を観察する。
「ナナシちゃん?」
「……すみません。少しボーッとしてしまいました。マスタ……カズオ様に抱かれた事はあります。この前店でシてもらいましたので。」
「なるほど。それなら入店条件は満たしてるね。それじゃあこんな所で立ち話もなんだし、中に入ろうか。」
「承知しました。」
ユリは慣れた様子で《チート
店の内装は、なんというか……普通の酒場だった。テーブル席が20で、何人か食事中のお客もいる。全員女の人だ。この店の入店条件を考えると彼女達もまた、カズオに抱かれた事のある娘達なのだろう。
ちなみに給仕として働いてる店員はほとんどが低級淫魔だった。
「ここが……《チート
「うん。カズオちゃんに抱かれた女の子達が集まってお喋りしたりする場所だよ。とりあえず座ろう。」
そう言ってユリは店の奥にあったカウンター席へ向かい、そこに腰をかけた。
ナナシもそれに習ってユリの隣に座る。すると……
「おや? お客さん、初めて見る顔ですねー。」
「!」
長いツノと大きな手をした獣魔の女性が、カウンターの中からひょこっと顔を出してきた。
「あ、データーさん。この娘はナナシちゃんていって、最近カズオちゃんに抱かれたサキュバス嬢なんだって。」
「なるほどー。それでは初めまして。私はデーター。《チート
「……ナナシです。よろしくお願いします。」
データーと名乗った女性はあはーと笑みを浮かべながらグラスを磨いている。
「それでー、ナナシさん。本日はどうしてウチの店に?」
「はい。雑誌にマスターの事が載っていたので、気になって来ました。」
「マスター?」
「カズオ様の事です。」
「そうでしたか。」
「マスターは私に感情という物を教えてくれた素晴らしい男性です。彼の事を一つでも多く知りたかったので今日は来ました。」
「それはそれは~……ん? 感情を教えてくれた? どういう意味です?」
「そういえばナナシちゃん、さっきも感情がどうのこうのって言ってたよね。どういう事か教えてくれる?」
ユリとデーターが頭に疑問符を浮かべ、ナナシの方へと体を向けてきた。
「……分かりました。それでは話させていただきます。まず、私はゴーレムのサキュバス店で働いているサキュバス嬢なんですけど……」
「「うんうん。」」
そうしてナナシは、ついこの間体験したばかりのカズオとの体験談をポツポツと語り始めた。
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「……という訳でして、カズオ様はボディの元となった女性ではなく、私の
表情こそ変わらないものの、ナナシはノリノリでカズオとの出会いやら、抱かれた時の感想やら、どれだけ自分がカズオの事が好きなのかをユリとデーターに熱く語った。
「なるほど~。流石はカズオ様です。まさかゴーレムまで攻略してしまわれるとはー。」
「くすくす……本当にカズオちゃんは悪い人だわ。感情の無い女の子にまで恋をさせちゃうなんて……くすくす……」
データーは興味深そうに、ユリはくすくす笑いながら、しかし楽しそうにナナシの話を聞いてくれた。
気が付けば一時間以上もずっとカズオについて語ってしまっていた。
「……申し訳ございません。つい長々と語ってしまいました。話に夢中になるなんて経験、なにぶん初めての事でしたので……やめ時が分からず、つい……」
「あ、いいよいいよ。ナナシちゃん。というかここはそういうお店だし。ね? データーさん。」
「はいー。ウチの店はカズオ様について話したくて話したくて仕方がない! って方を対象にした倶楽部ハウスですからー。」
「……なるほど。把握しました。」
ナナシはようやく《チート
要するにここはカズオの事が好きな娘達が集まって、恋話をする店なのだ。
店内を見渡してみると、確かに皆カズオについて語り合っていた。
「うふふっ♪ 私ね、この前カズオさんに可愛い可愛いって言ってもらいながら抜かずの三回戦シてもらえたの♡ これはもう、カズオさんにプロポーズしてもらえる日も遠くないわね! ホントごめんなさいね~♪ カズオさんて、やっぱり私の事が好きみたいなの~♪」
「……ふん、500歳超えの
「ババア言うな!!」
「いいにゃりか? お兄さんは、猫耳フェチなのにゃ。つまり、本物の猫耳の生えてるフィこそが、お兄さんのお嫁さんに一番相応しいのにゃ。」
「100歳にもなってない小娘が生意気な事を~! いい? 男の人っていうのはね、なんだかんだ言って一番最初にエッチした人を最終的に選ぶのよ! つまり、カズオさんが最終的に選ぶのも私って事。なんせカズオさんの
「フカーー!! それ言うのはズルいにゃ!!反則にゃ!!」
「うふふ♪ カズオさんの初めては私の物……♡」
「お兄さんの事を一番好きなのはフィなのにゃ!!だからお兄さんのお嫁さんになるのはフィなのにゃ!!」
「カズオさんを一番好きなのは私よ!!だからカズオさんのお嫁さんになるのは私なの!!」
「ババアのクセに!!」
「ババア言うな!!」
一部ケンカしてる人達もいたが、それもまあご愛嬌だろう。
本気でケンカしているというよりかは、じゃれあっているだけのようにも見える。
ナナシは姿勢を戻し、ユリの方へと向き直る。
「ところでユリさんはいつ、どのようにマスターとお知り合いになられたのですか?」
「くすっ……♪ 聞いてくれる? あれはね……私がまだ性転換のお店で働いていた時の話……」
・
・
・
「……という事で、私の男性恐怖症を治す為に、この前はカズオちゃんと二人きりで公園デートしたの♡」
「それは羨ましいですね。……ちなみにそのデート内容は……」
「くすくす……♪ それは話せないかな~。私とカズオちゃんの二人だけの秘密♡」
「……とても残念です。」
「デートの最後には連れ込み宿に行って、いっぱいエッチした♡」
「物凄く心がザワザワします。……もしかしてこれが嫉妬という感情でしょうか?」
気が付けばもう2時間近くユリの話を聞き続けていた。
しかし話に飽きるという事は全く無かった。自分の知らないカズオの話を聞けるというのはとても嬉しいし、そしてモヤモヤもした。もっともっとカズオとの思い出を作りたいと思えてくる。
(やっぱり私……マスターの事が好きなんですね……)
それを再確認できただけでも、今日は来て良かったと思えた。
この店にやって来て、そろそろ三時間となる。想定していた以上に長居してしまった。
「……そろそろ私は帰りますね。」
「あれ? もう帰るの?」
「はい。ボディの点検などがありますので。」
「そっか。それじゃあまたね、ナナシちゃん。」
「はい。ユリさん。それでは。」
そうしてナナシは《チート
(今日はマスターの色んな話を聞けました。)
サキュバス街の表通りを歩きながら、ナナシは
(これが楽しいという、感情でしょうか……?)
感情という物を、ナナシはまだ覚えたばかりである。まだまだ分からない感情はあるが、今日一日で色んな感情を理解した。
嬉しい、楽しい、嫉妬、人肌恋しい……全部が全部、カズオ絡みの感情である。
(マスターに会いたいな……)
そんな事を考えながら自宅を目指して歩いていると……
「今日はどこに~、行きましょか~♪ 今日の俺は~、ノープラン~♪」
そんな謎の歌を歌う男性が前方500メートル先から歩いてきた。
見間違えるはずなどあり得ない。あれは……
「マスター!!」
「ん?」
ナナシは喜色の声を上げてカズオの元へと近寄っていった。先程店で楽しく話していた時の数十倍……いや、数百倍もの嬉しさが込み上げてくる。
だが――
「えっと、君だれ?」
「え……」
近寄ってきたナナシを見て、カズオは「?」と首を傾げた。
「あ……えと……ぅ……あぇ……」
意味のある言葉が何も出てこない。核がギュ~ッと締め付けられるように苦しくなった。もしかして……
忘れられてる?
そう思った瞬間、ナナシの心を支配したのは恐怖、絶望、苦しみといった、様々な負の感情だった。
ゴーレムの体なので呼吸をする必要はないが、過呼吸になってしまいそうなほど動揺してしまう。
そしてはたと気づいた。
(あ、そうでした……今日の私はプライベート用の
カズオはメイドリー人形のナナシとしか会った事がない。
今日のナナシは、中肉中背で緑色の髪の少女という、何の変哲もない、完全プライベート用の
初対面の
「えっと、すみません。ボディが変わっていますが、私は――」
「ん~~あっ!ナナシちゃんか!!」
「え!?」
しかし、ナナシが説明に入る前に、カズオは自力で目の前の緑髪の少女がナナシである事に気がついた。
「え……あの……え……?」
「姿が変わってたから一瞬気が付かなかったよ。ごめんね? ナナシちゃん。」
「……ッ!?!?」
何故分かったのだ。ナナシは混乱している。
「ま、マスター。」
「ん? どしたの? ナナシちゃん。」
「……何故、私がナナシであると……き、気が付く事が出来たのですか? ボディは前のと全く違いますよ?」
「ああ、それはね。見聞色の覇気だよ!!」
「はい?」
よく分からない単語が飛び出してきた。
「実は前にね、ウィルオーウィスプのサキュバス店で目隠ししたままプレイする機会があったんだよ。」
「……はい。」
「その時にね、なんか俺、女の子の気配を読み取れるようになったんだよ。当時は上手いこと使いこなせなかったんだけど、最近はもう気配だけで女の子を見分けられるレベルになったんだ! だから姿が変わってても、君がナナシちゃんだって、なんとなく気付く事が出来たんだ。」
そう言ってカズオはえへんと胸を張った。
「……」
だが、カズオのそんなへんてこポーズはもうナナシの頭には入ってこなかった。
今のナナシの頭の中にあるのは一つ。
(ボディが変わってるのに……私がナナシだって……マスターは……気が付いてくれた……ッ♡♡♡♡)
ゴーレムにとって、ここまで嬉しい事はない。
もしマジカルホールを股間にセットしていたら、止めどなくローションが溢れ出していた事だろう。
「……マスター。」
「おっとと、どしたの? ナナシちゃん。」
ナナシは胸の内から溢れ出す感情を我慢出来ず、カズオに向かって飛び付いた。
「私は貴方のせいで感情のコントロールが出来なくなりました……」
「え?」
「……聞くところによると、マスターはユリさんの男性恐怖症を治す為に、たまにエッチをしてるらしいですね。」
「ど、どっからその情報持ってきたの!?」
「くすくす……♪ 極秘事項です。」
「うわ、その笑い方、ユリちゃんのだ。」
「なのでマスター。責任を取って、これからは私の感情コントロール練習にも付き合ってください。期限は私の感情が落ち着くまでです。」
「感情コントロール練習!? な、何それ?」
「ユリさんのと同じです。思い出した時でいいので、たまに私とも、エッチをしてください。お願いします。私の生まれて初めてのワガママを……どうか聞いてください。」
「そ、そんなんでいいなら……別にいいけど……俺もナナシちゃんとのエッチ好きだし。」
「ッ♡♡♡ ふふふ♡ ありがとうございます。マイマスター♡」
こうしてカズオの休日に、また新たな予定が追加されたのであった。
はい。お疲れ様です。
えっと、ここで一つ重要なお知らせがございます。
毎週土日に休まず更新してきたうちの小説ですが、しばらくの間、お休みさせていただきます。
お休みさせていただく理由なのですが、実は僕の親しい親戚が入院する事となってしまいまして、その家にはまだ幼い子供とかもおりまして、やばいウイルスが大流行しているこんな時期ですので、家族間でのサポートが大切だと僕は思うのですよ。
という訳でして、こちらの諸事情につき、しばらくの間更新をお休みさせていただきます。申し訳ございません。
皆さんもウイルスには気を付けてください。
待っていてくださる読者様の為にも、できるだけ早く戻って続きを書いていきたいと思っておりますので、高評価をつけたり、感想なんかを書いたりして、どうか気長にお待ちください……
ここぞとばかりのおねだり。