童貞がインキュバス(仮)に転生したのでレビュアーズに入ります。 作:ナットーごはん
カズオ達がアンデッド専門サキュバス店で遊んでいる、ちょうどその頃……
食酒亭はというと。
「……」
「……」
「……」
「……」
時刻は深夜。閉店後の食酒亭。
食酒亭の女将であるツタ、それと給仕係のメイドリー、クリム、メイの三人は、テーブル席に腰をかけて反省会のようなものを開いていた。
普段の食酒亭ではこんな事はしないのだが、最近ちょっと失敗続きの給仕係がいたので急遽執り行う事となったのである。
そしてその失敗続きの給仕係というのが――
「クリム君。ここ一週間ほど調子悪そうだけど……どうしちゃったの?」
「う゛……いえ……その……」
クリムであった。
「あ、別に怒ってるわけじゃないのよ。誰にでも失敗はある事だし。だけど最近
「すすす、すみません!!女将さん!!」
にっこり笑顔のツタではあるが、目が笑っていなかった。普段は優しい食酒亭の女将であるツタだが、流石に限度というものはある。
最近のクリムは、それだけ失敗続きだったという事だ。
「……はぁ、本当に大丈夫なの? クリム君。体調が悪かったりしたらちゃんと言ってよ? 従業員の体調管理も私の仕事のひとつだしさ。」
ツタは一度ため息をつくと、純粋にクリムの事を心配した視線を向けてきた。
そしてメイドリーとメイの二人もそれに続く。
「もしかして何か嫌な事でもあった? 私でよければ何でも相談してくれていいからね?」
「わ、私も! 頼りないかもしれませんが! お、お話を聞く事なら、で、できます!」
「うぅ……」
あまりにも優しすぎる同僚達の言葉に、クリムは嬉しさよりも先に、申し訳なさが前に来た。
何故ならここ最近の不調の理由、原因がなんなのかを、クリムは自分で理解していたのだから……
本当は胸の中に仕舞っておきたかった秘密だが、この状態では……流石に話さなければいけないだろう。
「あ、あの……皆さん、ボクの為に心配してくださって、その……ありがとうございます。……え、えっと、ボクの、その……最近の不調の理由……ですが……」
「うん。」
「……」
クリムの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。そんなクリムの様子を、三人は首を傾げて見守る。
「……あの、その……」
「ゆっくりで良いわよ。クリム君。」
「……」
「……」
「……だ、誰にも言わないでくれますか?」
「はい。誰にも言いませんよ。クリム先輩。」
「……えっと……そのですね……」
「……」
「す、スタンクさんやカズオさん達にも絶対に言わないでくださいね!」
「言わないから早く! クリムくん。」
「うう……」
ジッと待つツタ。緊張した様子で待つメイ。待ちきれなくなって急かすメイドリー。
クリムは一度スーハーと深呼吸をすると、手で自分の目元を隠したまま、ここ一週間、胸の内に秘めていた秘密を口にした。
「じ、実は……ボク……」
「「「はい。」」」
「か……カズオさんの事が……」
「「「カズオくん(さん)の事が……?」」」
「…………好き……だったんです……」
「「「知ってる(ます)。」」」
「……え?」
「「「え?」」」
「ええええっ!?!?」
あまりにもあっさりと全員に頷かれてしまい、思わずクリムは変なイントネーションで驚きの声をあげた。
「な、ななななな!? なんで知ってるんですか!?」
「いや、なんでって言われても……」
「普段の態度見てたらね……というかカズオくん以外の全員が気が付いてるわよ? それ。」
「カズオさんは世界一素敵な男性なので、好きになってしまうのは仕方がない事だと思います。」
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
クリムの頭の輪っかが、ハロゲンヒーターのように真っ赤に染まる。クリム的には一世一代のカミングアウトをしたつもりだったのに、まわりの皆はもう既にクリムの恋心に気が付いていたという羞恥プレイ……
もう昇天してしまいそうなほど恥ずかしかった。
「……」
チーン……
「く、クリムくん……大丈夫?」
「……ダメです……初めてサキュバス店に行った時以上に恥ずかしいです……今、ボク……」
「というかクリム君、今さら自分の気持ちに気が付いたのね。その事にビックリだわ私。」
「はぐぅううッ!?」
「ちょっ! 女将さん! それトドメ!」
ガクンッと、クリムはそのまま机に突っ伏してしまった。
頭の輪っかは赤くなり過ぎでジュワ~と音が鳴ってしまっている。今ならコンロの代わりになるかもしれない。
「だいたいクリム君て、普段からよく「カズオさんは素敵です」とか言ってたじゃない。それなのに自分で気が付かなかったの?」
「う、ううぅ……! ええ、ええそうですよ!! ボクはカズオさんの事がずっと好きだったのに、ずっとその事に気が付かなかった大間抜けですよ!! ごめんなさい!!」
「い、いや……別に責めてる訳じゃないけど……」
「そうですよ。クリム先輩は悪くありません。悪いのはカッコよくて、優しくて、魅力的過ぎるカズオさんの方です。……いえ、よく考えたらやっぱりカズオさんに悪い所なんて無かったです。カズオさんはダメな所も含めて全てが完璧でした!」
「メイちゃん、ややこしくなるからちょっと黙ってて。」
「……」
……結局フタを開けてみたら、クリムの不調は拗らせた恋心が原因であった。
サキュバス店の帰り、とうとう気が付いてしまったその感情は、ずっとクリムの頭をグルグルと混乱させていたのである。
「大丈夫? クリムくん。」
「……すみません。取り乱してしまいました……」
「そ、それは別にいいんだけどさ……給仕の仕事の方はどう? 続けられそう? 今はカズオくん、冒険に出かけてていないけど、もうちょっとしたら帰ってくるわよ?」
「……はい。大丈夫です……むしろ今はもう、皆さんに本音を話せたお陰で、なんだか気持ちはスッキリしています。」
「そっか。」
「はい。ありがとうございます。」
苦笑いではあるが、クリムはニコッと笑った。
ここ数日、クリムが何かに悩んでいた事を、食酒亭メンバーはずっと気がかりに思っていたので、やっと笑顔を見せてくれたクリムに、ようやく全員一安心する事が出来たのであった。
良かった良かったとツタはどこからともなく酒瓶を取り出し、フタを開けた。大事な従業員の悩みが一つ解消されたのだ。今日は飲んでもいいだろう。
「あ、そういえばさ、メイちゃんもカズオ君の事が好きだったわよね?」
この際だからこの娘の恋心もぶっちゃけさせてしまおうと、ツタは酒を口にしながらメイにも声をかけた。
「ふへっ!? お、おか、女将さん! にゃ、にゃに、何を!? わ、私はその……か、カズオさんの事を好きだなんてそんな……おこがましい事は……」
「いや、もう
「はい。」
「はい。」
「う、うゅうぅぅぅぅ……!!? しゅ、しゅみません……わ、私も……カズオさんの事が……す、す……大好き……なんでひゅぅ……」
クリムに続いてメイも告白。
その顔は先程のクリムに負けないくらい真っ赤であった。
「あはは、メイちゃん可愛いわね。どんどんいってみよう! 次、メイドリーちゃん。あなた好きな人はいないの?」
軽く
「好きな人……ですか? まだいませんね。」
「えー? 本当? メイドリーちゃん。でも、クリム君と同じで、本当はいるんだけど、まだ気が付いていないだけだったりとか、あるんじゃない?」
「ないですよ、ないない。」
「でもメイドリーちゃん、この前寝言で、「あっ♡ そこはだめ……スタンクぅ……♡」って言ってたわよ。エッチな声で。」
「嘘ッ!?」
「嘘でーす♡」
「……。雇い主相手にこんな事言いたくはないんですけど、殴っていいですか?」
「やだ、メイドリーちゃん怖い。あはははっ。」
「ダメだこの人、もう酔っぱらってる。」
出来上がるのが早すぎる店主に、メイドリーは頭を抱えた。
ツタはニコニコ笑いながらクリムとメイの二人へと視線を戻す。
「でもクリム君もメイちゃんも、どっちもカズオ君の事が好きなら、取り合いになってケンカになっちゃったりするんじゃないの? どうなの? その辺? やっぱり二人とも、カズオ君と付き合いたいとか考えてる訳?」
「えっ!? え、えっと、ボクはその……確かにカズオさんの事は、す……好き……だと、自覚はしましたが、別にその……お付き合いをしたいとか……そういう訳では……いずれはその……天界にも帰らないといけない身ですので……」
「わわ、私は……絶対無理です! だ、だって、か、カズオさんが、私なんかと、つ、つつ、付き合うだなんて、そんな事、起こり得る訳がありません……ので……!!」
分かりやすくワタワタと慌て始めるクリムとメイに、ツタはケタケタ笑う。
「それじゃあ質問を変えます! 二人はカズオ君の、一体どこら辺が好きなの? 一番好きな所を教えて♡」
「す、好きな所ですか!?」
「はぅううう! はぅううう!」
「あはは、メイちゃん顔まっかっか!」
楽しそうだなー、この女将……と、メイドリーは酒を自分のコップに注ぎながら思った。
矛先がこっちに向いては困るので、口には出さないが。
「そ、そうですね……ボクはやっぱり……カズオさんの優しいところに惹かれたんだと思います……」
ツタの質問に、クリムはポッと頬を赤らめながら答えた。
あの日、クリムが天界から地上に落ちてきたあの日、寂しくて、辛くて、怖くて、必死になって助けを求めたクリムの声に、「勿論いいよ!」と速答してくれたカズオ……あの時の言葉を、クリムは一生忘れる事はないだろう。
思えばあの時から既に、クリムはカズオの事を好きになりかけていたんだと思う。
「なるほどね。ヒック……やっぱり顔か。」
「いや……あの、ボクの話聞いてました? 女将さん。」
「聞いてる聞いてる。ヒック……」
あ、これたぶん聞いてないやつだな。と、メイドリーは横目で見ながら思った。
「それじゃ続いてメイちゃん。いってみよー。」
「わ、私……ですか?」
「そう。メイちゃんの、カズオ君の一番好きな所……教えて?」
「……全部、です。」
ツタの質問に、メイは顔を赤らめて速答した。しかし、その答えはツタのお気に召さなかったようで……
「だーめ。全部は無しよ。それじゃあつまらないわ。好きな所を“一つだけ”教えて♡」
「え……!?」
全部は無し。そう言われてメイの頭は真っ白になった。何故なら、一つだけなんて、とてもじゃないが、そんなの、選べなかったからだ……
「……あぅ……」
メイはカズオの……頼り甲斐のある所が好きだ。優しい所が好きだ。お母さんを助けてくれた所が好きだ。自分なんかの為に居場所を与えてくれた所が好きだ。あの赤い目が好きだ。声が好きだ。匂いも好きだ。ちょっと抜けてる所が好きだ。そう思わせておいて実はしっかりしている所が好きだ。エッチな所も好きだ。作った料理を美味しいって言ってくれる所が好きだ。
好きじゃない所なんて見つからない……例えばカズオは、ジャンケンがとても弱く、お酒が一滴も飲めなくて、料理も壊滅的にヘタクソなのだが、そんな欠点も含めて、メイはカズオの事が全て好きなのである。
好きで好きで好きで好きで、どうしようもなく大好きなのだ。
「……うゅぅ♡」
「? ……メイちゃん?」
「か、カズオさん……大好きぃ……♡」
「……へ?」
「らぁい好きぃ……♡♡」
「……あ、ダメだ。これは。なんかトリップしてる。」
メイの小さな一つ目が、完全にハートの形となってしまっている。どうやらカズオの事を考えすぎて壊れてしまったらしい。
一体何がどうあればここまで人を好きになる事が出来るのか……ある意味羨ましいが、流石にここまではなりたくないと、メイドリーは思った。
「青春ねぇ。うぃ~、ヒック……それじゃあ次は……全員の性事情について質問してみようかしら?」
「性事情!?」
そして女将はもうべろんべろんに酔っぱらってしまっている。こうもなりたくないなと、メイドリーは思った。
そうして今日も夜は更けていくのだった……
今さらだけどツタさんがちょっと、酔っぱらいキャラになりつつありますね……
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あと、この前言ってた魂魄妖夢の短編小説もこのあとで投稿する予定なので、東方知ってる方がいれば、良ければそちらもどうぞ。ささっと書いただけのやつですが。
みょん。