童貞がインキュバス(仮)に転生したのでレビュアーズに入ります。 作:ナットーごはん
無理矢理人に飲ませたりなんかは論外です。
ほとんどの労働者が仕事の中で最も喜ぶ瞬間……それは、お給料が貰えた時だろう。
本日は食酒亭の給料日であった。
「はい、メイドリーちゃん、メイちゃん、今月のお給金。こっちはクリム君の分。」
食酒亭のスタッフは、月の働き量に応じて支払われる給料が上下する。
メイドリーとメイがズッシリと重い給料袋を受け取る中、クリムが受け取った袋は、二人の半分以下の膨らみしかなかった。
「…………あ、あの……おかみさん? これだと半月ぐらいしか生活が……」
スカスカの給料袋を手に、クリムはタラリと汗を流す。
食酒亭の女将であるツタは、そんなクリムにニッコリと微笑みかけた。
「クリム君? 先月は魔法都市で二週間以上、楽しく遊んできたんでしょ?」
「あ、あはは……」
という訳で、今月のクリムは盛大に金欠であった。
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「おーいクリム!」
「サキュバス店いこーぜ! サキュバス店!」
「やほーい!」
場所はお馴染み食酒亭。
スタンク、ゼル、カズオのドスケベトリオは、本日も通常運転であった。
彼らの羅針盤はいつだってサキュバス街をビンビンに指し示しているのだ。
「……お待たせいたしました。満月球根の海鮮炒めです。」
そんなスケベ達からの誘いを、クリムはチラ見してからスルーした。
「!? コォラ! クリム! 無視すんな! レビュアーが足りないんだよ! カズオもいるから、早く来い!」
「そうだぞクリム! カズオもいるぞ! だから早く来い!」
「いや二人ともなんで俺がいることをそんなに強調すんのさ!?」
カズオをダシにしてクリムを呼び込もうとするスタンクとゼルであったが、それに対してクリムは困り顔で返答する。
「そんな事言われても、単純にお金が足りないんですよーっ。どうしようもないじゃありませんかー。」
むーっと頬を膨らませるクリム。実は行きたいのは山々なのだ。
「チッ、しょーがねぇな。ホレ。」
「?」
「今月分のレビューの取り分。先渡しだ。」
スタンクはゴソゴソとポケットを探ると、クリムの手にレビュー記事の売り上げ、その一部を渡した。
「!! ありがとうございます! スタンクさん!」
「よし! ではさっそく……」
「これで今月食い詰めずに済みます!」
「「待てやコラーッ!!」」
金を受け取ったクリムが、そのまま給仕の仕事に戻って行くのを見て、スタンクとゼルは慌ててクリムを呼び止めた。
「クリム! よく考えろ! それはサキュバス店レビューで得たあぶく銭だぞ!?」
「そんな金は一銭残らずサキュバス嬢に還元しないと失礼だろうがっ!」
何のために先渡ししたと思ってんだー! と怒り出すスタンク&ゼルを尻目に、クリムはハァ……と、ため息をついた。
「あのですね……いくらレビューでお金が入るっていっても支出の方が多いんですから……そんな頻繁に通い続けられる訳ないじゃないですか!」
クリムの言い分にカズオはそりゃそーか。と頷いた。
冒険者であるカズオ達とクリムとでは、そもそもの稼ぎの量が違うのだ。
「そだね。俺達ちょっとクリムの事を誘いすぎてたみたいだな。ごめんなクリム。これからは極力誘わないようにす――」
「いえっ! カズオさんに誘ってもらえるのはボクとしてもとても嬉しいです!!」
「いや、誘って欲しいのか誘って欲しくねぇのかどっちだよ!?」
クリムの矛盾した物言いに思わずツッコミを入れるカズオ。
「要するに問題は金だろ。なら稼げ! ここは冒険者の酒場なんだ。依頼書は腐るほどある!」
「……あの、スタンクさん。今まさに働いて稼いでる最中なんですけど……ボク……」
「いいかクリム。お前は頭の輪っかが直ったら天界に帰る予定のため、傭兵や冒険者用の雇用形態でこの店で働いている。」
「……そうですね。」
傭兵や冒険者用の雇用形態とは……要するに、クリムはいつでも好きに休めて好きにやめられるという契約の元、食酒亭にて働かせてもらっているのだ。
「つまりお前は、給仕より稼げる仕事があれば、ちょっと休んでそっちに行ってきまーすと言える権利を持っているのだ!」
「有翼人やらデコイ魔女を抱きに二週間ほど遠征した時も、女将は仕事を休んだ事については文句を言わなかっただろ? メイドリーは言うけど。」
「……そんな事言われましても……輪が欠けたボクは、非力で浮けるだけの少女――う゛ぅ゛んッ! しょ、少年ですよ? 何の依頼が受けられるって言うんですか?」
スタンクとゼルはう~んとクリムにもできそうな仕事を考える。そして答えはすぐに出た。
「サキュバス店のレビューが出来るぞ!」
「そのカワイイ顔とデカイちんこを活かせっ!」
「だからそれでは赤字だって言ってるじゃないですかーっ!」
ぷんぷんと怒るクリム。
それに対してカズオはポンと手を打った。
「んじゃ、レビューじゃなくて、ちゃんとしたインキュバスボーイとして働けばいいんじゃない? クリムなら需要は結構あると思うよ?」
「「それだっ!!」」
「それだ! じゃないですよ!! 嫌ですよそんなの!! もー!!」
顔を真っ赤にして否定するクリム。しかしそれにゼルが待ったをかけた。
「いやいや、案外良い案かもしれないぞクリム!」
「……何がですか?」
「天使って闇以外に強い耐性があるんだろ? つまりお前は、火や水や毒や雷属性のお客ともエッチが出来る、神がかったインキュバスボーイになれる天性の素質を持っているという訳だ!!」
「そんな素質いりませんよ!! というか、それならカズオさんの方がボクよりも強い耐性があるじゃないですか!」
「バカ野郎!! お前……! カズオがインボーなんか始めた日には、女達による取り合いの戦争が始まるぞ!?」
「あー……」
それは確かにそうかもしれないと、クリムは妙に納得してしまった。もしかしたら自分もその戦争に参加してしまうかもしれない。
「あーじゃないよ!! 納得をするな!」
「カズオさんはインキュバスボーイをやろうとかって考えた事はないんですか?」
「無いな。仕事にしちゃうと自由にエッチが楽しめなくなりそうだから嫌だもん。」
「そ、そうですか……」
「クリムはどう? インボー。」
「ぼ、ボクもやりたくはないですね。……カズオさんが来てくれるなら……いいかもだけど……」
「ん? 今ボソッとなんか言った?」
「な、なんでもないです!」
そんな感じでエロでの金稼ぎについての話をしていると、遠くの席でテーブルを拭いていたメイドリーがジト目でスタンク達の事を睨んできた。
あの目は、これ以上うちの後輩をスケベの道に引きずり込むなと言っている目だ。クリムはそそくさと給仕の仕事へと戻っていった。
「ちっ……しゃーねぇ。まあクリム誘ったところであと一人足りねぇし……今日は飲んで食って寝る日にするか。おーい、エールと揚げポテトとイエローボアステーキくれ!」
「んじゃ、俺はエールと炒り豆。それと旬の野菜の盛り合わせで。」
「俺はリンゴジュースとアップルパイ! それとリンゴタルトも貰おうかな。」
メンバー不足の為、本日のサキュ店レビューは諦めた三人。仕方がないので性欲は食欲で満たす事に。
それぞれが好きな物を注文して、グダグダ~っと飲み食いしながら駄弁っていると……
「よー! スタンクにゼルにカズオー♪」
バンッと食酒亭の扉が開き、そこからいつものスケベ仲間が現れた。
カンチャルである。彼は小さな背丈に似合わないほどの大きな皮袋を背負って店の中へと入ってきた。
「カンチャルかー。どこ行ってたー。」
「えらくご機嫌だな。何か楽しい儲け話でもあったのか?」
「というかその大きい袋なに?」
「ふっふっふ~♪」
カンチャルはスタンク達が座っている席までやって来ると、背負っていた皮袋の中身をテーブルの上へとぶちまけた。
それは数えきれないほどの……
「
「なんだこの大金!?」
「どーしたのこれ!?」
「ふっふっふ、輸送隊ギルドに回していたレビューの全国売上げさ。結構なもんだろ?」
実は魔法都市に行くまでの間に、「今まで書いたレビュー記事を全国で売り飛ばしたいんだけどいい?」みたいな話をカンチャルがしていたのだが……その結果がこれらしい。こんなに儲かったのか……
チャッチャッチャッと手際よく金を分けていくカンチャル。
「クリムいるかー?」
「はーい。あ、カンチャルさん。ご注文ですか?」
「ほら、これクリムの分。」
「え? うわぁ!? な、何ですかこれ!?」
ドサッと、物凄い大金を手渡されるクリム。先ほどまで金欠だと言っていたのが嘘みたいな大金である。
カンチャルはそのままスタンク、ゼル、カズオにも分け前を渡していく。
「しっかし、ちょっと多すぎないか? どうやってこんなに稼いだ?」
あまりにも多すぎる大金にスタンクは軽く汗を流した。
「ふふふ、レビュー記事の見出しにカズオの顔写真を使ったら思いのほか女の子達からの評判が良くてね。想像してた以上に滅茶苦茶売れたよ。」
「なるほどなっ!」
「いや、勝手に俺の写真使わないで!?」
「それと、前にボクらのレビューを真似てた奴らがいっぱいいただろ? あいつらが地元で貼り出す分には放置することにしたけど、輸送隊を通してボクらと同じ事をしたい場合はギルドとボクらに金を支払う契約にしたんだ。」
「……つまり?」
「つまり! これからは全国のレビュアーがボク達の金ヅルって訳さ!」
ドヤ顔でそう言うカンチャルに、一同は揃って衝撃を受けた。
「マジかよ!? すげぇ!!」
「企画パクられたとき、がめついお前が何も文句言わなかったのは、はじめからこうやって利用する気だったからか?」
「まーね。止めても労力かかるだけで1ゴールドにもなんないし……だったら利用する方がいいでしょ?」
カンチャルはゆっくりと椅子に腰を掛けた。
「これからはレビュー売り上げをサキュバス店に行く足しにするのではなく、サキュバス店に行けば行くほど黒字になる時代が来るッ!!」
「な、なんという事だ!!」
「これはレビュー界の革命だ!!」
「マジでエロだけで食っていけるようになっちゃった!」
ワアアッと盛り上がるスケベ達。
「「という事は!!」」
スタンクとゼルは揃ってクリムの腕を掴まえた。
「わっ!?」
「これでもう金の問題は解決だな?」
「さあレビューを書きに行こうぜ~!」
そのままクリムを連れていざサキュバス店へ! そう思った次の瞬間……
「コラーッ!!」
「おぶっ!?」
「おがっ!?」
メイドリーが翼を広げて飛んで来て、スタンクとゼルの頭を足のツメで鷲掴みにした。
有翼人は足で物を掴む力がとても強いのだ。
「行くなとは言わないけど! 仕事を終わらせた後でも行けるでしょそんなもの!! 今クリムくんが休んだら、その分私やメイちゃんにしわ寄せがくるんだからね!!」
「す、すみません……」
「そんじゃ……お、お酒の追加……ください……」
「はーい。毎度ありぃ!」
そうしてスタンク、ゼル、カズオ、カンチャルの四人は、クリムの仕事が終わるまでの間、とりあえず飲みながら待つ事にしたのだった。
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数時間後……食酒亭の営業終了時間。
「ふぅ……皆さん、お待たせしました。もうすぐ仕事が終わりま……」
仕事を終えたクリムが、スタンク達が待っている席へと向かう。するとそこには――
「いよぉ~~、クリムくん。まってました!」
「レビューするほど金が入る!」
「異種族レビュアーズ万歳!」
「あー、クリム。お疲れー。」
そこには、暇を持て余した結果酒を飲みまくり、べろんべろんに酔っぱらったスタンク、ゼル、カンチャルがご機嫌そうにゲラゲラと笑っていた。
(おおっと!? 皆さんなんだか妙にできあがっているぞぉ……?)
酔っぱらっていないのは酒が飲めないカズオだけである。
「うひゃひゃひゃ!」
「それでは我らがレビュアーズの門出を祝しまして~」
「メイちゃん! もう一杯!!」
酔っぱらい達が追加の酒を注文すると、注文されたメイがわたわたと慌て始める。
「え!? あ、あの……皆さん、それくらいにしておいた方が……その、体にもよくないかな……と……」
「んだとぉ!? まだ飲み足んねぇぞぉ!?」
「ひゃああっ!? す、すみませんっ!!」
「こらスタンク! メイちゃんを脅すな! てか食酒亭はもう営業時間終了だから! 注文できないから!」
「なんだとカズオ!? なら違う店だ! もう一軒行くぞ! もう一軒! サキュバス店にも行ってイくぞぉ!!」
フラフラと立ち上がり食酒亭を出ていくスタンク、ゼル、カンチャル。
カズオとクリムはそれに慌ててついて行った。
「ちょ、待ってよ。もう一軒てどこ行く気?」
「ん~? そうだな~? どこにすっか? ゼル。良い店知ってっか?」
「おう~! そんじゃ次の店はクルーラホーン店で決まりだ!」
「クルーラホーン?」
「酒の妖精さぁ! 飲めるし、ヤれるし、堕落のよくばりセットだ~!!」
「いや、あの……俺酒は飲めないんだけど……」
「ならカズオは飲まずにヤる事だけヤッとけ~!」
「ははははは~!」
そうして酔っぱらい×3プラスアルファは、サキュバス街の道をご機嫌そうに歌いながら歩いていくのだった。
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・
「……ふがっ!?」
カズオが目を覚ますと……そこは知らない天井だった。
「……あれ? ここどこ?」
冷たい床の上からムクリと起き上がり、キョロキョロと辺りを見回してみると、スタンク、ゼル、カンチャルの三人が同じようにして起き上がっていた。
「……気持ちわりぃ……頭いってぇ……」
「ここは……宿屋か? いつの間に帰ってきたんだ……?」
「全然記憶にない……」
上からスタンク、ゼル、カンチャルの順。三人は二日酔いでガンガン痛む頭を押さえている。
カズオは頭痛こそしないものの、昨日クルーラホーンの店に行ってからの記憶が見事に消えていた。
(確か女の子達に無理矢理酒を飲まされて……んー……? ヤバイ。マジで記憶が無い……)
そんな感じで頭を悩ませていると……
「ん? お、でもレビューは出来てるぞ!」
スタンクが床に散らばっていたサキュバス店のレビュー記事を見つけた。
「無意識で書いたのか。偉いな俺達……」
「へー、見せて見せて!」
レビューを読めば昨日、あれから何があったのかが分かるはず。そう思ってカズオはスタンクの持つレビュー記事を覗き込んだ。
するとそこには……
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チートインキュバス。カズオのレビュー。
●クルーラホーン専門店《みんな酒の精》
あるこーるをあんこーるでよっぱらいます!酒をのんだ女の子たちがいっぱいいて、おれたちも飲まされる!クリムは酒に強いな!あいつはぜんぜん酔わない!だけどあいつはちんぽがでかい!まあ俺のがでかいがな!俺は酒を飲んで、女の子たちは俺のちんぽ汁を飲む!よっぱらえ~!よっぱらえ~!俺のちんぽにもっと酔え~!
ふたなリンリン♪
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今回の点数。
スタンク ・ぺもっちゃみ
ゼル ・俺の勝ち
カズオ ・ふたなリンリン♪
カンチャル・レモン
クリム ・0点(とても筆圧濃く書かれている)
「「「「何だこれ……?」」」」
それは全くもって意味不明なレビューだった。
「ん? うわっ!? おい見ろ! これと似たようなひどいレビュー、他に何枚もあるぞ!」
「店ハシゴしたのか!? 覚えてねぇぞッ!!」
「……ハッ! うわっ!? お金も全く残ってない!!」
「今月の生活費も全部消えてる!?」
上からスタンク、ゼル、カンチャル、カズオの順。
あまりに酷い現状に、体の中に残っていたアルコールがシュワシュワ~っと全部抜けていく気分だった。
「……で、でも、レビューさえあれば金はいくらでも……」
「こんなレビューじゃ使えねぇよ!」
「「「……今月の生活どうしよう……」」」
スタンク、ゼル、カンチャルの三人はガックリと膝をついた。
それに対してカズオはまだ余裕そうな表情である。
「こんな時の為にちゃんと貯金しといて良かったぁ……」
ボソッとそんな事を呟くと――
ガシッ
「え゛?」
左右からスタンク、ゼル、カンチャルに両肩と腰を掴まれた。
「一人だけ安全圏にいるような顔してんじゃねぇよ……」
「同じサキュバス店をハシゴした者同士……俺達は仲間だ……!」
「ボクらの生活費稼ぎ……カズオにも勿論付き合って貰うからね!!」
「えーー……」
そうして、その月のカズオは、生活費を稼ぐためにスタンク達と共に数々のダンジョン制覇やモンスター討伐を成し遂げたのだった。
「…………ところで、あの酒のサキュバス店では結局ナニがあったんだろ?」
「さあ?」
次話エロ。
明日投稿予定だけど、実はまだ全然書けてないので明後日になるかも。