六月…梅雨の季節である。山の天気は変わりやすかった。東京は平野部なのに、天気が変わりやすいのは、どうしてだろうか?雨の日は狩りが出来ない。悪さをするケダモノが少ないように思える。そんなヒマと言えばヒマな時期に、警察庁から呼び出しが掛かった。警察庁へ向かうと、次長室に通された。
「一弥君に、依頼したい案件があるんだ」
弘一さんは相変わらず、サングラスを掛けているので、その表情は読めない。
「日帰りですか?」
泊まり込みになると、出席日数が危ない予感だ。
「2週間くらい、潜って欲しい。出席日数と期末試験は、コチラで対処する。これは決定事項だ」
公安って、強権発動が多すぎる。拒否を認め無い案件が多いし。まぁ、その分、実入りはおいしいのだが。
「潜る場所は立川にある立川学園都市だ」
筑波学園都市は聞いたことあるが、立川にもあるんだ。
「そこでクローン実験を繰り返している研究所がある。そこに行き、この子を保護してきて欲しい」
1枚の写真を見せられた。大きな水槽の中で眠るアホ毛持ちの幼女の姿が写っていた。背景には様々な機器が写っており、彼女が普通の環境下で無いことがわかる。
「この子を保護するだけですか?」
「勿論、研究所の破壊、出来れば、研究資料の破棄だな」
「この施設の場所は?」
「不明だ」
不明だから、潜って探せってことかな?
「バックアップは、安室と風見、後は臨機応変だ。頼むぞ」
もしかして、学園都市だから、俺が選ばれたのか?
◇
バイクで学園都市に向かった。幼女を保護するためのバックパックを背負って…それって、人さらいのような姿では無いのか?
学園都市は、近未来風な景色であった。空を飛ぶ宣伝モニタ付きの飛行船、奇抜な形の高層ビル群、地下に温泉があるようだし。ここは、基本的に学生か学校関係者か、研究所関係者だけの町らしい。しかし、コンビニや病院などもあり、一般人も住んで居るようだ。
公園で一休み…女子中学生が、自販機前でブツブツ言っていた。
「また、私の貴重なお小遣いを飲み込んだのねぇぇぇぇ~!このぉぉぉぉ~!」
少女が自販機に蹴りを食らわそうとしている。俺は瞬動術で少女の前に行き、彼女の足を掴んだ。スカートの中は短パン…何でだ?見せパンにしては、ごっつい造りである。
「ちょっと、いつまで見ているのよ!えぇっ!」
何かに驚いた少女。足を放してあげた。
「どれが、飲みたいんだ?」
まず、俺の飲みたい缶コーヒーを購入した。
「同じの…」
手に持った缶コーヒーを手渡し、改めて自分の分を購入した。
「ありがとう…」
俯いてお礼を言ってきた少女。その時、血の香りを感じた。同時にハッとした俺と少女は、香りの元へ急ぐと、少女に似た少女が、縦シマボーダーシャツを着た男性にボコられていた。
「妹から離れなさいよ!」
少女の手から何かが放たれた。
「うん?ほぉ~、本体のお出ましか?悪党の前で死んでくれないか?」
少女達に向かって、車が飛んで来た。この町は、スゴイ。車が飛ぶのか。『メタル・バースト』と俺の脳裏で声がし、車が真っ赤になって蒸発していく。
「何?貴様…何者だ?!」
「俺?俺はタダの前科者だけど…こんなにかわいい女子を虐めるのは良くないなぁ」
俺に向かって鉄骨とか鉄杭が飛んで来た。『フルカウンター』と俺の脳裏で声がして、飛んで来た物の全部がボーダー男の元へ向かい、『マテリアル・バースト』と脳裏で声がするとボーダー男を中心に爆発した。その隙に、ボコられた少女を背負い、無傷な少女の手を引いて、その場から逃げ出した。指揮車を呼んでおくか。
◇
大きな通りに出て、安室さんと合流して、ケガした少女の保護をお願いした。
「ありがとう…」
最初に出会った少女にお礼を言われた。
「俺は何もしていないよ」
「えっ?!」
怪訝な表情で俺を見つめている少女。
「一弥!彼女は、信頼出来る病院へ連れて行く」
「頼みます」
安室さんの車が立ち去った。たぶん、宮野医院だろうな。一番信頼デキるし。
「一弥って言うんだ…私は御坂美琴…妹を助けてくれて、ありがとう」
真っ赤な顔の彼女、美琴はかわいいと思う。なぜ、妹さんよりも胸が残念なんだろうか?訊けない疑問である。ビンタ直行の質問になる予感がするし。
「俺は近藤一弥だ。よろしくな」
「前科者って、何をしたの?」
「あぁ~、過剰防衛…今日のは大丈夫かな?」
「それなら、大丈夫。この街では、過剰防衛は当たり前だから」
そうなのか…
「警察の人と知り合いみたいだけど、一弥は何者?」
安室さんが、怪我人を保護する為、美琴に身分証をみせていた。
「アホ毛の幼女を探しているんだよ。まぁ、探偵みたいな…」
「探偵なの。うん?アホ毛の幼女?」
美琴にあの写真を見せると、明らかに動揺していた。訳知り少女なのか?
「彼女をどうするの?」
「保護して、安全な場所へ移送するんだよ。で、クローン実験を繰り返す研究所を破壊だったかな」
「そうなのか。やっと来てくれたんだ」
救援待ちだったのか?美琴もモグラなのか?モグラですか?って訊くのはマナー違反なので、訊けないけど。
「場所は、分かる?」
「うん…来て…」
初日から、捜し物が見つかるなんて、ラッキーである。
---土御門元春---
学園都市第一位のアクセラレーターが、瀕死の重体で病院送りにされた。それは学園都市暗部組織、そして統括理事達の間に衝撃が走った事件であった。
「レベル6以上だったらしいな」
ねーちんこと神崎火織に訊かれた。
「観測機器の上限が壊れたそうだ。確認された能力は『フルカウンター』『メタル・バースト』『マテリアル・バースト』の3つだが、どれも戦略級魔法だぜ」
戦略級魔法とは、一発で戦況を変えることが出来る魔法で、最強レベルの魔法である。それを被害範囲を出来るだけ最小にして発動と言う、芸の細かい制御能力まで見せつけたのだ。この学園都市において、レベル6へのレベルアップ実験が繰り返し行われているが、どれも未だに成功を収めてはいない。それだけ、今回のレベル6以上の出現は、驚愕なニュースであった。
「どこのやつだと思う?」
この街の能力者は単一系統の能力しかない。魔法師にしたって、似たような者だ。そうなると魔術師となるが、
「魔術師でも、立て続けに放てる物じゃねぇ」
フルカウンターは別にして、残りの2発は、膨大な魔力を必要とされる。メタル・バーストの場合、金属分子レベルでの爆発で、分子結合を断ち切る魔力が必要である。
そもそもであるが、連発出来る程、呪文の詠唱だって短くはない。考えられる人物は、無尽蔵の魔力を持ち、無詠唱で発動出来るヤツだ。ただ、そんなヤツの噂は聞いたことが無い。
「観測所の記録では5分以内に3発確認している。もし、存在するならバケモノクラスだぞ」
「あぁ…コチラの勢力に引き込みたいな」
それは、どこの勢力でも考えることだ。争奪戦が起きそうだ。
---近藤一弥---
美琴と研究所の屋上に来た。美琴は電気、電磁系統の能力者らしく、セキュリティーを次々に突破して、ついにあの少女のいるフロアに達した。途中、襲い掛かって来たガード用メカは、俺の脳裏で響く『マテリアル・バースト』という声と共に、跡形も無く蒸発していた。なんだろ?これって…
「この子だよ。私の20001体目のクローン体…ラストオーダーって呼ばれているんだよ」
俺の探していたクローン体は、美琴のクローン体だったそうだ。美琴に話を聞くと、あの縦シマボーダー男のレベルを上げる為に、既に10031体のクローンが、糧にされていたそうだ。なんか許せない気分で一杯になっていく。
ピッキッ!バリバリ…
少女の収まっていた容器にヒビが生じ、ついには容器が壊れた。
「待っていたよ…って、ミサカはミサカは、ラムと共に覚醒する。初めての共同作業だね」
目の前のラストオーダーが俺に意味不明の言葉を吐いた。ラム?覚醒?共同作業?はて?
「お姉様…逢いたかったです。御坂は感無量の気持ちで一杯です」
いつの間にか、ラストオーダーの後ろに、美琴の妹達が10名ほど立っていた。彼女達もクローンってことか?美琴本人より、スタイルが良いのはどういうことだ?誰に訊けばいいんだ、この疑問は…
「一弥!脱出しよう。この研究所を破壊して…」
それからの事は、記憶が定かでは無い。俺としての記憶を認識出来たのは、俺の隠れ家に着いてからだ。公安が支給してくれた。マンションの部屋。メゾネットタイプで5階6階7階が室内階段で移動出来る。その3階層のフロア全部が俺の部屋だそうだ。但し、各フロアの各部屋には、偽装の為のドアがあるそうだが。基本、俺の部屋からしか出入りは出来無いそうだ。
なんで、こんな広い部屋が支給されたかと言うと、御坂美琴、ラストオーダー、美琴の妹達を保護する為だそうだ。その為4階層には安室さん、風見さんが住んで居るんだとか。実家から歩いて5分、蘭の家からも歩いて5分と、立地もいい上、俺のバイクを駐車するスペースもある。
「一弥…本当にありがとう…CHU」
俺の頬に美琴の柔らかな感触。
「気にするな」
ラストオーダーが背中を独占中なのが、気になる。降りてくれる様子は無い。なぜ、気に入られたんだ?俺はデキる女性が好きなんだと思う。子守りは経験も無く苦手な予感なんだけど…
「ありがとうって…ミサカはミサカは抱き締めてあげます」
う~ん…幼女のはずなのだが、美琴より胸があるのは何故だ?美琴に訊けないよな…
◇
美琴のクローンの中で、ラストオーダーの次に懐かれたのは、10032号と呼ばれているクローン体である。あの縦シマボーダーシャツの男から助けて、病院に入院していた彼女だ。
「う~ん…クローン体は素直だもんな」
美琴が俺に甘えたいらしいのだが、プライドがジャマしているとかで、隠れ家に行くと、ラストオーダーと10032号が、俺の周囲を独占している。今ある問題は、彼女達の名前である。長い上、数字呼びでは、塀の中並である。改善しないとな。
美琴は近藤美琴として、帝丹中学に転入した。クローン達は隠れ家で、何かしらの作業をしている。クローン故、戸籍が無い上、名前に問題があるからだ。
この隠れ家にいる美琴の妹達は。ラストオーダーを除き、10名ほどである。20000体作られ、10031体が潰されたそうで、残りの数千体の行方を、妹達で捜しているそうだ。
妹達は記憶の共有がされているそうで、ラストオーダーを制御端末として、ミサカネットワークなる繋がりがあるそうだ。10032号に説明をされたのだが、今一、意味が分からない上、用途が分からない。
「ミサカネットワークが機能すると、ミサカ総体っていう1つの意思になるそうだよ」
って、安室さん。だから、どうしたといいたい。クローンなぁ…元になった美琴にメリットが無い。気苦労ばかりしているようだ。一体一体の心配をして、自分の妹のように扱っている。但し、ラストオーダーと10032号は、ライバルらしいが。
美琴の行く末を考えながら、今日も学園都市を練り歩いている。任務期間が終わるまで、狩りをしろってことらしい。この街の不良グループの実態を知りたいようだ。
「見つけたぁぁぁぁ~!」
なんか白い物が俺に降ってきた。咄嗟に受け止めると、白いローブを着た少女だった。
「見つかった…って、お前は誰だ?」
「ラムだよね?私はインデックスだよ」
「ラム?人違いだ。俺は近藤一弥だ」
俺の言葉を不思議そうな顔で聞いているが、更に強く抱きついてきた
「そうか、近藤一弥って名乗っているんだね。了解しました」
俺の頬に自分の頬を重ねる少女。俺を懐かしんでいるようだが、俺にはこの少女の記憶がまるで無い。
「おい!お前、その子を渡せ」
突然現れた黒いローブを羽織った男。俺の後方には、肌の露出が多い服装の剣士らしき女性が立っている。この子供を狙う悪人かな?俺、正義の味方では無いんだけど…周囲を見回すが、正義の味方らしき人物がいない。俺が護るしか無いのか?
「放す気が無いんだな。じゃ、力尽くで奪い取る」
後方から女性の気配が近づいて来る。前にいる男性は何やら呪文を唱えている。さぁ、どうする?
『リンクを確認したよ。インデックス、覚醒をさせて!』
脳裏にラストオーダーの声が響き、俺が抱き締めている少女が唄い出した。そこから記憶が曖昧である。何がどうしたのやら。でも今は、ホテルにあの女を連れ込み、性奴隷にしている最中だった。あの黒ローブの男はどうなったんだ?さっぱり、記憶に無い。
あの女性は俺の上でスクワットという騎乗位プレイをしてくれている。インデックスは、俺達のプレイに興味を示さず、ひたすらにルームサービスを食べているし、何がどうなっているんだ?
「お前の名前はなんて言うんだ?」
「はい…神崎火織…です。ご主人様…」
「胸を弄らせろ」
「はい、ご主人様…」
俺の上で四つん這いになり、撓わに実った果実を差し出した火織。あぁ、いい手応えだ。遊んでいないのか、ピンク色お乳首だし。最高品だな。
火織の意識が飛んで、戻る様子が無いので、ホテルを出て、インデックスと共に帰路に着いた。隠れ家に着くと、不思議なことにインデックスとラストオーダーが仲良く会話をしていた。古くからの知り合いか?いや、おかしい。ラストオーダーに知り合う機会は無かったはずだ。じゃ、どうして?
「難しいことを考えると、知恵熱が出るよ」
美琴が俺を膝枕へと誘導していった。
---土御門元春---
ステイルは重体、ねーちんは陵辱されてポイされ、インデックスは行方不明である。まさか、イギリス清教の暗部である『必要悪の教会』メンバーがこうも簡単に倒されるとは、相手は相当にヤバいヤツのようだ。
「土御門…私はもう彼に逆らえぬ。性奴隷契約をされてしまった」
ねーちんが悔しそうに言葉を吐いた。聖人とよばれるねーちんが性奴隷って、あり得ないだろうに。神の加護はどうしたんだ?
「ステイルは魔術の発動前に、ホーリーランスで、右胸を貫かれていた。アイツがレベル6なんだ。無詠唱で撃ち出していた」
イギリス清教でも最上位クラスの魔術師であるステイル。そのステイルが魔術勝負で負けたことは、問題である。ねーちんの剣技が総て『フルカウンター』されたことも驚異だ。これで、魔術も物理攻撃も、ヤツに効かないと言うことが判明した。
「インデックスは…寝返ったようだ。アイツに…アイツが獣の数字なのか知れない」
十字教がもっとも恐れる敵、獣の数字。それは神が造った最強の生き物であり、総ての生物の頂点に立つバケモノである。
「インデックスが唄っていた。あれは、封印を解き、覚醒させる歌…」
ねーちんの意識はそこまでだった。覚醒したのか?マズイ。俺達『必要悪の教会』は、獣の数字に対抗する集団だったのに、既に殲滅されたも同じである。イギリス本国に、どう説明するかな。