---工藤新一---
退院をして、目隠しをされ、連れて行かれた先で、目隠しを外された。床が微妙に揺れている。船の中のようだ。周囲を見回すと、スィートルームのような感じで、ソファーには色黒の男性が座っていた。
「お前、工藤新一やろ?俺は西の高校生探偵、服部平次や。よろしゅうな」
西の高校生探偵?
「自称、西の高校生探偵か?」
「ちゃうわい。お前が東の高校生探偵なら、俺は西の高校生探偵やっ!」
興奮しやすいヤツだな。
「ここはどこだ?」
「知らんわ。目隠しされて、ここまで連れて来られたんや、工藤と同じようにな」
窓から見える景色は、拝戸港のようだが、少しずつ景色は流れ始めていた。
カチャ!
ドアが開き、知らない金髪の女性が入って来た。良く見ると、その瞳は蒼い。
「ようこそ、工藤新一君、服部平次君。私は、あなた方の指導教官に選ばれたアンジェリーナ・クドウ・シールズです。リーナをお呼びくださいね」
うん?クドウだと…
「クドウって、俺の親戚かぁ?」
「新一君の祖父は、私の祖父の弟なのよ」
親戚のようだ。
「あなたの両親が米国に住む時に、祖父が尽力したのよ。聞いていないの?」
「聞いていない…」
「ちょっと待て、姉ちゃん。お前は何者だ?」
確かに、このタイミングで親戚に会うって、なんのジョークだ?
「私は、この春まで、米軍の特殊部隊にいたんだけど、除隊したの。で、再就職先はFBIなの」
「そのFBIが何のようや?!」
「服部君は、血の気が多いみたいね。だから、何度も暴力行為を繰り返したのかしら?」
「なんやとぉ!」
服部がリーナに襲い掛かるが、後一歩のところで、立ち尽くしている。笑顔のリーナの手にはサブマシンが握られていた。
「私、正式な捜査員なの。武器の所持を認められているのよ。しょうが無いわね」
リーナがどこかに連絡をすると、黒ずくめの男達が入って来て、俺と服部を拘束した。
「これで、襲われる事無く、話が出来そうね」
俺まで拘束されている。とんだ、とばっちりである。
「じゃ、順を追って話しましょうか。まず、君達のルーツを明確にして置きます。新一君、なんで石工の「く」に「フジ」か分かるかな?私達の祖父の元々のクドウは九に島なんだけど」
九島…まさか、あの日本の軍需産業を一手に引き受けている九島財閥なのか。
「その顔だと、考えていないってことか?因みに、私の祖父と、新一君の祖父は本家九島家から、追放されたの。だから、私の祖父は「クドウ」であり、新一君の祖父は「工藤」なのよ」
何で追放されたんだ?そう言えば、なんで父さんを母さんは米国暮らしなんだ?仕事の関係って言うけど、父さんは小説家である。日本でも仕事が出来るはずだ。そうだ、さっき、リーナは石工の「く」と言った。そこから連想出来るのは、フリーメイソン…だから、九島本家から追放されたのか?軍需産業に関わらせない為に。
「その顔は、わかった見たいね。次に服部君、君の番よ」
「なんや?俺は、怪しい祖先はいないでぇ~」
「服部半蔵…正義の為に、一体何名の人間を斬り殺したのかな?まるで君みたいだよね?己が正義の為なら、往来でも斬りかかるって」
リーナの言葉ではっとした服部。
「君達は日本において犯罪を犯しました。でも忖度という日本の文化の為に、罪を罰せられること無く、のうのうと生きていました」
「ちょっと、待て!俺はなんもしていないでぇ~!」
「往来で木刀を手にして、特定の人物に斬りかかりましたよね?総て、返り討ちに遭い、本来は被害者である人物が、逆に過剰防衛で3度服役したと聞きます」
過剰防衛で服役って、一弥か…
「君は、大阪府警本部長の息子さんだよね?事情聴取すら受けていない。供述書の類いも無い。これって、違法じゃないの?」
笑顔だったリーナの顔が真剣になった。
「同様に新一君、君も被害女性の方が過剰防衛で在宅起訴って、どんな気分?」
まさか、蘭が起訴されたのか?
「あぁ、病院に入院していて、知らなかったのか?まぁ、情状酌量で、実刑は免れたようだけど。警視庁の警部さんと懇意にしていると、日本では罪は被害者にギフトできるのね」
そんな…
「それで、日本の司法機関から、打診があったの。頭脳も行動力もあるが、日本には置いておけないってね。そこで、米国が引き取ることになって、FBIの捜査官になるべく、経験を積んで貰うわよ」
「国外追放処分ってことか?」
「イエス」
蘭にもう会えないのか…
---ジョディ・スターリング---
組織が変わったとしても、両親を殺したベルモットは許せない。黒ずくめの組織の本拠地は、ここ日本にある。潜入捜査官からの情報である。しかし、何の糸口も見つからない。日本で起きた怪しい事件は、特に無い。逆に、ここ日本だけ起きていないってことにもなる。
「ジョディ!」
声を主の方へ振り返ると、シュウと女性が立っていた。あれが今のシュウの彼女なのか?
「シュウ…」
「どうしたんだ?元気が無いようだな。どこか悪いのか?早めに診察をするといい。おいで」
シュウに手を引かれた。彼女は笑顔でシュウの隣にいる。なんで、彼女を取ったの?
「ここで診察するといい」
『宮野医院』と看板にある。診療科目は小児科のようだけど…
「お母さん、いるかな?お客さんを連れてきたわよ」
お母さん…ここの娘だったのか。じゃ、シュウは親に面通し済みなのか…
「あぁ、叔母さん、元カノなんですが、元気が無いみたいで…」
叔母さん?え…えっと…彼女は従姉妹?
「あら、顔色が悪いわね、あなた」
シュウが叔母さんと呼んだ人物…シュウの彼女の母親…なんで、ここにいるの…ヘルエンジェル…
「うっ!」
首筋に注射器…打った人物を見て固まった。シェリー…
「安心してね。毒じゃなくて安静剤だからね」
潜入捜査員から似顔絵が送られて来ていた。ヘルエンジェルもシェリーもあの組織サイドの人間である。シュウは気づいていないのか?まさか、ピンクトラップに嵌まったの?
「じゃ、全裸にして検査をしましょうね、ジョディ・スターリングさん。今日は楽しい日になりそうで、嬉しいわ」
耳は聞こえる、目も見える。思考だって出来るのに、身体の自由がきかない。金属で出来た台に載せられて、どこかに運ばれていく。
「丁度、試験体が必要だったから、シュウ兄、ナイス捕獲だわ」
まさか…そんな…シュウと組織が繋がっていたなんて…
「まずはコレを入れてみるかな」
うっ!敏感な部分に針を打たれた感触。これって、媚薬なのか?全身が蕩けていく感じである。
「もう、乳首が立っているわよ。志保、効果が強すぎるんじゃないの?」
「個体差はあるわよ、母さん。誰が被験者になるのかな?シュウ兄?」
「いや、今、明美が一弥君を呼んでいる。彼にテストして貰った方がいい」
「そう…じゃ、もう一工夫しておくかな」
シュウが平然としている。私がこんな状況なのに…助けて、シュウ…
◇
ユサユサと身体が揺さぶられている。知らない青年に、私の身体は堪能されていた。身体の隅々まで全部である。
「テクニックは今一かな」
「一弥君、プロとしているのか?」
「いや、そういうお店はまだ無いよ。今度、連れて言ってよ、秀一さん」
「俺も無いんだよ。明美がいるからね」
「おい!ボンクラ男、そういう店に行くな!性病になるぞ」
「あらあら、志保は、焼き餅かしら?」
「母さん、そんなんじゃないわよ~」
「じゃ、この後は志保で」
バキッ!
「さん付けしなさいね」
なんだ、この和気藹々とした雰囲気は…私はズタボロにされているのに…まるで眼中にないみたいな…
「じゃ、この女を一弥の奴隷にするわよ」
奴隷にする?えっ!頭に針が打ち込まれていく。洗脳…いや…私が好きなのはシュウなのよぉぉぉぉ~!
◇
「疲れは取れたかしら?」
まさか、頭に疲れを取るツボがあったとは…
「はい、なんか、悩みも吹き飛んで楽になりました」
「そう、それは良かったわね」
シュウの彼女は、シュウの従姉妹だった。結婚を前提としないプラトニックな関係で付き合っているそうだ。
「彼女の両親を紹介されて、従姉妹だったって気づいたんだよ。明美が見違える変貌を遂げていたから分からなかったんだ」
「それはどっち方向へ変貌していたのかな?」
「内緒だよ」
「シュウ、白状しなさいよ」
なんか、楽しそうな二人である。私も今度、シュウとプラトニックな恋人関係をしようかな。
原作で、「ヘル・エンジェル」って、(地獄に落ちた天使)と言われているけど、『地獄に連れて来られた天使』に思えて…