---佐藤美和子---
ライブが始まった。音が身体を駆け巡っていく。ドラムのリズムに合わせて、体内が蠢く。なんだ、これは?煌びやかな照明なのに、目の前が真っ白になっていった。後ろから誰かに抱きつかれている感覚。胸を弄ばれ、腰に手を掛けられて、体内にビートを刻むナニか。
服を着ているのに、全裸でいる時の解放感を感じる。何が起きているんだ?色々なモノが解けて、外れていく。この解放感は心地よい。縛られる事無く、自由でいられる。
---ベルモット---
この場の責任者の居る執務室に向かった。
「どう?スコッチ、塩梅は?」
「まぁまぁです」
見かけない男が室内にいた。警戒を強める。
「あぁ、彼は私の兄です。敵ではないです」
スコッチの兄?確か、現職の刑事では?
「景光の…ここではスコッチでしたね。そこにいるスコッチの兄の諸伏高明です。初めまして、ベルモットさん」
「ボスに通しているのか?」
「えぇ、兄のコードネームは老酒から取って、ラオになりました」
「現職の刑事に何を頼んだんだ?」
「兄に、俺の片腕になってもらいます。兄は『所轄のコウメイ刑事』と呼ばれていて、頭のキレの良さは保証します」
スコッチに保証されてもなぁ~。
「現在、長野県警本部にいるんですが、今月末に退職して、来月1日に参加します」
「私達の組織の方向性に賛同してくれているのか?」
「えぇ、弟から聞いております。賛同したから、ここにいるのですよ。孫子の代に老害の影響は残したくないですから。その為の必要悪は大切だと思います」
どこの国も、私達の組織も、老人達が権力を握っていた。富と名声を手放さず、若い者にしわ寄せが寄っても、気にせずに、自らの理想に突き進む老害である。
「で、ここでは何をしようとしているんですか?」
「ここでは、女性の分泌物を採取がメインだ。ライブ会場でヴァーチャルドラッグで達した女性達からね。後、生理中の女性達の生理用品から排卵された卵子の採取だ」
だから、ここは女性専用なのだ。男性がいたら、恥ずかしがって、交換しにいかないだろうから。このフロアには下着ショップ、女性専用の玩具屋など、男性の目を気にせず、買い物が出来るのだ。
トイレは女子トイレしか無く、生理用品が無料で置かれていて、容易交換が出来るのだ。ゴミはシューターに入れられ、分類されて、なるべく汚染されないように、採取出来るようにしている。
同様のゴミ回収システムは、このフロアにある有料シャワールームにも完備させてある。一つ上のフロアに行けば、隣接するリラックス棟へも向かえる。あちらも、同様の採取をしている。
「なぜ、排卵されたモノなどの分泌物が必要なんですか?」
「ボスの指示だ。人工卵子の研究に必要なのだ。まぁ中には、排卵されても、まだ使える卵子もあるみたいだよ」
「それらをどうするのですか?」
「現在、金持ちにしか出来無い、人工授精、試験管ベビーなどを格安で、庶民でも利用できるようにする為だ」
これは長作さんの研究テーマでもあった。子供の欲しい家庭には、子供を与えるシステムの構築だ。
「あとは、非人道的で倫理的に拒否されている、移植用臓器の量産だよ。これも高額で、金持ち優先だしな」
「なるほど…組織の理念がわかる気がします。庶民でも未来を見られる世界にするんですね。医療改革するにしても、医学界、政界の老師達が統制していますから、現状では改革なんか出来無い。それを手を汚しても、ごり押しですか?」
「研究者と医療施設に協力者がいる。ただ、素材が無いからな。多少、強引な手でも採取はしないと。流石に、拉致して臓器を奪うのは、ボスが許可しない」
「わかりました。正式に参加したら、私も会議に参加いたします」
「そうか、頼む。そろそろ、戻らないと、ライブが終わるな」
部屋を出て、持ち場へと戻る。
---佐藤美和子---
ライブが終わった。余韻に浸る観客と演者…
「どうだった?濡れたかな?」
隣にいるボスに訊かれた。濡れた?あ!確かに下着がマズい…
「ここなぁ、下着ショップがあるんだよ。トイレは女性トイレだけだし、有料だけどシャワールームもあるんだよ」
詳しい。下見に来ていたのか?
「美和子さん、着替えた方がいいわよ。私は既に着替えています。えへへへ」
素早い。気づかなかった。
「えぇ、そうします」
ライブ会場を出ようとするが、足がもつれて、歩きづらい。
「腰でも抜けたか?この会場の売りの1つ、ボディソニックシステムに当てられたんだろう」
ボディソニック…確か、体感音響だったかな。低周波を身体に当てて、耳だけでなく、身体全体で音楽を感じるシステムだ。そうか、だから、身体の中で響いた感じになったのか。
「この2階席は、1階よりも、パンチが強いんだよ。床、天井、壁が低周波を放つ。特に真下からのは、アソコを直撃だから、彼氏とやっている感覚が得られるんだよ」
この上司、恥ずかしいことをズバズバ言うな。そうだ、最近一弥としていないなぁ。でも、あの時の感覚に近かったのは事実だ。
ボスに連れられて下着ショップへ行き、替えの下着を買い、シャワールームへ向かった。シャワールームでは、汚れた下着を捨てて帰るようと書かれていた。汚れた下着を持ち歩くのは不衛生である、と言うのが理由のようだ。確かにそうだな。下着を、下着用のゴミ箱へ入れた。
シャワーでさっぱりして、外へ出るとボスがいない。まだ、このフロアにいる筈なので探していると、大人の玩具屋さんがあった。女性専用フロアの為か、男性の目を気にしないで買える為か、混雑していた。
「へぇ~、美和子さんは、こういうのに興味があるのね」
後ろから聞こえるボスの声。
「リンさんは?」
ボスから、普段から名前で呼ぶように言われている。どこに、敵の目があるか分からないからだそうだ。
「私か?女性とヤルのは好きかな」
私を値踏みするようなボスの視線。
「美和子さんのような女性だと、アナル責めか?」
アナルかぁ…確かに弱いかもしれない。
「隣のリラクゼーション施設に行く?」
そんなのも、あるのか、ここは…
---工藤新一---
北米大陸に着いた。今は、西海岸で研修中である。俺は問題は無かったが、服部は英会話のレッスン中だそうだ。銃、車、バイクの教習を受け、この国の法律を学んでいく。
蘭はどうしているだろうか?寮の自分の部屋に戻ると、蘭のことを考えてしまう。ここを脱走したら、指名手配犯になりそうだよな。だけど、蘭に逢いたい。リーナを見つけて、訊いてみた。
「はぁ?君、立場を分かっているの?」
「立場?」
「その彼女をストーキングした挙げ句に、押し倒したんでしょ?会える訳ないじゃない」
「あれは嵌められたんだ。えん罪だって」
「被害者の女性の証言も嘘だと言うの?この国の裁判だったら、ギルティになるわよ」
有罪か…なんで、蘭はあんなことを証言したんだ?
「自分の手で調べ直したいから、帰国したいんだよ。どうにかならないか?」
「どうにもならないわよ。いい?君は超法規的な処置でここにいるのよ。本来なら、入国すら出来無い身分なの」
入国出来無い身分?そうなると強制送還になれるか?
「強制送還にはならないから、変な考えは捨てなさいね」
俺の思考が読まれているのか。さすが、工藤家の関係者だ。
「脱走したら、射殺されても文句は言えない身分だからね」
なんとか、ならないかな?
◇
父さんへ連絡を取った。
「新一か?」
「そうだよ、父さん。なぁ、俺は帰国したいんだよ」
俺が北米でFBIの研修を受けていることは、保護者に連絡済みと言われている。
「帰国か?それは、脱走をしたいってことか?」
「俺は無実だ。近藤一弥に嵌められたんだよ、父さん」
「新一…お前の悪い処だぞ、思い上がるな!」
いきなり、父さんが怒り始めた。
「蘭君の心は、もう新一に無いんだ。それに気付よ、新一!」
「何を言っているんだ。俺はロンドンで、蘭にプロポーズしたんだぞ」
「お前、釣った魚に餌を与えないタイプだろ?」
「釣った魚?どうせ、喰うんだし、その場でシメるでしょ?」
「ダメだな。蘭君にした行為を思い出して、反省しろ!いいな、新一」
通話が切られた。どういうことだ?いつだって、蘭の事を思い出しているぞ。
---近藤一弥---
最近、帰宅した後のことを思い出せない。気づくと朝になっていることが多い。
「蘭…俺、夜中に妙なことをしていないか?」
「妙なこと?していないよ。いつも一緒に寝ているし」
そう、朝になると全裸の蘭が隣にいて、抱きついている。いつも通りだよな?
「まだ、記憶がおかしいの?宮野先生の話だと、疲れているせいだって」
まぁ、ヤリ過ぎ…いや、最近はしていないぞ。そうだ、瞳に会いに行くかな。
「蘭は今日も部活か?」
「うん。一弥は宮野先生の処に行きなさいね。高校生でアルツハイマーは困るわよ」
それは、俺も困る。なんで、記憶が飛ぶんだ?記憶が消えるというより、記憶が飛んでいるんだよな。
---服部平次---
久しぶりに外出許可が下りた。街中に出て、外の空気を吸う。さて、何をしようかな?ダウンタウンの怪しい路地を歩き、何か事件が無いかを探し回る。ふと、『VD有ります』と言う文字が目に入った。VDって、なんや?その店に足を踏み入れた。
店内は薄暗い。如何にもって感じの雰囲気もある。
「なぁ、VDって、なんや?」
店員に訊いてみた。
「どこの人だ?訛りがきついな。VDって、ヴァーチャルドラッグのことだ。実際に薬を使わないから、身体には影響は無いが、トリップ感は得られる」
「ふ~ん…」
物は試しに1つこうてみた。初期パック2万ドルって、高いのか、易いのか?
「次回から、付属のUSBメモリーを持って来れば、新しいドラッグを買えるぞ」
「わかった」
俺は寮の自分の部屋に戻り、実際に試してみた。無地の箱を開けると、ヘッドセット、USBメモリー、説明書が入っていたが、説明書はこんまい文字で読めへんので、図を見てUSBメモリーをセットし、ヘッドセットを被り、起動してみた。
目の前に和葉が現れた。
「平次…久しぶりやな?」
和葉の声が聞こえる。
「平次…アタシのこと、嫌い?」
「なっ、訳あるかぁ!」
「そう…」
目の前の和葉は、俺の股間からアレを取り出し、舐め始めた。俺のアレに和葉の舌の感触が伝わる。アカン、出ちまう…
「平次…辛抱たまらん?」
和葉の顔に発射してしもうた。あかんなぁ。
「もう一度…サービスやで」
俺の全身を和葉の舌の感触が走る。また、逝きそうや…我慢していると、和葉が上目遣いで口で咥えた。和葉の口内の感触が、たまらん…あっ…しもうた…
「平次…またね」
目の前から和葉の姿が消えていく。どこに行くんや?なぁ、和葉…
◇
翌朝、目が醒めると、パンツを通り越し、スラックスまでガビガビだった。これが、ヴァーチャルドラッグの威力なのか?目覚めが爽快である。
再起動をするが、「No Data」と表示された。あれって、1回限りなのか?辞書を片手に、虫眼鏡を片手に、説明書を読むと、心の中で一番愛している人が出てきて、俺の願望を叶えてくれるそうで、実際の行為よりも数段気持ちが良い為、使い過ぎると人体では満足出来無くなるとある。
ここには和葉はいない。和葉本人に満足できなくなっても、問題は少ないか。俺は、昨日、行った店へと向かった。
「嵌まりましたね」
「あぁ、あの先を体験したい」
「データは口だけ100ドル、口と胸で200ドル、口と胸と股間で300ドル、フルコースは500ドルだけど、どれにする?」
500ドルは高いと文句を言うと、
「高級コールガールはもっとする。何よりも、一番愛しているヤツと出来るんだ、安いだろ?」
確かに…俺は500ドルのデータをUSBメモリーに入れて貰い、自分の部屋へ戻った。
素晴らしい…口でのサービスが終わると、俺の目の前で服を脱ぎ、眩しすぎる全裸を披露して、胸の谷間に挟み、先端をペロペロしてくれた。それが終わると、いよいよ和葉の体内に突入して、心ゆくまで和葉を堪能した。
---工藤新一---
服部が病院に運ばれたそうだ。俺とリーナで病院へ行くと、極度の疲労と診断されたそうだ。
「彼は、ヴァーチャルドラッグに手を出したそうよ」
リーナから聞き慣れない単語を訊いた。
「ヴァーチャルドラッグって?」
「仮想薬物よ。肉体、精神へのダメージが少ない、新種のドラッグなの。ただね、中毒になると、彼のように寝食を忘れる為、極度の疲労って診断されるのよね」
リーナの顔は呆れていた。
「新一君は手を出さないようにね」
「取り締まりの対象か?」
「合法よ。ヴァーチャルゲームと同じ扱いなの」
興味があるな。注意して使ってみるか?