---ラム---
少し早いが、ローレライ計画を発動した。
「日出ずる国の夜明けの始まりだ」
---佐藤美和子---
ボスが消えた。林田リンが消息を絶った。
「目暮警部、どういうことですか?」
「公安のすることは分からない。たぶん、林田リンというのは偽名だろうな。公安が潜る時に使う偽の名前だ」
「それって、ボスは警視庁に潜っていたってことですか?」
「そうなる。公安が警視庁で何を探っていたかは不明なのが不気味だな」
どういうことだ?最近起きた事件は、あぁ、あれだ。科学界で一大スキャンダルが発覚し、近藤長作なる者がクローズアップしている。近藤って、まさか一弥君の関係者か?一弥君に連絡を取るも、連絡が出来ない。一弥君の家へ行こう。毛利探偵事務所に急いだ。
彼の部屋に彼はいなかった。毛利探偵によると、追い出したらしい。
「どうして、ですか?」
「工藤優作からの助言だ。近藤一弥は今話題になっている近藤長作の関係者だとな。ここにいたら、マスコミの餌食だ。だから追い出した」
逃がしたのか。逃がしたと言い切ると、共犯関係になるから、言え無いのか。
次に妃弁護士の元を訪ねた。
「ここだけの話よ。一弥君はたぶんもうダメよ」
ダメ?何がダメなのか?
「優作さんから貰った資料によると、一弥君の遺伝子は何らかの遺伝子操作をされた可能性があるって…で、一弥君は公安に連れて行かれて、行方不明に。抗議をしたんだけど、国策に関わることなので教えられないって。何かの陰謀に巻き込まれたのかも」
まぁ、色々な方面で恨みを買っていそうだけど…
---妃英里---
あの探偵小僧が暴走していた。優作さんが手に入れた国家機密に関する資料を、マスコミに持ち込み、国家が隠していた秘密を暴露してしまった。
近藤長作が何の研究をして、何を作ってしまったのか。倫理的に問題のある研究である。九島家が関わり、子供の産めない女性の細胞から人工卵子を作り出し、そこに男性の遺伝子情報を付加した上で、男性の精子を授精させて、赤子を作り出したこと…不妊治療の研究であったが、何故、卵子に男性の遺伝子情報を付加したのかに、マスコミの興味が向いている。
『国ぐるみで何を作ろうとしたんだ?』
テレビから科学評論家の声が聞こえる。
『不妊治療の方法としてのアプローチはいいが、その点に尽きる。誰が横やりを入れたかが問題だな』
『資料によると九島家の当主が出来心でとありますが』
『その出来た赤子はどうなった?』
「政府が責任を持って処分したと、先ほど内閣府から発表がありました」
『今まで生きていた者を処分?その者は被害者なのに、処分だと?』
討論番組では討論が紛糾していた。倫理感の問題。当の近藤長作は既に故人であることから、次第に出来てしまった赤子に興味が向いていく。
きっと一弥君なのだろう。その赤子は。近藤長作氏の実子である。その事実でさえ、したり顔の探偵小僧がワイドショーのインタビューで答えていた。
そうなると、日本全国、いや世界中が行方不明の『近藤一弥』を探し始めた。政府は処分したというが、染色体YYのサンプルを簡単に捨てる訳が無いから。
「ねぇ、お母さん、一弥は無事だよね?」
蘭の眼は赤く腫れていた。あの暴露から、泣きっぱなしである。
「無事を祈ろうね」
私は娘を優しく抱き締めることしか出来ない。