---坂本一弥---
事業資金が足り無い。両親の残してくれた財産はあるが、あれはウザミンの物だ。義父が援助してくれると言うが、坂本家の財産は美優の物だし。裏のバイトで稼いだ金もあるが、表で使うには問題が有りそうだし。八方塞がりになりかけた俺に、義父がある人物を紹介してくれた。経営コンサルタントの七草弘一氏である。
「経営コンサルタントでは無く、ベンチャーキャピタリストだよ。所謂、投資家だな」
弘一氏は、黒いサングラスを掛けている。目に異常があるのだろうな。
「投資家ですか…俺の考えている起業案なのですが、弘一さんの目から見て、いかがですか?」
志保と共に練り上げた起業プランの書類を、弘一氏に手渡した。
「うん?…これは…なるほどね…この国の将来を見据えての業務内容ですね。提案なのですが、クラウドファンディングという手法はどうでしょうか?これはですね、ネットを通じての募金活動のことなんですが、同じ危機感を抱く同士から寄付を募るのですよ」
寄付でまかなうのか。投資目的だと、ハイリスクだよな。儲けが現状出ないし。
「どうすれば良いのですか?」
「私が手伝いますよ。君の両親である近藤夫妻には恩がありますからね。恩を返す前に、あんなことになってしまって…息子さんである君に、漸く恩が返せそうです」
弘一氏の表情は、どこか嬉しそうである。
俺の事業計画では、自然エネルギーを使い、ペットボトルを原料に戻し、燃料として使うことや、都市鉱山の採掘および、レアメタルなどを採取することなどである。資源の少ないこの国に、資源を手に入れるリサイクルの輪を構築することにある。採算性は悪い事業だと思う。儲かるなら、誰かがとうの昔に起業しているだろうし。
---七草真由美---
生徒会の会議が終わった後、書記である司波深雪さんに声を掛けられた。
「この連絡先って、七草先輩の家ですよね?」
クラウドファンディングのページを印刷した物を見せてくれた。そこには、連絡先として、私の家の番号が表示されていた。
「そうだけど…なんでかな?」
「あの…あのですね…」
クールビューティー系の彼女が、モジモジしている。彼女のこんな姿は初めて見た気がする。
「どうしたの?」
「この発案者の…一弥君の…連絡先…知りませんか」
耳まで真っ赤に染まっている。このクラウドファンドを立ち上げた人物と、連絡を取りたいみたいだ。
「連絡を取ってどうするの?たぶん、内容であれば、父に訊けば分かると思うけど」
「な、な、内容…じゃなく…会いたいんです!」
顔まで真っ赤だ。この人物に惚れたのか?
「彼は何者なの?」
「あのですね…暮れの事件の時…の…」
年末の最中、ウチの生徒達が補導された事件か。確か、男性を襲ったとか。
「その時に襲った相手なの?」
首を縦に振る深雪さん。一目惚れかな?まさか、そのことに焼き餅を焼いて、襲い掛かったのか?あの事件の詳細は、誰も話したがらないので、真相は闇の中である。
「謝りたいのかな?」
「それと…色々…話したい…」
う~ん、なんか重症の予感…
◇
彼女の兄である司波達也君を呼び出し、事情を訊いた。
「深雪がそんなことを?そうですか…真由美さんが言うように、重症ですよ」
あっ、やっぱり…
「家でも物思いに耽ることが多々ありますし」
「きっかけは何?」
校内でも有名な程のスーパーブラコンな深雪さんが、達也君以外の男子に興味を持つって、きっかけが気になる。
「彼の華麗な戦闘に惚れたのかもしれません」
華麗な戦闘?
「まるでダンスを踊るように、優しく深雪をエスコートしていたそうです。本気の俺と戦っているのにね」
達也君の格闘術は校内随一である。その達也君とマジな戦闘をしながら、深雪さんとダンスを?
「アイツの戦闘能力は俺よりも遙かに上ですよ。千葉道場門下生の特殊警棒による本気の打ち込みを、アイツは難なく指で真剣白羽取りをしたそうです」
あり得ない。特殊警棒による打撃って、戦車の装甲にキズを入れることが出来る程だ。それを指で…タイミングを誤れば、粉砕骨折ものである。
「はっきり言って、俺にはマネが出来無いレベルです。完敗ですよ」
達也君より強い男性に惚れたのか…その男性に興味を持った。
帰宅し、父に彼のことを訊いた。
「真由美…興味を持ったのか?」
「達也君が完敗した相手…誰でも興味を抱くでしょ?」
「彼は文武両道に優れている。血筋もいいしな。残念なことに真由美では、釣り合わぬ」
私では安すぎると言うのか?
「おいおい、そんな顔をするで無い。そうか、司波深雪が惚れたのか」
父が嬉しそうだ。なんで?
「それよりも、真由美、寄付を募ってくれないか。彼の事業を応援してあげたいんだよ」
私の前に、事業案と彼の連絡先の書かれたメモが置かれた。
「目を通して、学内で寄付を募ってくれないか?」
彼の連絡先は、前払いの報酬か?
◇
彼に連絡を取り、深雪さんのことを話し、逢うことになった。メンバーは私、深雪さん、達也君である。いざ出掛けようとしたら、エリカさんが付いてくるという。
「門下生の暴走が原因だ。だから、謝罪したいんだ」
あの事件の発端は、服部副会長の親戚で、千葉道場の門下生の男子が、彼に襲い掛かったことが原因だそうだ。
「話を聞くと、何度も返り討ちに遭い、病院送りにもされているそうで、今回の私の家への入門も、彼に勝つ為だったらしいわ」
私怨で剣を極めようとしたのか。そうなると、その彼は格闘だけでなく剣術も優れているのだな。ますます興味が湧いてきた。東都環状線の米花駅で下車して、駅前で待っていると、突然深雪さんが走り出し、男性に抱きついた。彼がそうなのか?
「お会いしたかったです」
「そうなのか。しっかし、ほんとそっくりだよ」
彼の妹さんにそっくりだそうだ。今日は、その妹さんにも会えるそうだ。
「ここから歩いて5分くらいです」
深雪さんが腕に抱きついている彼を先頭に、彼の家に向かった。
「ここが正門ですが、俺、敷居をまたげないので、勝手口から入ります」
正門…立派である。表札には『坂本』とある。
「米花町…坂本って…あの坂本家か?」
エリカさんが興奮した様子で訊いた。
「多分、想像の通りですよ。坂本龍馬の血を引く坂本家です」
それは坂本財閥ってことか。私じゃ安いってそういうことか。
「ここが俺の入れる入り口です」
小さな門があり、表札には『近藤』とある。近藤…龍馬の側近で、饅頭屋長次郎と言われた近藤長次郎の末裔なのか?
「君は近藤長次郎の末裔なのか?」
私の代わりに達也君が訊いてくれた。
「そうだよ。うちの家系は代々、坂本家を支える仕事をしていたそうだ」
坂本家の懐刀ってことか。待てよ…確か、四葉家の初代と知己だった人物で、商売の才能があったとの記述を見たことがある。近藤家は四葉家と繋がっているのか?
玄関を入ると、深雪さんがいた。正確には、深雪さんが二人いた。
「これは…」
達也君ですら驚愕しているレベルである。
「ね、そっくりでしょ?」
「いらっしゃい…ま…せ…うそぉぉぉぉ~、鏡を見ているみたい」
彼の妹さんすら驚いている。当の深雪さんは其れ処では無いみたいだ。リビングに通されて、息を吐いた。
「本当だ。ミューが二人いる…」
彼の下の妹さんが震えている。
「見分けが付かない…」
達也君がショックを受けるレベルでそっくりである。
「俺は見分け方を見つけている」
自慢げに話す彼、近藤一弥。
「判別方法は、他人には言え無いけどな」
それはたぶん…胸だな。私には違いが分からないが、一弥君には分かるのだろう。
「ここに住んでいるのですか?」
落ち着きを取り戻した深雪さんが質問をした。
「いや、普段は下宿先にいる。担当弁護士さんの家に居候しているんで、今日はこちらに案内しました」
一弥君が頭を撫でると、深雪さんがうっとりしている。これはあれだ、重症だな。
「千葉道場の娘の千葉エリカです。あの時は申し訳ありませんでした。付きましては手合わせをお願いできませんか」
エリカさんが、果たし状?
「いいよ。庭に出な。ウザミン、木刀を二振り持って来てくれ」
「はい、兄さん」
庭に降りた二人…木刀を手にして構え、エリカさんが動くと、勝負はあっさり着いた。一弥君の木刀が、蛇のようにエリカさんの木刀に絡み突き、エリカさんの木刀は絡み取られて、横に投げ出され、一弥君の切っ先は、エリカさんの首に触れていた。
「真剣なら、お前は死んでいる」
ドスン!
その場で尻餅をつくエリカさん。腰が抜けたのだろう。圧倒的な強さを前にして、恐怖、いや死の淵に立ったのだろうか。父の言うように文武両道に優れているのだろう。動きに無駄が無かった。達也君は衝撃を受けたような表情である。スゴイ…一弥君って…
リビングに戻ってきた私達。エリカさんは尊厳の為に、お湯を借りている。つまりは…そういうことである。
「1時間もすれば、衣服類は乾きます」
エリカさんの汚れた衣服類を洗濯してくれた美優さん。
「お嬢様なのに家事をするんですか?」
思わず訊いてしまった私。
「えぇ、お兄様の身の回りのお世話は、妹の勤めです」
「一弥君は何も出来ない派?」
「お兄様は私達二人より、家事が得意ですよ」
「山で一人で暮らして居たから、妹達よりも得意かも」
山で暮らして居た?
「私達は電化製品がアシストしてくれますが、お兄様は一人で出来ますから」
「川で洗濯出来るよ。あと、狩った獲物を精肉したり、剥いだ毛皮で衣服も作れる」
サバイバーなのか。あんな緻密な事業案を作れる人物とは思えない。
「そうですわ。一弥君、私も寄付します」
って、深雪さん。
「ありがとうな、深雪」
「えへへへ」
褒められて、もの凄く嬉しそうだ。
---司波達也---
叔母の嬉しそうな顔…つまりは、四葉家は近藤家に恩を受けていたとしたら…恩返しが出来る嬉しさか?深雪と共に家に戻ってきて、アレコレと調べ始めた。今日、彼の元を訪問して、新たに疑念が生じた。深雪と美優…似ているってレベルでは無い。そっくりであった。これは意図的なことなのか?
深雪と美優のことを調べる。そこで、ある事実が判明した。深雪と美優、誕生日が同じであること。産まれた病院が同じであること。共に両親欄が空白であること…これって…双子?
こっそり持って来た美優の毛髪と深雪の毛髪からDNAを取り出し、比較すると…まったく同じであった。その上、深雪の遺伝子と俺の遺伝子で一致する箇所がまるで無かった。それは俺と深雪が血の繋がった兄妹では無いってことだ。
知らなきゃ良かった…
叔母へ連絡を取り、調べた結果を報告した。
『あら?知ってしまったの?悪い子ね、達也さんは…』
叔母はいつものポーカーフェイスのようだ。
「深雪は誰の子なんだ?」
『時が来たら、知る事になるわよ』
「一弥は何者なんだ?」
『それは、言え無いわ。達也さんも知っているでしょ?彼はレベル5なの』
最重要極秘情報なのか、一弥の正体は…
『一つ言えるのは、私達は近藤家に恩があるの。それはいつか返さないといけない恩なの』
近藤家に何かをしてもらったのか。何をだ?
『一弥は何も知らずに生きているのよ。余計なことはしないでね、達也さん』
そこで通信が切れた。
---坂本一弥---
寄付のおかげで、『有限会社 近藤商会』が起業できた。寄付してくれた人達に感謝だな。働き手は安室さんが用意してくれた。補導したヤツラを社会貢献ボランティアとして無償で働かせて良いそうだ。脱走したら逮捕すると、脅しておいてくれたそうだし。
「いいんじゃないのかな。前歴があっても、真面目に働けば、真面に暮らせるようになれば」
と、公安のお墨付きももらった。人材は雅さんも紹介してくれた。組から足を洗う人達だ。俺の下で働く場合のみ、足抜けを許す方針にしたとか。早速、ムショのコネが有効利用出来た。
まず、手頃なプロジェクトから始めて行く。違法な産廃業者のあった敷地を入札で安く買い取り、そこにプラントを作っていく。雅さんの紹介してくれた人達は土建関係者が多いので、自前で建設していく。設計図は、志保と阿笠博士に丸投げである。適材適所が一番効率が良いと思うからだ。
俺は、公安の仕事をこなして、小金を稼いでいく。忙しい日々を過ごし、高校2年になれた。出席日数は怪しいが、美優が掛け合ってくれたようだ。
久々の休日、蘭と遊園地に来ている。蘭に誘われたのだ。
「いろいろな遊具があるんだな」
「遊園地って初めて」
「記憶に無いから。初めてだと思う」
蘭と色々なアトラクションに乗っていく。
「楽しくなかったかな?」
「ごめん…楽しみ方がわからない」
「そうなのか…私こそ、ごめんね。私のわがままで連れて来ちゃって」
蘭の表情に陰りが見える。
「いや、蘭と一緒の時間は楽しい。それだけは分かる」
「なら、いいか」
俺の言葉で笑顔になってくれた。いいなら、いいか。
遊園地からの帰り道、蘭がどこかモジモジしている。ここって、お城のような建物があるエリアなんだが…蘭に誘導されて来たのだが…
「あのね…少し、休憩していかな?」
「蘭、疲れたのか?」
「うん…ちょっとね…」
---毛利蘭---
今日は安全日である。決心して来たのに、いざとなったら、勇気が出ない。ホテル街に一弥君を誘導してきたのは私である。でも、ホテルへ入る勇気が無い。一弥君を連れ込む勇気も無い。って、一弥君が私の腕を掴み、お城のような建物の敷地に入り、部屋を選んで、私を連れ込んだ。はい?私の揺れる心を察してくれたのかな?
「疲れているんだろ?先にお風呂に入ってきなよ」
って、ベッドに横になった一弥君。そうだね。汗とか汚れを落とさないと…お風呂場へ向かった。お風呂場には変わった形の椅子があったり、ローション類が色々あったり…用途が想像できる玩具があったり…妄想が先走る。
「蘭、のぼせていないか?」
全裸の一弥君が入って来た。うっ…太くて大きい…あんなのが入るのかな?う~ん…自信が無い。一弥君は身体を洗い始めた。あっ!お風呂場見学をしていて、私、まだ洗っていない。
一弥君の泡だった背中に抱きつき、一弥君とスキンシップ。
「蘭…気持ちいい…」
私の胸の感触が好きなのかな?そんなことを考えていると、一弥君が私の方に身体を反転させ…何かの拍子で一弥君が私の中に入ってきた。これが大人の行為なのか。
「蘭…」
「いいよ…」
静かにゆっくりと一弥君が動く。少し痛みが走るが、その後は言葉に出来ない感覚に飲み込まれていった。我に返ると、私の方が積極的に行動していた。激しく動く腰、一弥君の両頬を両手の手の平でホールドしてのディープキス…私の舌は、一弥君の口の中に入り、絡まれたり、甘噛みしたり、吸われたりしている。
再び我に返ると、ベッドの上だった。ベッドに横たわる一弥君の上で、四つん這いになり、一弥君を口で奉仕していた。一弥君は、私の股間に顔を埋めている。いや、私が彼の顔の上に股間を載せているのか。なんか、私主導でしているような…
身体に力が入らない。床の上に腹ばいになっている。腰を持ち上げられて、一弥君が入って来た。私がバテて、漸く一弥君のターンになったようだ。なんだろうか?お尻に何かを入れられている。私の臓物を通して、その刺激を愉しんでいるのか?訊く気力が既に無い。今、何時だろうか?
大股開きをして、自慰をしている。一弥君は私を見ているだけだ。それだけで、身体の芯が熱い。股間がグジュグジュに成っていくのが分かる。本当にこうなるんだ。
「一弥君…私のこと、好き?」
私は卑怯である。こんな状況で訊くなんて…
「好きだよ。蘭の味も香りも、感触もね。蘭の中、とっても気持ちが良かった」
褒められて、なんか嬉しい。好きって言ってくれたし。後は愛してもらえれば…再度、一弥君が入って来た。
◇
う~ん、遊園地に行って、朝帰りである。お父さんになんて言えば良いかな?結局、夜通し、一弥君としていた。心のモヤモヤは無いが、後ろめたさが一杯である。疲れたと言って、ホテルに連れて言ってもらった。本当にいいのか確認してくれた一弥君に、「いいよ」って、言ったのは私である。さて、どうするかな。
「心配するな。俺の家に泊まったことにする」
私の不安に感づいたのか。アリバイを作ってくれるのか。
「ねぇ、どこにも行かないでね」
「塀の中と山くらいだよ、俺の行く場所は」
塀の中じゃしょうがないよね。山もしょうがないか。修行場所だしね。
「蘭が出て行けっていうまで、あそこにいるよ」
「言わないよ…約束だよ」
私たちは指切りの替わりに、唇を重ねた。
謎を少し練り込んでみました(^^;