婚約破棄された私を会社の上司である常務が溺愛してくるんですけど、 作:EMO
婚約破棄されてから二か月近く経った頃には元彼の事はあまり思い出さなくなっていた。
たまに一人で居る時には寂しくて思い出したりするが、その寂しさを癒してくれる妄想相手が常務になりつつある。
私の身体があの指や腕を忘れてくれないのだ。
「カナミっ、また来たよっ!」
あのパーティー以来ソフィーが会社に遊びに来る様になった。
最初に来た時は直ぐに追い返したけど、その後にお兄さんであるクロード様の商談に付いて来てからは会社側もフランスの貿易商であるクロード様の妹さんなだけあって無碍には出来なくなり基本的にスルーされる様になり秘書課までなら出入り自由だ。
ソフィーは外見こそは大人びているが中身は十六才の少女なので秘書課のみんなから可愛がられている。
そして、現役女子高生のソフィーの情報網はバカには出来ない。
数々のスイーツやイベントの情報は秘書課のみんなも重宝していた。
「今日もマサは居ないの?」
そう、今日も常務は出張で不在なのだ。
私も出張に付いて行く事はあるけどそれはかなり特殊な場合でそれ以外は必要な事は電話連絡かメールでのやり取りが殆どだ。
だから常務が会社に居ないの場合は私にはする事が殆ど無い。
まあ、だからソフィーの相手が出来るんだけど。
「ソフィーちゃんこの前は助かったよ。
アソコのスイーツを専務の手土産に持って行って貰ったら相手さんから凄く喜ばれてね。
私の株も上がったよ」
「にへへへっ……もっと褒めて褒めて……」
「ソフィーちゃん次に来るスイーツってなんだろう?」
「それはね…………」
まぁ、ソフィーのドヤ顔ったら……可愛いわ……常務ったらこんな可愛い子を振ったんだから。
しかし、本当に付き合ってたら陰でロリコンって呼んでたかも知れないわ。
見た目大人でも中身十六才だからね。
そんなある日、私はある噂を聞いてしまった。
元彼が結婚するって……しかも相手は妊娠三か月らしい。
私達、別れてからまだ二か月しか経って無いんだよ。
何故妊娠三か月なの?
私の事はマグロだから別れたんじゃ無いの?
私より好きな人が現れたから別れたいってそう言ったら納得して別れたよ?
もしかしてずっと浮気してたの?
私、裏切られていたの?
私はずっと貴方だけだったのに……。
なんだか全てがバカらしくなっちゃった。
吹っ切れたと思ってたのにまだ私の中にはあの男が住み続けてたんだ。
常務からの告白を受けられなかったのは釣り合うとかなんとかじゃなくていつか彼が戻って来てくれるかもって期待していたんだ……とっくに裏切られてたのも知らずに……ずっと待つつもりだったんだ。
だったら常務には悪い事したな……私よりソフィーを選んで貰ってたらもっと幸せになってた筈だから。
なんたってソフィーはフランスの大貿易商の社長の妹なんだから出世街道一直線よ。
私なんかにかまけずにそっちに行った方がいいのよ。
ふと気付いたら辺りは暗くなっていて歓楽街を歩いていた。
いつの間に……ちょうどいい、今日は飲みたい気分だわ。
手近なバーに入ってみよう……。
****side政久****
「なんだ?
今日は土居君は居ないのか?」
出張から会社に戻ってみたら居る筈の香奈美が居ない。
秘書課に聞いたら朝は出勤していたけどいつの間にか居なくなっていたそうだ。
携帯に電話してみても繋がらない。
何故だか不安だ。
彼女が居ないだけなのに何故だか……。
ジリリリリンッジリリリリンッ
いきなり携帯が鳴る。
ソフィーからの着信だ。
〈あっ、マサっ!
大変なのよっ!
カナミが変な奴らに連れて行かれそうなのっ!
早く来てっ!〉
「なっ!
場所はどこだっ!
…………
直ぐに行くっ!」
どうやら香奈美は歓楽街で飲み潰れて男達にホテルに連れ込まれそうになっているようだ。
俺はスピード違反上等でクルマをぶっ放した。
近場でよかった。
直ぐに着いてからソフィーを探すと直ぐに見つかった。
「あのモーテルに入って行ったわ。
部屋までは分からないけど……。
ごめんなさい」
「ありがとう、必ず香奈美は助けてくる。
ソフィーは車で待っててくれ」
そう言うとソフィーに車のキーを渡してからホテルに走った。
****side香奈美****
バーに入った事までは覚えている……だけど……ここは何処……ベッドに寝ていたけど……もしかしてココはラブホ?
何故私がラブホに?
ガチャッ
「っ!」
「あっ、目が覚めた?
君もシャワー浴びてくる?」
なんかチャラチャラした色黒の男が裸にバスタオルを巻いた姿で出てきた。
ピンポーン
「あっ、戻ってきた。
ちょっと待っててね、気持ちいい薬を仕入れて来たから」
チャラ男が玄関に向かっていきもう一人の男を連れて部屋に入ってきた。
「っ!」
なんだか怖くて声が出ない。
「やっぱり可愛いよな……俺……我慢出来ない……」
「待てって。
お嬢さん、これ飲んでみな……全部忘れて楽しめるクスリなんだ……みんなで楽しもうぜ……」
……いや……こ、怖い……た、助けて……
首を横に振るけど二人の男が目の前に迫ってくる。
「仕方ないなぁ……おいっ、無理矢理飲ませろっ!」
「へへへっ……大丈夫だからな……直ぐに気持ち良くなるから……」
「ングッ」
男が私の頬を乱暴に掴み口を無理矢理開けさせて錠剤を口に入れた。
ぺっ!
最後の抵抗でなんとかクスリは吐き出せた。
「ちっ!
一発やってからクスリを飲ませるかっ!
おいっ!」
「ヒャッハァー」
ブチブチっ!
チャラ男が私のブラウスのボタンを無理矢理引き千切って私に覆い被さっできた。
「いやぁーっ!
助けてぇーっ!」
やっと声がでた……けど……
「ムダムダ……こんな所にはヒーローは来ません。
はははっ!」
そう言ってチャラ男が私のスカートの中に手を入れてパンストごとショーツを脱がそうとする。
いや、いや……そこを触っていいのは常務だけなの……いや、やめて……
「いやぁーっ!
助けて常務っ!」
ドガッ!
「はいよっ!
お待たせっ!」
涙で霞んでよく見えないけど常務のシルエットだ、常務の声だ。
「な、なんだお前はっ!
ぐはっ!」
「ぐぎゃっ!」
よく見えないけど一瞬で二人の男が伸された様だった。
「なんとか間に合ったようだな。
大丈夫か香奈美」
「うわぁぁぁん……ひっぐ……ひっぐ……」
常務の胸に飛び込んだら思いっきり涙が出てきた。
騒ぎを聞き付けてホテルの人が警察を呼んだようで直ぐにパトカーが集まってきた。
私達は警察から簡単な調書を取られただけで解放された。
結局、二人組の男はクスリの常習者で女性にクスリを飲ませてから乱暴を働いていた奴らだったそうだ。
しばらくは警察のお世話になるらしい。
お手柄のソフィーによると、塾の帰りに寄り道をして歓楽街を歩いていたら男二人に抱えられてフラフラと歩いている私を見つけたので危険を感じて常務に連絡してくれたそうだ。
ソフィーが居なかったら私はどうなってたんだろう。想像しただけで寒気がする。
しばらくはお酒は飲まないようにしよう。
飲む時は常務と一緒の時だけにね……。
そしてその日、常務の家に泊まった。
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