僕は、夢を見ていた。
――直感でそう、気づいてしまったのだ。
どうやら僕はTシャツ一枚とジーンズのいつもの格好でいるようだ。
みんなTシャツや薄手のYシャツなど、夏物の服を着ている。
付近を見渡すと、周りは鏡とアンプやドラムなどの機材で囲まれている。
なぜかプテラノドンのドラムのヤソさんと同じくベースの篠崎さん、そして何故か水野季沙もいる。
水野季沙は日本人形のような長い髪を低身長なのに振り回し、周りにそのエネルギッシュさを振りまいている。
そしてヤソさんは京香さんとなぜかツインドラム、という編成になっている。
そしてベースも篠崎さんと香坂さんのツインベースだ。
やたらリズム隊が多いな、そう考えるとギターが二人が普通というのはある意味既成概念に囚われているのかも……
?なんていうことを考えてしまうがこれは夢、だということを思い出した。
夢ならなんでもありか……。そう自分を納得させ、周囲を再度見回す。
どうやら僕たちはバンド練習をしているようだ。
そして気がついたら、僕はギターを抱えていた。
さっきは抱えている感覚は無かったのにいつの間に!?と思う反面、『夢』なのだからなんでもありなのだろうと、自分自身勝手に納得してしまう。
ふと金田に目を移すと、金田はどうやらいつもと違う様子だ。
いつもは俺はロックスターになる!とか大言壮語が凄まじいのに、ガッチガチに固まって挙動がおかしい。
しかも顔が紅潮している。
……あれは緊張か?
気まずそうな顔をする京香さんに対して、金田はコチコチと凍りついたまま、彼女に向かっていく。
そして、
――――俺と、付き合ってください!
そういって普段は頭を下げない金田は頭が地面近くになるまで腰を曲げ、京香さんに交際申し込みをしていた。
――金田!
と思わず声を出すが、実際には声が出ない。
動揺と衝撃のあまり、体が凍りついているのだろう。
そんな僕動揺を金田と京香さんは知らないまま、京香さんは金田に対し……。
「ごめんなさいっ!」
そういって頭を下げ返した。
「ふんがぁっ!」
金田はそんな効果音みたいな意味不明の金切り声を上げながら、金田は床に崩れ落ちて転げ回る。
ゴロゴロ、ゴロゴロと。
まるで赤ん坊のように。
――いい大人なのに。
京香が断ったことと、金田のいつも通りのそんな様子に僕は安心を覚えるが、金田はそんな僕の気持ちをつゆ知らず、動揺と落胆を隠せないまま、床に寝っ転がったまま、
――泣いていた。
「ど、どうしてなんだよぉ〜、どうして俺を好きになってくれる人はいないんだぁー……」
そういって普段ロックスターをめざす!と豪語するビッグマウスにまみれた男はおらず、ただ床に転がり、恋が破れたのになく一人の男がいた。
僕は田崎さんに対する金田の告白で同様したが、『夢』だということを思い出した。
金田……お前ってやつは……。
どうして僕と京香さんがセックスしたあとの事後の夢に出てくるんだ……。
そうして、僕は事後だというのに、幸せな気持ちに溢れないでげんなりとした気持ちのまま、翌朝を起床することになった。