アイツを警察に渡す時に孝雄さんは結構強く注意されていた。
「ほう?
過剰防衛?
か弱い女の子を力づくで襲って、乱暴を働くヤツを払い退けたのが過剰防衛ですか?
か弱い女の子の力を1としたらアノ強姦魔の力は2とします。
1対2の力の差で乱暴を働こうとしてた強姦魔は同じ対比の力でやられる事も覚悟しているはずですよ。
そうでないとあんな卑劣な事はしないでしょう。
それに貴方がた警察官も力で犯罪者を抑えつけるじゃないですか?
最低でも相手の二倍の力が必要ですよね。
そうでなければ威信が保てないから。
だったらか弱い女の子を守るために相手の二倍くらいの力で制圧するくらい当たり前ですよね。
それに、アノ強姦魔は計画的に行動してる節があります。
先日も私達の会社に来て威嚇して、さらにコレですからね。
何故か彼女の家も調べてたようですから、彼女が無事なのも私が近くにいたからなだけの偶然なんですよ。
そうそう、彼女の家を知った経緯を調べて下さいね。
今後も同じような事があったらたまりませんから。
それよりも帰っていいですかね。
僕と有希は一心同体なんです。
今も震えてる有希を慰めなければならないのに、貴方達の喧嘩両成敗的な偽善的正義に付き合うヒマは無いんです。
帰ってもいいですか?
ちゃんと名刺と免許証を提示しましたよね。
話があるなら後日にしてもらえますか?」
孝雄さんがポカンとする警察官さんに淀みなくスラスラと言い放っていた。
よほど怒っているのだろう。
警察官さんが加害者を擁護する様な言葉を使ったから…。
「じゃあ、帰ろうか有希。」
孝雄さんが私の腰に手を回した。
「は…はい……」
「まだ震えてるね。
大丈夫だからね」
今頃になって怖さが振り返してきた。
孝雄さんのマンションに入ると直ぐに孝雄さんがお風呂の準備をしてくれた。
「落ち着くまでゆっくり入っておいで」
「はい……」
言葉に甘えてお風呂に入らせてもらった。
ふぅー
お湯に浸かってしばらくじっとしていた…。
…………!
ダメだ…震えが止まらない…!
助けて……!
「孝雄さんっ!
助けてっ!」
叫んでしまった。
「どうしたっ!」
慌てて孝雄さんがお風呂に入ってきてくれた。
お湯に浸かった私を服を着たまま抱きしめてくれた……。
あの時、叫びたくても声が出なかった……。
助けてって叫びたかった……。
怖かった……。
でも……助けてくれた……。
孝雄さんが……。
今も直ぐに来て抱きしめてくれた……。
「う……ん……」
「気がついた?
もう大丈夫だからね。
僕が守るから……」
孝雄さんがベッドで寝ている私を優しく抱きしめてくれた。
どうやらお風呂で気を失ったみたい。
「もう少しおやすみ。
僕はずっといるからね」
「うん」
孝雄さんの腕枕が気持ちいい。
孝雄さんに抱きつき足を絡めて密着するようにして眠った。
翌日は休ませて貰いなんとか落ち着いた。
しばらくは孝雄さんのマンションに泊まる事になった。
その間、孝雄さんは私を求める事は無い。
毎日、私と密着しながら寝ているのに。
それで毎朝、おチンチンがはち切れそうになっている。
多分、私を無理矢理求めるとアノ男と同じように思われると思っているのだ。
実は私は既に孝雄さんを受け入れるつもりでいる。
でも、こんな状況で受け入れたくない。
ちゃんと『愛してる。』って言いたい。
アノ男はもう過去になった。
孝雄さんがアノ男の顔を変形させるのを見て、何故こんな男に悩まされていたのか不思議に思った。
そして、私の心の中は孝雄さんでいっぱいになっていった。
そんなある日、私にある依頼が来た。
この百貨店の専属モデルにならないかと。
本部の人が先日のテレビを観ていて、主要顧客の年齢層的に受け入れやすそうなキャラに見えたそうだ。
それから私の仕事をコッソリ見てお客様とのやり取りから信頼して任せられると思ったそう。
孝雄さんはこの事を知ってたそうだけど、気持ち的に複雑そうだった。
私が有名になれば、いつか孝雄さんから離れていくんじゃないかと思ったそうだ。
バカね、そんな事は絶対にないのに……。
って、それは私がつい最近まで思っていた事と同じだわ……。
孝雄さんも私と同じなんだ……。
そう思ったら涙が出てきた。
孝雄さんがとてつもなく愛おしく思えて……。
「はい、目線をここに……。
ハイッ、OK。
次はここに目線を……。
ハイッ、OK……。
じゃっ、ちょっと休憩しようか。」
カメラマンさんの合図で、スタッフさんたちはそれぞれの機材の点検に入った。
私はビーチパラソルの下にあるリクライニングチェアーに座ってる孝雄さんの隣に座った。
「有希、おつかれ。」
孝雄さんは撮影に入ってからずっと機嫌が悪い。
私には笑顔を向けてくるけど撮影スタッフさんたちには威嚇するような目をしている。
「こらっ!
孝雄さんがそんな怖い顔をしてたらみんな怖がるでしょう。
やめなさいっ!」
明らかにヤキモチを妬いてるのが可愛いのでついお姉さん口調で言ってしまう。
だいたいイケメンが眉間に皺を寄せて睨んでいたら誰でも萎縮してしてしまいます。
それに今回の孝雄さんは部外者だ。
強引に有給を取って私に着いてきたのよね。
「でも、有希の水着姿って色っぽいから……。
ほらっ、あのパネル持ってる奴もさっきからチラチラ有希の事見てるし」
「当たり前でしょう、広報用の撮影してるんだから。
見るのが仕事なんですよ」
「でも……」
孝雄さんの耳元に唇を寄せて。
「それに、水着の中身まで見ていいのは孝雄さんだけですよ」
「ゆ…有希ぃーっ!」
「ダメっ!」
抱きつこうとする孝雄さんを遮り立ち上がってメイクを直しに別のパラソルに向かった。
チラッと孝雄さんを見ると残念そうにしているが、下半身がパンパンに膨れ上がっていた。
早くタオルで隠せよっ!
何考えてたか一発でバレるからっ!
今回は、静岡にあるビーチで会社の広報誌の表紙といくつかのチラシ用の水着の撮影をしている。
ここはある企業のプライベートビーチらしく私たち以外には誰も居ない貸し切り状態だ。
だから、ここで纏めて撮影してしまおうとなって二泊三日の日程で来ている。
宿泊はビーチ近くにある観光ホテルを取ってある。
ビーチ用の別荘もあるけどずっと砂浜を眺めるのも飽きるからと観光ホテルにした。
本当はそのホテルの料理が目的なんですが。
なんと、そのホテルの目玉料理はアワビなんですよ。
ア・ワ・ビ、ステーキが美味しいって評判だそうです。
夜が楽しみ。
つ…….疲れた……。
計8着の水着に着替え、更にその度にメイクを変えて……。
スタイリストさんも大変だわ。
しかし、流石プロのメイクさんだ勉強になります。
そして、驚いたのがこの水着って来年用の水着らしい。
全部が全部販売しないそうだけど、予め仕込みをして流行を作る下地の為の撮影だそうだ。
服飾業界の裏を見た気がするわ。
アワビのステーキ、美味しゅうございました。
思わずお代わりしてしまいました。
孝雄さんも満足してたし。
「ふぅーっ!
疲れたぁぁっ!」
ホテルの大浴場の露天風呂で大きく伸びをした。
「「ふふっ。
おっさんかっ!」」
「あっ、お疲れさまです」
露天風呂にスタイリストさんとメイクさんが入ってきた。
「しかし、有希さんのお肌って綺麗よね」
「本当、スタイルもいいし」
「大坂さんも井川さんも綺麗でボンキュボンッじゃないですか」
「私たちは三十を過ぎたから、たるみが出てきてるわよ」
「そうよ、でも有希さんって二十八でしょう。
それでこれだけ綺麗な肌してれば上等よ」
「でも、さっき食べ過ぎてお腹がポッコリしちゃって……」
「大丈夫よ。
どうせ彼氏と運動するんでしょ。
すぐに引っ込むわよ」
「運動って?」
ちょっと考えたら顔が真っ赤になった。
「でも、やり過ぎには注意してよ。
水着なんだからキスマークは御法度だからね」
「は…はい…。」
もろバレですか。
「それにしてもあなたの彼氏ってイケメンよね。
しかもアレが大きいし」
「えっ?
見たんですか?」
「違うわよ。
ビーチであなたを見てる時にずっと膨らんでたわよ。
水着の上にからでも分かるくらいに大きくして……」
「そうそう、撮影スタッフなんか負けたって項垂れてたわよ」
やっぱり見られてたんかいっ!
バスタオル掛けとけばよかった……。
「ははは」
乾いた笑いしか出ないわ。
お風呂から上がって部屋に戻ると孝雄さんがルームサービスでピンク色のシャンパンを用意してくれていた。
チンッ
シャンペングラスの澄みきった音が心地よい。
「孝雄さん、撮影について来てくれてありがとうございます。
助かりました。
孝雄さんのおかげで緊張しなくて済みました。」
「ついて来るのは当たり前だよ。
あんな野獣たちの前に有希を一人で出すなんて絶対に出来ないからね」
「それより、孝雄さん。
今日の昼間はずっとコレを大きくしてたそうですね」
既に大きくなってガウンを盛り上げているモノを指差した。
「だって有希を見てたら誰でもなるって。」
「誰でもは嫌です。
私は孝雄さんからだけでいいです」
私は改めて正座し直して孝雄さんに正対しました。
「孝雄さん…。
今までごめんなさい。
私の身勝手で孝雄さんを拒否してて。
自分の気持ちばかり優先して、孝雄さんの気持ちを考えてなかったわ。
でもね、今ははっきりいえるの。
愛してます……。
私を抱いて下さい。
あなたの愛を私だけに下さい」
「有希……」
「孝雄さん……」
どちらとも無く唇を合わせた。
「有希っ!」
そして孝雄さんが私を押し倒して……。