※この作品はR-18です。

TSウサミミ女子は今日も愛される   作:らいじゅう

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おだてられ、思いついたので書いた。後悔はない。


TSウサミミ女子は、ご主人様に追い詰められるそうです【そして過去編】微妙にエロ

不覚にも勘違いから、アルとエッチしてしまってからかれこれ一週間。基本的には以前と変わらず、部屋の中でぼけーっとする毎日を送っているおいらだが・・・・あれから変わった所もある。

 

一つ目はアルが庭へ外出を許可をしてくれた事だ。

これまではご飯やお風呂やトイレ以外、基本的に部屋の中に軟禁状態だったので素直に嬉しかった。

久しぶりに土を踏み締めたことも、芝生の上での意味もなくゴロゴロしたことも、青空の下で日向ぼっこ出来たのも最高だった。ある意味で部屋の中より快適であった事を考えると、文明人だと思ってたおいらもやっぱりちゃんとした獣人だったらしい。

あと、何となく齧った芝生は思ったより旨かった。

 

 

二つ目はおいらに護衛の騎士が付けられた事だ。

おいらとしては分不相応な話だし、当然『奴隷に護衛なんていらない』との事は言ったのだが・・・・愛玩奴隷に護衛をつけるなんていうのは割りとあるとの事で押しきられてしまった。なんか他にも色々と理由を捲し立てられるように言われたが、難しい言葉の嵐だった事しか覚えてない。そもそもアルが決定した時点でおいらは頷くしかなかったので覚える気もなかったんだけど。

 

そんな訳でおいらの護衛としてきたのが、深みのあるサファイア色の瞳と蜂蜜のような赤みがかった金髪が特徴な、女性騎士のケイトである。

ケイトは熊の獣人族と人族のハーフらしく、体がかなり大きい。アルには及ばないまでも、おいらが見た連中の中では断トツだ。そのガタイの良さと違わず、腕力も凄い。おいらを腕にぶら下げても槍を軽々振るったりするのだ。

最初は女性にしては大きくて強そうなケイトを警戒してたが、今では世間話をする程の仲良しさんである。この間は一緒にお茶もしたしな。友達といっても過言ではないと思う・・・多分。

 

 

それで三つ目なのだが・・・・これがちょっとアレだった。いや、何かしろとか言われた訳じゃないんだけど。この変化だけが、不安を覚えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シルヴィ、ほら口を開いて。あーん」

 

そう言ってアルが差し出したのはスプーンの上にはプルプルも震える黄色の塊がある。茶色いカラメルソースが掛かったそれからは芳ばしさの混じる甘い香りがふんわりと漂ってくる。バニラの香りこそないけれど、それは紛れもなくおいらの知るそれと良く似ていた。

そう、プリンだ。

 

この世界ではプリンという物は無かったけれど、似たような蒸し料理は存在した。卵蒸しと呼ばれる西方の伝統料理だ。コース料理の一つになる事もあるが、残念ながは卵蒸しはデザートではなく前菜。とき卵に魚介ダシと幾つかの香辛料を混ぜた物に、魚介類の身や貝柱、野菜などといった物も入れて蒸しあげられるそれは、前世でいう所の茶碗蒸しに類似している。当然味付けはしょっぱい系。言うまでもなく旨い。

 

そんな卵蒸しを見て、常々思っていたのだ。

なんで茶碗蒸しはあってプリンは無いのかと。

名前こそ違っていてもクッキーもある。ケーキもある。シュークリームもある。アイスだって・・・・なんかちょっと少し違うけどあるにはある。なのに、何故かプリンがない。茶碗蒸しはあるのに。おかしい。

 

そこでおいらはお夕飯の最中、ご主人様にこそっと提案してみた。卵蒸しをデザートみたいにしたら、美味しいのではないか?と。

それを聞いた最初は、アルから本当に不思議そうな顔で見られた。卵蒸しをデザートにするという発想はかなり異端だったらしい。それでも物は試しにとアルがお屋敷のコックに作らせたのが━━━━━このプリンなのである。カラメルについては何も教えなかったのに、既にそこに辿り着くとか『料理人パネェ・・・』と素直に感動を覚える。

 

しかし、しかしだ・・・・どうにも食べづらかった。

この世界に生まれ落ちて早十年と少し、もう時期十一年にもなる。おいらはずっと前世の食べ物に焦がれてきた。草を食べながら、頭にあるのはかつての美味しい物の記憶。忙しない生活の中、段々と薄れていくそれを必死に思い出しながら色んな物を食んだ日々。

チョコを思い出しながら木の枝を。チーズを思い出しながら草の新芽を。飴を思い出しながら花の蕾を。奴隷に落ちた時だって、泥のついたパンを食べながら何度コロッケパンを頭に思い描いてきたか。飢えていた。極限に。美味しい物に。

そして今ここで散々妄想していた一つ、念願叶った再会を果たした。黄色いやわらかな誘惑。プリンだ。まごう事なきプリン。甘党だった前世のおいらが、コンビニで買って食べていたプリン。正直見ているだけで涙で目の前が歪む。それくらい感極まってる。アルがいなかったら号泣してる自信がある。

 

だから今すぐにでもかぶり付きたい。早くてあの味を確かめたいと思ってるんだが・・・・どうにも、どうにも、アルの笑顔とそのスプーンがおいらの足を止めた。

 

「どうしたんだい?私の好みではなかったが、中々に美味しかったよ。シルヴィが好みそうな味だ。はい、あーん」

 

そうやって笑うアルの目は熱っぽい━━━━というか耳を撫でる手つきとか抱き締め方とか、今もお腹に添えられた手とか、話し掛ける時の声色とか表情とか・・・・そういう目につく色んな物に、こっちが恥ずかしくなるレベルの劣情が籠ってるのだ。女がそういうのに敏感だというのは聞いたけど、ここまで危機感を覚えるとは思わなかった。

 

そう、あれから変わったのが三つ目こそ、これだった。

アルから向けられる感情、その性質の変化。

それまでは、なんというか、なんやかんや言っても物珍しい物を見つけた気持ちの方が大きかったように思う。多少は女の子として見ていたとは思うけど、可愛がり方とかモロにペットみたいだったし、良いところ年の離れた妹とか親戚の子みたいに思ってたんじゃないかと。━━━━だけどあの夜以降、アルは明らかにおいらを女として見るようになった気がする。以前のように可愛がってるつもりかも知れないけど、おいらは騙されない。今の触れ合いは完全にメスに対する求愛に近い物だ。おいらを子作りマシーンとして見てるやつのそれだ。

だってオスの臭いがプンプンする。これ以上無いほどに、プンプンプンプンしてくるのだ。

 

だからこそ目の前のそれが激しく躊躇われる。

だってただでさえ甘ったるい声を掛けてくる奴が差し出した物で、しかも差し出されたそれはアルが一度使ったスプーンに乗ってたりするのだ。

 

社会の中でも底辺に生きてきたから、間接キスとかは気にならない。我が家は裕福じゃなかったから食器も少なくて、コップとか普通に使い回してたくらいだ。・・・・でも、アルから差し出されたそれは激しく躊躇われた。だって背後でオスの臭いプンプンさせてる人の前で、その人と間接キスするんだよ?人によっては興奮するかも知れないじゃん。下手したら襲って良い事への暗喩かと思うかも知れないじゃん。そんな事出来るか。えっ、考え過ぎ?お前はお尻に硬くなった膨らみを押し付けられながら、それでもそう言えるのか?ん?

 

一度は間違ってやってしまったけれど、だからといって何度もやりたい物でない事に変わりはない。避けれるなら全力で避けたい。男と寝るなんて今でもごめんだ。嫌だ。想像しただけで鳥肌が立つ・・・・・けれど、この生活を捨てられるかといえば、それもNO。全てを捨てさるには、おいらは贅沢し過ぎてしまった。もうあの頃には戻れない。捨てられない為にも、頷くしかない。それが例え地雷だったとしても、もう腹を括るしかないのである。

 

飲み込め、シルヴィ!苦痛も嫌悪を飲み込むんだ、シルヴィ!少なくとも、それはお口の中を幸せにしてくれる!一瞬だけかも知れないけども!!

 

決意を込めてアルの差し出したスプーンを咥えた。

瞬間口の中に広がったのは優しい卵の素朴な味わいと、まろやかなで濃厚なミルク旨味。そしてよく溶け込んだ、上質な白砂糖の甘美なる甘味だった。

一言で感想をいうならば旨い、である。

 

若干焦がしたカラメルソースの苦味が、また良いアクセントになっている。ただ甘いだけなら一口二口で飽きてくるが、これのお陰で幾らでも食べられる気がしてくる。ベストマッチだ。

思わず頬を抑えながら味を堪能してると、またスプーンが目の前に現れた。プルプル揺れるそれも勿論乗ってる。

 

少し視線を上げてアルを見ると、にっこりと微笑まれた。劣情は変わらないけど、襲ってくる気配はない。なのでワクワクさせながら口を開けば二口目が口の中に入れられた。ふんわりとろとろした食感と、優しい甘味が口の中にじわっと広がっていく。うみゃい。

 

「ふふふ、シルヴィは本当に美味しそうに食べるね。料理長に用意させた甲斐があったよ」

 

楽しそうにそう言うと、アルはプリンの乗った皿をおいらの側に置いてスプーンを握らせてきた。そのまま自分で食べて良いのかと視線で確認すると、おいらの耳を撫でながら肯定するように頷いてくれる。

なので、おいらはお言葉に甘えて頂く事にした。やっぱり自分で食べるのが一番気が楽だ。人に気遣わずに食べられるプリンはまた格別といえる。食事はこうね、救われてなくちゃいけないんだ。よく分からんけどさ、うん・・・・まぁ、手が空いたせいで、その分ベタベタ触られる訳だけどな。止めろ、耳の内側は止めろ。こそばゆい。ゾクゾクする。━━ッッひゃぅ!つ、付け根はもっと止めろぉ!嗅ぐのもぉ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が気じゃない朝食から暫く。

 

「えっ、旦那様との距離ですか?」

 

アルを見送ってからいつものように庭園を散策していたおいらは、アルの事をケイトに相談してみた。彼氏持ちのケイトなら、なんか男を上手く操る方法とかしってないかなぁと思ってだ。主には遠ざける方法とか聞きたい。

 

「最近さ、距離が近くて、あれだぞ、物理的には前からだけど、ほら、なんか、こう・・・・分かるだろ?」

「あー、はいはい。そうですね。シルヴィ様に付けられる前はたまに見掛けるくらいでそこまで良く見てませんが、それでも以前と比べたらベタベタしてる気はします。良かったですねー、あの調子なら旦那様も浮気はしないと思いますよ」

「良くない!全然良くないぃ!今朝だって、いつ襲われるかドキドキしたんだからな!全然落ち着いてご飯食べられなかったんだからな!」

「あははは、それはそうかも知れませんねぇー。旦那様、本当にべったりですもんね。そう言ってやれば良いじゃないですか。惚れた弱みってやつで、案外あっさり引くかも知れませんよ」

 

惚れたねぇ・・・・今は興味があるかも知れないけど、それだって後数年くらいな気がする。ウサギ獣人の春は短い。精々が十五くらいまでで、二十を越える頃には大抵が立派なおばちゃんだ。うちの母親も二十代を越える頃には顔にはシワが目立つようになって、ピンとしてたウサミミも張りのあった大きなおっぱいもシワシワのクタっーてなってた。獣人全部がという訳でもないが、成長の早い種族は、どうしても劣化も早いものなのだ。

 

だからおいらがアルから感心を向けられるのなんて、後五年あるかないか。仮にアルに特殊な性癖があったとしても、あの激しいプレイを思うと体力的についていける気がしない。いや、そもそももうやりたくはないんだけどもさ。うん。そんな可愛くもなく、夜の相手もまともに出来ない奴隷をいつまでも置いておくだろうか?答えは簡単、のーだ。

 

所詮おいらは愛玩奴隷。

役目を果たせなければ、飽きられれば捨てられるだけの存在でしかない。現実は悲しいかな、少女漫画や恋愛小説のようにはいかないのである。

 

いくら気に入られてるからといって、確実な未来がある訳ではない。現実は何処までも残酷で、おいらにも必ずその時はくる。今は我が儘が通じたとしてもだ、飽きられた時にどういう反動が返ってくるのか想像すれば弱み漬け込むのは得策とは思えない。おいらとしてはポイされた時もそれなりの待遇が貰えるように、出来るだけ良い印象を与えておきたいのである。媚びを売るなら可愛いうちにだ。

だから、なんか女性的な技で上手くいかないのかと思って聞いたのに・・・・ケイトは能天気で良いな。

 

「それが出来たら苦労しないんだよなぁ・・・」

「そうですか?案外有効だと思うんですが」

 

暫く二人でのんびり庭を散策してると、いつも休んでる東屋の方から甘い香りが漂ってきた。気になって匂いを追っていくと、東屋の裏の所で庭師のおじいちゃん達がお菓子をお供にお茶休憩していた。

庭師のおじいちゃん達とは庭への外出許可が降りて以来の知り合いだ。最初のうちは変に畏まられてしまってギクシャクしたけど、今では暇な時とかの話し相手になって貰ってる。

庭師のおじいちゃん達と目があったので挨拶すると、いつもと同じ優しい笑顔を浮かべながらおじいちゃん達のリーダー格であるバドじいが挨拶を返してくれた。

 

「ご機嫌麗しゅうございます、シルヴィ様。お散歩のお邪魔をしてしまいましたかな?」

「まさか、おいら達こそごめんな。休憩中に。バドじい今日は皆で何食べてるの、です?匂いがさ、なんていうか甘いんだけど、なんか、こう、少し青臭さもあって・・・・これ花ですよ、な?どう、敬語出来てる?」

「ははは、敬語はまだまだ練習が必要ですね。しかし、シルヴィ様の鼻の良さには敵いませんな。孫が作った物なんですが━━━━」

 

そういうとバドじいのが淡い紫色の物が詰まったビンを見せてきた。蓋を開けて貰って匂いを嗅がせて貰うと、散歩中に鼻腔を擽った甘い花の香りがする。

 

「おーー美味しそう、ジャム?」

「はい、孫が作った花のジャムです。わたくしめ今年で六十になったのですが、孫がその祝いにと送ってくれた物でして。宜しければ、シルヴィ様も如何ですかな?なぁ、皆」

 

バドじいの言葉に他のおじいちゃん達もニコニコしながら歓迎してくれた。なんかお茶も用意してくれるみたい。おじいちゃんの誘いを受けたおいらは、護衛のケイトにちょっと確認をとってみた。その目に万感の思いを込めて。

 

おいらはアルから何かする時は、必ずケイトの許可を取ってからやるように言われてる。アルは身の安全の為にとか言ったけど、実際の所はおいらが変な事しない為だろう。物壊したり、屋敷の人に迷惑かけたりしないようにとかとか。

現に芝生齧ってたら普段温厚なケイトから目を剥いて怒られた。仲が良くなったといっても、ケイトはあくまでアルの部下なのだ。そこにおまけはない。

 

なのでもし、ケイトが許可を出さないなら、この美味しそうなジャムも諦めるしかない。そういう事もあって目で必死に訴えて掛けたのだが━━━━━おいらの予想に反して、ケイトは苦笑しながら「仕方ありませんねぇ」と呟いた。

 

「バド殿。疑う訳ではありませんが、これも職務なのでシルヴィ様が口にする前に、それを確認させて頂けませんか?」

 

「ははは。ケイト殿、どうかお気に為さらず。万が一の事があって困るのは私共ですからな。どうぞどうぞ」

「おお、それじゃぁお茶も用意せにゃな。いやぁ、こんな可愛い子達にお茶注げるたぁ、仕事は真面目にするもんだわな。せがれに自慢出来るわい」

「おいおい、シルヴィ様や騎士様にお出しすんのがお前さんの茶で大丈夫か?安もんだろう、そりゃぁ」

「安もんだろうと、かぁちゃんが気持ちと手間掛けてんだ。安もんだって上等品よぉ。なんたってシルヴィお嬢様のお墨付きなんだからな。ねぇ、シルヴィお嬢様」

 

ワイワイするバドじい達からジャム付きの焼き菓子やお茶を貰ったケイトは、それらに問題ないのを確認するとおいらへ混ざってOKの許可を出してきた。なので気兼ねなくバドじい達に混ざってお茶する事にする。

花のジャムは初めて食べたが、果物のジャムとはまた違った風味で面白かった。香りがかなり強いのも特徴的で、苦手な人は苦手かも知れない気がする。おいらは平気だけど。

 

それから暫くバドじい達とお茶してると、「いつまで休んでんだジジイ共ぉ!」という声が聞こえてきた。声の方向へ視線を向けると、見たことない男の子がいた。おいらより少し年上くらいだろうか?それにしても知らない顔だ、誰だろ?

 

不思議に思ってるとバドじいが自分の孫の一人だと教えてくれた。元々別宅の方で働かせていたらしいんだけど、それなりに仕事を覚えてきたとの事で、元より人手不足気味だった本宅の仕事を一月ほど任せる事になったらしい。仕事の出来によってはそのまま本宅の庭師になるとか。

 

そうやってバドじいと話してる間にも、ズケズケと男はこっちにやってきた。鼻息を荒くさせながら、その顔に怒りの表情を浮かべてだ。

 

「ジジイ、いつまで油売ってんだ!今日中に表の植え込みやるっつってたろが!!公爵様はお目こぼししてるかも知れねぇが!俺が来た以上!適当な仕事はさせねぇからな!!あ、これは騎士様!うちのジジイがご迷惑お掛けしたようで、申し訳━━━━」

 

ケイトに謝ろうとした男の子と、おいらの目が合う。

ケイトに隠れて見えなかったみたいで、おいらを見つけた瞬間男の子は目を丸くして止まった。何となく見つめ合ってると、次第に男の子の顔が赤く染まっていく。

 

「━━━━も、申し訳ありません!お騒がせしまして!!あの、けして、あんた・・・・じゃなかった、お嬢様に向かって怒鳴ってた訳ではなくてでして!!あくまでこのジジイ共にっ、あ、の、そのっ・・・・!」

 

慌てふためく姿に思わず笑ってしまう。

そんなに慌てる事ないのにって。

アルから着るよう言われてる服が高いせいで勘違いさせているが、おいらの立場はあくまで奴隷。アルに少し気に入られていようとカースト最底辺だ。つまり普通に雇われてる一般市民の男の子の立場はおいらより上な訳で、畏まる必要なんて少しもないのである。

 

何か言いたげにしてる皆に代わって、ここは迷惑を掛けてるおいらが説明する事にした。なんかケイトが微妙な顔をしたけど、いつもお世話になってるからここは任せて欲しい。大丈夫。

 

「気にしなくて大丈夫でふ。おいらこんな格好してるけど、ただの奴隷なんだ。それより、こっちこそ仕事の邪魔してごめんなさい。休憩長引かせちゃったの、おいらのせいなんだ。だからバドじい達の事、あんまり怒らないであげて欲しい。代わりって訳じゃないけど、人手が必要ならおいらも出来る事なら何でもす━━━━━ふが?」

「何でも致されても困ります。シルヴィ様。旦那様とのお約束をお忘れですか?えぇ、そうです。私が、許可致しませんとも」

 

おいらの口を手で塞ぎながら、ケイトは上からジロリと見下ろす。腕の力強さにビビって思わず頷くと、ケイトはバドじいに「後の事はお任せします」と一言残しておいらを背中を押して歩き出した。去り際バドじい達に手を振ると、バドじいだけじゃなくてさっきの男の子も手を振ってくれた。もう怒ってる雰囲気もない。

男の子とバドじい達が仲直り出来そうで安心するのと同時、同年代らしい男の子と今度話してみたいなとか思ってると、ケイトが溜息を吐きながら口元から手を離してくれた。

 

「・・・・ふう、シルヴィ様。今後は発言に気をつけてください。寿命が縮むかと思いました。今更ですが、態とやられておりませんよね?」

「ん?態と?何を・・・・?」

「いえ、何でもありませんよー。何でも。ただ旦那様に報告しないといけないので、その・・・・頑張って下さい。あははは」

 

遠い目で笑うケイトに『どうしたのか?』と、その時は本気で不思議に思ってたのだが、その理由は直ぐに知る事になった。具体的に言うと━━━━

 

 

 

「━━━━━━シルヴィ、少し話があるのだが?」

 

 

 

━━━━━━夜、アルが帰宅して直ぐに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あの、ごっ、ご主人様?」

 

帰宅して直ぐ部屋を訪れたアルから話があると言われ、夕飯も先に食べ終わってて、後は寝るだけだったので了承したら━━━━そのままベッドに押し倒された。何を言ってるのか分からないと思うが、おいらだって分からない。

事情を知ってしそうなメイドさんや執事さんも早々に部屋を出てしまってるから、本当に意味が分からない。

ただ、何となく不機嫌なのは分かる。理由は知らないが。

 

何かやらかしたのかと思ったけど、肝心のアルは叱りもしないし何も言わない。胡散臭い微笑みを浮かべて、ただ覆い被さったまま動かないだけ。

いつもなら鳥肌が立つような甘い台詞ポンポン飛ばしてくる頃なのにそれもない。不気味だ。言い知れない違和感にゾクゾクする。

 

あと、あれだ。

ビビりながらも様子を確認して分かった。

その嫌な物に気づいてしまった。

 

「シルヴィ・・・・」

 

目だ、目がヤバい。

ギラギラしてるのだ。それこそ見てるだけで火傷しそうな程に。まるであの日、初めておいらを抱いた時みたいに。

 

ハッとした頃には遅かった。

アルの手が胸元のボタンを外していた。

既に二つ目まで外されていて、谷間が服の隙間から覗いてる。慌ててシャツを掴んで閉じようとしたが、アルの手に見事に遮られた。両腕共に頭の上に上げさせられ、アルの大きな手によっとがっしり固定される。本気で力を入れてもビクともしない。

 

「ちょ、や、やだ、ご主人様、ま━━━━ふぇ!?」

 

生暖かい風が胸の谷間を撫でた。

顔をあげて見てみればアルの顔が胸の近くにあって、ついさっき肌に触れたのが吐息である事を知った。アルは胸の谷間をじっと見つめたまま息を荒くさせてる。スンスンと臭いを嗅がれてる音も聞こえてきて、恥ずかしくてたまらなくなった。顔が、耳が熱い。火が出そうな程に。

 

「み、見るの、や、だって━━━ふぇん!?ひぅ、い、息かけちゃ、や、らぁっ!」

 

おいらの反応をみてか、わざとらしくアルの熱い吐息が胸の谷間に吹き付けられる。背筋がゾクゾクして、胸が恥ずかしさからドキドキする。冷や汗が滲んで、体中の鳥肌が立って、耳を覆う体毛がブワッて逆立ってしまう。

 

アルはそんなおいらの様子に厭らしい笑みを浮かべると、胸の谷間にベロを這わせてきた。

 

「ひゃぁん!?」

 

その感触に変な声があがった。

それまで以上にゾクゾクして、思わず体がビクつく。

胸の谷間に潜り込んできたベロが肌を舐める。そこに蜜でも塗られてるかのように。れろっと。ゆっくりと。掬いあげるみたいにして。何度も何度も。

 

ぬめついた熱い感触が胸と胸の隙間を撫でていく度、肩がビクりとしてしまう。体が勝手に反応して、僅かに股間を濡らしていく。だけど気持ちよくなんてない、ただただ気持ち悪かった。怖くて怖くて仕方なかった。

 

だけど嫌だって、その言葉が出てこない。

このお屋敷のお医者さんのお陰で体から傷は消えたけど、逆らったらどうなるかは記憶の中にちゃんと残ってる。抵抗を少しも許さないアルの腕力がどうやって使われるのか━━━━おいらは痛い程に知ってる。

 

だから目を瞑って息を殺した。

アルに怖がってるのがバレないように。アルの気分をこれ以上害さないように。

だって出来るのはそれが限界なのだ。アルが喜びそうな声をあげられればそれが一番良かったけど、今はきっと悲鳴しか出せない。せめてこの間みたいに、もう少し優しくてしてくれたら何とかなったかもけど、無理だ。今は怖くて仕方ない。悲鳴を押さえて、震えるのを我慢するだけで精一杯。

 

そうしてるとアルが胸の形を確かめるようにベロを這わせてくる。味わうように、時間を掛けてゆっくりと。

ベロがシャツに遮られると、ブチっという音と共にシャツがはだけさせられた。残った下着もずりあげられていって、ついに胸を覆っていたブラの感触が消える。

うっすらと開いた瞼の隙間から、おいらのおっぱいに顔を近づけるアルの姿が映る。

 

「んんんっ」

 

チュ、と胸の先端が軽く吸われた。

痺れるような何かがそこからビリっと走ってくる。

噛んだ唇の隙間から震え混じりの声が漏れる。

 

気分を害してないか心配したが、アルは大して気に止める事なく胸にキスを落としてきた。夢中になって胸に唇を押し付ける姿に、先程までの不機嫌さはない。

依然として油断は出来ないけど、その様子に僅かだけど恐怖が薄れた。

 

何度もキスを落とした後、アルの長い指が胸の膨らみに沈む。ぞくりとはしたけれど痛みはない。優しい手つきでふにふにと揉んでくる。不意にきゅっと先端を摘ままれ、また痺れるような刺激が走ってきた。

お腹の少し下の所がジンとする。

 

「━━━━━シルヴィ、私を見てくれ」

 

何処か寂しそうな、けれど優しさの滲む声が鼓膜を揺らした。目を開けるとアルの顔が近づいてきてる。動けずにいると唇が重なって、アルのベロがおいらの口の中に潜り込んできた。

そしてぬちゃぬちゃって厭らしい音が響いてくる。絡み合う舌の感触にゾクゾクが止まらなくて、知らずに溢れた唾液がアルにじゅるじゅると吸われて胸が高鳴った。沸き上がる嫌悪感とは裏腹に、アルからされるそれらはどうしようもないほど気持ち良くて、段々と意識をぼんやりとさせていく。

 

ふと、自分の中でスイッチが入ってくのを感じた。

 

あそこがジンジンしてる。

物欲しそうにきゅうきゅうしてるのが分かる。

まだ怖くて仕方ないのに、おいらの体はアルを受け入れる準備をしてる。

 

だけどそれは今のおいらには救いでもあった。

だってそれさえ入ってしまえば、何も考えなくて済むのだから。吐きそうなほどの嫌悪も、震えるほどの恐怖もなくなって、それだけになる。後で思い出して後悔するだろうけど、それで良い。今だけ乗り越えられたら、それで。

 

 

 

「━━━━━シルヴィ?」

 

 

 

不意に胸を揉む手が止まって、アルが重ねてた唇を離した。おいらを覗き込むアルの瞳に泣いてる自分の姿が映っていて、一気に血の気が引いた。

 

「ちがっ━━━」

 

おいらは奴隷だ。

求められたら嫌がるなんてしてはいけない。

フリみたいな物だったらまだ良い。適度なものなら興奮を誘う。だけど、本気で拒絶しては駄目なのだ。意味合いが変わってしまう。

アルにそういう趣味があれば良いけど、もしそうでなければ価値がなくなる。アルの言動を考えればその可能性は低く、だからこそおいらはこれまで耐えてきた。本気の言葉だけは胸の内側に閉まっていた。なのに、今、出してしまった。

 

アルの瞳から熱が失せてくのが見える。

腕を押さえてた手から力が抜けて、漂わせていた暑苦しいまでの淫気が消えていく。

 

 

「ご、ごめんなさい!違うっ、違うんだ!嫌じゃない!ご主人様!おいら大丈夫だから!!」

 

 

嫌だ。

 

 

「止めないで、おいらちゃんとするから!!」

 

 

嫌だ。

 

 

「何でもっ、おいらやるから!頑張って覚えるから!ご主人様の言うとおりにする!約束する!絶対に!本当に、おいらちゃんとするよ!」

 

 

嫌なんだ。

もう、あそこには帰りたくない。

暗い部屋に閉じ込められるのは嫌だ。叩かれるのも、怒鳴られるのも嫌だ。あんな目で見られるのは嫌だ。

 

 

「ベッドも部屋も、服もいらないから、食べ物だって我慢する!我が儘なんて言わない!もう何もいらないから、だからお願いだから━━━━━」

 

 

 

だけど、それより━━━━

 

 

 

「━━━━━捨てないで」

 

 

 

━━━━アルにだけは、村の皆から家族から向けられた、あの冷たい目を向けて欲しくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたらアルがおいらを抱き締めてた。

ぎゅぅっと、力強いのに優しい手つきで。

 

「怖がらせて、すまない。そんなつもりはなかった」

 

そう言いながら、アルはおいらを抱き締めたまま頭の天辺にキスを落としてくる。さっきまで嫌なだけの行為。なのに不思議とそれは嫌ではなかくて、寧ろ何故か安心を覚えた。

強張ってた体から力が抜けて、アルの体に意図せず凭れ掛かってしまう。失礼な事をしたと焦ったが、アルは気にした様子もなくおいらを抱き締めたままベッドに倒れた。

 

「シルヴィ、聞いて欲しい。私は君を愛している。一人の女性として。本気だ。遊びや気紛れなどではない。君の伴侶となりたい、君が欲しい」

 

掛けられた言葉に視線をあげると、アルの黄金の瞳と目が合う。瞳は優しい色に染まっていて、ただ真っ直ぐにおいらを見つめていた。

 

「理由は幾つもある。語り尽くせば、それこそ夜が明けても足りない程に。けれど、今は止めておこう。君が他の男と話した程度でつまらない嫉妬し、君を悲しませた今の情けない私には、その資格もないだろうからな・・・・・だが、それだけは知っていて欲しかった。愛している。シルヴィ。私は君を愛している」

「・・・・・・し、知ってる」

「いや、知らないさ。どれだけ私が君に焦がれているか。だから、これから時間を掛けて伝えようと思っている。シルヴィ、私に時間と機会をくれないだろうか」

 

甘く囁かれた声に、気がついたら頷いていた。

 

「ありがとう、シルヴィ。では早速で悪いのだが、今日はこのまま眠っても良いかな?今日は仕事のせいで少々疲れていてね。ああ、勿論手は出さないと約束するし、嫌なら遠慮せずそう言ってくれていい。そうだ、断られた程度で、私の君へと愛は変わらない事も付け加えておこうかな?」

「い、良いの?途中で止めたら、苦しくないか?」

 

男の事は良く知ってる。

だって前世は男だったのだ。

アルがどれだけ良い奴でも、一度火がついた状態で休まる訳がない。

 

「い、入れるのは、その、だけど、手なら・・・・」

 

だからそう提案したんだけど、アルは優しい笑みを浮かべておいらをぎゅっと抱き締め直した。

そして側にあったシーツを掛けてくる。

 

「心配する必要はない。君のそんな顔をみて興奮出来るほど、私は趣味が悪くはないからな」

 

そう言ったアルは抱き締めてる腕から力を抜いた。

おいらの上に覆い被さった腕は、もうただ乗せられてるだけ。抜け出す気になれば簡単に抜け出せる。

でも、アルの目を見ると抜け出す気になれなかった。

 

そのまま大人しくしてると、その腕はおいらの体をまた抱き締めた。ぎゅっと。

 

「おやすみ、シルヴィ」

 

アルは一言呟いて、おいらの額にキスを落として目を瞑った。寝息が聞こえたのはそれから少ししてから。

おいらはその寝顔をみながら、アルと同じ様に目を瞑った。小さな寝息と、腕に込められた心地よい力に身を任せて。

 

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