瞬鋭高校。
比較的に新しく創設された高校であるが、刻まれてきた歴史は非常に濃い。学業、スポーツ、文化とあらゆる面において秀でた者を集めたエリート校であり、その輝かしい記録は高校の玄関前に多く飾られている。
その中でも野球部はより一層力を入れており、野球部専用のグラウンドに充実した練習機材が置かれている。おかげか、新設されてまもなく野球部は甲子園出場。その後、ベスト16、8、4と年々優勝へと近づいていった。
だが、しかしここしばらく野球部の成績は低迷。甲子園出場はおろか、地区大会の準決勝でも消える始末。
そんなエリート校を復活させようと立ち上がった現校長は外部から野球部へとコーチを雇った。
「今日から野球部の練習を見てくださる巖巳コーチだ」
そう監督から紹介され前に立ったのは日に焼けた肌に帽子から僅かに見え隠れする青い髪が特徴的な男で、雰囲気やガタイからいかにもスポーツをやっている人間だというのは見て取れた。
そして、その監督が現れたその日からチームは大きく3つに分かれることになった。
専用グラウンドがあり、機材も使い放題で試合に出れる一軍。
グラウンドは使用出来るも機材の使用はなく試合に出れるか怪しい二軍。
最後に……。
「練習も試合もさせて貰えない三軍……」
とほほ…と顔を顰めながら部室でボールを磨くのはマネージャーでもない、れっきとした選手として野球部に入部したパワプロであった。
「試験もなしに今までの成績で分けるなんて酷いや…」
第1志望の瞬鋭に入れたはいいものの、野球部のレベルは高く、同期にはすでに4番とエースの座を確約された人間がいて自分の肩身は狭くなる一方であった。しかも下級生ですら二軍にいるというのに、2年生の自分が三軍でボール磨きやらユニフォームの洗濯をさせられるなんてとパワプロはため息を吐く。
お世辞にも自分の野球は上手いとは言えないが、時々ふとした瞬間にホームランが打てそうだったりベースを速く走り抜けられる感覚はあるのだ。けれど、その感覚はすぐに消え去ってボールはセンターのミットの中へ、走っていた身体もズッコケってサヨナラのチャンスを不意にしたりと、三軍に送られても仕方の無い成績であった。
「はぁ…練習したいなぁ…」
一応、ボール磨きやら洗濯、掃除が終われば練習に出ることは許されているのだが、あくまで三軍としての責務が終わればである。だが、三軍に降格されたメンバーはパワプロ以外は辞めていった。そのためこうして雑用をこなすのはパワプロだけであり、同級生で残っているメンバーは一軍か二軍におり、親友である矢部くんも「代走にくらいは使えそうだ」と二軍に在籍している。
そのため、ここにいるのはパワプロと健気にもこんな男所帯でむさくるしくイケメンも四番バッターくらいしかいないチームに尽くすマネージャーただ1人。
「洗濯終わったよー」
「うん、お疲れ様、千優ちゃん」
そして、そんなマネージャーに声をかけられたパワプロは疲れた顔を隠すように朗らかな顔を浮かべた。
瞬鋭高校野球部マネージャー、春野千優。マッサージや身体ケアなどを率先として行ってくれる良いマネージャーではあるのだが。
「見て見てパワプロくん!これ新しく買っちゃった!」
その手に握られているのは何の変哲もないゴムチューブなのだが、それにパワプロはジト目を向けた。
「もしかしてそれはまた…」
「うんっ!通販!」
「やっぱりか…」
彼女に欠点があるとすれば、超がつくほどの健康ヲタクであるということである。健康になれるという謳い文句のついた本から健康グッズ、果てにはサプリメントなどもなんでも買ってしまうのが彼女の悪癖である。
それを除けば、健康料理を作り、マッサージに長け、献身的な可愛らしい少女なのである。
ゴムチューブをビッタンビッタンと引っ張りながら効果を説明する千優の話を聞いていると、ガラッと部室の扉が開かれる。見やれば紫色のハーフアップにまとめた髪を揺らして女の子が歩いてくる。
「パワプロ先輩。すまない、ボールの方を」
「聖ちゃん、それ終わってるから持ってていいよ」
「ありがとう」
ぺこりと頭を下げた後輩にパワプロは微笑んだ。六道聖、パワプロと千優の一つ下の後輩であり、すでに正捕手の差を確約されるほどの実力を持つ女性捕手である。
「そう言えば、ポジションは決まったのか?」
「うーん、キャッチャー以外なら行けそうなんだけどね」
「…そうか。先輩ならピッチャーでも野手でも上手くやれると思うぞ」
そんな聖にパワプロは年下に実力で抜かれていることに少しばかり負い目があるのだが、何故か聖からは信頼というか僅かに敬服の意を抱かれてしまっている。
別に自分はそんなに大したことない選手なのだけれど宣っては聖が首を横に振るという日が続いている。
「では、私はそろそろ」
「うん、頑張ってね聖ちゃん」
手を振るパワプロに最後まで顔を向けながら、ボールの入ったカゴを持って部室を出ていく聖。自分に謎の期待を寄せてくる後輩に頬が緩んでしまったパワプロにちょこんと人差し指が刺さる。
「えっと、千優ちゃん?どうしたの?」
「……別にー」
何となく不貞腐れてるように見える彼女にパワプロはご機嫌をとるために再び健康グッズの話を出すと、千優は「そうだったそうだった。それでねー!」と再び話を始めた。
こうして可愛い女の子と2人きりで部室で過ごせるのは高校生としては喜ばしい事であり、それに何だか練習せずとも千優と話していると力がみなぎる感覚がある。それに加えて自主練を行うことでパワプロの力は1年前と比べて遥かに上がっていた。
けれども、自分の目標であるドラフト指名を勝ち取りプロ入りする夢を叶えるためにはまだまだ足りない。
(2週間後の昇格試験では頑張らないとな…)
そう密かに意気込んだパワプロは千優との会話を楽しみながら雑用を進めていった。
体力 が 10 さがった!
技術 が 25 あがった!
千優 の 評価が 8 上がった!
聖 の 評価 が 10 上がった!
聖がパワプロに投手との可能性を見いだしたのは記憶を消しても消せなかったみずきとの残滓があるから(密かにクレッセントムーンのコツを覚えていた)(投げられる訳では無い)
現時点でのパワプロくん
2年生 三軍(雑用係) ポジション なし
野手能力 ミートF パワーE 走力F 肩力D 守備力F 捕球F
特殊能力 ムード〇
投手 球速135キロ コントロールE スタミナG 変化球なし (スクリューコツ持ち)
特殊能力 テンポ〇
パワプロをよく知らない人のための解説
【瞬鋭高校のエースと4番】
話題がちらほら出てくるのは烏丸くんと才賀くん。前回に書いた通り、4番の才賀君は優秀。打撃を得意練習とし金特に一球入魂を持っている寡黙なスラッガー。練習機材には壊れたピッチングマシン(コントロールが不規則なのでどこに来るかわからないので実践に近い練習が出来る)を使用している。
エースの烏丸くんはエリート組と呼ばれるメンバーのリーダー格であり、離反した彼を連れ戻すことでチームは再びまとまり始める(彼を連れてきても残ったメンバーを連れ戻す必要もあったりする)。
野手能力も高く、炎上しにくくスバルと比べるとバッドステータスがなかったり優秀ではあるが、性格と見た目も合わさってなのか人気に乏しい。
パワプロくんはどっち向き?
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投手
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野手