※この作品はR-18です。

異世界から帰ってきた勇者とやって来た魔王!   作:EMO

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十四話

 二学期になり俺たちの生活も一変した。

 俺とマオは同棲を始めた。そして、マオの前髪で目元を隠していた格好も止めて陰鬱とした雰囲気から脱皮した。

 

 

「誰だあの子……転校生か? 

 凄く綺麗な子だな」

「えっ? 

 雨宮さんの席に着いたわよ」

「ええーっ! 

 まさかあの雨宮さんっ?」

「うそっ! 

 畔上君と雨宮さんが付き合ってるの?」

「悠は孝己と突き合ってたんじゃないの?」

 俺とマオが手を繋いで教室に入ると教室中が騒ついた。

 孝己には予めメールでマオと付き合い始めた事と同棲を始めた事を伝えてある。

 写メで本当のマオを見た孝己は最初驚いていたが快く祝福してくれた。

 

 そんな新学期を迎えて直ぐに"聖女"が新たな動画を配信した。

 最初に異世界語で話した後に新しい歌を歌っている。

 

 それは、魔王に向けたメッセージだった。

 大事な話があるから出てきて欲しいと……。

 

 これで完全に決まった。

 "聖女"は異世界人だ……俺たちがいたあの世界の……。魔王がこの世界に居る事を知っているのだ。リリーヌであるかどうかはまだ分からない。

 

 万が一、マオが元魔王だと世間に吹聴されたら、"聖女"ブームに乗せられたマスコミが面白がって魔王を糾弾しかねない。

 魔王と言う言葉じりを、世の中に対して実害が無いのにあたかも害悪であると捏造して魔女狩りをする可能性がある。

 何せ、全く関係ない人物を犯罪者扱いする事を躊躇わず、尚且つその事実を謝罪せずに隠蔽する組織だから。

 だが、様子見にも限界があるし、受け身でいるのは性に合わない。

 

 俺とマオは対抗策として"魔王"の動画を投稿する事にした。

 

 "魔王"動画は簡単だ。"聖女"の二番煎じでいい。

 対抗動画だからあの世界の民謡くらいを歌えばいいはすだ。その中に"聖女"に対するメッセージを込めれば良いだろう。

 

 

 

 俺とマオは早速動画の為の準備に入った。

 

 まずは衣装だ、あの世界での魔王の格好では確実に警告が入り削除されるだろう。なにせ、身体から魔力を放出しなければならなかった魔王は裸に近いほぼ紐の様な衣装だったから。

 この世界の"魔王"のイメージカラーはダークトーンなのでなるべく肌色面積の少ない漆黒に近い衣装が好ましい。

 それに角があった方がより"魔王"らしいだろう。

 

 それらをネットで検索して購入して、角付きヘルメットや金髪のカツラ、マント、女魔王のコスプレ衣装などを組み合わせて何とかオリジナルの魔王を作り出した。

 

 

 マスクをした"魔王"がカメラの前で異世界語で民謡を歌う。バンドは組んでないのでアカペラでだが、マオの綺麗な声で紡ぎ出される唄は心にささる。

 そして、振り付けは杖をカメラに向けて防御魔法の魔法陣を描く様に腕を回す。

 これで、"聖女"に対するメッセージになるだろう。

 

 

 "魔王"の動画も徐々に話題になっていった。

 

 最初は、世の中に沢山ある"聖女"のコピーに見られていたが"聖女"に対する"魔王"と言う位置づけと異世界語での唄である事から閲覧数が伸びていった。

 

 

 そして、世界中の言語学者や暗号解読のプロたちが集まってようやく異世界語が解読された。

 それからは異世界語が地球上を席巻していく。

 

 第二外国語に異世界語を指定すり国まで現れた。

 

 そして、俺たちの学校にも変化があった。

 

「さあ、みんな明日からの[異世界言語]の教科書だ。

 無くさない様に名前を書いておけよ」

 作られたばかりの[異世界言語]の教科書が配られた。

 

 異世界言語が学校の授業に取り入れられる様になったのだ。

 

 明らかにおかしい……只の異世界ブームの筈が……日本だけで無く地球中を異世界が飲み込んでいく。

 

 

 

 

 ****side聖女****

 

 

 あの日勇者ユウが魔王を道連れにして世界から消えた。

 私は長い間その事を忘れて生活していた。いえ、私だけでは無く世界全体が勇者と魔王を忘れていた。

 そんなある日、何故だかその場所に行きたくなりフラリとその場所に立ち寄って空を見た。

 すると何故か涙が流れて止まらなくなっていつの間にか気絶していた。

 そして全てを思い出したの。

 愛しい勇者ユウの事も憎っくき魔王の事も。

 

 更にその場所が勇者ユウと魔王が最終決戦をして最終奥義エンゲージリングを行使した場所である事も思い出した。

 

 そんな私は躊躇なくエンゲージリングを発動したの。

 勇者ユウが起動して行使したエンゲージリングは二つの異世界を繋ぐ究極魔法。術者が解除しなければ二つの異世界は繋がっている筈。

 勇者ユウ程の魔力は無いけれどもエンゲージリングの残照を利用する事は出来る。

 

 そして私は勇者ユウを追ってこの世界に転生して来た。

 

 最初は朦朧とした記憶から……次第に自分が聖女リリーヌだった事を思い出し、勇者を探す事にした。

 

 と、言っても闇雲に探しても見つかる筈が無いので、IT会社の社長であるお父様に私が世界的に有名になる方法を相談したの。

 その時に私が異世界の聖女である事やこの世界に来ているだろう勇者と魔王の事も説明したわ。

 最初は驚いたり疑ったり私の頭を心配していたお父様だったけど、私が話す異世界語を聞いて、尚且つ有名言語学者さんに分析してもらってから私の事を信じてくれるようになっていった。

 IT関連の仕事と同時にオタクでもあった頭の柔なかお父様で助かったわ。

 

 お父様の提案で私は動画投稿する事にしたの。

 "聖女"のコスプレをして異世界語で歌を歌う。そうすれば世界的に発信出来るし、異世界語での歌ならば必ず勇者が気付く筈。

 

 そして、私は勇者と感動の再会するのよ……。

 

 

 ……おかしい……動画投稿してるのに一向に反応がないわ。

 

 かなり有名になって世の中は異世界ブームになってるのに……。

 

 そして、おかしな事は私自身にも起こっている。動画投稿で描いた魔法陣が少しだけ発動仕掛けたの。

 

 まさかと思って誰も居ない場所で魔力を込めるイメージで魔法陣を描いたら発動してしまった。あの世界での魔法に比べたらかなり小さな攻撃魔法だったけど、目の前にある壁が少し焦げてしまった。

 

 魔法が無い筈の世界で魔法が使えた……私はこの異常事態を瞬時に理解してしまった。

 

 早く勇者を……いえ……魔王を見つけないと……魔力の強かった魔王ならばこの事態をなんとか出来るかもしれない! 

 

 だから私は慌てて動画第二段を投稿した。

 

 すると反応があった。"魔王"としての動画投稿があった。

 

 やっぱり魔王はいた……。

 勇者も早く探さないと……それよりも魔王にコンタクトを取ってこの事態を話さなきゃ。

 

 魔王も気付き始めてると思うわ。この世界があの世界に飲み込まれ始めてるって言う事を。

 世界の理が……どちらの世界の理かは分からないけど、エンゲージリングで繋がったままの二つの世界を一つにしようとする力が働いている。

 

 解決方法は分かっている……。

 

 エンゲージリングの発動者である勇者を殺す事……。

 二つの世界の特異点である勇者を消せば二つの世界がまた別れるはず。

 

 勇者と敵対していた魔王と手を組んだらなんとか出来る筈。

 

 一般人である勇者ならばなんとか……私一人だったら多分躊躇ってしまう……愛する勇者を殺す事を。

 でも何度も勇者と殺し合った魔王ならば確実に勇者を殺すだろう……。

 二つの世界を救うにはこれしか無いのよ……許してください……勇者ユウ……。

 

 私は"聖女"世界を救う使命を帯びた存在だから……。

 

 

 

 

 

 

 

 




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