※この作品はR-18です。

異世界から帰ってきた勇者とやって来た魔王!   作:EMO

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二話

 ピピピッピピピッピピピッ

 目覚まし時計の電子音が朝を告げる。

 

 ピッ

 

「ん〜、もう朝か……」

 夜中に読んだ小説が面白くて寝たのがさっきだった様な気がする。

「ふぁぁぁぁ……」

 盛大な欠伸をしながらもベッドからのそりと出て洗面所に向かう。

 

 サッパリしてから台所に向かい、朝食をつくる。って言っても昨夜に作り置きしたホットサンドを冷蔵庫から出し、レンジで温め直すだけだ。

 

 今回のホットサンドはゆで卵とシーチキンを混ぜて辛子マヨネーズで和え具材を作り、軽くトーストした食パンを三角形に切り、中に切れ目を入れ具材を入れた簡単なヤツだ。

 

 ケトルで沸かしたお湯をインスタントコーヒーを入れたマグカップに注ぎ角砂糖を二つ入れかき混ぜながらテーブルに座る。

 

 

 

 

「ふう〜、そろそろ出るか」

 弁当を作り食器を洗い終えて時計を見ると七時半を指している。

 

 俺は畔上 悠(あぜがみ ゆう)、高校一年生だ。

 異世界の元勇者で今はこの世界で普通の高校生をしている。

 

 この世界は前回の異世界の前にいた世界……つまり本来の世界にソックリだ、最初は帰って来たと思ったが少し違う。

 元の世界では俺は既に高校を卒業していたし、 親元から学校へ通っていた。

 しかし、この世界では俺は高一になっていてしかも超マンモス校に通っており、更にはマンションに一人住まいだ。

 家賃は親持ちで生活費は毎月仕送りしてくれる。

 ウチの親ってそんなに金持ちだったか? 

 まあ、異世界に行ってしまい出来なかった青春をやり直す事が出来るようなので良しとして今の生活を受け入れたのだ。

 

 そして、これが重要なのだが俺の身体能力は異常に高い。

 魔法は使えないが、異世界で鍛えた身体能力がほぼそのまま使える。

 その力を意識して走ると百メートルを一秒で走り数十メートルの高さまで飛び上がる事ができし、重さ百キロのバーベルも片手で軽く持ち上がる。

 ほとんど化け物の範疇だ。

 

 異世界の人族の魔法とは基礎身体能力の補助の意味合いが強かった。身体能力が強ければより強大な魔法が使える。

 そして普通の人族の身体能力を限界突破出来る人を勇者と呼ぶ。

 対して魔族は基礎身体能力が低くても魔力で全てを補える。

 魔王はその魔力が桁違いに多くて大きい存在だった。

 その魔王が周りから担ぎ上げられて人族の国に侵攻して来たのだ。人族を人的資源にして労働力とする為に。

 

 そして、この世界に帰って? 来た俺はこの異世界から継承した力を隠しながら生活していく事にした。

 

 そんな事を考えながら自転車をゆっくり漕いで学校へ向かった。

 

 

 

「おはよう」

 教室の後部ドアを開けて挨拶をする。

 まだ早い時間だが、既に数名のクラスメイトが来ていた。

「オハッ! 

 なんだ随分眠そうだな」

 この軽い挨拶の男は親友の新垣 孝己(あらがき たかみ)だ。

 このクラスになってから初めて出来た、いやこの世界に帰って来てから初めての友人だ。

 この世界の記憶はインストールされているが人付き合いは自分から進展させなければならない。

 この孝己は入学したばかりの俺に気さくに話し掛けてくれた最初の男だ。

 いや、最初の男って……やらしくない方のだ。

 

 最後尾の窓際と言う特等席な俺の席に荷物を置きながら、

「まあな、昨夜読んだ小説が面白くって多分寝たのが朝方だったと思う。

 だから今から寝るからノート頼む」

 そう言うと俺は自分の机に突っ伏した。

 

 

 

 キーンコーン

 

「ふわぁぁぁ〜」

 欠伸をして周りを見渡すとみんながそれぞれ弁当を出したり買ってきたパンなどを出しているところだった。

「本当に昼まで寝やがったな。

 先生も呆れてたぞ?」

 俺の席に来た孝己がぶつぶつ言いながら俺を見下ろす。

「そうか? 

 まあ、飯にしよう。

 外に行くか?」

「そうだな、いつものところで待っててくれ」

 そう言い残して教室を出る孝己。

 購買所にパンを買いに行ったのだ。

 この学校は巨大で、四階建ての校舎が十棟もあり中高大学が纏まった学校だ。

 敷地面積は知らないが、かなり広く体育館が五つに野球場が三つにテニスコートが十面にゴルフ場が敷地内にある。

 俺は俺たちがいる校舎のすぐ近くにある公園風の庭園にあるベンチを陣取った。

 入学直後から殆どこのベンチを使って昼飯を食べているからこのベンチを使う他の人を見たことが無い。

 噂によると定位置を作った人の場所はある程度は占有権があるとかなんとか。

 俺からしたら場所取りの煩わしさがない分楽だけど。

 

 しばらく待っていると孝己がパンを買って来た。

「待たせたな。

 今日はちょっと混んでたんだ。

 おっ! 今日も手作り弁当か? 

 美味そうだな」

 ベンチに座るなり俺の弁当を覗きながらパンを頬張る孝己。

 

 俺は毎日弁当を作る。

 食費の節約もあるが、購買所や食堂での料理に馴染めないからだ。

 異世界での食事は総じて辛い物が多く、所謂スパイス料理がほとんどだった。

 それに慣れ親しんだ舌がこの世界の料理が薄味に感じてしまうのだ。

 だから、俺は自分の好みに味付けた弁当を作る。

 

「おっ、その唐揚げ頂戴っ!」

 孝己の手が俺の弁当に伸びる。

「仕方ないな、一個だけだぞ」

 箸で唐揚げを摘み孝己の口に入れる。

 モグモグ

 この唐揚げは昨夜から下味を付けた物だ。市販の唐揚げ粉に胡椒や醤油、ニンニクなどを混ぜてから鳥もも肉を一口大に切り冷蔵庫で漬けた物を片栗粉と小麦粉をまぶして揚げたのだ。

「うん、やっぱり悠の唐揚げは美味いな。

 もう一個……」

「ダメだ、今日の唐揚げは俺も楽しみにしてたんだ」

 そう言い弁当を隠しながら食べた。

 

 

 

 放課後は孝己はサッカー部なので部活に向かい、俺は帰宅部だから直ぐに家路につく。

 

 俺は運動部に入り万が一でも身体能力の一部でもバレたら面倒臭い事になるからなるべく目立たないようにしている。

 

 

 家の近くのスーパーで晩飯の買い物をしようと中に入ると見知った顔があった。

 

 同じクラスの女の子だ。

 確か……雨宮 麻央(あまみや まお)さんだ。

 長い腰まである黒髪でを後ろで一つ括りにしている。

 制服姿のスタイルは悪くないがその醸し出す雰囲気が暗く、俯きがちでいつも前髪で隠している目元が余計に根暗なイメージを増大させる。

 

 ちょっと離れて彼女を見ていると、大量のレトルトカレーを買い物カゴに入れていた。 しかも辛口オンリー。

 そして、レンジで温めるだけのご飯パック。これも大量に。

 更に飲み物は最近メジャーになりつつあるドクペ(ドクターペッパー)。

 

 大丈夫かこの娘? 

 

 見ないふりをして自分の買い物を済ませた。

 今晩はキムチ鍋にする予定だ。

 豚肉はたっぷり、野菜は白菜とニラのみ。

 キノコ類は入れずにシンプルに。

 出汁は市販のキムチ鍋の素にした。

 

 

 スーパーを出て暫くすると荷物を満載した自転車を押す雨宮さんを見つけた。

 えっちらおっちら一生懸命に自転車を押している。

 小柄な雨宮さんはあまりにも多い荷物のため自転車を漕ぐ事が出来ずに押しているようだ。

 

 そして、マンション近くの交差点に差し掛かり……危ないっ! 

 彼女へ向けてトラックが突っ込んで来るっ! 

 完全な信号無視のトラックだっ! 

 

 間に合わないっ! 

 

 俺は咄嗟に自分の自転車を放り出して雨宮さんの元へ向かい、彼女を抱えてジャンプした。

 

 キキーッ! ガシャンッッ! ガガガッ! 

 トラックが今更ながらに気付いてブレーキを踏むが雨宮さんの自転車と荷物は無残な姿になっている。

 

 雨宮さんは驚愕していて固まったままだ。

 

 そして着地する時に前髪が捲れ目元が露わになった雨宮さんの素顔を見てハッとした。

 

 着地した俺は雨宮さんをそっと歩道に下ろすと、

「あ……あの、もしかして勇者?」

 雨宮さんから聞き慣れた言葉が出た。




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