「じゃ番長、お疲れっしたー!」
「番長ー、また明日ねー!」
「おう、気ィ付けて帰れよ」
週の半ば、平とツインズと雫といういつものメンバーに誘われ、会社が退けてから飲みに出掛けた。
盛り上がり過ぎて二次会まで引っ張られた轟 金剛は彼らと別れると、酒気混じりの息を吐いてネクタイを緩める。
終電の時間はとっくに過ぎていて、今からタクシーを拾って帰るのも億劫で、「さて、どうすっか」と辺りを見回す。
と、丁度カプセルホテルの看板が目についた。
部屋が空いていれば泊まるもよし、空いてなくともサウナで汗を流せば多少の酒は抜けるだろう。
そうと決まれば行動は早いとばかりに、金剛はホテルの自動扉を潜った。
「……あぁ?」
「……おや?」
幸いにも部屋が1つ空いており、サウナ用のバスタオルだの借りて脱衣場に入ると意外な人物に出くわして、金剛は片眉を引き上げた。
それは向こうも同じだったようで、端正な顔を顰めて此方を睨み付けて来る。
相手は派手な金髪でいけすかない上司の鏡 慶志郎だった。
「へえ、エリートの係長サマがこんなトコに来るたぁ意外だなァ?」
と金剛が言えば、
「やれやれ、顔を合わせた途端にイヤミかい?良い子の寝る時間は過ぎていたと思うけど?」
呆れたように慶志郎が返す。
ひくく、と互いに口元に引き攣った笑みを浮かべ、ギロリとガンを飛ばし合う。
「ンだと、テメエ。ケンカ売るのも大概にしとけや」
「おっと公共の場だよ、此所は。キミも『大人』なら弁えておきたまえ」
「チッ」
「フン」
盛大に互いにそっぽを向いて服を脱ぐ。
この2人、性格は正反対であるが負けず嫌いな所はよく似ており、その所為で事ある毎に張り合って毎日毎日どうでもいい勝負で争うのが日課になっていてそれも最早、営業部の風物詩と化していたりする。
ケッ、メリケン野郎めなどと内心で悪態をつき金剛は手早く服を脱ぐ傍らふと、横目で見た金髪上司の頬やシャツの所々に紅い印が付いている事に気付いた。
何だ?と思って目を凝らしてよくよく見ると、口紅の痕が幾つもこれ見よがしに付けられている。
コイツ、また女共を侍らせて遊んでたってワケか。
そう言えば酒の匂いもしている。大方、何処ぞのクラブとかいう喧しい場所で騒いだ帰りなのだろう。ムカムカ。
金剛の中でワケの分からない苛立ちが無性に募っていく。
一方、慶志郎も慶志郎で酒臭い金剛の様子にいつものメンバーと飲んで来た帰りなのだろうと当たりを付けていた。
慶志郎は今までその飲みの集まりに誘われた事は無い。
何だい、上司のワタシを差し置いて。一言、声を掛けるという気遣いもないのか、この野蛮人め。ムカムカ。
これだからムサ苦しい筋肉バカは、と慶志郎の中でもワケの分からない苛立ちが募る。
苛々して腰にバスタオルを巻いた2人はほぼ同時に振り返るとビシィッ!と指を突き付け合った。
「勝負じゃっ!」
「勝負だよっ!」
本人達は決して認めようとはしないだろうが、考える事が一緒なところもよく似ているのだ。
意気揚々とガンガンに熱くなったサウナ室に乗り込み、向かい合って座ると腕を組んで互いを睨み付ける。
此処に第三者が居なくて幸いな程、サウナ室はヤクザの抗争かってくらい凶悪な雰囲気に包まれていた。
全身からダラダラと汗を流し、瞬く間に限界点に達するが『負けたくない』という一心でギリギリと歯を食い縛って堪える。
ところでサウナに入る際には幾つかの注意点がある。
持病や慢性疾患のある人は勿論、健康な方でも『飲酒後のサウナ使用は控えて下さい。』っつー注意書きがあるが、この2人がそんなモン読む筈もなかった。
ついに限界を超えて、ぐはあっ…!と殆ど同時に2人はギブアップする。
「や、やるじゃねぇか…!」
「キミこそ、中々だよ…!」
アルコールの入った身体でのサウナは流石にキツかった。
普通の人は真似しないで下さい。
その後も無駄に牛乳早飲み対決なんかやらかして、さて寝るかと部屋に向かう。
何故か2人同時に。
ん?と、同じベッドに寝ようとして金剛と慶志郎は怪訝な顔をした。
「此所は俺の場所だぜ、ヨソ行けヨソに」
「バカも休み休み言いたまえ、此所はワタシの場所だよ」
どうやらダブルブッキングしたらしい。
「俺、が、先、だ、退け!」
「上司に譲るのが当然だろうが」
「堂々とパワハラかますんじゃねぇ」
ぐぎぎぎぎ…!と押し合いへし合い何とか相手より先にベッドを取ろうとするが、力はほぼ互角。
揉み合ってると別のベッドから「夜中に煩えぞ!」と怒られた。
「………」
「………」
仕方ねえ、と舌打ちして金剛は妥協案を出した。
「今夜だけ我慢してやらぁ」
「はい?」
「俺ァ早く寝てえんだよ」
テメエも一緒に寝りゃあいい。
単純な金剛の妥協もクソもない提案に慶志郎は目を剥いた。
「はっ、はああぁ!?もがっ」
大きな声を上げそうになる慶志郎の口を塞ぎ、金剛は有無を言わさず彼を押し込むと自分も中に滑り込んだ。
昨今のカプセルホテルの部屋は割と広めに作られているので、男2人が入っても多少の余裕はある。
「騒ぐんじゃねえ、また怒られんぞ」
「ちょっと!何で貴様なんかとっ!」
「ガタガタ抜かすな、男のクセに」
「狭いんだよっ!離れろ!」
「ムリ」
なおも文句を付けてくる慶志郎に苛立ちがピークに達して、金剛は黙らせるついでに嫌がらせも込めて向かい合うと、慶志郎の頭の下に腕を差し込んだ。
いわゆる、腕枕だ。
合わせて腰も一緒に抱き込んでくっついてやる。
離れろと言うから逆にしてやったのだ。
やる事が全く大人げない。
途端にピタッと慶志郎が動きを止めて大人しくなった。
「……キ、キミ、何のつもり…」
「あぁ?テメエがいつまでも煩えか、ら…」
狼狽える慶志郎を見てざまぁみろと続けようとした金剛だったが、顔を真っ赤にして微動だにしない上司の姿を見て、後の言葉が出て来ず心臓が跳ねたのを感じた。
チラ、と互いの目線が合う。
サウナで汗を流した所為か、彼からはいつもの香水の匂いはしないけれど、何かいい匂いがするのは彼自身の香りだろうか。
……何か、ヤベエ事をやらかした気がする。
今更、手を離すのもわざとらしくて金剛はとにかく寝よう!寝ちまえ!と固く目を閉じた。
煩く響く胸の鼓動は極力、考えないようにする。
というか起きてると何か間違いを起こしそうになる。
元々、寝付きの良い金剛は慶志郎の体温が心地よくて、全身に回ったアルコールも手伝ってか無事に数秒後に眠りに就いた。
何でどうしてこうなった!
金剛がまさか同じベッドで寝ると言い出すとは思わず、押し込まれて慶志郎は軽いパニックに陥った。
男と同衾なんて冗談じゃないッ!
狭いだの離れろだの文句付けたら何故か腕枕をされて、腰にも太い腕が巻き付いてきた。
カアッと顔が赤くなるのが自分でも分かる。
ちょっと!何で赤くなるワタシ!?
ブン殴って(流石にそれは酷い)押し退ければいいだけなのに、何故か身体は思考と共に止まる。
動くに動けなくなり目線を上げると此方を見るクソ生意気な部下と目がバッチリ合う。
抱き合っている所為でドク、と彼の心臓の鼓動が大きくなったのが伝わってきた。
つられて自分の心臓もバクバク跳ね上がる。
暫く此方を見ていた男はスイと目を閉じた。
金剛の体温が高い所為か、サウナで全身が解れてアルコールが急速に回ったのもあってか、くっついていると暖かくてトロトロと眠気に襲われ始めてマズいと感じたが、すうすうと金剛から寝息が聞こえてきて、慶志郎も抗えずに遂に目を閉じてしまう。
クソ……何でこんなに、気持ちいい…んだ。
ぐぅ。
スコーンと眠りに落ちてこの日以降、2人は互いを妙に意識し始めるのはまた別の話である。
【カプセルホテルの後日談】
この所、ずっと視線を感じる。
デスクでパコパコとキーボードを叩きながら鏡 慶志郎は居心地の悪さに綺麗に整えた眉をこれでもかと寄せていた。
端から見れば、ものっそい不機嫌ヅラをしている。
実際、不機嫌であった。
パソコンのモニターの向こうから、こっちをじー……っと見ているのは番長こと、生意気な部下の轟 金剛が原因だった。
何をするでもなく、デスクで肘をついて堂々と鋭い視線を飛ばしてくる。
「ちょっと、番長って何であんなに係長にガン飛ばしてんの?」
「いや、分かんねぇッス。また喧嘩したんスかね?」
「ここ最近、ずっと係長を見てるよねー、番長ったら」
ツインズと平がひそひそと話しているのが聞こえる。
喧嘩した覚えはないが、慶志郎にはちょっと心当たりがあった。
先週カプセルホテルで偶々、金剛と鉢合わせした時の事だ。
慶志郎は馴染みの女性達と、金剛はいつものメンバーと酒を飲んだ帰りで、ホテルに泊まってアルコールを抜こうと立ち寄った先で偶然にも顔を合わせたのだ。
イヤミの応酬から発展したサウナ対決と牛乳早飲み対決を経て、さぁ寝ようとした矢先まさかのダブルブッキングでベッドが1つしか無く、何やかんや揉めた末にどういうワケか一緒に寝る事になってしまったのだ。
男と同じベッドでなんて慶志郎にとっては世界の終末が来ても絶対に嫌だったのだが、無駄に馬鹿力の金剛によって強引に抱き込まれて有無を言わさず、というか認めたくないけど意外に気持ちよくてウッカリ彼の腕枕で爆睡してしまった。
しかも翌朝、目覚めたら金剛が何故か自分を凝視していた。
「キッ、キミ、起きたらサッサと離れろッッ」
「あ、悪い。つい何となく」
眠る前の可笑しな雰囲気を思い出してしまい、焦って怒る。
何でか知らないが、慶志郎が目覚めるまで金剛はずっと腕枕して抱き込んでいたままだったのだ。
何となくってナニ!?
何となくの続きでもあるのかい!?
色々ツッコミたかったがテンパった慶志郎はとにかく金剛から離れたくて彼を押し退け、そそくさと帰路に着いたのだ。
……あの記憶は銀河系の彼方にでも葬り去りたい。
金剛の視線に耐え切れず、慶志郎はバン!と手をついて立ち上がり休憩してくると部署を出て行った。
出て行く金髪上司の後ろ姿を目で追っていると雫が「轟くん?」と声を掛けてきた。
「轟くん、また係長とケンカしちゃったの?」
「あ?いや、ケンカっつうか」
「ダメだよー、ちゃんと仲直りしなくちゃ。係長も素直じゃない人だけど、轟くんも意地っ張りなんだから」
みんなで仲良くしなきゃね、と言われて金剛は先週の事を改めて思い返した。
飲みの帰りにカプセルホテルで会った慶志郎と対決やら何やらの流れで一緒のベッドで寝てしまった。
男を嫌う彼に嫌がらせのつもりで強引に抱き込んでみる。
どうせ罵声だか何だか喚くんだろうと思っていたら、慶志郎が顔を真っ赤にして黙るもんだから妙な気持ちになってしまい、慌てて眠りに就いた。
翌朝、目を覚ますと彼はまだ腕の中で寝ていて、普段はスカしてキザったらしい上司が無防備な寝顔を晒しているそのギャップに心臓がまた跳ねた。
薄く開いた唇に指で触れると柔らかくて、閉じた目の睫毛が意外に長くて、触れた頬はスベスベしていて、引き寄せられるように金剛は顔を寄せ、そして。
「キッ、キミ、起きたらサッサと離れろッッ」
「あ、悪い。つい何となく」
目覚めた慶志郎の言葉で寸前で留まった。
あっぶねえー…、俺はヤツに何しようとしてたんだ?
胸の中にモヤモヤしたものが燻ってその日以来、金剛は毎日のように慶志郎を無自覚に眺めていたのだ。
仲直りっつうかよ、と休憩スペースで缶コーヒーを飲みながら金剛は考えていた。
もっかい、鏡に触ってみてえ。
触ってみたらモヤモヤするもんが分かるかも知んねえ。
轟 金剛は単純な男だった。そして極端な男だった。
退社時刻、金剛は「おい」と声を掛けて慶志郎の腕を引っ張った。
「ちょっとツラ貸せや、係長」
「何だいサムライボーイ、藪から棒に」
腕を掴まれた慶志郎がギロリと睨み返してくる。
ついに番長VS係長が物理的に対決か!?と部署内が色めき立った。
「轟くん!?」
「心配すんな、別に殴り合おうっつうんじゃねぇ」
驚く雫に金剛は答えると顎をしゃくり、慶志郎もフン!と鼻を鳴らして2人はドカドカ勢い良く揃って出て行った。
「さあさあ、賭けるわよー!」
「番長と係長、どっちが勝つでしょうか!一口500円で!」
「オレ番長!」
「あたしは係長よ!」
2人が去った後、ツインズが胴元を開いて営業部で盛大な賭けが行われたのは知る由もない。
「で、何処に行こうっていうのさ?」
「此所だ」
「…………は?」
繁華街から一本、路地に入ったのはいかがわしい看板が建ち並ぶラブホテル街だった。
は?え?こういう所って普通、男と女が入るんじゃ……え?
此処でナニするの?
想定外の事態に呆然として思考が停止した上司を金剛はこれ幸いとばかりに適当に選んだホテルに連れて入り、適当にパネルをタッチしてさっさと部屋に入った。
因みに入った建物の名前は『ホテル 一発』という何とも直球過ぎるネーミングだった。
この間、5分も掛かっていない。行動力の速さはさすが番長。
慶志郎が( ゚д゚)ハッ!と気付いた時には既に遅し。
ダブルベッドに充実したアメニティ、天井は総鏡張りの、まさに今からヤるぞ!的なお部屋に男2人で入っていた。
「じじ、じょおっだんじゃないッッ!ナニ考えてんだ貴様ァァ!」
事態を察して顔を青くして逃げようとする慶志郎をとっ捕まえ、金剛はズルズルとベッドに引き摺り押し倒した。
「こないだから考えてみたんだけどよ、係長」
「ナチュラルに脱がすなァァ!」
暴れる慶志郎を物ともせず、シュルッとネクタイを解いて赤い上着を剥ぎ取る。
「テメエとならイケそうだ」
「は?イケ、るって、何が」
「テメエの寝顔、ケッコー可愛かったし」
「ねね、寝顔ってナニ、可愛いってナニ」
動揺して後退りする慶志郎の下肢にズンと腰を落として逃げられないようにすると、金剛は学帽と上着を脱いでネクタイを取る。
「もっぺん、テメエに触りてえ」
ずい、金剛は慶志郎に顔を近付けた。
真っ直ぐな眼差しに慶志郎は顔を逸らせず、暫し2人は見詰め合う。
「……なぁ、鏡」
大きな掌が慶志郎の頬を撫でる。
優しげに愛しげに。
「と、とどろ…」
「取り敢えず、一発ヤらせろ」
どかん。
余りのムードの無さに慶志郎の怒りが爆発した。
「ふっ……ざけるな貴様ァァッッ!」
熱い眼差しで、欲を孕んだ声で、本気で嫌なら抵抗しろ。
と、言われたので。
「触るなァァ!この筋肉ゴリラがぁっ!」
「テメッ、いい加減に往生せいやァァ!」
現在、慶志郎くんは絶賛抵抗中です☆
「ふざけるなっ、馬鹿も休み休み言えっ!ワタシが何で男なんかと!」
「一発ヤッてみりゃあイイかも知んねえだろっ、何事も経験だ経験!」
ガタイの良い男2人がベッドでドッタンバッタン大乱闘してた。
何にも知らない隣の部屋では熟年夫婦が盛大な物音に「まあ、激しいのね」とか聞き耳立てたりしていたが、それはどうでもいい。
ゼイゼイと汗だくになって慶志郎と金剛は睨み合った。
2人ともシャツが半分脱げて、慶志郎に至ってはスラックスのジッパーが下ろされてアメリカンなビキニパンツがチラ見えしている。
ついでに言えば半裸の慶志郎を見た金剛は萎えるどころか、期待で元気一杯になって『ステンバーイ』状態だ。
スラックスを押し上げている金剛の下半身に気付いた慶志郎がザーッと青醒める。
コイツ、マジかっ!
「大体キミ、男同士でのヤり方とか知ってるワケ!?まさかそんなデカい(推定)のいきなり突っ込もうとしてるんじゃないよね!?
「おう、ちゃんと勉強してきた」
「はあぁ!?」
「男は女と違って濡れねえっつうから、色々と教わってきた」
「誰に」
「平に」
……あんの、お調子者のフラットボォォォォイ!!
ぶちぶちぶちぃっ、と何本か血管がキレた。
後日、怒りまくった慶志郎に単独サバンナ出張を命じられる平が居たのは別の話。
「慶志郎」
不意に金剛が名前を呼び意識を削がれた慶志郎は押し倒され、太い指が逃がすまいと顎を捉えてぐっと金剛が顔を落としてくる。
彼の意図する事が分かり、慶志郎は両腕を突っ張って阻止しようとしたが、易々と片手で両手を掴まれそのまま頭上で押さえ付けられてしまう。
「なあ、慶志郎」
「離、せっ…!」
「逃げんなよ」
「冗談じゃない」
「冗談のつもりはねえ」
肉厚の唇が薄い慶志郎の唇に重なった。
舌先が入れろと唇をノックするが、意地でも開いてやるものかと固く目を閉じて抵抗する慶志郎を薄目で見ると、金剛は顎を掴んでいた指を露になった肌に滑らせた。
ふにふにと柔らかい乳首を摘まみ弾いてやる。
「ヒッ!?」
突然の事にビクウッと慶志郎は目を開けた。
驚いたついでに口も開いてしまい、ここぞとばかりに[[rb:滑>ぬめ ]]る舌先が咥内に入ってきた。
「っぁ、んぐ、うっ」
ぬろぬろと口の中を舐め回され、逃げる舌を絡めて捕らえられる。
厚めの舌が歯列をなぞり、敏感な口の中の粘膜を蹂躙され時折、絡めた舌を甘噛みされて知らずビクビクと仰け反ってしまい、口端から唾液が溢れ出て呼吸すら飲み込まれる。
身を捩って逃れようとしても、戯れに胸を弄る指の動きに意識を持ってかれて腰をくねらせるだけに終わった。
「……は、エロい腰」
唇を離した金剛が身を起こしベロリと零れた唾液を舐め、すぅと目を細めて慶志郎を見下ろす。
汗でしっとり濡れた肌、息苦しさで目尻に浮かぶ涙、上気した顔、射殺さんと睨み付けてくる眼差し。
悪かぁねえ、ヤれる。つかヤりてえ、ヤる。
シャツを脱ぐ為に金剛は押さえていた手を離す。
ついでに下衣も脱ごうと落とした腰を上げる。
隙が出来たのを逃さず、今がチャンス(KC)と慶志郎は咄嗟に身体を捩って金剛に背を向けて這い出ようとした。
「おっと、そうはいかねえ」
「ふべしっ」
背中に足が容赦なく乗っかって抑え付けられて、慶志郎はベシャッとベッドに沈んだ。
バタバタ暴れるが岩が乗っかってんじゃないかってくらい、動く事が出来ない。
後ろで衣擦れの音がして、褌一丁になった金剛が慶志郎の服に手を掛けてくる。
「協力的で助かるぜ、係長」
「馬鹿バカばか、止めろっ!脱がすなあぁぁっ」
脱がせたシャツをそのまま背中へとクルクル巻いて慶志郎の両腕をシャツで後ろに拘束すると、後は楽だった。
俯せというのは力が入れにくく、ましてや腕は固定されている。
慶志郎は足をバタつかせるだけで、抵抗らしい抵抗は出来なかった。
脱がされたスラックスがポイとベッドの下に放り投げられたのを見て泣きたくなるが、そこはエベレストより高いプライドに懸けて絶対に泣くもんかと歯を食い縛る。
こんな事態でも負けず嫌いが無駄に発揮されていた。
背中に泳ぐ長い金髪を掻き分け、金剛は自分より幾分か白い肌に手を這わせた。
途端に慶志郎が全身をビクつかせる。
彼の肌は意外に肌理が細かく、手触りが良くてずっと触れていたくなる。
ビキニパンツをずり下ろすと傷一つない、女ほど柔らかいワケではないが、まろい尻が現れて何かエロい。
背中から尻へ、ツウッと手を滑らせる。
「い、嫌だ、もうっ…轟!」
停止の声も無視して両手で柔らかい臀部を揉む。
やわやわと解すように揉みしだいてやると、ズリズリと這って逃げようとするので、腰を掴んで引き戻す。
揉みながら尻を少し外側に割り開くと臀部の奥に密やかに慎ましやかに窄まる菊門が見える。
ちょんと指で突つくと慶志郎が悲鳴を上げて腰を跳ねさせた。
「ひっ、やだ、もうヤだっ!触るなつっつくな、揉むなっ」
「ムリ」
「この強姦魔がぁぁ!」
とうとう泣き出す慶志郎をガン無視して(大概ヒドイ)金剛は慶志郎の腰をグッと引き上げ、窄まる其処に舌を這わせた。
「ヒイッ!?」
ぬろんと尻の奥が濡れる突然の感触に、慶志郎の全身がぞわあっと総毛立った。
後ろが見えないので何をされるか予測が付かないのだ。
ナニナニナニ!?何か動いてる!?
ぴちゃぴちゃと何か音がして、何か生き物が蠢いている。
大混乱する慶志郎はもう、何が何だか分からない。
ふっと尻に息が吹き掛けられ、漸く思い当たる。
尻が舐められてるうぅっ!
この変態ィィィィィッ!!
「なっ…!そんな所、舐めるなぁぁぁ!」
「ムリ」
馬鹿やろおぉぉぉ!
「ひ、ぁっ、あっあっあっ」
「すげぇな、ココびくびくしてる」
「やめ、も…止め、ろっ…て」
有り得ない所に指を突っ込まれ、敏感な神経が集中している其処を太い指が無遠慮に掻き回してくる。
痛みは無いが衝撃が凄くて、慶志郎はガクガクと腰を揺らした。
話はちょっと前に遡る。
ヤると決めたはいいものの、金剛も男とセックスするのは初めてだった。
取り敢えずケツはちゃんと慣らさないと大惨事になると教わった(平から借りたゲイビで研究した)ので、アメニティのローションの袋を破って俯せている慶志郎の尻にボトボト落とす。
「ぎゃあっ、冷たいッッ」
「あ、わり」
「何!?何を掛けたんだっ!?」
「ろーしょん、えーとラブラブローションって書いてあんな、コレ」
「名称を訊いてるんじゃないよっ、何でローションなんか使うのさっ!」
「そら、アレだ。ちゃんと解さねぇとテメエのケツが血塗れになるからだ」
「サラッと恐ろしい事を言うなぁぁぁぁ!」
「ぎゃあぎゃあと喧しいなアンタ」
「貴様の所為だろうがーっ!」
まあ、男にヤられんだから仕方ないか。
金剛はやれやれと溜息を吐いた。
今からお前が犯すんだろうが、と突っ込む者は居ない。
ヌルヌルするローションを指に絡め取り、尻の奥の後孔に塗りつける。
にちゃ、ねちょ、ぬち、ぐち。
「ひ…っ、ばか、触るな、」
「ケツの力を抜けよ」
「いや、嫌だって…!」
触れられてビックリした窄まる後孔は、金剛の指の侵入を防ごうと固く閉ざす。
慶志郎は頑なに金剛を拒絶して、枕に顔を埋めている。
何だかそれは面白くないが、それでも根気良く入口を指で揉む内に、段々と柔らかくなってきて、刺激に耐えられないのか慶志郎が短い声を上げる。
「あっあっ」
「お、その調子」
人差し指がツプンと中に入り、ゆっくりと根元まで埋め込む。
「ああぁ…っ!」
ガクガクと慶志郎が腰を跳ねさせた。
狭い其処は入り込んできた指に驚いて、きゅうぅんと締め付けてくる。
ゆっくり抜いてゆっくり挿れて。
固い中を解すように指を回しながら何度か繰り返し抽挿していくと強張っていた内部が煽動し、指の動きに合わせて蠢く。
試しにく、と指を中で曲げて小刻みに揺らしてみた。
くちくちくち。にゅぷにゅぷ。
「やだぁっ、もう、抜けえぇ…っ」
途端に慶志郎が首を振って逃げをうつ。
「すげえ、テメエん中ビクンビクンして俺の指を美味そうに食ってる」
「嘘だ、そんなワケ、あるかっ」
「嘘じゃねえよ、おら」
ぐちぐちぐちぐちぐちぐち。
実況しながら先刻より少し強めに中を擦ってやると、逃げようと突っ張っていた慶志郎の身体がガクッと落ちた。
そう言えば借りて観たゲイビでは前立腺という所が男の性感帯とか言ってたな。
慶志郎の中で指をぐるんと回し、前立腺が何処にあるのか探ると、少し膨らんでいる箇所が指に触れた。
此処か?と抉ってみる。
「ひあぁぁっ!」
慶志郎が仰け反って甲高い声を上げ、驚愕したように顔だけ振り向く。
「きっ、貴様、今ナニを…!」
「あー…やっぱ此処だなァ?」
ぐりん。
「うあぁっ!」
もう一度、先刻の場所を強く押し込むと慶志郎は嫌だ止めろ死ねっ!と悪態をついてバタバタと暴れた。
そんな彼にお構い無しに、金剛は腰を抱えると探り当てた前立腺を容赦なく指で散々に突いて抉って揉んでと好き放題に弄りまくった。
大概ヒデエ仕打ちである。
たっぷり20分は弄ったであろうか、気付けば慶志郎は無理やり与えられた快感と屈辱にボロボロ泣いてしゃくり上げていた。
しまった、ちょっと苛め過ぎた(ちょっとどころではない)
「おい、慶志郎」
「うっ、ひぐっ…」
「済まん、悪かった」
「うう、う…!」
両腕の拘束を解いてグスングスン泣く慶志郎を起こし、胡座を掻く己の膝に抱き上げて頭を撫でて宥める。
「やり過ぎた、ごめん」
「い、嫌だって言ったのに」
「アンタが可愛いからつい」
息を乱して泣く慶志郎が扇情的で頬を伝う涙を舐め取り、そのまま額に頬に唇に口付けの雨を降らす。
「ワタシを弄んで、さぞ楽しかったろうよ」
「バカ、ンなワケあるか。俺ァ、テメエが」
言い掛けて金剛はハタ、と止まった。
俺は、テメエが。その先は?
「……轟?」
急に黙り込む金剛を涙で濡れた目が不安そうに見上げてきて、金剛の胸がきゅうっと絞るように甘く痛んだ。
「……テメエに、惚れてるからだ」
「……………はあぁ?」
何だ、そうか、俺はコイツに惚れてたのか。
だから女と遊びに行くコイツに苛々してたし、女の匂いを纏うコイツに腹が立ってたのか。
根が単純な男は自覚してしまえば、さっくりと事実を受け入れた。
よし、惚れてるって分かったら遠慮は要らねぇな。
「やっぱりアンタを抱くぞ」
尻の中でえらく敏感な部分を執拗に弄られて煽られた慶志郎のブツは濡れそぼって勃ち上がってはいるものの、達する事は出来ずにそれが辛くて止めて欲しくても金剛は止まらなくて、耐え切れずに泣いてしまった。
そしたら惚れてるとか何だか言われて慶志郎は状況がよく理解出来なかった。
ツラ貸せと金剛に引っ張られ、先日の対決のリベンジなら受けて立とうじゃないかと着いて来たら何故かラブホテルに連れ込まれ、裸に剥かれてからのいきなりの告白だ。
「ワ、ワケが分からないよ…」
うっかり何処ぞの白い生き物っぽいセリフを漏らしちゃったが、金剛は1人で「よし、分かった!」と某映画の某警部ばりに納得して再び慶志郎に手を伸ばす。
金剛の膝に横抱きにされていたのを正面で向かい合うよう跨がされ、金剛がボロンと取り出したブツが目に入り慶志郎はギョッとした。
…………何 だ ソ レ は。
慶志郎のブツもケッコー立派なんだが金剛のは凶悪なブツだった。
大きさはそんなに変わらないと思うが、雁首が異様に高く胴回りには太い血管が2~3本ビキビキ浮いてる。
何かアレだ、貴様は股間にエイリアンを飼育しているのか。
とにかく、えげつないブツだ。
「……ちょっと訊いていい?」
「何だ?」
「まさか、ソレをワタシに」
「おう、ブチ込む。心配すんな、ちゃんと慣らすから」
「ぎゃあぁっ、ムリいいい!」
涙も引っ込んでついでに勃ってたブツもひゅんっと萎えて、慶志郎は金剛から逃げようとしたが正面からガッチリ抱き込まれて敵わない。
怖い、ヤダ!ムリ、入らない!
大丈夫だって、死にゃしねえから。
挿れるのは許可してない!
じゃあ先だけでいいから。
嘘つけーッッ!
あ、バレた。
またドタバタ取っ組み合い、いい加減頭に来た金剛は力任せに慶志郎を押し倒した。
「往生際が悪ィぞテメエ!大人しくヤられろっ!」
「ひっ……」
余りの理不尽な言動と金剛のヤクザ顔負けな脅迫に、慶志郎は怯えて身体を強張らせたが次の瞬間、物凄い怒りが沸いてきた。
何でワタシがコイツの言いなりにならなくちゃいけないんだ!?
大体、好きだって一方的に言ってワタシの気持ちなんて丸無視じゃないか!
ワタシがどう思ってるか訊くのが普通だろう!
ムッカーッ!と腹を立てた慶志郎は激おこぷんぷん丸と化して火事場の何とやらで金剛を押し戻し、その顔面に頭突きをブチかました。
「おごっ…!」
流石の番長も想定外の事態で避ける間もなく顔を押さえて蹲るのを尻目に慶志郎はベッドから飛び降り、パンツを穿いて散らばった服を掻き集めて適当に着てあっかんベー!と舌を出してやる。
「フンッ、いいザマだね!この色魔!good-bye!」
そのまま慶志郎はホテルを出て行ってしまい、後に残された金剛は鼻血をぼとぼと垂れ流しながら痛みに呻いた。
「……上等じゃあ…!」
しかしそこで諦めるのは男が廃るってもんだ。
ギロ、と瞳の奥を獰猛に光らせて金剛は決意した。
あのメリケン野郎、絶対ヒィヒィ啼かせてやる。
惚れているんじゃなかったか、轟 金剛よ。
目的が変わっているぞ。
一方ホテルを飛び出した慶志郎はどうにか服を整えてタクシーを拾い自宅マンションに帰った。
ローションでぬるぬるする尻が気持ち悪くて速攻シャワーを浴びる。
浴槽に湯を溜めながらどうにかローションを洗い流すも、金剛が触れた部分が切なく疼いて慶志郎は溜息を吐いた。
金剛に惚れていると言われた時、嫌悪感はなく何ならちょっと嬉しいとか思った自分が居た。
だが金剛は言うだけ言って自分の気持ちを訊いてはくれなくて、ヤらせろの一点張りで単に身体目当ての口から出任せなんじゃないかと考えが過り、怒りの他に悲しさが込み上げてつい頭突きをかまして逃げ出した。
「……物事には順序というものがあるだろう、バカ」
ざぶ、と湯船に浸かり膝を抱えて呟く慶志郎の声はバスルームに寂しく響いた。
結局、この後も金剛と慶志郎は顔を合わせる度にヤらせろ断ると延々とバトルを繰り広げ、漸く金剛が
「慶志郎の気持ちまだ訊いてなかった!?」
と気付いて改めて告白して、慶志郎に
「遅い、バカ!(ぷんすこ)」
と怒られてやっとこさ両想いになって、今度はちゃんと合意の上でセックス出来るのだが、それはまだ半年以上も先の話であった。
注:同意ナシの無理矢理セックスは犯罪ですよ。
【カプセルホテル裏モード】
股間に飼育しているエイリアンは、とっても気持ちいいものでした☆
「あっ、は、ぁ…っ!ん、ぅ、うっ」
薄暗い部屋のベッドで2つの影が荒い息を吐いて絡み合っている。
頑丈な筈のダブルベッドがギシギシとぶっ壊れそうな程に軋み、その間を縫うように卑猥な声と繋がるソコから響く音と、淫靡な空気が部屋を満たして行為の激しさを物語る。
ぐずぐずに蕩けて熟れたナカを、太いモノが我が物顔で犯してきて慶志郎はただ喘ぐだけの存在と化していた。
後ろから腰を掬われ、カリ高の亀頭が肉襞をゴリゴリと抉り捲り上げて、容赦なく嬲り尽くしてくる。
もう何時間、いや何日こうしているのか数えるのを止めていた。
「ひっ、あ、また、イッ…!いく、いくから、もうっ」
「おらイケ、ここだろ、テメエのイイところっ…!」
「あぁあ゛あ゛ーー…っ!」
「く、ぅ…っ!」
ビクビクと腰を震わせて達する慶志郎に引き摺られ金剛も勢い良く腰を最奥に叩き付け、組み敷いた身体を抱き締めて熱いものを遠慮なく注ぎ込む。
暫く動かずに息を整えていると、慶志郎のナカで柔くなっていた金剛の分身が固さを取り戻していくのが分かり再び内側を叩いてくる。
ナカを埋め尽くす灼熱の肉塊がビクビクと鼓動を打つのを感じ、腹の奥が切なく疼いて慶志郎は唇を噛み締めた。
「……あ、ぁ、また、おっきく…」
「足りねえ、まだだ。もっとだ、慶志郎」
何度も何度も絶頂に追いやられて、それでも離してもらえず慶志郎は金剛に犯されて、既に陰茎は精液を出し尽くしていて固さを失い、空イキを繰り返していた。
金剛とて3回以上はイッてる筈なのに、精力は尽きる事がないと言わんばかりに慶志郎の中に挿れっ放しで抜かず何発とかやらかしてくる。
ずるる、とゆっくりゆっくり金剛のモノが出て行き、またゆっくりゆっくりと挿って来て慶志郎の中に放った精液を掻き回すように緩いストロークを繰り返す。
動きながら腰を掴む手が背中を滑り、前に回って固くしこって主張する乳首を摘まんできて、不意の刺激に慶志郎はひぃと掠れた悲鳴を上げた。
ずし、と背中に覆い被さった金剛が両手でそれぞれの乳首をくりくりと弾いて弄んでくる。
「ア、ァ…それ、いや、」
「あ?嫌なのか?」
本当に?嫌なら止めんぞ?
止めるなどと言いながら実際は弄る手は止まらず、つきつきと疼く乳首をきゅうっと引っ張っては押し込み、慶志郎の反応を楽しみながら金剛が意地悪く訊いてきて、止めないでと泣きながら首を振る。
慶志郎、と熱を帯びた慶志郎の好きな声が耳に囁かれぬろりと舌が耳穴を犯してきた。
ゆるゆる揺さぶられ、身体中を弄くり回されて堪らない程の快感がソコから全身に広がっていく。
身体はもう限界を迎えていたが、止めて欲しいとは思わなかった。何故なら。
金剛と肌を合わせるようになってから慶志郎のソコはすっかり金剛を覚えてしまって、一度彼を迎え入れると己の意思とは裏腹に、身体は金剛を喰らい尽くすかの如く貪欲に求めて蠢いていっそ、何もかも捨ててただ抱かれるだけの存在になりたいと浅ましく願うようになるから。
すごい、コレ。すごい、気持ちいい。
もっと欲しい。もっと滅茶苦茶にして。
慶志郎の脳内は最早それだけしか考えられず、虚ろな視線を彷徨わせグシャグシャに乱れて皺の寄ったシーツを掴み、与えられる快楽を享受してボロボロと泣いた。
経緯はまるっと端折るが、まぁ何だかんだの末に無事に恋人という関係になった轟 金剛と鏡 慶志郎。
週末は互いの家に行き来したり、休日にちょっとデートみたいな事をして結構ラブラブしていた。
会社では高飛車でひねくれて可愛げの無い物言いの慶志郎だが、プライベートだと意外に素直な面も見せてくるし照れ臭そうに甘えてくるのがクソほど可愛い。
普段と余り変わらない表情の金剛だったが、内心ではねぶた祭りとよさこい祭りとだんじり祭が一緒くたで盛り上がっている状況だった。
そして恋人なんだから当然、エロい事もシたいと思うのは健全な男性なら当たり前だろう(いや女性もだけど)
だが金剛のブツを見て怯えて頭突きかましてきた慶志郎の顔を思い出すと、躊躇してしまう。
出来れば初めてでも気持ち悦くしてやりたい。
そこで金剛は前にゲイビを貸してくれた平に相談を持ち掛けたのだが、金剛から相談された平は番長ならエッチの人数も3桁は余裕でこなしているに違いない!だったらオススメはこれッス!と盛大に勘違いして寄越したのが超上級者向けのハードプレイゲイビだった。
勿論、金剛は経験人数は3桁もないし、男を抱くのも初めてで知識にも乏しかった為、何にも知らずに借りて観たゲイビの内容が『普通に一般的』なんだと思い込んでしまった。
24時間耐久極太ドリルバイブ攻め、潮吹きプレイ、結腸ガン攻め連続絶頂などなど……何処が一般的なんだか。
そして平よ、何故そんな物を所有しているのだと膝を突き合わせて小一時間ほど問い詰めたい。
まあ、そんなこんなで間違いだらけの知識を携えて初めて迎えた夜に、それをヤろうとした金剛を慶志郎が白眼を剥いて普通のセックスを懇々と教えて諭し、どうにか大惨事にならずに済んだ。
平は後日、再び単独サバンナ出張に行かされた。
取り敢えず前回のホテル連れ込み事件で最低限の予備知識だけは金剛も持っていたので、慣らす解す挿れるの手順は分かっている。
平に相談したのはその先の、痛くしないで出来るだけ気持ち悦くしてやるという知識が欲しかっただけだ。
だがその問題はアッサリ解決した。
好きでもない相手との行為は苦痛を伴うだろう。
けれどお互いに好き合って心を許して信じて、一緒に気持ち悦くなりたいと通じ合えば身体は自然と受け入れるようになるのだ。
果たして、前回の時とは違い慶志郎も覚悟を決めていたので改めて見た金剛のブツに怖がる事も無かったし、完全にとはいかないものの余り痛くせずに繋がる事も出来た。
ただ、金剛にとっても想定外の事態になったのはコトを済ませて2人でダラダラ抱き合ってベッドに寝ている時だった。
……もっかい、シてえ。
腕の中で疲れて微睡む慶志郎を見ていたら、大人しくなった筈の股間のエイリアンがムクムク起き出した。
初めてで身体にも精神的にも負担を掛けてしまった彼を、また組み敷いて思うさま犯し尽くしたいという欲望が膨らんでくる。
幾ら何でもそれはマズいだろうと、金剛はそっと慶志郎から離れ、トイレで一発ヌいて鎮めて来ようとベッドから降りた。
「……轟?」
暖かい体温が離れた所為で慶志郎が目覚めて、どうした?と訊いてくる。
一瞬の躊躇い後、金剛は何でもねえトイレだと言って誤魔化した。
そんなやり取りがほぼ毎回繰り返されるようになり、流石に不審に思った慶志郎に、とうとう金剛は問い詰められてしまった。
「ワタシとシてみたら、やっぱり悦くなかった?」
「違う、そうじゃねえ」
「毎回ベッドから抜け出して、ナニしてるの?」
「それは、ちょっと眠れないから」
「……実はもう、ワタシを好きじゃなくなった?」
自分で言った言葉に傷付いたのか、慶志郎は唇を噛んで俯く。
自慢のピョンピョン前髪もしょんぼりと項垂れる。
「違うんだ、慶志郎。お前が好きなのは間違いねえ、それだけは揺るがねえ」
焦って金剛は慶志郎の顔を両手で挟んで上向かせた。
じわりと目元に涙を浮かべて、じゃあ何でと慶志郎が問う。
もう誤魔化せないと金剛は観念して、慶志郎を抱き締めた。
「あのな、言ったら絶対引くかもしんねえ」
「そんなの、言ってみなきゃ分からないじゃない」
「……1回2回じゃ、収まんねぇんだ」
「……?何が?」
「セックス」
「……え?」
「お前を抱くと際限ねえくらい、抱き潰しそうになる」
ポカンとする慶志郎にけどよ、と金剛は続けた。
「突っ込まれるお前の方が負担はデケえから、無理強いしたくねえ。お前を壊したいワケじゃねぇんだ、ずっといつまでも一緒に居てぇから、それで」
「じゃあ……トイレに行ってたのは」
「何発かヌきゃあ、鎮まるから」
情けなく眉を下げる金剛に呆然としていた慶志郎は安堵して、それから今までの金剛の行動を思い返した。
恋人関係になってから分かったのは、轟 金剛という男は深い愛情の持ち主だという事。
己の懐の奥に入れた者には惜しみ無く愛情を注ぐのだ。
慶志郎はその愛情を受ける事を許された唯一の者で、金剛に随分と甘やかされていたのだとその時に悟った。
「試してみたらいいじゃない」
「は?」
「そうだね、キミの体力がどれくらいか分からないから2人で数日、有休を取ろう。それで思う存分、キミはワタシを抱いてみたらいいと思うよ」
「は?」
突拍子もない慶志郎の提案に思考が停止した金剛を放っといて、慶志郎はサッサと予定を組んだ。
慶志郎だって、金剛の事が好きなのだ。
負担を掛けまいとずっと欲望を押し殺して、我慢していたのは慶志郎を愛するが故にと聞かされては、応えないワケにはいかない。
難のある性格の慶志郎は、同時にポジティブな一面も持ち合わせ漢気も兼ね備えていた。
かくして2人は1週間の有休を取り、ヤり出したら外出も出来ないだろうと、食料品やら何やら色々買い込んで慶志郎のマンションに引き籠る事になったのだ。
そして現在、風呂と食事とトイレと以外、慶志郎はベッドから出して貰えていない。
腰を掴み、ゆるゆると出し挿れしつつ金剛は己の下で喘ぐ恋人を見下ろす。
自分のモノを咥え込んでいる其処は、抽挿を繰り返す度にナカに放った白濁が掻き出されて陰茎に纏わりつき、厭らしくヒクついて行かないでとばかりに金剛自身を離さない。
ナカに突き込むと散々に嬲られて熟れて爛れた内襞がやわやわと蠢き、根元から先端まで程好く締め付け悦んで金剛を迎え入れる。
指で、モノで、散々に虐めた前立腺を悪戯に突いてやれば、泣き喘いでイヤイヤと逃げを打つが勿論、逃がしてなんかやらない。
陰茎をギリギリまで引き抜き、浅い所でズクズクと抽挿してやると足りないと自ら腰を押し付けてくるのが壮絶に厭らしくて、可愛くてもっと啼かせたくなる。
「……絶景」
興奮で息も荒くポツリと呟き、汗塗れで背中に貼り付く長い金髪をそっと払い、身を屈めて舌を突き出して背筋をなぞってやれば、途端に矯声を上げて慶志郎がビクビクと仰け反った。
慶志郎の身体が、何処もかしこも敏感で性感の強いというのは、抱き合うようになってから知った。
彼自身も知らなかったらしく、抱き合いながら触れて愛撫して快楽に弱い身体を自分好みに育てていくのが楽しかった。
「あっあっ、こん、ご…!そこ、」
「分かってら、ココだろ?ほら、もっとくれてやるから」
「ひィ、ァ、あっ…」
抱いても抱いても欲望は尽きる事なく、慶志郎と2人で彼のマンションに籠ってひたすらセックスに没頭し始めて、もう3日目になる。
食事と風呂とトイレと睡眠と、それ以外はずっと抱き合って繋がっていた。
慶志郎の肌には金剛が付けた所有の証がびっしりと刻まれ、こんな事を許されるのも自分だけなんだと、女好きを公言していたプライドの高い彼がこんな姿を晒すのは自分にだけなんだと思うと、独占欲と愛情と征服欲がごちゃ混ぜになって胸が苦しい程に締め付けられる。
誰にも渡したくねえ。誰にも触れさせねえ。俺の、俺だけの。
いっそ、何もかも分からなくなる程に嬲り抱いて、閉じ込めてしまおうか。
自分の下で泣いて喘いで、快楽だけに溺れさせて。
くしゃくしゃのシーツを掴んで啜り泣く声に、金剛はハッと我に返ると動きを止めて慶志郎を覗き込んだ。
「慶志郎?痛かったか?」
「ぁ、あ…ん、」
「おい?」
「いや、止め…るな、」
焦点の合わない目が金剛を見上げてくる。
「もっと、すごい、あっ、イィ…悦い」
「おい、お前……」
「すき、コレすき、もっと欲しい、お願い」
舌っ足らずで貪欲に腰を振って強請る慶志郎の様子に異常を感じて中から引き抜き、金剛は彼を起こして抱き上げペチペチと頬を叩いた。
マズイ、頭が飛んじまってる。
「慶志郎、慶志郎」
「なんで、やめるの。抜かないで、犯してもっと」
「違うだろ、慶志郎。テメエはそんな奴じゃねえ」
快楽の虜になり虚ろな目で腰を擦り付けてくる慶志郎を強く掻き抱いて、金剛は頬に額に唇に口付けた。
俺はお前をセックスドールみたいにしたいワケじゃねえ。
「慶志郎、好きだ」
「こんご、」
「愛してる、慶志郎」
「ワタシも好きだよ」
ハッキリ返ってきた言葉に金剛はパッと顔を離して恋人を見る。
先刻とは違い、目に力を取り戻した慶志郎が真っ直ぐに見つめてきていた。
「大丈夫か」
「ソーリー、ちょっとボンヤリしていたみたい」
「悪かった、流石にヤり過ぎた」
「求めたのはワタシだから、謝る必要はないさ」
でも今日はかなり疲れたから休みたい。
慶志郎の要求に応じて2人で一緒に風呂に入り、体液やら汗やらで汚れたシーツを新しい物に取り替えてベッドに横たわると向き合って互いに腕を回して抱き合う。
「なあ、明日はちょっと出掛けねぇか」
「キミから誘うなんて珍しいね。何か欲しい物でもあるの?」
「いや、そうじゃねえ……けど」
「けど?」
「恋人だろ、俺ら」
だから、どっかいい景色でも見に行って美味いモンでも食って、1日ブラブラしてみようぜ。
思いがけない言葉に慶志郎は金剛を見詰めた。
不器用で無骨で、恋愛に疎い彼がそんな事を言い出すのが意外だった。
「それって」
「俺ァよ、お前みたいに色々シャレた所とか知らねぇし、恋人っつーのがどんなモンかよく分かんねぇし、でもお前とおんなじモンを見て感じて、同じ思いを共有して一緒に居てえと思ってる」
「……金剛、キミ」
じわりと慶志郎の胸に暖かいものが灯る。
いつも真っ直ぐに愛を告げてくるこの男が、どうしようもなく愛しいと思う。
「オーケー、明日は2人で思いっきり恋人しよう」
触れるだけの口付けを交わして2人は眠りに就いた。
それでまあ、約束通り翌日はベッタベタに恋人デートを楽しんだ金剛と慶志郎なのだが。
「あっ、あっ、イイ、いっちゃう!」
「おらイケ、俺も、もうっ…!」
帰って来てから盛り上がって、しょー懲りもなくアンアンえっちして、ラブラブ一体感しちゃったのだった。
学習しろよ、おまいら。
終われ。